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ヴィンランド・サガ 22

 アニメ放送開始直前で新刊が出ました。アニメ開始前に感想を書いてしまおう。


ヴィンランド・サガ
幸村誠/講談社、アフタヌーンKC/2019


 ヨムスボルグでのヨーム戦士団とトルケル軍の戦いは続いていた。ヨムスボルグの要塞から逃げ出すために、パルドルを人質にとったフリをしていたトルフィン。そこにガルムがやってきてトルフィンを攻撃。矢に撃たれながらも、シグルドがパルドルを人質にとる。門の外では、味方のトルケル軍が迫ってきていた。逃げろと言うシグルドに、一緒にいたグズリーズは…。
 一方、一騎討ちになったトルフィンとガルム。ガルムの攻撃をかわし続けていたトルフィンだが、戦争をゲームだと言うガルムの言葉に、トルフィンは…。


 ヨムスボルグでの戦いもクライマックスです。まずシグやん。自らを犠牲にしてやるべきことをやろうと思ったが…グズリーズの"一発"が効きました。ここだけでなく、22巻ではちょうどいいところでグズリーズの"一発""一撃"が効きます。このグズリーズは戦士たちから見れば弱いですが、"強い"です。

 そしてトルフィンとガルムの一騎討ち。それは、ガルムとトルフィンの戦争に対する考え方の違いでもある。少年時代、多くの人を殺して、戦いのない世界を作りたい、戦いなぞ意味がないと考えるトルフィン。戦争は娯楽、ゲーム、遊び、楽しむもの。本当にトルケルと似た者、同じです。
戦争に意味とかいうなよ
命なんざぶつけ合って遊ぶ以外に使い道なんかねーんだから
(53ページ)
ガルムの言葉なのですが、ガルムにしてはシンプルで深いことを言うな…と。命を武器でぶつけ合って命そのものを賭けるのが戦争なら、トルフィンは命を武器ではない別のものでぶつけ合って、別のものに懸けることを考えているのかもしれません。11世紀、戦うことが美徳とされたヴァイキングの戦士たちには、その別のものは存在しない=意味がない…そういう社会だから仕方がない。それ以外のものを求めて、トルフィンたちはヴィンランドを目指しているのでありますが。
 この言葉の後、トルフィンが一変します。挑発的に、好戦的になります。自らを「上級者」、ガルムは「初心者くん」「お子様」とバカにする。武器なしで勝つと。どうしたトルフィン…と思いますが、答えはすぐにわかります。面白い。こんなトルフィンはあまり見たことがない(少年時代とも違う)ので、かっこいいなと思ってしまいました。

 それから、トルケル、バルドル、フローキ。トルケルは戦争を心底から楽しんでいます。もう何というか…ここまで突き抜けてくれると、逆に面白い。これが戦バカのトルケルだからいいんです。ガルムとトルケルは似た者と上述、これまでも書いてきましたが、雰囲気はちょっと違うかもしれない。トルケルはとにかく戦争が楽しくて仕方がない。ガルムも戦争が楽しくて仕方ないのは同じなのだが、青臭いところがあるというか…トルフィンが言っていた「初心者くん」「お子様」なのかもしれない。
 バルドル君は、ちょっと病んでます…。でもあのフローキの元で育てられたら、病んでしまうのも仕方がない。そしてトルケルとフローキがついに対面…と思ったら、何か出てきた。別の漫画を読んでいるのかと思ったwこんなの…いたのかな。トルケルにはいい相手です。

 そして、戦争は終わりへ…。158話冒頭の名もなき戦士2人のやりとりがいい。この戦争だけでなく、これまでの戦争でも、感じることはあったのだなと思います。トルフィンの取った言動は、まさにトルフィンのやり方。あのヨーム戦士団相手に。でも、トルフィンの立場、トルフィンの血統やクヌート王との繋がりがあったからこそ出来ることでもある。その後のバルドル君、いきいきしてます。

