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人間を想う建築 アルヴァ・アアルト展&講演会

 全国各地で開催してきた「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展。現在は青森県立美術館で開催しています。青森県立美術館とアアルト。2012年の「フィンランドのくらしとデザイン」展と同じように、青森県美と合うだろうなぁ。

青森県立美術館:アルヴァ・アアルト - もうひとつの自然 Alvar Aalto – Second Nature
 
 まず、連休中に早速行ってきました。連休は混雑するだろうなと思ったのですが、早く観たいなと思って。混雑していました。
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 今回の展覧会はアアルトの建築がメイン。アアルトの建築…パイミオ・サナトリウムやマイレア邸、フィンランディア・ホールなどなど、印象的な建築が出てきますが、私はこれまでアアルトといえばアルテックのスツールやアームチェア、サヴォイ・ベースなどのデザインの方をよく見てきました。このブログのアイコンは、「エンジェルウィング」の愛称で知られるフロアランプです。アアルト関連で、奥さんのアイノ・アアルトのイッタラのグラスも。でも、建築についてはそれほど知らない。今回の展覧会で、アアルトの建築の特徴や、何を大事にしてきたのかを知れたらいいなと思ったのですが…。

 混雑していてさーっと観てしまったせいもあり、よくわからなかった。「もうひとつの自然」とは何なのか。パイミオ・サナトリウムの病室も再現されていて、アアルトらしいデザインだなと思うのですが、何をもって「アアルトらしい」のか。それを見つけることができなかった。マイレア邸でも、アアルトは何を大事したのか。アアルトの代表的建築の図面ドローイングが観られたのは興味深かったのですが、やはりどう観たらいいかわからない。フィンランディアホール(フィンランド放送響、ヘルシンキフィルのかつての本拠地。その頃の演奏会動画を観ると、ホールの美しさにも惹かれます)の模型と内部の写真にはテンションが上がりましたが…ちょっと少ない。ラハティの教会(昔、ラハティ響が本拠地にしていた)は?作曲家コッコネンの自邸は?観たいと思っていた建築がなくて残念な気持ちにもなりました。
 あと、今回の展覧会では、青森県美の特別展示室のうち1部屋を使っていない。物足りないと感じました。

 今回の展覧会で、何を言いたいのか。何を見せたいのか。どう観たらいいのか。アアルトの建築とは何なのか。このままわからないままにしておくわけにはいかない。その手がかりになれば、と、この講演会を拝聴してきました。

青森県立美術館ブログ:5/11入場無料 小泉隆氏講演会「フィンランドの風土とアアルト建築の光」

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 アアルト建築の専門家の、九州産業大学建築都市工学部・小泉隆教授の講演会です。講演会の内容は、東京ステーションギャラリーでの講演会と大体同じだそうですが、何箇所か青森バージョンに変えているそうです。

 フィンランドで、アアルト建築をめぐり、アアルト建築を研究した小泉先生。アアルトの建築は、フィンランドの自然に合わせている。フィンランドは夏でも太陽の南中高度がそんなに高くなく(52度)、フィンランドの人々は光に対する感覚が敏感。ちなみに、フィンランド(ヘルシンキ)の夏を除く日照時間や降雪日数などは青森のものと似ているとデータを提示されていました。雪景色も、東京や福岡だとフィンランドの冬、雪は…と紹介できるけど、青森ではそんな珍しいものではないですよね?、フィンランドで撮影した雪景色の写真も青森でもよくある風景ですよね?と仰っていました…。「北から目線」を気にしたのか先生…。
 アアルトの建築で鍵になるのが光の使い方。そして、徹底した機能主義。人間のためのもの。デザインは、その目的を達成するものでなければならない。パイミオ・サナトリウムは、患者さんが長い時間ベッドに横になっている。天井に光源を付けて、視線に入るのは不快。天井は目に優しく、なるべく暗くしないといけない。でも、病室は自然の光をたくさん取り入れられるように(でも眩しい西日はあまり入れたくない)。それを叶えるために出来たのがあの病室。実際の病室の写真を見て、なるほどと思いました。展覧会会場内に再現されている病室には窓がないので、窓からどう光が入るのかは分からないですが、ライト、人工の光源はどこにあるのかはわかるはず。ヴィープリの図書館は、本を読むのが目的。閲覧室の天井には自然の光を取り入れる窓「無数の太陽」がある。ただ天井に窓をつけているわけではなく、太陽の角度も計算している。また、集中して本を読めるように、外の景色をあまり見せないようにしている。その他にもアアルトの様々な建築の例を見ながら、アアルトがその建築での目的を達成するために、人間のためを思った光の使い方を見ていきました。マイレア邸は、森の中に溶け込むように、森の光を取り入れるように作られている。玄関から外を見た時の森と建物の調和に、落ち着きを感じました。人工の光でも、キャンドルと電気の照明でも光の使い方を工夫している。

 アアルトは、自身の建築や建築についての考え方をあまり語ることがなく、「あまり語らない建築家」とも呼ばれた(無口で内向的なフィンランド人らしい)。数少ない残された言葉からは、機能や人間のことを常に考えていたことが伺える。
 アアルトの建築には普遍的なものがある。アアルトの言葉から引用します。
 建築家の仕事は、調和を生み出し、未来から過去までの糸をひとつにつなぎ合わせることに向けられている。
その根本に存在するのは、無数の感情の糸を持つ人間と、人間を含めた自然である。(1940年)

 とても面白く、わかりやすい講演会でした。アアルトが建築に何を求めていたのか、手がかりがつかめました。もう一度展覧会をゆっくりと観て、アアルト建築の魅力を感じられたらと思います。

 今回、アアルト展に合わせて、青森県美の中もアアルトデザインを感じられる演出をしていました。
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 エントランスには、アルテックの製品が並べられ、自由に座れます。撮影もOK.スツールはミナ・ペルホネンの皆川明さんとコラボ。可愛いです。

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 青森県美といえばアレコホール。そのアレコホールの椅子も、スツール60になっています。ゆっくり座って、シャガール「アレコ」背景画を楽しめます。青森県美には全4幕のうち3幕がありますが、第3幕も今はあります。全4幕揃ってます。撮影もこの通りOK.シャガールとアアルト。不思議なコラボです。

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連休中に行った時は、青森は桜が満開でした。桜とあの真っ白な建築を。

※【追記】2回目行きました"自然"である建築、デザイン アルヴァ・アアルト展(その2)


【2012年 「フィンランドのくらしとデザイン」展 記事まとめ】アアルトに関する内容もあります
自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章
この土地で生きてゆくという意志の”design” 「フィンランドのくらしとデザイン展」を観て
”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編

by halca-kaukana057 | 2019-05-12 22:47 | フィンランド・Suomi/北欧

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