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18年ぶりの最終夜で BBC Proms(プロムス) ラスト・ナイト 2018

 今年もNHK BSプレミアムで、BBC Proms(プロムス)ラスト・ナイト・コンサート(Last Night of the Proms)が放送されました。テレビ放送を観ないと、毎年プロムスが終わった気になりません…。9月、BBC Radio3での生放送とオンデマンド配信で聴いていましたが、毎年思うのが、映像で観ると違う!映像で観て、この楽しさがより伝わってくる、ということ。そして映像で観て安心します…(2015年のをNHKが放送しなかった過去が…)

BBC Proms 2018 公式サイト:Prom 75: Last Night of the Proms
BBC Radio3 : BBC Proms : Prom 75: Last Night of the Proms

・今年のラストナイトについて記述のある過去記事:BBC Proms ( プロムス ) 2018 私選リスト その4 [9月] [随時追記あり]

 今年のプログラムは以下でした。NHKでの表記に合わせました。日本語訳がわからなかったものも日本語訳されるのはありがたい。

・ヒンデミット:歌劇「今日のニュース」序曲
・ベルリオーズ:レリオ、あるいは生への回帰 op.14bis 第6曲:シェイクスピアの「テンペスト」にもとづく幻想曲
・ロクサンナ・パヌフニク(Roxanna Panufnik):暗闇の歌、光の夢(Songs of Darkness, Dreams of Light)(※世界初演)
・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード(Charles Villiers Stanford):海の歌 op.91(1,ドレイク提督の太鼓/2,港を離れて/3,デヴォン ああデヴォン 雨よ風よ/4,家路/5,オールド・スーパーブ号)
     :青い鳥
・パリー:恵みを受けし二人のセイレーン

・サン=サーンス:アルジェリア組曲 op.60 第4曲:フランス軍隊行進曲
・ミヨー:スカラムーシュ
・リチャード・ロジャース:回転木馬 より 独白
・アン・ダドリー(Anne Dudley)編曲:第一次大戦時の流行歌(World War 1 Songs):Roses of Picardy(ピカルディーのばら) , It's a long, long way to Tipperary(はるかなティペラリー) , Keep right on to the end of the road(道の果て) , Keep the home fires burning(その日まで / 炉の火を絶やさず)

・ヘンリー・ウッド:イギリスの海の歌による幻想曲(小粋なアレトゥーザ/トム・ボウリング/ホーンパイプ/ホーム・スウィート・ホーム/見よ、勇者は帰る)
・アーン(サージェント:編曲):ルール・ブリタニア!
・エルガー:威風堂々 第1番 ニ長調 op.39-1 "Land of Hope and Glory"
・パリー(エルガー:編曲):エルサレム
・ブリテン編曲:イギリス国歌(God Save The Queen)
・スコットランド民謡(ポール・キャンベル:編曲) :Auld Lang Syne

  / ジェス・ギラム(Jess Gillam サクソフォーン)、ジェラルド・フィンリー(バリトン)
  BBCシンガーズ、BBCシンフォニー・コーラス
  アンドリュー・ディヴィス:指揮、BBC交響楽団

 9月の記事でも書いた通り、アンドルー・デーヴィス(NHKはこの表記)さんが、ラストナイトの指揮台に18年ぶりに立ちます。12回目。ベテランです。デーヴィスさんがBBC響の首席指揮者で、ラストナイトを指揮していた頃、私はまだプロムスを知らなかった。クラシック音楽にも親しんでいなかった。久々に帰って来るデーヴィスさんの指揮を観て、当時の雰囲気を味わえたなら良いなと思っていました。

 デーヴィスさんは通して指揮棒を持たず指揮。オープニングの映像で、指揮棒がパスされていくのですが(テレビ放送案内役のケイティ・ダーハムさん、裏方さん、常連のプロマーさん、今回出演するギラムさんにフィンリーさん、サイモン・ラトルさんまで!)、最後、指揮棒を受け取ったデーヴィスさんは指揮棒を放り投げてしまう。その後、お茶目な笑顔でw指揮棒はいらないよ、というメッセージだったのでしょうか。
 デーヴィスさん、18年ぶりとはいえさすがはベテランといった感じです。指揮も年齢を感じさせず軽快に。うまい感じに盛り上げています。「威風堂々第1番(Land of Hope and Glory)」の1回目が終わった後のコメントがよかった。スピーチの雰囲気などから、お茶目で陽気な校長先生というイメージを持ちました。沸く観衆を笑顔で静めていた。常連プロマーさんたちに「また会えたね」という感じなんでしょうか

