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ピラミッド 最新科学で古代遺跡の謎を解く

 先日は恐竜の本ですが、今度はピラミッドの本。どちらも古の謎やミステリーに惹かれます。この本は単行本として出版(その時は別題)された時から気になっていました。

ピラミッド 最新科学で古代遺跡の謎を解く
河江 肖剰(ゆきのり)/新潮社、新潮文庫/2018
(単行本は2015、新潮社「ピラミッド・タウンを発掘する」)


 河江先生はピラミッド研究の第一人者・マーク・レーナー博士の元で学び、現在もピラミッド周辺にあった労働者達の住まいのあった地区「ピラミッド・タウン」を発掘している。NHKスペシャルや、「世界ふしぎ発見!」にも出演し、研究結果を番組で取り上げたり、番組でユニークな試みをしている。
 以前、クフ王のピラミッドで、宇宙線を使った透視によってピラミッド内に未知の巨大な空間があるのではないか、というニュースがあった。また、この本では取り上げていないが、ツタンカーメン王墓でも未発掘の部屋があるのではないかと、同じように宇宙線を使った調査で推測された。最新科学を使えば、遺跡の未知の領域も調べられるのか!と驚いた。ツタンカーメン王墓のほうは、詳しい調査の結果ない可能性が高いという結果が出てしまったが、こういう話には惹かれてしまう。また、ピラミッドに登ったり、ドローンでピラミッドを撮影したのも面白かった。ピラミッドは本当に不思議な遺跡だと実感した。

 この本では、ピラミッドについて、ありとあらゆる方向から解説している。ピラミッドをどうやって作ったのか…これはかなり難しい問題。でも、ピラミッドの建設方法の様々な説や、石をどんな道具でどのように加工していたかは興味深い。
 そして、どんな人たちが働いていたのか。ピラミッドの建設に携わったのは、奴隷階級の人々だったという話もよくある。が、こんな体力を要る仕事をするためには、十分な食料と安定した生活を保障する方が、人々は熱心に仕事に打ち込むのではないか…。確かに、劣悪な労働環境では、逃げ出す人も少なくないだろうし、十分な力も出せない。ピラミッドの周辺から発掘された集落跡「ピラミッド・タウン」で人々がどのような生活をして、どんなものを食べていて、どのようにピラミッド建設に携わっていたかの予想が面白かった。河江先生の師匠のレーナー博士たちが発掘している「ピラミッド・タウン」には、ツタンカーメン王墓のような財宝やファラオのミイラはない。古代エジプト考古学はそんな「宝物」の発掘だけではない、一般市民がどのように生活していたのか、その痕跡を発掘することも重要。そこから出てきたものがたとえゴミだったとしても、重要な生活の痕跡。そこが面白いなと思った。食べていたパンの再現も興味深かった。

 河江先生の師匠のレーナー博士が、これまでどのようにして「ピラミッド・タウン」の発掘にたどり着いたかの章もある。これには驚いた。レーナー博士が古代エジプトに興味を持ったのは、アトランティス大陸などの超古代文明からというのだから。科学の進んだ超古代文明のアトランティスの末裔が、古代エジプト文明を築いたというのだ。レーナー博士は最初は、アトランティスの痕跡を見つけようとエジプトにやってきた。しかし、レーナー博士がエジプトで惹かれたのは、土器や石器の欠片など、人々が生活した痕跡だった。そこで博士は180度転換して、厳格な実証主義の考古学者になったという。
 エジプト考古学者の父とも呼ばれる、フリンダーズ・ピートリー(ピートリ)も、最初は超古代文明的なピラミッドの存在に惹かれてエジプトにやってきた。が、ピートリーもピラミッドを丹念に測量するうち、実証主義に移っていったというから面白い。今まで、ピートリーがどのようにしてエジプト考古学の道を進んだのか知らなかったので、こちらも驚いた。古代エジプトの遺跡の実物は、想像するもの以上のものだったということなのだろうか。

 ピラミッドというとまず、クフ王、カフラー王、メンカウラー王の三大ピラミッド、その前の時代につくられた、ジェセル王などの階段ピラミッドが有名。その他にも様々なピラミッドがあり、ピラミッドが建設された場所もナイル川上流のスーダン北部まで広がっている。古代エジプトの王国の影響力の大きさを感じる。

 発掘を進める河江先生たちが、危機に晒された時があった。2010年に始まった「アラブの春」だ。エジプトを含め、中東は不安定な状態になる。発掘を進めたいが、身の安全が第一。当時の記録が生々しい。学術研究は、平和があってこそなのだと思う。


 発掘は進んでいる。発掘された遺構の分析、研究も進んでいる。とはいえ、わからないことは多い。壁画のヒエログリフを解読しても、様々な遺構を発掘しても、すべてがそのままその通りに出てくるわけではない。先日の「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」では、恐竜が栄えたのは6500万年よりも前。一方、古代エジプトで三大ピラミッドを建設していたのは約5000年前。恐竜の時代よりもずっと新しいのに、わからないことがこんなにあるのか…。過去を遡って研究することはいかに難しいのか実感しました。100年前のことでさえ、曖昧になっていたり、間違って伝えられていたりするのだから。人間の悲しい側面なのだろうか。どちらにしろ、わからないことがたくさんあるから、研究が面白い。そんな研究の一部をこうやって本で読んで学べるのもありがたいことだ。
by halca-kaukana057 | 2018-12-20 22:04 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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