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ヴィンランド・サガ 23 +アニメも少し

 昨年の内に書いておきたかった感想。今年になってしまった…。


ヴィンランド・サガ 23
幸村誠/講談社、アフタヌーンコミックス/2019


 戦いは終わり、シグルドたちはアイスランドに帰ろうとしていた。シグルドの元にやって来たグズリーズ。トルフィンへの想いを口にしたものの、トルフィンの気持ちを確かめずに来たのだった。それを見抜いたシグルドは、トルフィンと話をしろ、気持ちを確かめろとグズリーズをトルフィンの方へ向かわせる。そして、そのまま出港したシグルド一行。グズリーズがどうなったかは聞かないまま…。
 アイスランドに着いたシグルドは、ある決心をしていた…。


 思えば、トルフィンたちはヴィンランドへの資金稼ぎのため、ギリシアへ向かっていたのでした。バルト海でヨーム戦士団のいざこざに巻き込まれて…それで、トルフィンもヨーム戦士団も過去を清算し、向かう方向に向かえたのですが…長かった。18巻辺りで、ヴィンランドどころかギリシアにすらたどり着けるのか不安になった…とこのブログには書いています。うん、今でも不安だ。

 23巻はシグやんがメイン。表紙のシグやんとハーフダン…怖い。まず、グズリーズとの結婚をどうするか。15巻・16巻で、結婚直後、シグルドを刺して逃げたグズリーズ。グズリーズはトルフィンの船に乗り、それをシグルドが追いかけ…てここまで来た。でも、この旅でグズリーズの本当の気持ちを知ってしまった。ハーフダン/シグルド親子の象徴は鎖。鎖で縛り付ける。一方のグズリーズはアジサシ。どこまでも飛んでいく。シグルドは、グズリーズを鎖で繋いでおけない。15巻の感想で、「強がりなワル」と書きましたが、それに加えて優しい。鎖はその優しさを隠すための武器。11世紀のノルドの男は、優しいと生きていけないから。

 アイスランドに帰ってきて、父・ハーフダンに別れの言葉を告げてそのまま去る…つもりだったが、ハーフダンはそう簡単に許しません。捕まってしまったシグルドたち。そのシグルドにとって鍵となるのが、「ハトちゃん」こと、幼なじみで第二夫人のハトルゲルドさん。美人で聡明。ユルヴァとは違う意味で強い。武器の鎖は持っていないけれど、心理的な鎖のようなものは持っています…。でも、素敵な人じゃないですか。

 164話がハイライト。父・ハーフダンとシグルドの親子喧嘩。ハーフダンは何故今までこんなに厳しくしてでも農場を広げようとしてきたか。アイスランドを豊かにするため。アイスランドの土地の限界に屈せず、アイスランドの人たちのためでした。アイスランドを豊かにするためには、もうひとつ、軍団を立ち上げて大陸でヴァイキング、略奪を行う。でも、シグルドはヨーム戦士団の戦いに巻き込まれ、戦い、海外の戦士たちがどんなに強いかを知っている。シグルドが語るアイスランドの"豊かさ"とは。これがよかった。トルフィンの幼少期、トールズがアーレたち村の若者を連れて戦に向かう際、村の若者のことを心配していた。村の若者(トルフィンも含む)は、ノルドの男として戦に憧れる。でも、現実は…。トールズはその現実を知っていたし、シグルドもその現実を知った。だからこそ言えた言葉。シグやんがトールズみたい?

 そして、トルフィンやグズリーズは…。ギリシアへの長旅を全部やるのは難しかったか…。レイフのおっちゃんも齢とったなぁ…。シグルドとハーフダンの時もでしたが、トルフィンに対しても驚きっぱなしのユルヴァの表情がw23巻のユルヴァがちょっと不憫です…w
 再びハーフダン。ハーフダンも変わりました。さあ、これからヴィンランド行きが本格化するのか。楽しみです。

 アニメのことを少し。
・この記事の続きの部分以降:「ヴィンランド・サガ」アニメで原点に立ち返る
面白かった!荒くれたトルフィンを観て、懐かしい…こんな頃もあったなぁと思ったり。トルフィンの俊敏な動き、トルケルの迫力を動くアニメで観られたのは嬉しかった。クヌートの変遷も、アニメだとまた伝わり方が違う。覚醒した後のクヌートはとても堂々としていて、アニメで映えました。そしてアシェラッド。後半は主人公は実質アシェラッドでした。トルフィンが全く出てこない回もありましたし。狡猾ではあるけれども、本当に賢い。アシェラッドの声を最初は軽いなと感じていたのですが、だんだん深い策略家にぴったりな声になってきて、声優さんはすごいなと思って観ていました。ラストはアシェラッドも辛いし、トルフィンも辛い。
 トルフィンはいつもアシェラッドを倒す、父上の敵を討つと言って、決闘も何度もしたけれども、実際にアシェラッドを倒したらどうするか。敵討ちをしたらどう生きたいのか。全く考えてなかったことがアニメではっきりとわかりました。トルフィンにとっては、目の前で父・トールズを殺されて、敵討ちすることだけを考えて生きてきた(その幼いトルフィンがアシェラッド兵団について行って、自分で剣の使い方を覚えていった過程が描かれたのはとてもよかった。)。若さゆえもある。アシェラッドとの性格の違いもある。だが、トルフィンは本当に何も考えてなかったんだなと。だからこそ、ラストのトルフィンの叫びが虚しい。
 2期を思わせるラストでしたが2期はいつになるんだろう。楽しみに待ってます。


 23巻には、読み切り「さようならが近いので」が収録されています。この読み切りをもう一度読みたかったんです。「プラネテス」終了後、幸村先生の次の作品が待ち遠しいなと思っていた頃、この読み切りがイブニングに掲載されました。新撰組を取り上げるとは、「プラネテス」とは大きく方向転換したなぁと思いつつ、沖田の言葉が印象的だと思っていました。
 久々に読み直して、177ページの沖田の言葉が、「ヴィンランド・サガ」に繋がっているなと感じました。
本当のトコさァ ただ殺し合いたいだけじゃないの?
 疑問を持った沖田。はっきりと言い切るトルケルやガルム。それを嫌悪していたアシェラッド。トルフィンは、どの位置だろう?
 ちなみに、絵は「プラネテス」に近い。ロックスミスを思い出します。ロックスミス、今でも大好きなキャラです。

【過去記事】
ヴィンランド・サガ 15 ←なんと、2014年だったよ!
ヴィンランド・サガ 16
ヴィンランド・サガ 17
ヴィンランド・サガ 18

ヴィンランド・サガ 22



by halca-kaukana057 | 2020-01-17 23:10 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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