 BBC交響楽団は、3月に来日公演を聴きに行きました。その時も、ラストナイトで見たことある楽団員さんが何人もいらっしゃったのですが、今度は反対に、来日公演で見た楽団員さんたちがいる!と思いました。リーダー(コンマス)のブライアントさん・立派なおひげのフルートのコックスさん。コックスさんの隣には日本人楽団員のフルート・向井知香さん。私が行った公演ではありませんが、ラジオで放送されたマーラーの5番で見事なソロを聴かせてくれたトランペットのトーマスさん。ブリテン「ピーター・グライムズ」パッサカリアで素敵なソロを聴かせてくれたヴィオラの男性はいらっしゃらなかったなぁ。シベリウス5番、第3楽章で、美しい白鳥の飛翔を聴かせてくれたホルンの皆さん…。ラストナイトでのBBC響による演奏は、生で聴いたのと同じように元気でピュアで、金管は迫力のあるブリティッシュブラス。特にチューバはロータリーではなくピストンであるところがまたイギリスらしい。嬉しくなります。

 第1部は、初めて聴く作品が多く興味深々。ヒンデミット「きょうのニュース」序曲はサックスがかっこいい。ベルリオーズ「レリオ」より「シェイクスピアのテンペストによる幻想曲」は、合唱がメインの部分と、オーケストラがメインの部分の対比がいい。今年のプロムスは、女性作曲家の作品を多く取り上げました。ロクサンヌ・パヌフニクの新曲「暗闇の歌、光の夢」は合唱がとても美しい。歌詞も孤独と光のような人への想いが切ない。素敵な曲です。今後、世界各地でどんどん演奏されるといいなぁ。CDも出るといいなぁ。スタンフォードの「海の歌」は海洋国家イギリスらしい、海の男の歌。ジェラルド・フィンリーさんの落ち着いていて表情豊かなバリトンが素敵でした。フィンリーさんが歌う「海の歌」は、オーケストラはBBCウェールズ交響楽団ですがCDが出ています。かっこいい曲だなぁ。一方の「青い鳥」は、無伴奏合唱。BBCシンガーズの合唱で。青い湖の上を飛ぶ鳥。静かな、凍りつくような情景をイメージできました。スタンフォードの作品は初めて聴きましたが、気に入りました。第1部最後はスタンフォードの友人で、第2部の定番曲「エルサレム」の作曲者・パリーの「恵みを受けし二人のセイレーン」。イギリスらしい威厳あるメロディーと響きが魅力的です。合唱もきれい。第1部からたっぷり楽しみました。

 第2部。お祭り騒ぎの第2部です。会場では風船を飛ばして歓声が上がっている。いつも通り、指揮台もリボンや国旗などでデコレーションされてる。18年ぶりに帰って来たデーヴィスさんへのメッセージとして、指揮台と譜面台に「Welcome Home」の文字が。愛されてます。第2部の目玉は、19歳のサックス奏者・ジェス・ギラムさん。ミヨー「スカラムーシュ」を披露。3曲からなる組曲ですが、曲間で盛大な歓声が。すごい。若きスターです。演奏もかっこよかった。フィンリーさんも、第1部とはうってかわってリチャード・ロジャーズのミュージカルから。失業し無一文になったが、もうすぐ父親になる男の、生まれてくる子どもへの想い。男の子だったら?女の子だったら?楽しい想像は尽きない。そんなコミカルで、真剣で、愛情あふれる男を表情豊かに歌い上げたフィンリーさん。素敵なバリトンさんだなぁ。フィンリーさんにはもうひとつ、大仕事が待っています。後ほど。

 今年は、第一次世界大戦が終結して100年。プロムスでは、第一次大戦中に作曲された作品、現代作曲家が第一次大戦を振り返る作品が数多く演奏されました。第1部のパヌフニクの新曲も第一次大戦終結を記念して作曲。第2部では、第一次大戦中に作られ、人々の心を支え、流行した4つの歌をメドレーで、各野外会場を結んで歌います。故郷にいる恋人を想う歌、故郷への歌、故郷で残された人々の想いの歌。ヨーロッパ中を巻き込んだ大戦の間、人々がどんな気持ちでいたのか、どんな気持ちでいようとしたのか。「はるかなるティペラリー」は明るく軽快なメロディーなのに、歌詞を読んでいるとうるっときてしまいます。この曲の前に、野外会場でのプロムスと、野外会場の連携についてのVTRがありましたが、これもよかった。本当に、イギリス全国で盛り上がっているんだなぁと。雨でも来る。ウェールズ、スコットランド、北アイルランド、それぞれの文化は異なりますが、それぞれの文化を大事にしようとしているんだなと感じました。こんな国全体で盛り上がる歴史ある音楽祭があるっていいなと思いました。

