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鳥類学者 無謀にも恐竜を語る

 NHKのラジオ「夏休み子ども科学電話相談」の、鳥の分野の先生としておなじみの川上和人先生。「はいどうもこんにちは川上でーす」の挨拶にはじまり、ユーモアを交えた軽快な口調で、鳥のことをわかりやすく教えてくれる先生です。その川上先生の本が話題になっているとのこと。まず、この本が文庫化されました。テーマは恐竜…?!川上先生が、恐竜をどう語るのか…?


鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
川上和人/新潮社、新潮文庫/2018(単行本は2013年、技術評論社)

 かつて、地球で繁栄を極めていた恐竜。その恐竜から進化したのが鳥。恐竜は絶滅してしまったが、鳥類は現在も地球上のありとあらゆるところに生息している。ならば、恐竜の末裔の鳥類から、恐竜がどんな生物だったのか推測することができるのでは?ということで、鳥類学者の川上先生が、鳥類の視点から恐竜を語ります。


 「はじめに」で、こう書いてあります。
この本は恐竜学に対する挑戦状ではない。身の程知らずのラブレターである。(8ページ)
 こうあるように、この本は川上先生の恐竜への愛に溢れている。恐竜の種類、分類にはじまり、恐竜の生態について、鳥類と比較、鳥類から推測している。

 思えば、恐竜がいたことを示すものは、化石しかない。もう絶滅してしまっていないのだから。いくら鳥類が末裔で、爬虫類が恐竜に近い類だとしても、やはり違う。化石には皮膚や内蔵、骨格のなかった箇所は残らない。羽毛があったという説がどんどん広まっているが、色はわからない。卵は出てくることは珍しい。証拠が少ないのだ。
鳴き声は?
何を食べていたか?
繁殖はどのようにしていたか?
巣はどんなものだったか?
群れか単独か?
夜行性か?
毒は持っていたのか?…などなど、化石に残らないことの方が多く、恐竜の生態を解き明かすのに重要なことばかりなのだ。そんな恐竜のわからない点を、鳥類から分析する。とても興味深かった。鳥類のことも、恐竜のことも学べる。現在、地球上には様々なタイプの鳥類がいる。ペンギンやダチョウのように飛ばない鳥もいる。大きさも、食べるものも、行動時間も範囲も様々だ。きっと、恐竜も鳥と同じように様々なタイプの恐竜がいたに違いない。ちょっとした骨格の特徴から、似た鳥類を挙げて生態を推測する。数少ない証拠。人間の行動心理から犯人の人物像を推理する探偵のようだ。

 この本の面白さはそこだけではない。川上先生の文章がとにかく面白い。ジョークやユーモア、古いネタを交え(ネタの説明の脚注もあるw)、文章のテンポがとてもいい。いつの間にか惹き込まれている。堅苦しくなく、軽快。ラジオでの語りをそのまま読んでいるようだ。恐竜にも鳥類にも詳しくなくても、ユーモアたっぷりの文章で、ニヤリとしながらイメージがしやすい。この本を、公共の場で読むのはちょっと危険かもしれない。ニヤニヤしたり、吹き出しそうになったりする。そのくらい面白い。

 鳥は恐竜から進化した、ということで、始祖鳥など、恐竜と鳥類の間にあった恐竜についてはじっくりと語られる。どのくらい飛べたのか。羽は今の鳥類と同じか、違うか。身体の特徴は?逆に、今の鳥類になるために何が必要か、という視点も面白い。
 そして、恐竜の最大の謎と言えば、絶滅してしまったこと。どのように絶滅への道を辿っていったのか。一方で鳥類はどのように生き延びたのか。恐竜と鳥類の間にあった「恐鳥」の仲間たちはどうなったのか。逆に、鳥類と哺乳類が絶滅したシュミレーションが面白い。

 今、生き延びている鳥類の図鑑より、恐竜の図鑑の方が多いという事実には驚いた。この本で、恐竜も好きだけど鳥類も好きだと思えた。恐竜と同じ時代に生きた鳥類についての研究も、まだこれかららしい。どちらも、様々な化石が発掘されて、研究が進むことを願ってやまない。

 文庫版の解説は、同じく「電話相談」で、恐竜担当の小林快次先生。川上先生と小林先生が一緒になると恐竜から鳥の話になったり、鳥から恐竜の話になったり、名コンビになっています。川上先生からの恐竜への「ラブレター」を受け取り、小林先生も絶賛。しかし…小林先生も本当に文章が面白い。

 川上先生の本と言えば、「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」(新潮社)。こちらも文庫化を楽しみにしています。来年あたり出るかなぁ?
by halca-kaukana057 | 2018-12-16 21:43 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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