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ムーミンを生んだ芸術家 トーヴェ・ヤンソン

 今年は、「ムーミン」の作者・トーヴェ・ヤンソン生誕100年。「ムーミン」関連の書籍が次々と出版されたりと盛り上がっています。その中からこの本を。


ムーミンを生んだ芸術家 トーヴェ・ヤンソン
冨原 眞弓/芸術新潮編集部:編/新潮社/2014

 「芸術新潮」2009年5月号のムーミン&トーヴェ・ヤンソン特集を再編集して書籍化した本です。その「芸術新潮」は読んでいたのですが、あらためて書籍化されるのは嬉しい。
 

 「ムーミン」の原画や版画、それぞれのシリーズの解説、トーヴェ・ヤンソンの生涯と、「ムーミン」以外の作品や「ムーミン」とは異なる面について。フィンランドのムーミンやトーヴェ・ヤンソンの作品に出会えるガイドにもなっています。とにかく原画やイラストが豊富で、それを眺めるだけでも楽しい本です。「ムーミン」シリーズを研究してきた冨原さんのインタビューがとても興味深いです。

 「ムーミン」やそのほかのヤンソン作品の解説でも、フィンランド人だからフィンランド語で…と思うところを、スウェーデン系フィンランド人で、「ムーミン」ももともとはスウェーデン語で出版されたので、スウェーデン語が登場してきます。ここは、フィンランドの歴史・文化の奥深く面白く、難しくもあるところなのですが、ヤンソンの中にあるスウェーデンの部分とフィンランドの部分が、「ムーミン」でも垣間見える。スウェーデン語で書かれていても、自然の描写はフィンランド的な部分もあり…。そんな部分が、「ムーミン」の面白いところでもあります。

 「ムーミン」は、9つの物語・小説だけじゃない。イギリスの夕刊「イヴニング・ニュース」に「ムーミンコミックス」を連載。このムーミンは、物語の「ムーミン」とは異なる世界、設定になっている。「コミックス」はまだ全部読めていない。ああなんて広くて深いんだ「ムーミン」の世界!(アニメ「楽しいムーミン一家」のムーミンパパ(CV:大塚明夫)風に読んでくださいw)

 以前青森県立美術館他で開催され行ってきた「フィンランドのくらしとデザイン展」。その初日のトークセッションで、ヤンソンは「ムーミン」の作者、というよりも”画家”である、という話がありました。この展覧会ではヤンソンの油絵も展示されていて、観てきました。ヤンソンがもともと画家を目指していたことは、この本でも書かれています。油絵やフレスコ画の写真もあり、その時のトークセッションの内容を更に深められました。ヤンソンの画家への道は、険しいものだった。魅入ってしまったのが、ヘルシンキのスウェーデン語系職業訓練学校のロビーにあるという2枚のフレスコ画。色鮮やか。このフレスコ画にも、ちょこんとムーミントロールがいるのには、微笑んでしまいました。

 「ムーミン」シリーズは読んでも読んでも、キリがない。終わりが無い。惹き込まれてしまう。キャラクターとしても可愛いが、物語はもっと暗いものも含んでいる。その辺は、上記「フィンランドのくらしとデザイン展」でも解説されていたのですが、戦争の影でもあり、フィンランドの暗く長い冬でもある。それでも、けなげに毎日を暮らすムーミン谷の仲間たち。ヤンソンの心や、置かれている状況を反映している部分もあるという。これから、秋も深まり、寒くなり、冬になり、私の住む地域も雪に閉ざされる。その中で、「ムーミン」の物語をまた読もうと思う。

 ヤンソンの「ムーミン」以外の作品も読んでみたいと思っている…ああ、また、まだまだ読みたい本が増え続ける!!(悲鳴

ユリイカ 2014年8月号 特集=ムーミンとトーベ・ヤンソン

トーベ・ヤンソン / 青土社


 こちらも入手しました。また読んでません。これも秋から冬にかけて、ゆっくりと読みます。

【「フィンランドのくらしとデザイン展」:過去記事】
自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章
”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編
この土地で生きてゆくという意志の”design” 「フィンランドのくらしとデザイン展」を観て
by halca-kaukana057 | 2014-10-14 22:11 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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