 ここからはお馴染みの定番曲。「イギリスの海の歌による幻想曲」。やっぱりこれがないと。「小粋なアレトゥーザ」は、ユーフォニアムの魅せどころ。「トム・ボウリング」のチェロソロが沁みます。会場ではお約束の涙を拭く仕草もいつも通り。「ホーンパイプ」の直前、盛り上がる観衆に静かに、と指示するデーヴィスさん。リーダーのブライアントさんのソロを聴いて、と。そのソロのアドリブが面白かったwヴァイオリンのコミカルなソロの後、フルートのソロに受け渡されますが、フルートのコックスさんはあくまで通常のメロディーを演奏する。でもまたブライアントさんに戻ってきて、ヴァイオリンでちょっと違うメロディーを演奏する…楽しいwコックスさんの隣の向井さんが、笑いをこらえているようにも見えましたw離れてたら笑ってるねこれ。今年は先ほどの第一次大戦時の流行歌メドレーで各野外会場を結んだので、こちらでの野外会場民謡メドレーはなし。でも、「ホーム・スウィート・ホーム」が戻ってきました。オーボエのソロが沁みます。オーボエさん、心なしか目が潤んでいるように見えます…。「見よ、勇者は帰る」の後はお待ちかねの「ルール・ブリタニア」。フィンリーさんは特に仮装などはしていませんが、何か隠してる…。お腹に巻き付けていたユニオンジャック…と思ったら、裏返したらフィンリーさんの祖国のカナダ国旗!2つの旗は縫い合わせてあって、最後は2つ一緒に平和的に振りながら歌う。会場では皆それぞれの国の国旗を振っている。出演者だって国旗を振りたいですよねw歌は伸び伸びとした堂々とした「ルール・ブリタニア」でした。
 続けて、「威風堂々第1番」。「ルール・ブリタニア」もですが、一緒に歌っちゃいます。

 この後で、指揮者スピーチ…出演者コールと、寄付金総額発表をカットしましたね…。2014年も寄付金総額発表とスピーチの一部をカット。BBC Radio3では英語の音声だけで、わからないところも多い。それをわかるための日本語訳付きの放送なのだから、カットしないでくださいよ…NHKか?BBCの元映像そのものがカットされてたのか…?
 デーヴィスさんのスピーチがとてもよかったです。一部引用します。
今夜 私たちがここに集った理由は 聴き手も出演者も心から信じているからです
音楽はただの娯楽ではなく 世の中を豊かにする力を持つ と
人は音楽に笑い 泣き 心を寄せ合います
あらゆる事が境界線に支配されたこの世の中で 音楽は人々を元気づけ 癒し 希望を与えてくれます
美しさと精神的な強さの下に 私たちを1つにしてくれます
今夜だけでもホールや野外会場をはじめ 世界中の人々が1つになりました

創始者のウッドがプロムスで目指したのは "誰にでも親しめるクラシック音楽祭"でした
その貴重な遺産は今も引き継がれ プロムスは音楽の力で 人々の心を豊かにしています
 このラストナイトだけでも、笑い、目頭が熱くなり、様々な音楽に魅了され、いいなと思えました。最初にラストナイトを見た時から、イギリスの愛国精神の強さが全面に押し出されているのに、どこか「世界はひとつ」という感覚を覚えています。振られている国旗が世界各国のものであるのもあるし、演奏される作品も様々な国の音楽。「音楽はただの娯楽ではなく 世の中を豊かにする力を持つ」からこそ、そう感じるのだと思います。さすがベテランのスピーチです。

 最後、「エルサレム」「イギリス国家(God Save the Queen)」「Auld Lang Syne」この3曲で、毎年また涙腺が緩くなる…。「Auld Lang Syne」、またしても「蛍の光」と訳されてた。日本語歌詞の「蛍の光」と「Auld Lang Syne」は別物でしょう。だから「マッサン」でやってたじゃないですかNHK!以前の「昔なじみ」の訳の方がいいと思う…。

 最後、今年のプロムスのダイジェスト映像が流れました。ああ、これがあのプロムで…思い出します。途中でスタッフクレジットが入ってしまいましたが…。この映像、以前に公式サイトとYouTubeにアップされているものと微妙に違います。
BBC Proms: The 2018 Proms season in a thrilling 4 minutes
 ↑ページに飛ぶと自動的に動画が始まるので注意してください
◇YouTube:BBC Proms 2018 in 4 minutes
 Relaxed Prom(小さなお子さんやさまざまな障碍などを持っていても楽しめる演奏会)、室内楽のあたりが追加されています。見比べてみてください。

