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2008年 07月 24日 ( 1 )

 以前読んだ「音楽のたのしみ1 音楽とはなんだろうの続巻です。2・3巻では音楽史と数多くの作曲家たちを取り上げます。

音楽のたのしみ 2
ロラン・マニュエル/吉田秀和:訳/白水社・白水Uブックス/2008

 2巻でも作曲家・音楽評論家のロラン・マニュエル氏と、若手ピアニストのナディア・タグリーヌ嬢のやりとりが楽しくて痛快。ロラン・マニュエル氏は1巻ではナディア嬢のことを「お嬢さん」と呼んでいたのに対して、2巻では「ナディア」と名前で呼んでいる。一方、ロラン氏に対するナディア嬢の突っ込みもさらに鋭いものに。時にロラン氏を困らせてしまう。2人の息が合っている証拠だろう。

 2巻では、音楽史がテーマ。フランス(フランスのラジオ番組が元になっているので、フランス音楽を中心に語られてます)、イタリア、オーストリア、ドイツ、イギリス…などの音楽の特徴を紹介した後、「タイムマシン」と称するラジオを使って、時間を遡りその時代の各地域の音楽を聴いていく。音楽史ではあるが、ヨーロッパ各国の歴史も取り上げるので世界史・ヨーロッパ史のことを思い出さないとピンと来ない。これまでヨーロッパ史と音楽史を別々に捉えてしまっていたのだが、統合して考えたほうがよかったみたい。この本を読む時は、ヨーロッパ史の年表を持っていると役に立つと思う。

 そしてもう一つ役に立つものがある。思い切って買ってしまったドイツ・ハルモニア・ムンディ(DHM)設立50周年記念 CD50枚ボックス。2巻で取り上げられる作曲家のほとんどは、バロック期の作曲家ばかり。バッハにヴィヴァルディ、テーレマン、ヘンデル、ドメニコ・スカルラッティあたりなら聴いたことはあるが、それ以外の作曲家は名前すら知らない人ばかり。だが、このDHMのボックスにはこの本で取り上げられている、聴いたことのない作曲家の作品が幾つもある。このCDボックスを買ったタイミングと、この本を読んだタイミングがちょうどぴったり合った。本を読みながら、CDで実際にどんな曲だったのかを聴く。CDだけ聴いてもその作曲家がいつの時代のどんな人だったのかわからないし、本を読んだだけだとどんな作品を書いたのかがわからない。タイミングが合って本当に良かった。

 この本を読みながら聴いたCDで気に入ったものがいくつかある。第12話で登場するカッチーニ。

Caccini:Le Nuove Musiche: Figueras, H.smith, Savall, Schola Cantorum Basiliensis

 17世紀初頭のイタリア・フィレンツェでは、それまで音楽を構成する要素は和声が中心だったが、徐々に対位法…つまり伴奏をもった歌に替わられようとしていた。ただ、言葉があって音楽が出来るのではなく、音楽から言葉が生まれ、歌に合わせて言葉をつけていった。そんな歌を、言葉と音楽がうまくつながり、呼応するようにしようとしたのが、ジュリオ・カッチーニだった。代表作「麗しのアマリッリ」など、このCDに収められている作品を聴いたが、本当に美しい。歌詞はよくわからないが(この本の中に、「麗しのアマリッリ」の日本語訳はある)、曲と声はのびのびとしていて、まさに「麗しい」。しかも、このカッチーニを天文学者・ガリレオ・ガリレイの父・ヴィンチェンツォ・ガリレイが支持・援助していたとのこと。へぇー。

 カッチーニの他にも、この本で読み、DHMのCDで聴いてその名前と作品を知った作曲家が何人もいる。まさかこんなところでこの2つの要素が繋がるとは思わなかった。

 J.S.バッハに関しても、その作品の完璧さ、バロック期の作品なのにロマン派的なところもある(「半音階的幻想曲とフーガ」BWV903)と書かれている。音楽を読み解く面白さを、私ももうちょっと理解できるようになりたい。また、モーツァルトに関しては、その親しみやすさゆえに初心者でも演奏できるような作品と捉えられてしまう、と。本当はモーツァルトほど演奏するのに難しい作曲家はないのに。
N(ナディア):モーツァルトは、他のどんな人より、高くて、しかも近づきやすく、親しみやすいような気がする……。
R-M(ロラン・マニュエル):その「神のごとき」モーツァルトは、また、あらゆる芸術家と人間の中で、最も謙虚に人間らしい人だったことを考えてください。モーツァルトは崇高さを手のとどくところにもってきてくれる。
N:やさしそうにみえて……。
R-M:やさしそうに見えるのは、明快で、見たところなんの努力も必要なさそうだからです。モーツァルトの音楽は、われわれの中に、われわれだってそれがかけそうだという不遜な妄想を植えつける。もっと悪いことには、[これは]われわれもよりよき世界の中にいた時に書いた音楽で、それをいまここに再発見したのだというような妄想を覚えさす。
(332ページ)

 まさにその通りだと感じる。ここにモーツァルトの偉大さがあるのに。2人の話は面白いだけでなく、作曲家たちへの尊敬と愛情がこもっているからより面白い。ベートーヴェンに関しても。

 最後、第30話~32話は3巻で取り上げられるロマン派への架け橋となる、ロマンティスムに関して。ロマンティスムにも色々ある。3巻も楽しみに読もう。
by halca-kaukana057 | 2008-07-24 21:58 | 本・読書

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