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ドリトル先生と緑のカナリア

 ドリトル先生シリーズ第11作。「ドリトル先生のキャラバン」で登場したカナリア・ピピネラのお話です。

ドリトル先生と緑のカナリア
ヒュー・ロフティング/井伏鱒二:訳/岩波書店・岩波少年文庫


 メスであるが美しい声で歌うピピネラ。その伝記に関しては「キャラバン」でも語られていますが、今作ではさらにより詳しくピピネラのこれまでと、「カナリア・オペラ」が大成功を収めた後についても語られます。前作「ドリトル先生と秘密の湖」の感想で、「ドリトル先生シリーズには、こんな賢く話し上手な鳥が他にも出てくる。」と書いたが、ピピネラのことを忘れていた(それと、ドリトル一家の働き者の家政婦である、アヒルのダブダブも)。忘れてはいけない。


 ピピネラの波乱に富んだ、ドラマティックな生涯はひとりの女優の生き様を描いたドラマ・映画のよう。メスはオスのように歌うことが出来ないという常識に反発し、努力を重ねて美しい歌声を手に入れる。何度も飼い主が変わり、そこで楽しいことも辛いことも体験してきた。時に恋もし、失恋に傷ついたことも。死にそうになったことも何度か。でも、どこにいてもピピネラは果敢に厳しい環境や境遇に立ち向かい、人間の暮らしを見つめ、愛してくれる人たちのために歌を歌う。特に、古い風車小屋に住む窓ふき屋の男のために。

 これまで、ドリトル先生の物語では、ドリトル先生が動物たちのことをいかに理解し、人々にそれを伝えようとしているか。また先生と弟子のトミー、先生のもとにやってきた動物たちの冒険について語られてきた。先生のように動物の言葉が理解できたら、どんなに面白いだろうと何度も思った。でも、私は動物の言葉はわからない。犬が尻尾をふっていれば楽しいのだなとか、猫ののどをなでてあげれば気持ちよさそうにゴロゴロ鳴らすとか、家で飼っている金魚が餌が欲しい時尾びれを振って近寄ってくるとか、そのくらいしかわからない。庭にやってきたスズメがさえずっているのを聞いて何を話しているんだろうと疑問に思っても、スズメの言葉はわからない。でも、言葉はわからなくても、動物と心を寄せ合うことは出来る。飼っている動物の言葉ひとつひとつはわからないけど、餌が欲しいとか散歩に行きたいとか、そういう感情の断片はわかる。ドリトル先生のように動物の言葉全部はわからなくても、動物たちと人間が理解しあえないわけではないんだよ。――ピピネラと何人もの飼い主たち、とりわけ窓ふき男との絆を描くことで、ロフティングはそういうことを伝えたかったのではないかなぁと思った。


 その生き別れとなった窓ふき男と再会し、窓ふき男が探しているある大事なもののためにピピネラやドリトル先生一家が活躍する。他の巻でもそうだけど、ドリトル先生シリーズではこういう息もつかせぬ展開の書き方が本当にうまいと思う。面白くて読むのが止められない。ドリトル先生シリーズも魅力はここにもあると感じた。

 この「緑のカナリア」を書いている途中で、ロフティングはこの世を去ってしまう。そのため、ロフティングの妻・ジョセフィンの妹であるオルガ・マイクルがその続きを引き受けたのだそうだ。冒頭で「おことわり」とジョセフィンが書いている。

 さぁ、ドリトル先生シリーズも残すところ1巻。どんな結末になるのか。…結末自体あるのかな。心して読みます。
by halca-kaukana057 | 2008-07-31 13:04 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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