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白夜の旅

 「東山魁夷の青い北欧」の記事の最後に書いた、魁夷の北欧旅行エッセイ「白夜の旅」。この本を読めたことが本当に嬉しい。

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白夜の旅
東山魁夷/新潮文庫/1980

 東山魁夷の絵も好きだが、文章も好きだ。文章から風景が見えてくる。魁夷は絵だけではなく、文章でも風景を描くことが出来る…すごいと心から思う。

 魁夷にとって、北は特別な場所だった。それまでの順調な仕事や生活を見直すために向かった北欧の地。北欧の雰囲気・空気・自然・街…全てが魁夷にぴったり合っていると感じた。すがすがしくて、濁っているものがない。淡く、穏やかで、柔らかい。人と地域が呼応している。ぴったり合っていたからこそ、その後の作品に大きな影響を及ぼしたと思う。

 どこの街でも、時間がゆっくりと流れている。街は静かで、人ものんびりしていて、治安も良すぎるぐらい。自然は美しく、白夜の季節を全ての生き物が謳歌している。昔から、北欧に対する日本人の見方はこうだったのかと実感した。しかし、こんな一節もある。
いや、この国の人々の、ある一面の真実である。私は明るい面を見ているだけかもしれない。季節的にも、一年のうちの一番よい季節だけ滞在しているのだから、印象も違うわけだろう。ほんの、ゆきずりの旅行者に、全ての真実がわかるわけがない。しかし、たとえば、月を描くのに、裏側の暗黒の面まで描かなければならないということもないと思われるのである。月は私たちが見ている面だけで、美しく、十分である。ことに、画家である私にとっては。

 これまで、私は北欧のよい面だけ見ることに抵抗があった。どんなところにも暗い面はある。そこを見ないでいいところだけ語るなんて、偏った考え方だと思ってきた。でも、こういう考え方もある。一度の旅行で全てを見ることなんて出来ない。ましてや私のように一度も行ったことのない人間には、何がわかるだろう。ただ知識として持っているだけだ。でも、見て「美しい」「素晴らしい」「楽しい」「面白い」…そう感じたら、そう言葉に、絵に表現すればいい。暗い面のこと、難しいことはその後に考えても遅くはないのかもしれない。

 今も昔も、北欧は魅力的な場所。読んでいるだけで北欧の空気が感じられた。ああ、北欧、いいなぁ。


 ところで、この本の中に「ヴェルムラント(Värmeland)」という曲が出てくる。スウェーデンの民謡。生まれた土地を思う、望郷の歌。
◆Zarah Leander - Ack Värmeland du sköna


◆Christer Sjögren --- Ack Värmeland



日本語訳歌詞はこちら:ヴェルムランドの歌
 哀愁たっぷりの歌ですね。しんみりしてきますが、好きです。

 あと、東山魁夷のフィンランドでの足どりについてまとめたサイトもあったので、リンク貼っておきます。
東山魁夷の見たフィンランド白樺と星・・・フィンランドの児童文学
by halca-kaukana057 | 2008-05-17 22:16 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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