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2009年 11月 16日 ( 2 )

 前の記事で書こうと思ったのだが、スペースがないので別記事に。

 金子一郎さんというピアノ演奏家がいることを知った。金子さんの本業は中学・高校の数学教師。しかし、ピアノ演奏もしていて、2005年ピティナ・ピアノコンペティションソロ部門特級において、グランプリ(金賞)および聴衆賞、ミキモト賞、王子賞、日フィル賞、文部科学大臣賞、読売新聞社賞、審査員基金海外派遣費用補助を受賞。数々のオーケストラとも共演。ソロリサイタルも開き、CDも出してしまった異色のピアニスト。アマチュアなのにこんなに活躍されているのも凄いと思うのだが、この金子さんのピアノに対する考え方、姿勢に興味を持った。

ピティナ:インタビュー アドバイザーは手で語る vol.9 金子一朗先生

楽譜のルールを理解し、守るべきところを守り、その作品の本質を理解するほど、表現の自由度は増していくのです。そこから先は私は『情念』で演奏するのだと思っています。この『情念』とは、聴く人の心を動かし、メッセージ性のあるものです。
(上記インタビューより)


 金子さんはとにかく楽譜を読み込んで、読み込むまでピアノは一切弾かないのだそう。譜読みと楽曲分析を非常に大切にされている。上記引用の「楽譜のルールを理解し、守るべきところを守り、その作品の本質を理解するほど、表現の自由度は増していくのです。」という部分。その通りだと思った。楽譜をじっくりと読むことで、曲の流れもつかめる。曲のが慣れがつかめれば、どう表現するかの考えも膨らむ…ということか。楽譜を読めば読むほど、表現の自由度が増すなんて不思議に思えるけれども、楽譜は「強制」を強いるものではないということなんだろうな。

 この金子さんの考えをもっと知りたいと思ったら、本が出ていた。

挑戦するピアニスト 独学の流儀

金子 一朗 / 春秋社


 「独学の流儀」なんて、独学者である私ホイホイ。金子さんのHPに目次が載っていたので、引用しておきます。
1 グランプリまでの道のり

1-1 音楽にかこまれて
1-2 中学までのレッスン
1-3 独学し続けた高校大学時代
1-4 空白の社会人時代
1-5 指を怪我する
1-6 コンクールを目指す
1-7 ピティナ特級最初の挑戦
1-8 新たな気持で
1-9 2度目の挑戦
1-10 2005年のグランプリ
1-11 多くのリサイタル
1-12 勉強し直す
1-13 広がる世界
1-14 コンクールで結果を出すには

2 曲を仕上げる手順

2-1 音源は聴かない
2-2 楽譜の収集
2-3 演奏機会を得る
2-4 楽譜を読んで分析する
2-5 分析の実践
2-6 指使いをピアノなしで決める
2-7 さあ、ピアノで練習しよう
2-8 仕上げ
2-9 いざ、本番

3 曲のスタイルは3種類

3-1 メロディーと伴奏型
3-2 対位法型
3-3 和音型
3-4 「メロディーと伴奏」「対位法」「和音」の混合型
3-5 変奏曲形式によるまとめ

4 陥りやすい罠

4-1 指で覚える
4-2 ソプラノ星人
4-3 暗譜できない
4-4 忘れる、止まる
4-5 緊張する
4-6 うまいと錯覚する
4-7 レパートリーが増えない
4-8 好きな作曲家の作品しか弾かない
4-9 耳が一極集中してしまう
4-10 音量とスピードが暴走する
4-11 弾けても忘れてしまう
4-12 自分勝手な演奏
4-13 音色が単調になる
4-14 指が速く回らない
4-15 跳躍のための10か条
4-16 コピーになってしまう

5 弾けないときの処方箋

5-1 テンポと拍子
5-2 弾かない指の脱力
5-3 指の関節
5-4 勢いより和声
5-5 遠くに飛ぶ音
5-6 ポジションと指使い
5-7 歌ってなぞる
5-8 メゾピアノは、フォルテ? ピアノ?
5-9 ペダルのこと
5-10 曲の性格は調性で
5-11 腱鞘炎になったら

6 練習の常識・非常識

6-1 リズム練習はやらない
6-2 ハノンやチェルニーなんか嫌い
6-3 速く弾くにはゆっくり弾く
6-4 微妙に異なる音高と強弱をイメージする
6-5 ピアノを弾かないで演奏する
6-6 ピアノ曲以外のトレンドをぬすむ
6-7 留学なんかできないけれど
6-8 楽譜の指示を守ると個性が生まれる
6-9 ピアノ技術の習得
6-10 理論、音楽史、楽譜について

7 ピアノから広がる世界

7-1 ソロだけでなくアンサンブルも
7-2 伴奏、室内楽、コンチェルト
7-3 コンクールで仲良くなった友人
7-4 コンプレックスは肥やし
7-5 良い演奏で良い音楽を
7-6 音楽を奏でる素晴らしさ

Ichro Kaneko's Blog:7月17日より


 これは面白そう。今、私が求めている本だと思う。早速読んでみよう。

Ichiro Kaneko Official Web
(音が鳴るので注意。ページ左下のプレイヤーで止められます)
by halca-kaukana057 | 2009-11-16 22:15 | 奏でること・うたうこと
 シベリウス「樅の木」op.75-5の譜読みを少しずつ進めている。