 その他、細か過ぎる気づいたところを。
・デーヴィスさんは元オルガン奏者だったんですね。その後指揮でプロムスに。
・コーラスに、いつもターバンを巻いている男性がいらっしゃるのですが、今年はターバンを巻いていません。どうしたんだろう。
・イスラエルのご出身なのか、合唱団にイスラエル国旗のデザインのタイの人がいた。
・スタンフォード「青い鳥」で、天井からぶら下がっている円形のもの(マッシュルーム)も青色に。きれい。
・第2部、デコレーションされた指揮台に、ねこのぬいぐるみが。デーヴィスさん、なでてたw
・第2部では例年通り、トランペットセクションはお揃いのユニオンジャックカラーのタイです。
・バルコニー席からの映像がいい。アングルがいい。
・今年はアリーナに大きな日の丸を振っている人がいない。でも、客席に日の丸の小旗とスペイン国旗を一緒に振っている人がいた。
・「イギリスの海の歌による幻想曲」の前、クラッカーの音にびっくりするデーヴィスさんw
・誰かわからないのですが、顔写真のお面を被ったプロマーさん…ちょっと怖いw
・「トム・ボウリング」では今年はボックスティッシュを回して涙を拭き合います。鼻もかみます。
・「威風堂々第1番」で、トロンボーンの若い男性楽団員さんが、ユニオンジャックの小旗で触角!!?カチューシャみたいなものをつけていたwオモシロイことしているんだから、カメラさんもっと撮ってあげてよ(違う?w
・デーヴィスさんが指揮者スピーチで話していた「マーガレット」さん…奥さん?照れくさそうにしていましたw
・「来なきゃ損するよ」…行きたい…。ラジオで聴きます…。
・毎年、気になっている、「We ♥ BBC」の垂れ幕。ファーストナイトでは見ましたが、ラストナイトではなかった。来られなかった?
・ファゴットが2人とも女性というのが、女性の多いBBC響らしい。
・今年は昨年よりもEU旗が多かった。EU旗のデザインのベレー坊をかぶった人も。合唱団でも、EU旗デザインのタイをしている人が。EU旗をイメージさせるような青のタイも多かったな。
 来年のプロムスは、イギリスがEUから離脱した後。EUから離脱しても、プロムスはいつものプロムスで、盛り上がっていてほしい。

・9月の記事でも書いたのですが、その年のプロムス公式メモリアルブックを出してほしいです。毎年、公式ガイドブックは出るのに、その後出演者やプログラム変更が合って変わってしまう。演奏会の画像もネットにアップされるけど、検索しにくい。オリンピックなどのスポーツイベントが終わった後、写真集・記録集が出ますが、そんな感じでプロムスも本を出してほしい…。

 以上でした。また来年!
 その前に、年末年始、プロムスの再放送があると思います。大晦日(日本時間だと元日)にはラストナイト。イギリスで年が変わる直前に、「Auld Lang Syne」…紅白かw(プロムスが先だ ※放送予定が出ました。この記事の下へどうぞ。


【公式のまとめいろいろ】
All the biggest and best moments from the Last Night of the Proms
The Proms 2018 in 19 unmissable moments

【過去記事】
・2014年:こんなクラシックコンサート観たことない! 「Proms(プロムス)」ラストナイトコンサート2014
・2016年:一緒に音楽を楽しもう Proms(プロムス)2016 ラスト・ナイト・コンサート
・2017年:クラシック音楽の最前線で BBC Proms(プロムス) ラスト・ナイト 2017 まとめ

・3月のBBC響来日公演:これがプロムスオーケストラ! オラモ & BBC交響楽団 @仙台

◇ちょうど、BBC radio3で、3月の来日公演の名古屋公演(ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、マーラー:交響曲第5番)をオンデマンド配信中:BBC radio3 : Afternoon Concert : The BBC Symphony Orchestra on tour in Japan

BBC Proms : Proms Christmas repeats on BBC Radio 3※PDF注意
 年末年始の、プロムスの再放送が決まりました。日本からでも聴けます。オンデマンドもあります。
 再放送されるのは、バーンスタイン生誕100年を記念した「ウェスト・サイド・ストーリー」に「On The Town」、来日するダウスゴー指揮、スウェーデン室内管の「The Brandenburg Project」、キリル・ペトレンコ指揮ベルリンフィル、ネルソンス指揮ボストン響など。大晦日の年越し前(日本時間元日)にはラストナイトを再放送します。

by halca-kaukana057 | 2018-11-27 23:48 | 音楽

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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