2015年 04月 23日
二都物語
NHK人形劇「シャーロックホームズ」第4話「消えたボーイフレンドの冒険」で、ワトソンが読んでいた小説がこの「二都物語」(A Tale of Two Cities)。この小説が、人形劇本編の物語に関係がある…というので読んだ。ディケンズを読むのは「クリスマス・キャロル」以来2作目です。
・クリスマス・キャロル(原作&NHKFM・青春アドベンチャー)
二都物語
チャールズ・ディケンズ:著/加賀山卓朗:訳/新潮社・新潮文庫/(加賀山訳は新訳版、2014)
1775年、イギリス。ドーヴァーに向かっていた郵便馬車に乗っていたテルソン銀行の銀行員・ジャーヴィス・ローリーはある手紙を受け取る。「ドーヴァーにて令嬢を待て」。ローリーは「人生に甦った」という返事を出す。そしてドーヴァーに到着すると、銀行から手紙を貰いロンドンからやって来た若い女性・ルーシー・マネットと会う。幼い頃死んだとされていた父で医師のアレクサンドル・マネットがバスティーユ牢獄から解放されたというのだ。18年間の投獄生活で記憶も曖昧、パリで酒場を営むドファルジュ夫妻に保護されていたマネット医師だが、娘と再会し共にロンドンに向かい、一緒に住み始める。
5年後、マネット医師はすっかり回復し、ロンドンで暮らしていた。ローリーとマネット父娘がイギリスに向かう船に一緒に乗っていたフランス人・チャールズ・ダーネイがスパイ容疑で裁判にかけられていた。ローリーとルーシーは証人として出廷し、無実を証言していた。その法廷には、チャールズの弁護士・ストライヴァーと、ストライヴァーの同僚の弁護士のシドニー・カートンもいた。チャールズとシドニーはとてもよく似ていた。無実で釈放されたチャールズ、そしてシドニーはルーシーに恋をする。シドニーは弁護士ではあるが、普段は酒びたりの生活を送っていた。また、チャールズにはある隠された過去があった…
読んでいて、舞台を観ているような気持ちになっていました。主要人物のルーシー、マネット医師、チャールズ、シドニー、ローリー、ドファルジュ夫妻だけでなく、ちょい役の登場人物たちも実に活き活きとしていて、物語に彩りを添えている。「クリスマス・キャロル」も庶民を描いた人間味溢れる作品だったが、「二都物語」も極平凡な庶民の生活の中にあるルーシーたちの運命が、イギリスらしい皮肉や庶民の目線から描かれている。読んでいて、それぞれの登場人物の言動が個性豊かで、面白かった。
「人生に甦る」という不思議な言葉で始まる物語。「人生に甦る」のは牢獄生活から解放されたマネット医師のことでもあるし、過去にある秘密を抱えたチャールズのことでもある。また、弁護士なのに酒びたりの生活を送っていて、自分でもどうしようもないと思っているシドニーのことでもある。彼らの「人生に甦る」鍵になるのがルーシー。理想的なヒロインである。そのヒロインに恋するチャールズとシドニー。2人が顔がよく似ているというのがまた鍵になる。様々な鍵、パズルのピースが散りばめられていて、後からそれが伏線だったとわかる。最後の怒涛の伏線回収が凄い。
堕落した人生を送っているシドニー。ルーシーのことは愛しているけれども、この自分は変えられそうにない…と嘆くシーンが何とも言えない。そんなシドニーに希望ある未来を願うルーシー…それなのに…。シドニーの境遇が辛いが、一方のチャールズも辛い立場にある。そして、それが明るみになる…フランス革命が、彼らを運命の渦に巻き込んでゆく。
2回読み返しましたが、どの登場人物からも目が離せない。最後のまさかの展開に、人間という生き物の不思議さを覚えます。最初に書きましたが、小説、文章だけ(挿絵はあります)なのに、舞台を観ているみたいです。
訳は、現在入手しやすいのがこの新潮文庫の新訳版のみ。宝塚歌劇団や、他にも舞台化、映画化された作品なのに、訳がこれしかないというのは残念。他の出版社からも出て、他の訳でも読んでみたい。あと、他のディケンズ作品も。長編がほとんどですが…。
ちなみに、冒頭で人形劇「ホームズ」がきっかけで読んだ…と書きましたが、ノベライズ版ではこの「二都物語」のあらすじが物語の鍵になっている。2人の男が1人の女を愛する物語。しかし、共通点、鍵はそれだけではなかったことが読んでわかりました。脚本の三谷幸喜さんはそれをわかってワトソンが「二都物語」を読んでいる、というのを入れたのだろうか…。
あと、最初手にした時は結構ボリュームがある本を、15歳のワトソンが愛読しているとは…と思いましたが、読んでみてわかる気がしました。
