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ヒトはなぜ宇宙に魅かれるのか 天からの文を読み解く

 国立天文台の縣先生の新刊です。


ヒトはなぜ宇宙に魅かれるのか ― 天からの文を読み解く
縣 秀彦/経済法令研究会、経法ビジネス新書/2019 


 宇宙・天文に関する様々な話題が増え、宇宙・天文に関心を持つ人が増えている。人類は古代から星空を見つめ、星、天体とは何なのか、宇宙とは何なのか、何があるのかと読み解こうとしてきた。20世紀になると人類は宇宙に行く手段、技術を得、無人・有人で宇宙を探査したり、宇宙空間を利用するようになった。21世紀になると、宇宙を舞台にしたビジネスも加速的に始まった。
 宇宙と人間の歴史と関わりについて、様々な視点から解説している本です。

 縣先生は国立天文台で広報やアウトリーチの活動を行っています。天文や科学を一般市民にもっと知ってもらう…というよりは、税金を使っているので「成果を還元していく」。この本では、人間が宇宙や天文、科学に対してどんなアプローチが出来るのか、様々な例を挙げています。宇宙は遠い彼方のことで、日常生活には直結しない。でも、宇宙や天文は「文化」にもなりつつあり、もっと身近にあるものなんだ。例えば、昨日は七夕(月遅れの8月7日、「伝統的七夕」もお忘れなく。新暦は邪道、というよりも、3回やってもいいじゃんと私は思います。ちなみに今年は伝統的七夕も8月7日)。他にも十五夜、十三夜もあり、日本には天文にちなんだ風習がある。流星群が見られるかもしれないとよくニュースで取り上げている。月が普段より大きいとか赤いとかというのでも話題になるし、日食、月食となればさらに話題になる。こんなに宇宙や天文が話題になりやすく、関心をもたれやすいのに、「宇宙は遠い」「身近じゃない」のだろうか…。どんどん身近になりつつあり、文化になっていっていると思う。

 私はこれまで、宇宙がもっと身近になればいいと思ってきた。このブログでも、何度も、「地上の延長線上に宇宙があって、その延長線がどんどん短くなればいい」と書いてきた。それは、主に宇宙開発でのことでした。地上とISSでの暮らしぶりだとか、意識的な距離感だとか。でも、天文でも同じことが言える。重力波やブラックホールは遠い存在のようで、原理は身近にある物理法則と変わらない。重力波やニュートリノは、私たちの身体に感じられない規模で通り過ぎ、すり抜けていっている。それが天文学的規模になると大発見になる。まだまだ分からない宇宙の成り立ちや構造の謎がひとつひとつ解き明かされれば、もっと宇宙は身近になるのではないだろうか。

 宇宙と天文の歩み、歴史、現在についての概論もあるので、宇宙の入門書にもおすすめです。ブラックホールの縁の観測までは載っていませんが、重力波観測など、新しい話題も多いです。
by halca-kaukana057 | 2019-07-08 21:52 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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