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ハリネズミの願い

 書店で、本屋大賞翻訳部門と紹介されていて、気になって読みました。翻訳部門もあるんだ。


ハリネスミの願い
トーン・テレヘン:作、長山さき:訳、祖敷大輔:絵 / 新潮社 /2016

 森に住むハリネズミは、自分のハリのことが大嫌い。他の動物たちとうまく付き合えずにいた。ハリネズミの家を訪れる動物は誰もいない。誰かを家に招待したら…と考えたハリネズミは、招待状の手紙を書いた。が、誰にも出すことが出来ない。ハリネズミは、自分の家を訪れるかもしれない動物たちについて考え始めた…。

 トーン・テレヘンさんはオランダ人で、医師であり詩人。娘さんのために、動物たちの物語を書き始めた。子どもも親しんで読める動物たちのお話ですが、深いです。

 ハリネズミは自分はハリを持っているから皆が怖がって近寄ってこないと思っている。ハリをコンプレックスと思っている。動物たちと仲良くできたら…と思っているが、招待状を出すという行動に移せない。招待状を書いても、「だれも来なくてもだいじょうぶです」なんて書いてしまう。そして、あの動物はこんな風に断ってくるだろう、あの動物がやってきたらこんなことを言うだろう…というネガティヴな憶測がどんどん膨らんでいく。ハリネズミの家を訪れる動物たちについて語られているが、彼らは実際にはハリネズミの家にやって来ていない。あくまで憶測、ハリネズミ自身の心配。その過度の心配をするハリネズミを、考え過ぎなんじゃないかと思いながら読んでいた。認知行動療法について学んだことがあるが、これは「根拠のない推論」じゃないか、これは「一般化のし過ぎ」なんじゃないかという視点でも読んでいた。ハリネズミは考え方のクセが相当強いな…と。

 でも、ハリネズミの気持ちはよくわかる。私も同じように思ったことが何度もあるからだ。誰かと仲良くなりたい。友達がほしい。友達ができて、その友達と遊びに行ったり、ゆっくり話をしたい。でも、遊びに誘ったら断られないだろうか。忙しくないだろうか。迷惑をかけていないだろうか。邪魔なことをしていないだろうか。やっぱり遊びに誘うのはやめよう…。こんなことがよくあった。他の人は、気軽に誘って、誘いを受けて遊びに行っている。自分はできない、情けない、と何度も思った。

 ハリネズミは、誰かに家に遊びに来てほしいと思うが、そのやってきた動物たちがハリネズミの望まない言動をするんじゃないかと気に病んでいる。そんな誰かが来るのを怖がり、家に引きこもって、ベッドの下に隠れるか、毛布をかぶってしまう。相手とどう付き合ったらいいかわからない。でも、無理もない。ハリネズミ自身、他の動物との接触を避けている。ハリネズミの自業自得だろうか。ハリというどうしようもできないコンプレックスに、どう向き合ったらいいかわからないハリネズミ。そんな「ハリ」のようなものを、誰しも抱えているのではないだろうか。

 ハリネズミの「ハリ」は、言葉とも考えられる。言葉は相手を思いやることもできるが、簡単に傷つけることもできる。ハリネズミの「ハリ」がいつでも相手を傷つけるわけではない。「ハリ」を相手に刺さないように扱うことも出来るはずだ。言葉も同じように。ハリネズミは、様々な動物たちの言動に困ってしまっている想像をしている。相手の言動で傷ついたなら、それを相手を傷つけないように言葉で話すことも出来るはずだ。でも、気弱なハリネズミはそれができない。この気弱な部分もよくわかる。

 14章、15章で、ハリネズミは「孤独」について考える。もし優しい誰かが来ても、「孤独」はそこに存在するだろう…。自分自身がいるから、「孤独」ではないんじゃないの…?この箇所が深くて、お気に入りです。21章のハリたちの話や、23章の自分の家の話も好きだ。ひとりでいれば傷つかない。ひとりでいれば一番いい。はず。でも、ハリネズミは誰かが家にやってくることを考える。ひとりでいること、誰かといること、「孤独」とは…。普段考えずにいることだけど、頭の片隅にはいつもある、何かのきっかけでそのことについて考えることになること。それを思い出させてくれる。考え過ぎると危険だけど、避けては通れないことだ。

 そんなハリネズミの堂々巡りを断ち切る出来事が起きる。甘いはちみつとあたたかい紅茶が似合う。最後の章が印象的だ。やっぱりハリネズミのネガティヴな憶測はまだ続いている。でもひとつだけ変わったことが起きる。心があたたまります。

 続編の物語も出ていて、読んでいます。


by halca-kaukana057 | 2019-02-24 22:25 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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