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2019年 08月 22日 ( 1 )

 この7月で、アポロ11号の月面着陸から50年。私も月やアポロ関係の本を読んでいますが、この本は読まねばならないだろうと思って読んだ。映画の原作ですが、映画は観ていません(上映館がない)

ファースト・マン 上: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生

ジェイムズ・R. ハンセン:著、日暮雅通、水谷淳:訳/河出書房新社、河出文庫/2019


ファースト・マン 下: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生

ジェイムズ・R. ハンセン:著、日暮雅通、水谷淳:訳/河出書房新社、河出文庫/2019



 ポルノグラフティが歌う「アポロ」の歌詞…「ぼくらが生まれてくるずっとずっと前には…」普段は、自分は生まれていなくても実際にあったこと、歴史上の事実、人類は月まで行って月に降り立ったことは変わらない、と思ってきたのだが、この本を読んでいたら何故かその歌詞に共感してしまった。自分は生まれていなかった時代に、宇宙開発は黎明期から月を目標にした時代になり、月へ向けて奮闘してた人々がいた。とても遠い時代のことに思えてしまった。自分に関係がないわけじゃないけど、遠い世界、遠い時代のことなんだな…と思ってしまった。それは、私が今までアポロ計画や、その前のジェミニ計画、そしてアポロ計画で一番有名な人物と言っていいニール・アームストロングという人について知らないことがたくさんあったことに気づいたからだ。

 アームストロングは、自分のことをあまり語ろうとしなかった。アームストロングの自伝を出すことに対しても、彼はとても慎重だった。ちなみに、この本は2005年に最初の版が出版され、2012年、アームストロングが亡くなった後第2版が出版された。そして、2018年アームストロングが亡くなった時のことなどを加筆、アポロ11号月面着陸50年を記念して2018年新版が出版された。

 宇宙開発の黎明期のNASAの宇宙飛行士というと、明るく快活、おおらかな性格で、アメリカの英雄という輝きを上手に纏う人をイメージする。しかし、アームストロングは違った。根暗なわけではない。引っ込み思案なわけでもない。明るく快活ではある。しかし、思慮深く、控えめで、言葉を慎重に選んで話し、物事を緻密に考えてから行動する人だった。ジョークを言って場を和ませることはするので、堅物というわけではない。愛想もよく人に好かれていた。機転が利き、トラブルが起こっても慌てない。月着陸訓練機(LLTV)での訓練中、制御不能となり、アームストロングは脱出装置で脱出し一命を取り留めたことがあった。しかしその約1時間後、アームストロングは何事もなかったかのようにオフィスで仕事をしていた。事故のことを知った他の宇宙飛行士は平然としているアームストロングにとてお驚いたそうだ(当然だ)。そして、月面着陸をした後も、隠遁生活をしたわけではなかったが、「ファースト・マン(月面に初めて降り立った男)」と権力を振りかざすことも、出しゃばることはしなかった。不思議な魅力の人だなと感じた。

 アームストロングは、根っからのパイロットだった。子どもの頃から飛行機が大好きで、自動車免許を取るより先に飛行機を操縦するようになった。大学在学中、兵役で海軍に所属し、実戦にも赴いた。大学卒業後はNASAの前身、NACAのテストパイロットになり、超音速での飛行を繰り返した。今まで誤解していたのだが、アームストロングは宇宙飛行士になった時、軍人ではなく民間人だった。民間人初の宇宙飛行士だった。テストパイロットというと、映画「ライト・スタッフ」を思い出すが、あの映画で描かれていることは事実と反することも知ってショックだった。違うのか…。
 そんなアームストロングが何故宇宙を目指すようになったのか。詳しくは書かれていない。ただ、関係することがいくつか書かれている。あるとても悲しい出来事について書かれているが、それがアームストロングを宇宙に向かわせたのだろうか。

 アームストロングはアポロ11号の船長。でも、その前の宇宙飛行の実績については知らなかった。1966年のジェミニ8号での飛行。トラブルにより、予定されていた全てのミッションを行うことができず、アームストロングは残念がっていた。その帰還の数日後には現場に戻り、後続のミッションを支えた。ジェミニ計画の箇所も興味深かった。まさに宇宙飛行黎明期。

 そして、アポロ計画へ。アームストロングが11号の船長になったことは決まっていたが、11号で月面に着陸、EVA(船外活動、つまり、月の上を歩くこと。EVAというと私にとってはシャトルやISSでの船外活動のイメージなので、アポロ計画の月面での活動もEVAと呼ぶのに驚いた)を行うのは最初から決まっていたわけではないのに驚いた。1969年になってから、月着陸を行うかもしれない、と告げられる。その後の、誰が最初に月に降りるのか。アームストロングとオルドリンの反応が正反対。アームストロングの性格だったからこそ、様々なものに耐えられたのかもしれない。アポロ11号のクルー3人の関係は不思議な関係だ。宇宙飛行士というと、誰とでも仲良くできて、チームワークを大切にする。意見が違うことがあっても冷静に話し合って理解し合う。何が起こるかわからない、命の危険もある宇宙空間。お互いの命を預けても構わないぐらいに信頼し合うことを大事にするイメージがある。この3人はちょっと違う。信頼していないわけではないけど…。これで耐えることができた3人はすごいと思う。

 月着陸の箇所も、知らなかったことがいくつもあった。そういえば、アポロ計画、ならびに11号の飛行を支えたジョン・ハウボルトとマーガレット・ハミルトンの名前が出てこなかったのが残念。アームストロングの伝記だから仕方ないか。
 残念なのは、月面での写真にアームストロングの写真はほぼないということだ。写真はほとんど全てオルドリンのものだった。アームストロングの控えめな性格のせいなのだろうか。それとも、そこまでのことを想定していなかったということなのだろうか。6分の1の重力は、歩くこと以外でも不便なことがある。無重力(微小重力)ではないのだから、ISSほどの慣れと苦労はしないのだろうと思っていたが、どうも違うらしい。月面での生活を描いたSF作品を見る目が変わりそうだ。
 アポロ11号の月面着陸というと、星条旗を月面に立てたのも印象的で、その意味を考えてしまう。その一方で、国に関係なく宇宙に挑んできた人たちへの敬意を示した記念品を月面に残していた。

 帰還後、アポロ11号のクルーは地球の英雄となった。注目されればされるほど、各々の利害のためにデマを流して利用しようという人もいる。メディアは追いかけ回す。しかし、アームストロングの性格や考えはぶれることはなかった。アームストロング個人を勝手に英雄視する商品などに対しては抗議をした。少しも舞い上がることもなく、謙虚であり続けた。そして、アームストロングはパイロットであった。これは現代も変わらないのだが、読んでいて、アポロ11号の船長である宇宙飛行士のアームストロングと、一個人のニール・アームストロング。これを切り離して報道なり、捉える、認識することは人類にはできないのだろうか。人類は月まで行ったというのに。現代なら、できている国や地域はあると思う。しかし、日本はできていないと思う。読んでいて悲しくなった。

 映画はどんな感じなのだろうか。この原作から映画を作るのは難しそうだ。「Hidden Figures(邦題:ドリーム)」みたいになっているのだろうか。こちらも原作はとても堅いノンフィクションだった。
 この本のこの堅さ。これこそが、アームストロングなのだと思う。
 
by halca-kaukana057 | 2019-08-22 23:09 | 本・読書

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