人気ブログランキング |

2019年 11月 11日 ( 1 )

 「友だち幻想」の著者、菅野仁さんが、「友だち幻想」の前に書いた本です。長らく入手困難になっていたそうですが、文庫化しました。

友だち幻想

愛の本 他者との<つながり>を持て余すあなたへ
菅野 仁:著、たなか鮎子:イラスト/筑摩書房、ちくま文庫/2018(原本は2004年、PHPエディターズ・グループ)


 「友だち幻想」へ繋がるテーマである、他者との繋がりと、幸せとは何かを菅野さんが語りかけるように書かれた本です。「友だち幻想」同様10代~大学生の若い人向けの本ではありますが、それ以上の大人も読んで欲しい。

 「友だち幻想」でも書きましたが、菅野さんの言う「他者」とは、自分以外の全ての人のこと。家族や親しい友達も。この「他者」をどう捉えるかによって、考え方は変わってきます。「他者」は自分とは「違う」存在。親しくて、「同じ」と思ってしまうから、自分のことをそっくりそのままわかってくれるはずだ、価値観は同じはずだと思ってしまう。でも、「他者」はどんなに親しい人であっても自分と全く同じではない。そこに傷ついてしまう。「他者」と適度な距離を取り、適度な距離があるからこそ親しさも感じられる。このことについては深く頷きます。相手が自分と親しいからといって、好きなものが同じだからといって、自分の考え方や価値観などは同じとは限らない。それで独りで傷ついてしまうことがよくありました。この本を読んでいたら、もっと気が楽になれたのになと思います。
 「他者」に対して、「他人」という言葉も出てきます。「他者」と「他人」(親しくないよそよそしい関係の人)を家族が同じに考えてしまって怒られた…なんて話も出てきます。家族であっても、自立した人間と見て欲しい。それが「他者」の考え方です。

 「他者」からの自分がどう見えているか。このことについても文章が心に染み込むようでした。自分をこう見て欲しい、というイメージがある。でも、「他者」はそう見るとは限らない。
 この「他者」は、自分自身でもある。自分自身に対してのイメージを持ちすぎて、現実と理想のギャップに傷ついてしまう。「自我」の弱さ、繊細さは悪いことではないけれど、自分自身が苦しくなる原因でもある。傷つきやすい自分、弱い自分を認めて、他者や社会へもう一歩踏み出す。傷つきながらも「耐性」をつけていくこと。
 自分自身と他者からの自分のイメージの違い、評価、恐れに対して「構え」を持つこと。他者に期待しすぎないこと。「純度100%の関係を相手に求めない」(162ページ)という言葉があるが、とてもしっくりきた。これも、もっと早く読みたかった。

 「友だち幻想」の感想記事で、「こう紹介していると、随分とクールな立場の本なんだな、と感じます。実際、クール、現実的です。」と書きました。この「愛の本」の感想も、このままでは同じようにクールで現実的な立場の本と思われてしまいそうだ。この「愛の本」はとても優しい、そっと見守ってくれるようなメッセージに満ちた本です。菅野さんが高校生の頃にピアノ教室で経験したあること、菅野さんのご家族のこと、親戚や学生さんたちのこと…経験談やエピソードはどれもあたたかい(ピアノ教室での話は苦め)。菅野さんからの手紙のような本です。

 人間の幸福とは何か。この本では、「自己充実をもたらす活動」と「他者との交流」としている。「他者」に期待し過ぎないとか、「他者」は自分とは違う存在だと書きましたが、それは「他者」との交流を否定するものではない。傷つくこともあるけれども、だからこそ他者との心地よい交流は「生のあじわい」を感じられる。自分を認めてくれる他者がいることは安心に繋がる。そして、自分が楽しいと思うことをする。菅野さんも様々な趣味を持っている。それも「生のあじわい」を感じられることだ。私もやっていると楽しい、時間も忘れて熱中してしまうことがいくつかある。それを大事にしていこうと思う。

菅野さんが若くして亡くなってしまったことが本当に残念だ。「友だち幻想」と合わせて、人間関係に悩んでいる、社会の中で生きづらいと感じている人に読んで欲しい。

by halca-kaukana057 | 2019-11-11 22:56 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30