 160話では、「ヴィンランド・サガ」の原点に戻るシーンや言葉があってよかった。アニメ化のタイミングにちょうどいいと思う。
だーれも戦争と縁なんか切れねェよ
どこだろうと人間が3人いりゃア戦争にならァな
トルフィンよ お前の作る国…びんらんど?
そこでも戦争は起きるぜ
専門家のオレが言うんだ 間違いねェ
(174ページ)
トルフィンがヴィンランドで戦争のない国を作るという話を聞いたトルケルが言った言葉です。トルケルとガルムの違いはここなのかもしれない。どちらも戦争バカだけど、トルケルはこんな考えを持っている。戦争、とまではいかなくても、「どこだろうと人間が3人いりゃァ戦争にならァな」説得力がある。いじめ、陰口、仲間外れ、対立やケンカ、マウンティング…。このような人間関係のもつれで、命を奪う・失うことだってある。いじめられたら訴えるなり、別のコミュニティに逃げてもいい。対立やケンカをしても、話し合いで分かり合えることもある。でも、やはり人間関係で負った心の傷はなかなか癒えない。このトルケルの言葉をずっと覚えておきたいです。もちろん、今回の戦争やヨーム戦士団のこと、このトルケルの言葉を受けて、これからトルフィンがどうするのか。楽しみにしています。

 この160話で出た、グズリーズの"一発"。やっぱりグズリーズは強いです。でも、これでシグやんとトルフィンはどうなってしまうのか…いいところで23巻へ。

 その前にアニメです!7月8日、午前0時10分(関西地方は0時45分)から、NHK総合で放送です!初回は3話連続一気に放送します!NHK総合と聞いて、地方でも問題なく観られると安心しました。「プラネテス」もNHKでの放送でしたし、幸村先生の作品はNHK好みなのか。でも、この戦闘シーン、血だらけ残虐シーンばかり(しかもトルフィン少年時代は特に)の原作を公共放送でアニメ化できるんだろうか…深夜だし、手加減しないでやってほしいです。
 ちなみに、アマゾンプライムでも配信。海外からも観られるそうです。「ヴィンサガ」は海外のファンも多いとのこと。公式サイトも英語でも書いてあって、すごいなぁ。


◇アニメ公式:TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式サイト
◇NHK公式:NHKアニメワールド:ヴィンランド・サガ


 アニメ化のためか、幸村先生のインタビューも。
ライブドアニュース:漫画が読めるって、ありがたい奇跡! 幸村誠(『ヴィンランド・サガ』作者)が推さずにいられない、今最高に面白い漫画とは
 幸村先生が漫画への愛を熱く熱く語ります。漫画を読むのが大好きな幸村先生。イチオシの漫画は…?幸村先生のこの言葉がいいなと思いました。
漫画家に限らず、どんな人でも、それぞれ脳内に独自の世界が広がっているはず。その人だけの物語が眠っているはず。そして、それらはすべて絶対に面白い。そんな確信を僕は持っています。どんな人でも、です。

漫画家は、たまたま外にアウトプットする技術を身につけているので、頭の中の世界を形に残せます。けれど、多くの人は漫画家ではないですよね。ということは、形にならないまま失われていく素晴らしい物語が、この世にはものすごく多いんです…!

そう思うと、たまたま漫画を描ける人がいて、それを読むことができるなんて、ありがたい奇跡じゃないですか。だから、せっかく形になったのに知られないというのが、残念で仕方がないんですよね。


現代ビジネス:他人と自分を比べてつらくなったら?競争の激しい漫画家さんに聞いた
 幸村先生がとてもいい人すぎて…こんな方が描いているんだ…。幸村先生の漫画に出てくるキャラクターが、どんな人間でも憎めない理由がわかる気がします。漫画業界は競争社会。でも幸村先生は競争は嫌い。それでも漫画を描き続ける理由とは?自分と他者を比べて落ち込んだ時に読み返したいインタビューです。

ヴィンランド・サガ 21
by halca-kaukana057 | 2019-07-03 22:22 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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