・詳しくは:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎
・クリスマス・キャロル(原作&NHKFM・青春アドベンチャー)
二都物語
チャールズ・ディケンズ:著/加賀山卓朗:訳/新潮社・新潮文庫/(加賀山訳は新訳版、2014)
1775年、イギリス。ドーヴァーに向かっていた郵便馬車に乗っていたテルソン銀行の銀行員・ジャーヴィス・ローリーはある手紙を受け取る。「ドーヴァーにて令嬢を待て」。ローリーは「人生に甦った」という返事を出す。そしてドーヴァーに到着すると、銀行から手紙を貰いロンドンからやって来た若い女性・ルーシー・マネットと会う。幼い頃死んだとされていた父で医師のアレクサンドル・マネットがバスティーユ牢獄から解放されたというのだ。18年間の投獄生活で記憶も曖昧、パリで酒場を営むドファルジュ夫妻に保護されていたマネット医師だが、娘と再会し共にロンドンに向かい、一緒に住み始める。
5年後、マネット医師はすっかり回復し、ロンドンで暮らしていた。ローリーとマネット父娘がイギリスに向かう船に一緒に乗っていたフランス人・チャールズ・ダーネイがスパイ容疑で裁判にかけられていた。ローリーとルーシーは証人として出廷し、無実を証言していた。その法廷には、チャールズの弁護士・ストライヴァーと、ストライヴァーの同僚の弁護士のシドニー・カートンもいた。チャールズとシドニーはとてもよく似ていた。無実で釈放されたチャールズ、そしてシドニーはルーシーに恋をする。シドニーは弁護士ではあるが、普段は酒びたりの生活を送っていた。また、チャールズにはある隠された過去があった…
読んでいて、舞台を観ているような気持ちになっていました。主要人物のルーシー、マネット医師、チャールズ、シドニー、ローリー、ドファルジュ夫妻だけでなく、ちょい役の登場人物たちも実に活き活きとしていて、物語に彩りを添えている。「クリスマス・キャロル」も庶民を描いた人間味溢れる作品だったが、「二都物語」も極平凡な庶民の生活の中にあるルーシーたちの運命が、イギリスらしい皮肉や庶民の目線から描かれている。読んでいて、それぞれの登場人物の言動が個性豊かで、面白かった。
「人生に甦る」という不思議な言葉で始まる物語。「人生に甦る」のは牢獄生活から解放されたマネット医師のことでもあるし、過去にある秘密を抱えたチャールズのことでもある。また、弁護士なのに酒びたりの生活を送っていて、自分でもどうしようもないと思っているシドニーのことでもある。彼らの「人生に甦る」鍵になるのがルーシー。理想的なヒロインである。そのヒロインに恋するチャールズとシドニー。2人が顔がよく似ているというのがまた鍵になる。様々な鍵、パズルのピースが散りばめられていて、後からそれが伏線だったとわかる。最後の怒涛の伏線回収が凄い。
堕落した人生を送っているシドニー。ルーシーのことは愛しているけれども、この自分は変えられそうにない…と嘆くシーンが何とも言えない。そんなシドニーに希望ある未来を願うルーシー…それなのに…。シドニーの境遇が辛いが、一方のチャールズも辛い立場にある。そして、それが明るみになる…フランス革命が、彼らを運命の渦に巻き込んでゆく。
2回読み返しましたが、どの登場人物からも目が離せない。最後のまさかの展開に、人間という生き物の不思議さを覚えます。最初に書きましたが、小説、文章だけ(挿絵はあります)なのに、舞台を観ているみたいです。
訳は、現在入手しやすいのがこの新潮文庫の新訳版のみ。宝塚歌劇団や、他にも舞台化、映画化された作品なのに、訳がこれしかないというのは残念。他の出版社からも出て、他の訳でも読んでみたい。あと、他のディケンズ作品も。長編がほとんどですが…。
ちなみに、冒頭で人形劇「ホームズ」がきっかけで読んだ…と書きましたが、ノベライズ版ではこの「二都物語」のあらすじが物語の鍵になっている。2人の男が1人の女を愛する物語。しかし、共通点、鍵はそれだけではなかったことが読んでわかりました。脚本の三谷幸喜さんはそれをわかってワトソンが「二都物語」を読んでいる、というのを入れたのだろうか…。
あと、最初手にした時は結構ボリュームがある本を、15歳のワトソンが愛読しているとは…と思いましたが、読んでみてわかる気がしました。
・詳しくは:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎
by halca-kaukana057
| 2015-04-23 23:12
| 本・読書