空色勾玉


「空色勾玉」(荻原規子、徳間書店、1998)

 留衣さんに教えてもらった本。古代日本神話をベースに展開する「勾玉」シリーズ第1作。以前からタイトルは聞いたことはあったがあらすじが良く分からず読まずにいたのですが、各国神話比較として読むことに。


 高光輝(たかひかるかぐ)の大御神と闇御津波(くらみつは)の大御神が天と地に分かれ憎み合うようになった時代、高光輝の大御神は闇御津波の大御神が生んだ豊葦原の八百万の神を一掃するべく、照日王(てるひのおおきみ)と月代王(つきしろのおおきみ)の2人の御子を地上に配し、戦わせていた。その高光輝を崇拝する羽柴の村に暮らす少女・狭也(さや)は、幼い頃火事で両親を失い、この羽柴の村に引き取られ育てられた。

 祭りの日、楽人として呼ばれた鳥彦という少年と仲間は、狭也が闇御津波の大御神に仕える「水の乙女」の継承者であることを告げる。物心ついてから高光輝を信仰し、月代王を慕ってきた彼女にとっては信じられない話だった。彼らは狭也に水の乙女の印である水色の勾玉を手渡し、その場を去る。その鳥彦たちと別れた後、泣いていた狭也を見つけたのは月代王だった。水の乙女で狭也の前世にあたる狭由良姫に恋した月代王は狭也を見て一目で狭由良姫の生まれ変わりであることに気づき、輝の御子に仕えるものとしてまほろばに来ないかと言う。村でも居場所がなく、闇の一族といわれても信じられない狭也は答えを求めて月代王について行くことにする。しかし、村娘だった狭也にはまほろばでの暮らしは窮屈で矛盾したものであり、次第に狭也は自分が闇の氏族の一人であることを自覚していく。そして、まほろばに忍び込んで大祓いのいけにえとして捕らえられてしまった鳥彦を助けるため、御所の中心へ忍び込んだ狭也は高光輝の御子の一人である稚羽矢(ちはや)に出会う。




 物語のスケールがとても大きく、まさに神話歴史もの。物語が大きくて上手くまとめられそうにもないのだが、光と闇の対立というファンタジックなテーマを柱に、狭也と稚羽矢のお互いへの想いと葛藤がドラマティック。しかも、普通のファンタジーなら「闇=悪」のはずなのにこの物語では少し違う。輝の一族は不老不死で変化することは無い。信仰するのは高光輝の大御神のみ。一方、闇の一族は死ぬがその後生まれ変わる。信仰するのは闇御津波の大御神は勿論だが、彼女が生んだ八百万の神も同じように信仰する。読んでいくとその違いがはっきりと見えてくる。何となく輝の一族は絶対的な存在の唯一神信仰で、闇の一族は多神教のような感じ。

 物語は「古事記」に基づいてはいるが、あとがきによれば必ずしもそうではないのだそうだ。確かに、高光輝の大御神はイザナギ、闇御津波の大御神はイザナミ、照日王・月代王・稚羽矢は、アマテラス・ツクヨミ・スサノヲを連想させるけれどもちょっと違う。神話そのものでないところが、また神秘的で魅力的だと感じる。

 狭也と出会った稚羽矢が外界を自分の足で歩くことで知り、お互い成長してゆく過程を楽しむもよし、狭也の恋物語として読むのもドキドキする。ジュニア向けなのにこんなに内容が豊かで面白い作品があったとは。続編の「白鳥異伝」「薄紅天女」も読む。
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by halca-kaukana057 | 2006-11-29 21:58 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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