人気ブログランキング |

山本周五郎 探偵小説全集2 シャーロック・ホームズ異聞

 久々に山本周五郎を。この本の存在を知った時、かなり驚きました。


山本周五郎探偵小説全集 第二巻 シャーロック・ホームズ異聞
山本周五郎/末國善己:編/作品社/2007

 山本周五郎の探偵小説を集めたこの全集。第2巻は、山本周五郎による「シャーロック・ホームズ」のパスティーシュ/パロディを筆頭に、「猫目石殺人事件」、「怪人呉博士」、「出来ていた青」、「失恋第五番」、「失恋第六番」を収録。
 山本周五郎の探偵小説・推理小説というと、「寝ぼけ署長」。以前読みました。この他にもたくさん発表していたんですね。しかも、山本周五郎が「シャーロック・ホームズ」のパスティーシュを書いていたとは!山本周五郎のホームズ…どんな感じなんだろう?と思って読みました。

 東京。浮浪児の凡太郎は夜になるとどこかの建物にもぐりこんで寝る。深夜1時。空き家のお屋敷に明かりがついている。おかしいと思って見ていると、女性の悲鳴が聞こえる。屋敷に入ると、女性が倒れていた。凡太郎は警察へ向かう。
 翌朝、帝国ホテルに警視庁刑事課長の村田が、一人のイギリス人紳士に会いにやって来る。3週間ほど前から滞在しているイギリス人、ウィリアム・ペンドルトン。ペンドルトンの部屋にやってきた村田は、奇怪な殺人事件が起こったと告げる。「シャーロック・ホームズさん」と…。
 ホームズがある目的のために、正体を隠して日本にやってきていたが、第一発見者の凡太郎と共にこの殺人事件の捜査に加わることになる。凡太郎は現場であるものを見つけて持っていた。これが、ただの殺人事件では無く、さらなる謎を呼ぶことになる。

 今も世界中でパスティーシュや解説本が出版されたり、映像化され続けている「シャーロック・ホームズ」。山本周五郎も「ホームズ」を読んで、もし、日本に来たら…という物語を書いてみたかったのだろう。第1発見者の凡太郎が、ベイカー・ストリート・イレギュラーズ(ベイカー街遊撃隊)のウィギンズのようにホームズを手助けする。他にも、正典を意識(リスペクト)した要素があちらこちらに仕掛けられている。最初の殺人事件が、ホームズが日本にやってきた目的と重なり、大冒険が始まる。ホームズお得意の変装も勿論出てくる。「ホームズ」のエッセンスをこの作品で味わえる。少年雑誌に掲載されたとのこと。凡太郎とホームズの活躍は子どもの頃に読んだらワクワクしただろう(大人になっても)。ただ、残念なのが、ホームズものだけどワトスンが出てこない…寂しい。そして、最後。ホームズなら絶対にしないであろうあることを、ホームズがしてしまう。これはないだろう!と思いつつも、少年雑誌に掲載されたことと、山本周五郎らしいといえば周五郎らしいかも…と思ってしまう…。

 その他の作品も面白い。「猫目石殺人事件」は、日本のアルセーヌ・ルパンとも呼ばれる「侠盗」と、推理力に優れた新聞記者の春田三吉の闘いを描く。この作品も少年雑誌に掲載されたとあって、ワクワクするようなスピーディーな展開。探偵ではなく、刑事でもなく、新聞記者が活躍するというのも面白い。一方の「侠盗」も、いつの間にかいたり、消えたり、不思議な存在。新聞社の社長もいいキャラしてます。「寝ぼけ署長」の五道に雰囲気が似ている。
 「怪人呉博士」はミステリアス。一方の「出来ていた青」は大人向けの作品。殺されたマダムを取り巻く男性たちとの関係が大人向け。謎解きも凝っている。

 「失恋第五番」「失恋第六番」は、雰囲気がまた違う作品。タイトルに「失恋」なんてあるものだから、悲しいラブロマンスかと思いきや、闇の深い、男たちの闘いの物語。合成樹脂会社の社長の一人息子で、連絡課長、千田二郎は仕事は秘書に任せっきり。スポーツマンで女好き。様々な女性に恋をしては振られている。また、新しい女性に恋をして、デートに向かう途中、二郎は昔なじみの男たちに出会う。二郎も、彼らも戦中は海軍にいた。その男たちは二郎をある場所に連れて行くのだが…。

 横溝正史の「金田一」シリーズは、戦後まもなくの日本各地が舞台になっている。登場人物も戦地から引き揚げてきたり、戦争の色が濃く残っている。この周五郎の「失恋~」シリーズも、戦争の色が濃く残っている作品。戦争は終わったが、戦地で戦っていた元兵士たちの「戦争」は終わったわけではなかった。戦争は終わっても国は混乱し、暮らしは安定せず、「平和」は簡単にはやってこなかった。そんな時代の物語。昔なじみと共に、ある使命を帯びることになった二郎。戦争中の過去に向き合い、未来の日本のために使命を果たそうとする。暗く、かなしく、重い。第五番はスリリングで、第六番はじっくりと心理戦。この「失恋~」シリーズが気に入りました。この続きも書かれる予定だったが、何らかの理由でなくなってしまったらしい。とても残念だ。

 山本周五郎のまた違った一面を楽しめる1冊でした。この「探偵小説全集」、こうなったら全巻読もうか…?
・過去記事:寝ぼけ署長

↓「山本周五郎」と「シャーロック・ホームズ」タグが並んでる…!
by halca-kaukana057 | 2019-01-18 21:50 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31