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沈黙のフライバイ

 「ロケットガール」シリーズの野尻抱介のSF短編集が出ました。ロケガが気に入ったので読んでみる。

沈黙のフライバイ
野尻抱介/早川書房・ハヤカワ文庫/2007

 表題作の「沈黙のフライバイ」を含む5作を収録。どれも地球外の生命をテーマにした宇宙SF。ロケガと同じくライトノベル感覚でも読めますが、結構本格的なSFです。

 この作品集全体を通して思うことは、野尻さんの書く女の子は活き活きしていて良い、ということ。例えば、「沈黙のフライバイ」の弥生、「大風呂敷と蜘蛛の糸」の沙絵、「片道切符」の弘子。ロケガのガールズ3人と同じく、チャレンジ精神・好奇心は共に旺盛。機転もよく、悩みながらも目標への焦点は揺るがないたくましさ。読んでいると、彼女たちの動き・セリフがアニメとなって頭の中で動きはじめる。宇宙を夢見るロマンティストであるようで、現実問題に関しては冷静。奇抜なアイディアを出し周りをびっくりさせる一方で、理論の見通しは付いている。そんな個性を持つ彼女たちの活躍に心躍る。やっぱりSFは面白い。そう思わせてくれる。

 ここからは各作品個別感想。
○「沈黙のフライバイ」
 太陽系外の生命体による探査機が地球に向かっている。それを迎えるため動き出すJAXA。研究員の野嶋と弥生は奇抜なアイディアでその探査機を迎えることになる。SETIやボイジャー探査機に載せた異星人へのメッセージなど、地球人はありとあらゆる手段を使って宇宙のどこかにいるかもしれない生命体に自分たちの存在をアピールしてきた。しかし、異星人はどうだろうか…。そのメッセージをどう受け取るのだろうか。彼らが何者であるか、教えてくれるのだろうか。ラストでしんみりしてしまった。

○「轍の先にあるもの」
 読んで、これは野尻さん自身の体験記かと思ってしまった。NASAは2001年、NEARシューメーカー探査機を小惑星に落下させた。その探査機が送ってきたある画像から物語は始まる。現実と、未来が交錯してリアリティ倍増。野尻さんにとって、いつかこの物語が現実となれば良いなと思う。

○「片道切符」
 火星へ向かう2組の夫婦。彼らがある決断をする。弘子他2組の夫婦は皆威勢がいいのだが…哀しい気持ちになってしまった。

○「ゆりかごから墓場まで」
 太陽光を使い、植物のように光合成・分解をするスーツが開発されることで話が広がる。第二部日本編は「片道切符」と同じく哀しい気持ちになった。こういう場で閉鎖環境ってのは、ストイックすぎると感じる。第三部火星編もなかなか重い内容。でも、なんかスカッとする。

○「大風呂敷と蜘蛛の糸」
 大学生・沙絵が考えたとんでもないアイディアが宇宙へとつながってゆく。沙絵の思い切りの良い行動にどんどん引き込まれる。この中では一番好きな作品。

 それから、野尻さんはおやじキャラも良い味出していると思う。「沈黙の~」の野嶋、「大風呂敷~」の中喜多など。ロケガで言ったら那須田所長かな。短いけれども内容は濃いSFが読みたい方におすすめします。
by halca-kaukana057 | 2007-06-10 22:46 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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