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北欧の旅 カレル・チャペック旅行記コレクション

 そろそろ夏至ですね。ということで、北欧旅行記を。「ロボット」という言葉を世に出した「R.U.R」のカレル・チャペックによる旅行記です。


北欧の旅 カレル・チャペック旅行記コレクション
カレル・チャペック:著/飯島周:訳/筑摩書房・ちくま文庫/2009

 1936年7月、チャペックは妻と妻の兄とともにデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの旅に出る。北欧とあるので、フィンランドも入っているかと思ったら無かった(残念)。その旅のことを、チャペック自身によるイラストとともに書き綴ったのがこの本。

 冒頭「北への旅」で、チャペックは北欧諸国(フィンランドは抜けているのでスカンディナヴィア3国)への想いを書いている。同じヨーロッパでも、北は少し違う、と。しなやかで厳しい自然、深い森。そんな北をひたすら目指したい、巡礼したい、と。

 皆が皆ではないが、北という地はどうしてこれほど人を惹きつけるのだろう。私も北国に住んでいるのに、更に北に惹かれている。今住んでいる北国でも、季節が巡るごとに発見すること、再確認・再認識することが多い。これまで様々な北欧に関する本を読んできたが、文章でその北国の魅力を豊かに描いている。チャペックの可愛らしいイラストも一緒に楽しめる。チャペックはこんなに絵を描く人だったんだ。

 自然の描写は、読んでいるだけで北欧の自然を思い描ける。色彩豊かな文章に惹かれる。深い森、トウヒやモミの木、白樺。シダやベリー。南の方とは表情が異なる太陽、陽の光。白夜。北へ行けば行くほど、無駄なものはそぎ落とされてゆく。船でノルウェーのヨーロッパ最北の地・ノールカップを目指す。黒い断崖絶壁がそびえるその地を、チャペックはこう記している。
ここはヨーロッパの終点ではない。これはヨーロッパの始発点なのだ。ヨーロッパの終点は、あの南のほうの、人々の間の、あの、この上なく忙しい場所だ――。
(230ページ)

 何もない、この北の地が始まり…納得できる。

 出会った人々の描写もあたたかく、ユーモラスだ。現地の人々の民族性に心惹かれたチャペック。人々が住む街も、人々も、無駄がそぎ落とされているように読める。一方で、アメリカから布教のために来た教団に対しては、皮肉たっぷりに語っている。そのユーモアに、思わずニヤリとしてしまった。ただ、アルコール販売に制限があることだけは、チャペックにとって困り事だったようだ。

 チャペックがデンマーク、スウェーデン、ノルウェーを旅したのは、1936年。第2次世界大戦への流れが表われてきた頃。この後、この3国も戦争に巻き込まれてしまうのかと思うと心が痛む。現在は様々な面で注目されている北欧諸国だが、約70年前の北欧諸国の空気を味わうのにもいい本です。

 ただ、私としては、やはりフィンランドが無いのが残念です…。
by halca-kaukana057 | 2014-06-07 22:15 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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