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ヴェネツィアの宿

 久々に須賀敦子さんの本を読みました。


ヴェネツィアの宿
須賀敦子/文藝春秋・文春文庫/1998(単行本は1993)

 戦争末期・終戦後の頃、イタリアに留学した頃、父と母と、父の愛人のこと、ミラノで結婚した頃のこと…須賀さんの様々な年代の思い出を語る12編のエッセイ。

 立秋も過ぎ、当地は一気に秋めいてきた。まだ夏だけれども、陽の照り方、空の色や雲、風の温度や触感、日の短さ、暮れゆく空…秋の気配を感じる。真夏のギラギラした太陽の下、強烈に明るい雰囲気から、陰りを感じる季節へ。読んでいたら、そんな夏から秋へ移り変わる頃の陰りを思い浮かべた。

 須賀さんが留学し、住んだイタリアやフランスは、南の国のイメージがある。日本のような酷暑ではないけれども、カラッと暑くて、太陽の光が降り注ぎ、明るく、人々も陽気で、街も賑やか。でも、須賀さんが描くイタリアやフランスの情景は、そんなカラッとした陽気なものではない。その光の陰にある、人々の憂鬱や心の奥底が際立っている。周りが明るくポジティヴな印象が強いから、暗いネガティヴな様が浮かび上がりやすいのだろうか。

 今年は戦後70年。戦時中、終戦後に関するエッセイもある。「寄宿学校」は終戦後のカトリック学校の学校生活や寄宿舎でのことが書かれている。戦後の混乱の中、外国人のシスターたちはどんな想いでいたのだろう、と思う。学校での学業や生活は楽ではなかった。その「寄宿学校」の最後が印象的だった。

 以前読んだ「コルシア書店の仲間たち」に関するエッセイもあります。夫のぺッピーノとの話は、何度読んでもつらい。

 様々な人と出会い、別れ。その時、様々なことを思うけれども、はかなく過ぎ去ってしまう。短い夏のような、切なくなる本です。

 ところで、須賀敦子さんの本を読もうと思ったら、河出文庫から全集が出ているじゃないですか。全集でそろえるか、それぞれのを買うか…迷います。全集だと分厚くて持ち歩きにくいのが難点…。
by halca-kaukana057 | 2015-08-09 23:17 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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