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銀河のワールドカップ

 久々に川端裕人の作品を読みました。


銀河のワールドカップ
川端 裕人/集英社/2006

 若くして現役を引退し、ある理由で少年サッカーのコーチを辞めさせられてしまった元Jリーガー・花島勝。就職先も決まらないまま公園で酒を飲んでいた花島は、目の前の小学生が始めたミニサッカーゲームに見入ってしまう。そこでプレーしていた三つ子の少年たちのあまりに上手さに驚いてしまう花島。さらに、そのゲームをしていた少年たちの一人・翼から少年サッカーチームのコーチになってほしいと頼まれてしまう。翼は今のチームでサッカーを続けたいのだが、メンバーも足りず更に三つ子も前のコーチと合わずにサッカーを辞めてしまったのだそうだ。三つ子の虎太(こた)・竜持(りゅうじ)・凰壮(おうぞう)をなんとかチームに引き戻し、花島はコーチとして彼らとサッカーをすることになった。

 サッカーは好きなスポーツだ。でもドリブルもリフティングもロクに出来ないし自分でプレーしたことはないから、イマイチわからないことも多い。でも、この作品は面白い。三つ子の小学生とは思えないテクニック、花島の迫力のあるシュートにゾクゾクしてしまう。

 花島がコーチとなる少年サッカーチーム「桃山プレデター」のメンバーも個性的だ。恐ろしいテクニックを持つ三つ子、あまり上手くはないが試合の流れを読んで的確な指示を出す翼、足が速くすばしっこい攻撃が得意な少女・エリカ、ダイエットが目的でサッカーを始めただけだったが、だんだんサッカーの面白さに魅了されてゆく玲華。さらに中盤から登場する三つ子もライバル視する「おれ、ゴール決めるだけだから」が口癖のテクニシャン・青砥(あおと)、一度はサッカーを辞めてしまったが花島に出会って再開したGK・多義(たぎ)。8人制サッカーの大会での大暴れっぷりが爽快。そして花島。前のチームのコーチを辞めさせられた理由、サッカーにかける想い、そして得意技。子供たちと共に花島も成長してゆく過程が見える。

 昨年出版されたため、ワールドカップの話題も多い。プレデターの試合の前、少年少女たちの保護者たちがワールドカップでの日本代表の試合に関して雑談しているシーンがある。その雑談に対して花島が感じた憤りに「おお」と思ってしまった。サッカーは「観る」ものではなく「やる」もの。日本代表がどうのこうの…と言うよりも、自分でボールを蹴ればいいじゃないか。遠くのW杯よりも近くのボール。その花島の考えがこの作品では貫かれている。日本一よりも世界一、そして宇宙一(?!)を目指して勝ち上がってゆくプレデター。自分の足元にある一個のボールが、世界のファンタジスタの世界につながっている。

 そう言えば、川端さんの作品ってそういう雰囲気のものが多い気がする。「夏のロケット」も、「竜とわれらの時代」も。「川の名前」「てのひらの中の宇宙」なんてまさにそんな作品だと思う。自分たちの足元は必ず、広い世界につながっている。そしてその広い世界を目指す。決して手の届かないものではなく、果てしないことに変わりは無いのだけれども少しずつ近づいていける世界。そこにあるドキドキ感。それが川端さんの作品の面白さの要素のひとつなのかもしれない。

 この作品のキーポイントのひとつ「ブラインド・サッカー」、つまり視覚障害者サッカーは実際に見てみたい。音だけでどうやって走り、ボールを追いかけるのか。かなり難しそうだ。

 ラストの怒涛の展開もドキドキしっぱなし。サッカーってやっぱり面白い!ということで、明日のオシムジャパンのカメルーン戦、U-22ベトナム戦はこの作品のことを思い出しつつ観ることにします。やっぱり観るだけな自分が悲しい…。

 それから、読書感想文の課題図書になっているせいか、「てのひらの中の宇宙」で検索がかなり来るようになりました。サッカー部員、サッカー好きならこの作品もオススメしておきます。
by halca-kaukana057 | 2007-08-21 22:31 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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