人気ブログランキング | 話題のタグを見る

本屋の森のあかり 1

 「IS」目当てに「Kiss」を立ち読みしたら、この作品も気になって読んでしまった。面白かったので1巻を読んでみた。

本屋の森のあかり 1
磯谷 友紀/講談社・講談社コミックスキス/2007

 書店員の高野あかりは、愛知の小さな支店から東京の本店へ異動することになった。住み慣れた故郷を離れ、都会の巨大な本店へ。そこには本をこよなく愛する副店長・寺山をはじめ、あかりの同期で結果重視の加納、POPが得意な先輩・栞がいた。大きな書店の仕組みになかなか馴染めなず、加納にバカにされてばかりいるあかり。しかし、あかりはそこで本を通じて、さまざまな人に出会うのだが…。


 本好きが高じて、将来は図書館司書か書店員になりたいと思ったことがある。せめてバイトでも…と思ったが、その夢は叶わずにいる。そんな昔のことを考えながら読んでいると、やっぱり本屋はいいな、と思う。あかりはのんびりマイペースで妄想癖が激しい26歳。このあかりが私に良く似ていると感じる。そして共感する。大きな本屋に行けば「広い!すごい!」と見とれ、本に囲まれていれば幸せ。お人よしなところがあって、社会人として未熟者なところも。都会の厳しさにため息をつきながらも、本と人に囲まれて働くあかり。彼女のけなげさ、みずみずしさがすーっと心に入ってきた。

 本店の副店長・寺山は"超"読書家。一日中本を読みまくり、店のことも知り尽くしている。寺山の優しく穏やかな人間性に、あかりは夢中になる。にしかし、彼の世界は"本の世界"で完結していた。自分と、本しか存在しない世界。本は人間に通じてはいるが、生身の人間はいない。寺山に対して、そうあかりが主張するシーン(第4話:Book4)がたまらなく好きだ。
本の中に人間のことが書いてあっても
そこに人はいないんですよ
もっとこっちがわの人のことも見てくださいっ(148ページ)
作者の磯谷先生によると、この寺山の名前は寺山修二から取ったそうだが、修二の「書を捨てよ、町へ出よう」の言葉を思い出した。書は様々なことを教えてくれるし、素晴らしい楽しみとなる。しかし、生身の人間との関わりや、実際の体験は書の中にはない…。補うものにはなるが、経験そのものにはならない。人間の活動があるからこそ、本はそれを反映する。あかりの言動にハッとさせられた。

 各回にひとつの文学作品が設定されていて、その作品と共にエピソードが進むのも、本好きにとって嬉しいところ。また、書店員の苦労が読めるのもいい。仕入れ、仕分け、販売計画、陳列、POP書き、客のニーズに応えられる接客…。ただ好きなだけでやっていけるのか。今後のあかりがどう成長してゆくのか、楽しみです。あかりだけじゃなく、同期の加納も気になるところ。仕事はしっかりこなし、売り上げを伸ばす工夫も怠らない。しかし、態度がでかく、ドジってばかりのあかりをバカにする。そんな加納もあかりと出会って変わりつつある。加納の成長も楽しみです。

 磯谷先生にとって初めての単行本。作者の成長も楽しみです。ちなみに、寺山のファーストネームの由来に吹きました。…気が合うかも知れません。
by halca-kaukana057 | 2007-11-02 22:13 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31