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ドリトル先生と月からの使い

 ドリトル先生シリーズ第7作。いよいよ月3部作です。待ってました!!

ドリトル先生と月からの使い
ヒュー・ロフティング/井伏鱒二:訳/岩波書店・岩波少年文庫


 最初から月の使いがやってくるのかと思いきや、前半は違うお話ばかり。でも、読み進めて後半になると、その前半でのお話が後半への伏線であることが判明。そして前半と後半・月から使いがやってくる部分への橋渡しとなる部分…ドリトル先生が新しい旅を始めるために、候補地を選ぶシーンの緊張感と言ったら。

 この「月からの使い」の時代は、「ちょうどそのころ、モールスの電信機械の実験が、世間の人の注目をあびているところでした」(98ページ)の部分から1840年代ごろと推定できる。また、ドリトル先生シリーズが書かれたのは第1次世界大戦後。その頃はまだ宇宙開発は始まっていないが、ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」は既に出版され、ツォルコフスキーやゴダードはロケットの研究を始めていた。作者のロフティングも、徐々に近づく宇宙探査時代に夢やロマンを感じていたのだろうか。

 月に関して、面白い記述もある。サルのチーチーがサルの仲間たちに伝わる言い伝えを話す。
昔、月は地球の一部だったと信じられているのです。ところが、大きな爆発か何かが起こって、地球の一部が空中へ跳ねとばされ、どういうわけか、そのまま空に残るようになったのです。

 これは「ジャイアント・インパクト説」のことでは…?この説が発表されたのは1975年、アポロでの探査の後。ロフティングの空想だったとしても、すごい想像力だ。

 そしてやってきた月からの使い。それは巨大なガ。ドリトル先生の世界にロケットはないから、どうやって月へ行くのだろうと思っていた。その巨大なガに乗って行く…ドリトル先生らしいなと思う。そして、月へ向かう前の先生とトミー君のやり取りがまた印象的。危険だとトミーを月へ行かせたくない先生と、何があってもついて行きたいトミー。お互いを案じ、信頼する絆。そして未知の世界へ行ってみたい、何があるのか見てみたいという冒険心。ドリトル先生シリーズは、トミーが出てくる巻と出てこない巻では面白さが違うなと感じる。「サーカス」「キャラバン」のように出てこなくても面白いけど、トミーがいると先生のまた違った面も見えてくるように思う。

 ガに乗って月へ向かう先生一行。ガが速度を上げるシーンは、液体燃料ロケットがだんだん速度を上げていく様に読める。ロフティングは先の時代を読んだわけではないのだろうが、「おや」と思う部分が沢山あって驚く。次巻も楽しみ。
by halca-kaukana057 | 2008-06-04 20:51 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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