すべては音楽から生まれる

 音楽関係の本を読んだのは、久しぶりかな?タイトルやら、シューベルトの副題やら、帯やら内容紹介やら…色々な点で惹かれて、買う予定も無いのに買ってしまった。

すべては音楽から生まれる 脳とシューベルト
茂木 健一郎/PHP研究所・PHP新書/2008


 茂木さんと言えば「クオリア」の考え方で有名。でも、私自身その「クオリア」が何なのか良く分からずにいた。脳科学において、脳の働きは数量化できる。しかし、数量化できないものがある。それが「クオリア」。「質」や「状態」を表すラテン語のことだ。数理や物理で表すことの出来ないものが、音楽にはあふれている。この本はそこから出発する。

 音楽(この本ではクラシック音楽を指す)を聴いていても、自分で演奏しても、音楽とは何なのか分からなくなることが良くある。何を目指しているのか、何のためなのか。聴けば聴くほど、演奏すれば演奏するほど分からなくなってしまうのだ。好きな曲は沢山あるし、私の演奏のレパートリーとなった曲、これから弾きたい曲も色々ある。自分で「こう演奏したい」と思っても、それがその曲の本質・真髄とは思わない。あくまで自分の解釈。自分自身が演奏する時だけでなく、コンサートやCDなどで誰かの演奏を聴いても、それはその演奏者の解釈になってしまう。作曲家の言葉が残っていても、それがすべてとは限らないかもしれない。そうやって分からないことばかりで頭は混乱しているのだけれども、ひとたび音楽に接すると「いいなぁ。いい曲だなぁ」と感じる。わからない、完全には理解できないけれども、そのよさを感じることが出来る音楽の不思議。そのよさとは「質感」でもあったのか。この本を読んで、ようやく納得できた。

 印象的なのが、ウィーンの楽友協会ホール(ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの会場となるあのホール)の立見席の話。その立見席は安いけれども、演奏している指揮者やオーケストラを見ることは出来ない。音しか聴こえてこない。でも、観客たちはじっと音だけに耳をすませている。生のオーケストラの演奏を、音だけ聴く機会はあまりないんじゃないかと思う。音だけしか聞こえないから、音だけに集中できる。音だけに集中して聴くこと自体、本当に難しいことだと思っている。すぐに他のことに気が散ってしまうから。音楽だけに集中して耳をすますこと、つまり音楽を「知ろう」とするまっすぐな姿勢。わからないけれども、「知ろう」としなくては近づけない。音楽に触れられない。これを忘れちゃいけないと、自分自身に対して思った。

 この本の副題にあるとおり、シューベルトの生き方と音楽についても触れられている。バッハやモーツァルトとシューベルトの違い。読んでいて、シューベルトの魅力にはそういうところもあったのかと再確認した。

 音楽を聴き、演奏することで音楽に触れることが出来る。でも、音楽はそこだけにあるわけじゃない。人の生活にもリズムがあって、音楽がある。この話にも納得した。音楽がそこにあると思い、耳をすませば感じることが出来るのかもしれない。

 来月、コンサートに行く予定があるのだが、その前にこの本を読めてよかったなと思う。生のオーケストラの響きが身体全体に伝わってくるあの場は、何度行ってもいいなと思う(まだ数えるほどしか行ってないけど)。そして、その音楽にじっくり耳をすましてみよう。コンサートだけじゃなく、日ごろ聴いている音楽や、ピアノを練習している時にも。音楽をもっと好きになれると思う。音楽だけじゃなくて、普段の自分の何かものを学ぶ・考えることにおいても心に留めておきたいと思った箇所がいくつもあった。また読み返したい。
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by halca-kaukana057 | 2008-02-17 21:34 | 本・読書

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