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2019年 04月 01日 ( 1 )

 偶然見つけて気になった本。


モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語
内田洋子 / 方丈社 / 2018

 筆者の内田さんは仕事の拠点をミラノに置いていた。冬のある日、ヴェネツィアで仕事をして駅に向かう途中で、古本屋を見つける。気になって入ってみると小さな店舗に本がたくさんある。全てヴェネツィア関連か美術の本だと店主は言う。欲しい本は何冊もあったが、荷物になるので買えず、ヴェネツィアを経った。その後、ヴェネツィアに住むことになった内田さんは、この本屋「ベルトーニ書店」に通っていた。書店主のアルベルトと話すことも多くなった。そんなアルベルトは、父から店を引き継いだが、父が店頭に立つ時もある。この店はアルベルトで四代目。アルベルトの祖父はトスカーナにある小さな山村、モンテレッジォの出身だと言う。そのモンテレッジォの男たちは、他所へ物を売り歩いて生計を立てていた。その売っていたものは、本だったという。本の行商?夏には、本のお祭りがあるという。内田さんはその奇妙な村・モンテレッジォに惹かれ、関係者に連絡を取り、村に向かうことになった…。

 イタリアのトスカーナにあるモンテレッジォ村。勿論初めて聞きました。しかも、本の行商をしていたなんて。本なんてどこにでもあるだろう。本はどこでも同じものが売っている。本屋に行けばあるだろうに、行商が成り立つのだろうか。一体何がどうして、重い本を売り歩くようになったのか。モンテレッジォの村と、何故本を売り歩くようになったのか、モンテレッジォの人たちにとって本とは何なのか。それを歴史を紐解きながら辿ります。

 モンテレッジォの地形、地理、イタリアやヨーロッパを含む歴史などがどんどん絡んで、本の行商へ繋がっていく過程は読んでいて面白かった。推理小説のようでもあるし、歴史絵巻、大河ドラマのようでもある。モンテレッジォには文化が根付き、文化を大切にしようとする歴史的な土壌があった。しかし、最初から本を売り歩いたわけではなかった。最初から行商ばかりをしていたわけではなかった。行商に出なければならなくなった理由、売り歩くものがだんだん本に変わっていった理由。様々な歴史の中で、モンテレッジォの人々は、世の中の人々が求めていることに柔軟に対応していった。10章の本の行商の様子の記録を読んでいると、当時の人々の様子が生き生きと伝わってくる。

 本がどこでも同じものを買えるのは、現代でこその話。行商で売られていた本と、本屋で売られていた本は違っていた。人々がそれぞれに求めた本は違っていた。行商だから売れる本があった。人々がどんな知識を、本を求めているか。行商人たちは敏感で、すぐに対応した。すごい。納得した。
 行商人たちは、その内本屋を開き始める。出版社を起業し、それを本屋で売る者もいた。イタリアだけではなく、ヨーロッパのあちこち、更には南米まで広がっていったのには驚いた。

 1952年には、行商人や各地で書店を開いている村人たちが集まり、「本屋週間」が開かれる。翌年、それぞれの本屋で最も売れ行きの良い本を報告して決まる文学賞「露天商賞」が誕生する。1953年の第1回受賞作はヘミングウェイの「老人と海」。ノーベル賞に先駆けた受賞だったとのこと。

 文化を広めたい、届けたい。その情熱が現代にも繋がっている。モンテレッジォの村人たちが、文化を支えてきた。ヴェネツィアのアルベルトの他にも、各地で本屋を営んでいるモンテレッジォにルーツを持つ者は多い。モンテレッジォは、定住者や少なく、若い人たちは都市に住み働いている。村は貧しい。でも、モンテレッジォへ内田さんを案内したマッシミリアーノのように、モンテレッジォが故郷だと思っている人は多い。帰省するのを楽しみにしている。本を大切にし、本を広めた先人たちや村のことを誇りに思っている。こんな小さな山村があったなんて。本当に感激した。

 この本でも、ネット書店の脅威が語られている。私も、行動範囲内の本屋にお目当ての本が置いていなければ、ネット書店で注文してしまう。更に数年前からは、本が絶版になるペースが速いと思っている。つい数年前に出版されたのに、もう置いていない。ネット書店にもない。図書館にも置いていなくて、お手上げになることが少なくない。
 本屋では、お目当ての本を探しているつもりが、別の本を見つけて気になってしまったということがよくある。こういう時、やはり買っておくのが一番なのだろう…。

 モンテレッジォのような長い歴史はなくても、私の身の回りにも老舗の本屋や、地域の文化を支えてきた、地域の人々に愛されてきた本屋があるだろう。新しい本屋でも、文化を支える力になっている本屋もあるだろう。そんな本屋を大事にしたい。本屋という存在がとても尊いものに感じられる本です。

by halca-kaukana057 | 2019-04-01 22:28 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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