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自然と物語のシベリウス オラモ&BBCSO レンミンカイネン組曲/春の歌/ベルシャザールの饗宴

 以前感想を書けたら、とこのブログに書いていたCDのことをようやく書こうと思います。積み本・積ん読もあるけど、積みCDもたくさんあるんだ…(ネットラジオのオンデマンド優先で聴いているので、CDは後回しになってしまっている…世界には聴きたい音楽がたくさんありすぎる!)。

シベリウス:レンミンカイネン組曲 / 春の歌 / ベルシャザールの饗宴 組曲
サカリ・オラモ:指揮、BBC交響楽団

 オラモさんとBBC響がシベリウスをリリースしてくれるのを待ってました。

 まず、「レンミンカイネン組曲」(4つの伝説)op.22.過去記事を遡ってみたら、好きな曲のはずなのに今まで詳しく書いたことがなかった。
 レンミンカイネン組曲は、その名の通りフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の、11章~15章レンミンカイネンの物語。レンミンカイネンがサーリの乙女(キュッリッキ こちらはピアノ曲になっている)に求婚、お互いに約束をして妻に迎えるがキュッリッキは約束を破ってしまう。怒ったレンミンカイネンはポホヨラに花嫁を探しに行き、ポホヨラの魔女の老婆から花嫁をやる条件に課題を出された。そのひとつがトゥオネラ(黄泉の国)川の白鳥を矢で射ること。トゥオネラに向かったレンミンカイネンだが、殺され身体は5つにバラバラにされてしまう。それを知ったレンミンカイネンの母は、息子の死体をかき集め、蘇らせる。レンミンカイネンは母に諭され故郷へ帰る。という物語…書いてみると波瀾万丈、怖い話だなと思う。レンミンカイネンも向こう見ずな性格…だけど「カレワラ」を読んでいると憎めない奴でもあるなと思う。フィンランドの人々にとって、レンミンカイネンはどんな存在なのだろう。でも国に古くから伝わる伝説の登場人物が完全無欠のヒーローの道徳的な話だったら、それも何か奇妙でもある。人間らしい面、人間を超えている面の両方があって、長い間伝えられてきたのだろう。(それをリョンロットがまとめた)

 この「レンミンカイネン組曲」は4つの曲からなっているが、現在演奏されているのは初演と曲順が違う。初演では「トゥオネラのレンミンカイネン」が先、その後シベリウスが最終的に改訂したものでは「トゥオネラの白鳥」の方が先になっている。今まで、「カレワラ」の物語の順番と違うじゃないかと思ってきたが違った。「トゥオネラの白鳥」に当たる章はなかった。「トゥオネラの白鳥」が先になるか後になるかで、描かれる情景が異なる。最近は初演と同じように「トゥオネラのレンミンカイネン」を先に演奏することも増え、このCDでは「トゥオネラのレンミンカイネン」が先。不気味なトゥオネラの様子、レンミンカイネンを狙う何者か、襲われ殺されるレンミンカイネン。その後の「トゥオネラの白鳥」は、レンミンカイネンが死んだ後、静かにトゥオネラ川にたたずむ白鳥が描かれる。これが逆だと「トゥオネラの白鳥」はレンミンカイネンが見ている白鳥とトゥオネラ川の情景になる。白鳥が何を意味しているのかが変わる。深い。

 ちなみに、「レンミンカイネン組曲」作曲の前に、シベリウスはオペラを書こうとしていた。「船の建造」というオペラだが、うまくいかず断念してしまう。オペラではないが、物語を描いたこの作品。シベリウスが音楽で物語を描きたかった気持ちが表れているのだろうか。

 このCDは聴いていて、音が自然だなと感じる。聴いていて心地いい。フィンランドの自然の中で描かれる神話が生き生きとしている。一昨年、オラモさんとBBC響の来日公演を聴いた時、朗らかで素直、ストレートな音を出しているなと感じたのですが、今回のCDを聴いてその演奏も思い出しました(来日公演はシベ5)。「レンミンカイネンと島の乙女たち」はまさにその朗らかさ。「トゥオネラのレンミンカイネン」の劇的な展開はアクセント強め。でも自然。トゥオネラの情景は暗くて不気味。「白鳥」のコールアングレは神秘的で美しいけど、この曲順からの物語の流れを思うとますます不気味。「レンミンカイネンの帰郷」は勇ましく、溌剌と。アクセントの付け方が全体的に面白いのですが、特に面白いのがティンパニ。それから弦も。スカッとします。これがレンミンカイネンの人物そのものの魅力なのかもしれない。

 「春の歌」op.16。元々は「即興曲」というタイトルだったのを曲そのものを改訂に改訂。冬から春を迎える静かな喜びを感じます。まだ春になりきっていない、雪が少し残っているぐらい、でも陽の光は春の明るさ、暖かさがあり、春が来たんだなとじんわりと思う頃。最初の改訂後、一度だけ「春の悲しみ」とタイトルがついたことがあるそうなのですが、長調なのにどこか暗さがあるのはそのせいだろうか。聴けば聴くほど好きになる曲です。

 「ベルシャザールの饗宴」op.51、大好きな作品です。第1曲「東洋の行進曲」、大好きです。これもシベリウス?と一瞬思ってしまう異国の雰囲気。ゆったりとした演奏で、堂々としている。第2曲「孤独」、第3曲「ノクターン」どちらも静かで、「孤独」のチェロ、「ノクターン」のフルートソロで感じられる暗さやさみしさが心地いい。第4曲「カドラの踊り」は可愛らしくもあり、神秘的でもあり。「ベルシャザール~」も自然で、物語を楽しめる。

 好きな曲ばかりのCDで気に入っています。

 オラモさんとBBC響というと、今シーズンの最後の演奏会で、シベリウス作品を2作演奏する予定でした。
BBC Symphony Orchestra : Cancelled: Sakari Oramo conducts Stravinsky, Sibelius and Elgar
 Cancelledの表示が悲しい。「スネフリード Snöfrid」と「火の起源」。「火の起源」は大好きだし、「スネフリード」はあまり演奏されない作品。イギリス初演の予定だったのに…。聴きたかった…。残念だ!
 あと、BBC響というとプロムスも気になるところですが、5月末に判断するそうです。毎年夏のお楽しみプロムス…どうなるんだろう…。
◇公式の現在の発表:BBC Proms : An update on the 2020 Proms

【過去関連記事】
これがプロムスオーケストラ! オラモ & BBC交響楽団 @仙台
 2018年のBBC響来日公演感想レポ

タグ:Proms
 BBC響といえばBBCプロムス。このブログのBBCプロムスに関する記事がまとまっています。毎年の私選公演(プロム)リスト、ラストナイト感想他。今年も公式パンフレットを読みながら聴きたいプロムをチェックしたり、ネット配信で聴きたいですが…。ラストナイトで盛り上がりたい…けど……。5月末の最終判断を待ちます。
 公式パンフレットは日本のアマゾンで予約受付中です。
BBC Proms 2020: Festival Guide (BBC Proms Guides)
by halca-kaukana057 | 2020-04-24 23:00 | 音楽

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