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新編 あいたくて

 秋になると、詩を読みたくなります。(夏の昼下がり、風が心地いい窓際や、冬の夜などにも合いますが)

新編 あいたくて
工藤直子:詩/佐野洋子:絵/新潮社・新潮文庫/2011

 工藤直子さんといえば、「のはらうた」シリーズ。ユーモアたっぷりの動物・虫たちの本音や声を描いた詩はいつ読んでも楽しくて、とても好きです。読み聞かせをしていた頃、「のはらうた」を朗読したこともありました。Eテレ(NHK教育)「おはなしのくに」のように、その動物・虫たちになりきって、表情豊かに。最初は照れもあるのですが、子どもたちの反応も楽しくて、だんだんノリノリで一緒に楽しんで読みました。普通に読んでも、朗読しても、本当に面白い、楽しい。

 その工藤直子さんの代表作といば、この詩集「あいたくて」も外せません。数年前、この新編が文庫で出ました。「あいたくて」は平原綾香さんが歌っているのもあります。綾香さんの歌声と、曲で、この詩に込められているであろう想いがより強く、やさしく、やわらかく、じわじわと感じられます。
 何かに「あいたくて」…そんな想いから発展してゆく詩が、どれもいい。思わず共感してしまう詩、自分ではうまく表現できなかった気持ちを代弁してもらったような詩、思ったこともないような発見を感じた詩、心の奥底を覗くような詩…。何度も読み返します。

 私は、何かを言葉で表現しようとする時、文章が長くなる(苦笑)。あれこれ細かく説明して、長くなってしまう。一文も長いし、単語も多いし、その割には語彙のバリエーションが貧弱、表現が下手くそで…。読みにくいなぁ、これじゃわかりにくいじゃないかと、以前書いたこのブログ記事やノートに書き続けている日記を読み返しては思います(この一文も長い)。
 詩は、短い文章、シンプルな言葉で、その内面に込められているものを伝える。読むのは好きですが、書くのは難しい(学生時代こっそりと書いていた経験あり)。それも今読み返すと、「これは詩か?」と思う。とにかく詩は難しい。むしろ、子どもたちがそれぞれ思っていることや日常のことをストレートに書いたものの方がわかりやすい、伝わりやすい。

 だから、この詩集は何度でも読み返します。よくわかっていない何か、誰か、自分の中の気付いていない部分に「会いたい」。佐野洋子さんの絵も味わい深い。

 文庫版のためのあとがきは、詩ではなく「あとがき」なのですが、そこにも共感しました。工藤さんが30代の頃、何故自分は生まれてきたのか、この世に何の用があるのだろうか…と悩み、申し訳なく思いジタバタしていた、と。そこにも重なるものがあって、工藤さんにもそう思ったことがあったのか…。そんな工藤さんに、ご友人がかけた言葉にハッとした。凄い視点、考え方だなと思った。それが「会いたい」という感情なのだろう。

 小説も、ノンフィクションも、エッセイも、漫画も好きです。でも、詩はまた言葉と表現、そして人間という生き物の可能性を感じさせてくれて、とても好きです。
by halca-kaukana057 | 2015-10-04 21:25 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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