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月 人との豊かなかかわりの歴史

 アポロ月面着陸50年を記念して、私も月に関する本を色々と読んでいます(第1弾は先日の「ドリトル先生」月3部作新訳)。

月 人との豊かなかかわりの歴史
ベアント・ブルンナー:著、山川純子:訳/白水社/2013

 月に対して、人間は何を思ってきたのか。月のことをどう考えてきたのか。月の科学と、月の文化的な面での歴史について記した本です。

 私は時々、天文仲間さんたちと人通りのある街中の公園で望遠鏡を設置して、通りすがりの人々に向けて小さな観望会を開く。街頭やネオンがある街中なので、観る対象は主に月、木星や土星などの惑星など明るく目立って、インパクトのある天体だ。月は定番の対象だが結構人気がある。クレーターや暗い「海」を拡大した像を観たお客さんの反応に嬉しくなってしまう。「初めて望遠鏡で観た」「すごくボコボコしてる」「これが月!?」「ちょっとヤバい!」…。私も初めて望遠鏡で月を観たのは小学生だったが、図鑑で観た月がまさに目の前にあることにとても興奮した。月を望遠鏡で観ることには慣れたとは思うが、それでも月を観る度にわくわくする。普段、裸眼で観る月。望遠鏡で観る月。月齢や月の位置でも見え方が変わり、月が見えるだけで嬉しくなる。夕方の空に見える細い三日月だと尚更嬉しい。月食となればどう観測しようか考えて準備をしているだけでも楽しい。赤銅色の皆既月食の月にはとても惹かれる。私の個人的な月への想いを語ってみた。ここで止めておくが、語ろうと思えばもっと語れる。その位、月は魅力的な天体だ。

 人類が誕生して、月はその歴史にずっと寄り添ってきてくれたようにこの本を読むと思う。人類が月を観続けてきたのか。世界各地の神話や民話に登場し、太陽と同じように特別な存在と思ってきた。今は電気があるから夜も明るいが、古の時代の夜の月明かりに、人間は安堵したのだろうか、それとも狂気(ルナティック、ルナシー、ルーニー、ムーニッシュ)を覚えるのか。月に関する文学や芸術、伝承の多さに驚く。

 天文学の発達により、月の姿が次第にわかるようになってきた。望遠鏡でクレーターや「海」を詳細に観測し、月面図が発表された。月の地形がわかってくると、また人類は月はどんな世界なのだろうかと想像する。月面図の地形は近くで見るとどうなっているのか。月に生命や人類はいるのか。月の起源についての記述もある。話はずれるが、ヒュー・ロフティングの「ドリトル先生」月3部作では、月は元々は地球の一部だったとある。これは「ジャイアント・インパクト説」であり、ロフティングが「ドリトル先生」シリーズを執筆した時にはまだこの仮説はなかった。ロフティングは一体…と思ったのが、19世紀から月は地球の一部だったという「分裂説」が存在していた。ロフティングはこの「分裂説」を用いたのかもしれない。
 ここで、ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」が出版される。「月世界旅行」と、実際のアポロ計画との一致の多さに驚いた。月へ行く物語は「月世界旅行」の前にも後にも存在したが、SF小説としての先駆けだった。そして、ヴェルヌは現実の科学にも影響を与え続けている。

 人類は月に関して、様々な想像をしてきたが、アポロ計画で実際に人類が月に向かうことになる。アポロ計画以前・以後についても書かれている。アポロ計画を人々がどう受け止めたか。アポロ計画はアメリカと旧ソ連の宇宙開発競争でもあった。この宇宙開発競争がなければ、人類はこんなに早く月に立っていなかったと思う…皮肉なものでもある。月に立っただけでなく、アポロ計画はたくさんの技術革新をもたらした。そして、人類にこのような考え方ももたらした。引用します。
 幽霊のような足取りで歩く宇宙飛行士の姿と金属的な声がゆらゆらとした映像で生中継されたとき、世界中に興奮の波が広がったことは、文化的記憶の一ページとなり、過ぎ去った世紀の忘れ形見となった。もっとも意義深く、心に刻み込まれたのは、カメラが地球へ向けられたときの映像だろう。このとき初めて、私たち惑星の全体というものがもはや抽象的概念ではなくなった。ついに、地球は個々の場所としてでなく、文脈のなかで認識されたのである。月への旅は、私たちがかつて感じたことのない、宇宙のなかで自分たちの特異性と私たちの住むオアシスの有限性を感じさせてくれた。人類はこの世界の外へ外へと飛び出していったものの、私たちの想像力はますます内側へと向かっていった。
(214~215ページ)
 アポロが月へ行き、世界各国の月探査機が月を調査し、月の科学的な姿は日に日に解明されつつある。でも、月を舞台にしたSF小説や月を題材にしたファンタジー、芸術作品はなくならない。お月見などの文化的慣習もなくならない。月にはウサギがいるという民話も、「竹取物語」のかぐや姫もなくならない。月を見て遠くに住む大切な誰かを想ったりする感情や、それを歌った歌などもなくならない。科学的な月の姿と、文化的な月の姿。それは対立するものではなく、人間の心のなかで共存している。これからも、月は人類の伴侶、相棒、友人…よき隣人であり続けるだろう。私はこれからも、月を様々な方向から観続けていたい。


by halca-kaukana057 | 2019-07-24 23:17 | 本・読書

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