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カレワラ物語

カレワラ物語―フィンランドの国民叙事詩
キルスティ・マキネン著/荒牧和子訳/春風社/2005


 「カレワラ」(もしくは「カレヴァラ」)はフィンランドのカレリア地方に言い伝えられてきた口承詩をもとに、医師であったエリアス・ロンロートが収集・編集したものです。出版されて以来フィンランド人に読み継がれ、フィンランド文化の源となっている。シベリウスの作品にも、「クレルヴォ交響曲」や「4つの伝説曲」(2曲目が「トゥオネラの白鳥」)、「ポホヨラの娘」、「タピオラ」など「カレワラ」をもとにしたものが数多くある。さらに「カレワラ」の登場人物の名前を人名や会社などの名前に採用することも多い。まさに、「カレワラ」無しにフィンランドが語れるか!と言ってもいいぐらい。読みにくいかと思って今まで読んだことはなかったのですが、思い切って読むことにしました。



 この本は物語で書かれているため、とても読みやすいです。(完全訳は結構読みづらいらしい)大気の乙女・イルマタル(ルオンノタール)が宇宙を創り、老賢者ヴァイナモイネンを産む。そのヴァイナモイネンと鍛冶屋のイルマリネン、豪傑レンミンカイネンが北の国ポホヨラとの幾度とない戦いを中心とした話から、両親の敵を討つために生まれてきたというクレッルヴォの話、そしてヴァイナモイネンがフィンランドの地を去るまでを描いている。

 どの登場人物もとても生き生きとしていて、躍動感のある話ばかりです。そしてちょっとユニーク。普段は賢く勇ましいヴァイナモイネンは、実は老人の癖に若い娘に目がない。そのおかげでサーミの娘・アイノの悲劇が起こってしまう。戦好きで豪快なレンミンカイネンにはあまりいい印象はないけれど憎めない。

 フィンランドの大自然の中で物語が繰り広げられるのも味わい深いところ。森とその主タピオをはじめ木々の精、海や湖の描かれ方がとても豊かだ。そして人々は豊かな自然に感謝する心を忘れない。やはり大自然の中でフィンランドの文化は育まれていったことが分かる。

 最後、ヴァイナモイネンはカレワラの王が現れたことでフィンランドを去る。これはフィンランドにキリスト教が入ってきたことをあらわしているという。とても印象的な最後でした。

 これを読んだ後なら完全訳を読んでも少しは大丈夫ではないかと思う。ぜひ読んでみたいが、完全訳は絶版。図書館にも無いらしい…。復刊してくれないかな…。
by halca-kaukana057 | 2005-12-19 21:08 | フィンランド・Suomi/北欧

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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