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密着取材・地球帰還までの2195日 ドキュメント「はやぶさ2」の大冒険

 明日5月9日は初代「はやぶさ」打ち上げの日。2003年、18年も経ちました。…18年も、なのか、まだ18年なのか。18年を前に、「はやぶさ2」本の感想を。

・「はやぶさ2」本1冊目:津田プロマネの本:はやぶさ2 最強ミッションの真実


密着取材・地球帰還までの2195日 ドキュメント「はやぶさ2」の大冒険
NHK小惑星リュウグウ着陸取材班/講談社/2020

 「はやぶさ2」のカプセルが帰還した直後に出版された本です。カプセルの火球、回収されたカプセルの画像もあります。

 NHKスペシャル等で「はやぶさ2」を何度か取り上げていたので、その取材から生まれた本だと思います。以前読んだプロジェクトマネージャーの津田先生の本はプロマネの立場、プロジェクトチームのメンバーの視点。こちらは外部の視点。初代も「はやぶさ2」も様々な本が出ていますが、視点が違うと同じ探査機を扱っている本でも内容が違ってくる。「はやぶさ」シリーズはここが恵まれているなと思う。他の探査機・人工衛星・宇宙プロジェクトも視点を変えた複数の本が出て欲しいところ。

 予想とは全く異なる地形のリュウグウのどこに、どう着陸したらいいのか。悩み、データを詳細に分析し、タッチダウンの訓練を続ける。運用チームや管制室の緊張感がよく伝わってくる本です。打ち上げ、リュウグウに到着するまで、2回のタッチダウン…とミッションが続いていきますが、どこでどんなことが起こったのか、流れがわかりやすく書かれています。プロジェクトチームのメンバーや、支えている人たち、関わっている人たちなどについてもわかりやすい。初代についても書いてあります。「はやぶさ2」について詳しく知るのは初めての方におすすめできる本です。
 
 「はやぶさ2」は順調だった、トラブルもなく安定してミッションを完遂し、カプセルは地球に無事に帰還した…なんてもう言いません。「はやぶさ2」は「はやぶさ2」・リュウグウなりの苦労があった。初代のものとは違うけど、「はやぶさ2」だからこその困難と苦労があり、でもそれを乗り越えようと奮闘し続けていた。比べられるものじゃない。

 面白いと思ったのが第7章。「はやぶさ2の勝利を呼び寄せた3つの「方程式」」。「はやぶさ2」では、ミッションの成功のために初代から大きく変えたところがいくつかある。そこに焦点を当てている。
 津田先生の本でも書いてあったが、「はやぶさ2」プロジェクトの立ち上げ、機体の開発から打ち上げまでは短い期間しかなかった。初代が帰還して日本中が沸き、後継機への期待も高まった。初代が帰還するまで、2号機がどうなるか決定していなかった。帰還後に2号機の計画が立ち上がったが、専門家の間では批判的な意見もあった。JAXA内部でも危機感はあり、初代よりも難しいことをやろうとしているのに、成功に向けた体制になっていない。そこで、JAXAは批判的な意見を聞き、プロジェクトの問題点について話し合った。その結果、批判的意見を出していた研究者もプロジェクトチームに参加することになり、「はやぶさ2」プロジェクトが何を目指すのかをより明確にできた。
 もうひとつ、津田先生の本で、リュウグウにタッチダウンする訓練をするために、筑波の「こうのとり」運用チームの訓練を見学したという話が合ったが、その他にもISAS(宇宙科学研究所)、旧NASDA(筑波の宇宙開発事業団)、NAL(調布の航空宇宙技術研究所)の壁を取り払い、「はやぶさ2」チームにNASDAの職員を複数入れた。これは知らなかったので、かなり驚いた。JAXAに統合したとはいえ、ISASには独自の歴史があり文化がある。旧NASDAとは成り立ちも異なり、プロジェクトの進め方などのやり方も全く違う。私も相容れないものだと思っていた。それが、ISASか旧NASDAかではなく、「はやぶさ2のために」と集まった。先述した批判勢力も取り入れることも合わせて、「はやぶさ2」チームはとても柔軟で風通しがよかったのだなと思った。
 そして、「はやぶさ2」ではとにかく訓練をよくやった。失敗も多かった。訓練を重ねることで、どこまでならできるのか、どこからは難しいのかわかってきたという。だから、実施するかどうか揉めていた2度目のタッチダウンも決行すると決め、成功できたのだなと思う。

 最後には、ジャーナリストの池上彰さんと、青山学院大陸上部の原監督に「はやぶさ2」プロジェクトをどう見るか聞いてみたインタビューもあります。池上さんの「人事」と「共感」にはなるほどと思った。第7章も含め、このあたりはビジネスの参考にもなると思います。


 「はやぶさ2」本はまだまだあります。
by halca-kaukana057 | 2021-05-08 22:08 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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