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起終点駅(ターミナル)

 桜木紫乃さんの作品は初めて読みます。表題作の「起終点駅(ターミナル)」が映画化され、映画は観ていないのですが主題歌のMY LITTLE LOVER「ターミナル」がとても好きで、まずは原作を読んでみようと思ったのが読むきっかけ。ちなみにマイラバはデビュー当時から大好きです。


起終点駅(ターミナル)
桜木紫乃/小学館、小学館文庫/2015(単行本は2012)

 東京のデパートの化粧品売り場で働く真理子は、竹原基樹の納骨式のために函館にやって来た。1ヶ月前に納骨式に出席して欲しいと手紙を受け取った。式はロシア正教会で、参列者は真理子の他にいなかった。真理子と竹原は大手化粧品会社に勤めていて、竹原は幹部を約束された男だった。竹原は複数の女性と関係を持っていて、真理子もその一人だった。だが、急に母親の介護をすると仕事を辞め函館に行ってしまった。真理子はその納骨式の立会人で神父の角田吾朗に、函館に来てから死ぬまでの竹原のことを聞く…。
(「かたちないもの」)

 「かたちないもの」、「海鳥の行方」、「起終点駅(ターミナル)」、「スクラップ・ロード」、「たたかいにやぶれて咲けよ」、「潮風の家」、6編の短編集です。どれも北海道の町が舞台になっていて、もう一つ共通するのが登場人物は孤独、無縁の状態であること。暗く寂しい作品ばかりで、読んだ後やるせない気持ちになった。特に「スクラップ・ロード」は救いがない…。

 私はひとりでいるのは好きだ。だが、孤独にはなりたくないと思う。
 「無縁」であれば、家族がいない、もしくは連絡を取っていない、ほぼ縁が切れた状態。身寄りがない。
 「孤独」はどういう状態だろうなと考える。友人や恋人、心を許せる人がいない。自分のことを誰にも話せない、話し合える相手がいない。頼る人が誰もいない。ひとりぼっちでいることを寂しく、苦しく、辛く、望みがないと思っている。こう書いてみたが、とすると、この作品に出てくる登場人物たちは全く「孤独」ではないとも思える。誰かがそばにいて、少しの間だけでも一緒にいてくれる。その人が何者なのか、誰もよく知らなくても。過去に何があったとしても。ただ一緒にいるのではなくて、お互い孤独で、それをわかっていて距離を保っている。傷をなめ合うようなことはしない。目の前にいるその人として向き合う。どこまでも暗く寂しい物語だけれども、その個人を尊重するような関係があるのは救いだ。

 「海鳥の行方」「たたかいにやぶれて咲けよ」の主人公、新人新聞記者の里和がいい。男社会の新聞社で、新人で女性の里和は上司の圧力に耐え記事を書き続ける。里和には恋人がいたが、卒業後離れて暮らし、それぞれの仕事が過酷になるにつれて連絡も減っていった。恋人の苦しい状況に心を痛めつつも、記事を書き続ける。記者の郷和と、ひとりの人間としての里和。この違いに惹かれる。
 「潮風の家」も寂寥感に満ちた作品だが、人間の奥深さが伝わってくる。千鶴子とたみ子の2人は孤独で生きづらいはずだが、そんな素振りも見せない。「孤独」はその人自身が決めるのだろうか、と思う。

by halca-kaukana057 | 2019-11-19 22:52 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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