・以前の記事(「樅の木」に取り組むことにしたきっかけと、決意表明):「わからない」と放り投げる前に

 約1年前は指が届いてもぎりぎりで辛い、指使いがよくわからない、音を読むのが大変…とすぐに諦めてしまったのですが、今回はなぜか続いています。「演奏すること」ではなく、あくまで「譜読みしてわからないことを無くすこと」を目標にしているからだろうか。

 今は譜読みするのがとても面白い!気づくこと、発見することは沢山。CDなどで演奏を聴いて、「こんな曲だ」とわかってはいる。でも、譜読みをするとさらに「樅の木」の魅力に気づいて、ますます好きになった。アルペジオの部分も音を読んでみて、あの嵐もこんな一つ一つの音から構成されていたんだと思うと、構えていた気持ちが少しほぐれる。音の塊になっていると沢山の情報が一気に頭の中になだれ込んできて圧倒され、難しい!と感じるけど、一つ一つに分けてほぐしてみると「こうなっていたのか」と冷静に、親しみをもって音をなぞることが出来る。自分の指でそれを奏でることは置いておいて、曲に対して感じていたことを譜読みしながら整理する。そして曲を読み解いて、構成や曲の流れ等を確認する。そこから、なぜ自分がこの作品に惹かれ続けているのか…わかると思う。実際、ずーんと響く低音が作る静けさ、奥深さがこの作品の魅力だと思っているが、そのカギになるんじゃないかと思う音・メロディーはこれかな?と楽譜を見ながら考えている。

 譜読みがこんなに面白いものだと、今まで知らずにいた。今まで譜読みは演奏するためにしなくてはならないものと考えていた。不可欠なんだけど、正直面倒。私は楽譜を読むのが本当に遅くて鈍い。楽譜に対して苦手意識を持っていた。オーケストラのスコアを読めたらいいなぁと思ったことが以前あったが、ピアノの楽譜もロクに読めないのに、オケのスコアなんて…と思っていた。ところが、今「樅の木」を譜読みしていて、楽譜には大切なことが、面白いことが沢山隠れているんだと実感した。本を音読する時、ただ文章をそのまま読むのでは味気ない。でも、その本をじっくり読んで、登場人物のキャラクターや声色、彼らの感情やその変化、場面の雰囲気やそれを表すもの、物語の山場などを考えて、語るように音読するとただ読むのとは全く違う作品に思えてくる。実は私は、昔子どもを対象に読み聞かせをしていたことがあって、読み聞かせをする時はそうやって作品を読み込んで、何度も練習して読み聞かせをしていた。どんなに面白い作品でも、作品の読み込みと練習が足りないと、子どもたちは話を聞こうとしない。でも、作品を読み込んで山場で声色を変えてみたり、本のページのめくり方を工夫すると、子どもたちは物語に夢中になる。読んで聞かせていると言うよりも、一緒にその本を楽しんでいるような気持ちになった。本当に楽しかった。

 楽譜はその作品の根幹となるもの。なくてはならないもの。だから、しっかりと読み込んで大切にしなければ。絵本を読み聞かせするように、ピアノにも取り組もう。

 …つか、読み聞かせと楽譜・ピアノの関係にもっと早くに気づくべきだった…。読み聞かせの経験があるのに、それを思い出さないなんて、気が付かないなんて…orz


 それと、「樅の木」に取り組むにあたって、もうひとつ感じたことがある。

 時々、他のピアノ関係ブログ・サイトを覗くと、劣等感を感じる。その進度の速さや挑戦意欲の高さ、練習している作品の難易度に圧倒されて、自分を見失ってしまう。弾きたい曲を弾いている人がいても、自分にはまだ無理、そんなレベルじゃない、と。軽々と譜読みして、演奏しているのを見ると、焦りと悔しさとため息ばかりが募っていった。ピアノへの意欲が薄れていくこともあった。自分には、しっかりとした基礎も技巧も、不可能を可能にするような強いモチベーションもない。

 そんな中で、自分は何を大事にして演奏したいかを考えるようになった。私に技巧はない。技巧が追いつかないんだったら、その作品の背景や込められたもの、自分なりの表現を大切にしたいと思った。そうやって考えて、「この鍵盤の向こう側」の記事に至った。だが、この自分なりの答えを出しても、劣等感や焦り、ため息は消えなかった。消えなかった理由は、ロクに譜読みもせず、「自分にはまだムリ」と挑戦する前から諦めていた自分のままだったからだ。私にとって「弾けることがゴールじゃない」のであれば、それを実践して自分で確かめるべきだった。

 今、私は「この鍵盤の向こう側」で書いたことを、「樅の木」の譜読みで実践している。この「樅の木」だけは、どんなに時間がかかっても焦らず諦めず、他者と比べず、取り組むと決めている。この作品だけは、自分が今まで感じてきた劣等感や、周りのペースから守り抜いて、自分の力で形にするんだ。私にとって「樅の木」は、だれが何と言おうと特別な作品だ。自分のペースで、「樅の木」への道を模索して進もう。
by halca-kaukana057 | 2009-11-16 21:16 | 奏でること・うたうこと

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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