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生きる (「たくさんのふしぎ」2013年9月号 第342号)

 先日も「たくさんのふしぎ」を取り上げましたが、今回も。

福音館書店:たくさんのふしぎ 2013年9月号
 「生きる」(谷川俊太郎:詩、岡本よしろう:絵)

 谷川俊太郎さんの詩「生きる」に、岡本よしろうさんの絵がついた、詩の絵本です。恥ずかしながら、「生きる」の詩を読んだのは初めて。詩が発表されたのは40年以上前。それなのに、全く古さを感じない。寧ろ、今、現代の詩なんじゃないかとも思う。普遍のテーマなのだと思う。

「生きているということ
いま生きているということ」

 この一節から始まり、何度も繰り返される。「いま」、「生きている」ということはどんなことか。言葉で情景が語られる。その情景はなんてことのない、よくある日常。特別なことはない、毎日ありそうなこと。でも、それが「いま生きているということ」なんだ。

 嬉しいことや幸運なことがあって、「生きててよかった」と思うことがある。その一方で、日常のふとした瞬間の、例えばきれいな虹や青空の飛行機雲を見たとか、誰かの優しさ・あたたかさに触れたとか、そんな何気ない瞬間に「生きている」と実感することがある。死んだら、見られない、触れられない、わからない…かもしれない。死んだらどうなるかわからないから、よくはわからない。でも、その「生きている」という実感は、きっと、「いま」に触れたからだと思う。

 「いま」はすぐに過ぎ去り過去になる。「いま」と言っても、一瞬。これを書いている「いま」も、もう「いま」じゃない。時間は止められない。止められないけれども、言葉に書く、絵に描くことなどで再現・表現は出来る。それは正確な「いま」じゃないけど、「いま」を後から見つめることは出来る。

 「いま」に触れ続け、「生きている」。過去を悔やんだり、未来を心配したりするより、まず今を大事に生きよう、という言葉をよく耳にする。これが、私はよくわからずにいた。今も、まだよくわからないところがある。理解しきれていない。過去のことを後悔することは頻繁にあるし、未来を心配に思うこともしょっちゅうだ。過去も未来も、どちらもいつでも考えることは出来る。そのうちその後悔も薄れ赦し、未来に希望も持てるようになる。でも、「いま」を「生きている」のはこの「いま」だけ。「いま」考えたこと、思ったことは、すぐに消えてしまって思い出せなくなることもある。どんなに強烈な「いま」も、時間が経てば薄れてゆく。「いま」は二度と来ない。「いま」に触れられるのは「いま」だけ。そう思うと、理解できるかな…と思う。

 谷川俊太郎さんが語る「生きる」。特別なことは書いてないのに、心にじんわりと、愛おしく思う。特に、20ページからの街の風景が好きだ。様々な人がいて、それぞれの「いま」があり、それぞれの状況の中で「生きている」。いいこともあるし、辛いこともある。それが、日常、「いま」を「生きている」ことなのだと思う。

 巻末の谷川俊太郎さんの言葉にも、なるほどと感じました。

 使い慣れてきた万年筆でこの詩を書き写しています。読むだけでなく、書き写す。さらにじっくりと味わえます。
by halca-kaukana057 | 2013-10-16 22:20 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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