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宇宙と人間 七つのなぞ

 物理学者の湯川秀樹博士の本は、色々と出ています。その中からこの本を。


宇宙と人間 七つのなぞ
湯川秀樹 / 河出書房新社、河出文庫/2014年

 この本は元々、1974年、「ちくま少年図書館」の中の1冊として刊行された。少年向けの科学の本なので、文章は講義を受けているような語り口調で親しみやすい。しかし、内容はちょっと難しめのところもあるかも。じっくり読んで、理解したいと思う本です。

 この本で語られる「七つのなぞ」とは、「宇宙のなぞ」、「素粒子のなぞ」、「生命のなぞ」、「知覚のなぞ」、「ことばのなぞ」、「数と図形のなぞ」、「感情のなぞ」。宇宙や素粒子、数学は湯川博士の専門だが、知覚、ことばや感情については執筆に苦労したそうだ。

 先日読んだ「宇宙に命はあるのか」(小野雅裕)は、ひとつのテーマを根底にして、宇宙開発や宇宙探査の歴史と現在、未来、何を目指しているのかを総合的に語った本だった。この湯川博士の本も、科学を総合的に語った本。その科学は、どんなに高度なものであっても、元々は私たちの身の回りにあるものから発展していった、というのが面白い。遠くの宇宙も、目に見えない素粒子も、難しい数学も、身の回りにあるものを観察し、調べることで発展していった。高度な科学を研究しようと思ったら、まずは身の回りに興味を持つことが大事なのだなと感じた。

 ことばについては、湯川博士がお孫さんの成長を「観察」した結果が書かれている。この本のために「観察」しようとしたわけではないが、一緒に遊んでいるうちにどのようにことばを理解し覚えていくのか、お孫さんの例が書かれている。言語学もやはり身の回りから発展していくのか。人間が学問を発展させていった過程もわかるようで面白い。

 科学は現実にあるものを観察、証明していくものだと思っていたが、「ノン・フィクション」の科学もある。数学の素数や複素数は「ノン・フィクション」だが、量子力学には必要なこと。湯川博士の時代ではまだ予測の段階のものもある。予測だけれども、それがないと現実の科学法則が成り立たない。確かに、科学には「ノン・フィクション」が存在する。これも面白いと思った。現代で言うなら、ダークマターもそのひとつ。重力波やヒッグス粒子も「ノン・フィクション」だったが、現実にあると観測された。湯川博士がもしまだ生きていたなら、興奮していただろう。

 知覚、感情の章で、博士はこう述べている。
私はいつも言うのですけれども、学校で習うこと、あるいは教科書に書いてあること、参考書に書いてあることはだいじに違いないけれども、それを覚え、また理解したら、それでいいと思うのは、たいへんな錯覚です。学校や書物で習うことを覚え、理解する、その根底には膨大な別の情報の獲得と記憶があるということを無視してはならない。目なら目を通じて、あるいは耳を通してはいってくるものもあるし、そのほかの感覚器官を通ってはいってくるものもある。そういう仕方で得たたくさんの情報を知らぬ間に自分で整理したり、覚えたりしているということが、意識的に勉強することと平行している。それは学校では直接には習わないことですが、それは学校で習うことと同じくらい重要だと思うのです。(211ページ)
 普段何気なく生活していることこそが、学ぶことに繋がっている。それをおろそかにしないでほしい。意識してほしい。そんな博士のメッセージは、とても重要だと思う。

 身の回りは、たくさんの謎に繋がっている。そう思うと、この世界は面白いなと思います。

 ちなみに、この本の冒頭で、神話の宇宙観のひとつとして、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の宇宙創世の箇所が引用されています。大気の娘・イルマタルが世界を生み出す箇所。シベリウスは、この箇所をソプラノ独唱とオーケストラのために「ルオンノタール」として作曲したあの箇所です。世界各地に創世神話はありますが、その中から「カレワラ」が取り上げられたのが嬉しかったです。

【過去記事:湯川博士の本】
旅人 ある物理学者の回想
目に見えないもの
by halca-kaukana057 | 2019-03-18 23:14 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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