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ドリトル先生月へゆく

 ドリトル先生シリーズ第8作、月シリーズ第2部です。いよいよドリトル先生が月に降り立ちます。

ドリトル先生月へゆく
ヒュー・ロフティング/井伏鱒二:訳/岩波書店


 巨大なガに乗って月にやってきたドリトル先生一行。冒頭から月の重力は地球のより小さいため、ぴょんぴょんと歩き回ることができるとの描写が。まさにアポロ11号の月面着陸のよう。ロフティングがアポロの月面着陸を見た時、何と思ったんだろう…と思ったら、ロフティングは1947年に死去。アポロの月面着陸を見ることはなかった。もし見ていたら、このシーンを思い浮かべたんだろうか。そう言えば、月の重力は小さいため、歩く時もぴょんぴょんとジャンプしながら歩くと考えられ始めたのはいつ頃なんだろう?実際に確かめられたのはアポロの時だろうが、理論として考えられたのはいつなんだろう?

 月では見たこともないものばかり。ドリトル先生もトミーも興奮気味。月での冒険と言うよりは、探査と言ったほうがいい。
「月の植物界の分野は、百人もの植物学者が、一年も二年もかかって研究するほどの大問題だ。われわれはまだ、ほんのうわっつらをなでたにすぎんのだ。これから、月の反対がわの、まだ知られていない地方に進むにつれて、どんな大発見をするか―それは、その―とうていだれにもわからんのだ。(中略)ほんとにわしは、いろんな専門家を―測量技師、地図製作者、地質学者などみんなつれてくるべきであった!考えてごらん、われわれはいま、新しい世界の道をさぐりさぐり歩いておるが、自分のいる位置さえ満足にわかっていないのだ。」(95~96ページ)
まさにこのことを、今「かぐや」などの無人探査機で行っているのだ。測量技師や地質学者は連れて行っていないけれど、それに代わる観測機器は積んである。月の地図製作…「かぐや」の地形図のことを思い出させる。
月では植物が言葉を持ち、謎の巨人もいるらしい…。この巨人、第1部「月からの使い」にあるエピソードをちゃんと引き継いでいた。月シリーズは全部読まないと何が起こるかわからない。

 この植物が言葉を持ち、さらに月には植物や動物が話し合って物事を決めている。生存競争はなく、「会議」で物事を決めている。全く不思議な世界だが、ここに第1次世界大戦を経験したロフティングの願いがこめられているのだろうか。争いのない平和な社会であって欲しいとの願いが。実際、自然界は生存競争だけが繰り広げられているわけでもない。植物と昆虫、動物同士が助け合って生存している例もある。人間的に考えると「会議」だが、「会議」が無くても自然界には面白い現象がある。ロフティングは、それに子どもたちに気付いて欲しかったと思っていたのだろうか。

 また、進化についての言及もある。月世界の生物の進化について探るため、ドリトル先生が月の湖で魚類を探している時、サルのチーチーが「進化とは何ですか」と聞く。それに対して、オウムのポリネシアがこう答える。
「進化というのはね、チーチー。どうしてスタビンズには、あなたのようなしっぽがなくなったかという物語ですよ。―――スタビンズには、もうそんなものは、いらないんですね。そしてまた、あなたには、どうしてしっぽが生えて、それが必要に応じて今日までちゃんと残っているか、という物語です。進化だの証明だの、それは学者の使う、えらそうなことばです。簡単なことを、むずかしくいっただけのものですよ。」(55~56ページ)
確かにシンプルでわかりやすい。

 月で診療を始めたドリトル先生だが、トミーに危機が。地球の両親が心配していると聞いた月の動植物たちがトミーだけを地球に返してしまう…。子どもがここを読んだら、自由になれない無念と感じるのだろうか。それとも仕方ないと諦めるのだろうか。大人になってから読んだ私には想像することしか出来ないが、子どもの私なら…やっぱり早く大人になりたいと思っただろう。

 ドリトル先生は無事地球に帰ってこられるのか。9作目・月シリーズ第3部「月から帰る」に続きます。
by halca-kaukana057 | 2008-06-17 23:04 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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