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シャガールのイマジネーション 「シャガール 三次元の世界」展

 記事に書くのは約1年ぶりの、青森県立美術館です。その後も行っていたのですが、記事は書かず…。ものすごく遅くなったけど、後で書こうかな…。

 今回行ってきたのは、「シャガール 三次元の世界」展。青森県立美術館の目玉展示と言えば、シャガールの「アレコ」背景画。普段は1,2,4幕ですが、2021年までは3幕もあり、全4幕揃っています。圧巻です。そのシャガールのことを、実はあまりよく知らない。ということで、行ってきました。

青森県立美術館:「シャガール - 三次元の世界」展 Marc Chagall: The Third Dimension

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いつもの真っ白な建物がお出迎え。

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 シャガールの絵は、とても不思議だ。人物がふわふわ浮いていて、その人物の描き方もふんわりとしている。今回の展覧会は、「三次元の世界」。絵画だけでなく、彫刻や陶器などの立体作品も数多く展示しています。シャガールって、立体作品も多く手がけていたんだ。

 この立体作品が面白かった。陶器は、ユーモラスで可愛らしい。色をつけていないものもあるし、色をつけているものは、とてもカラフル。陶器の後ろの側にも絵が描かれていて、それがまた可愛い。彫刻は、聖書をモチーフにしたものが多い。ユダヤ人の家に生まれ、第一次大戦後の反ユダヤの流れに巻き込まれてゆくシャガール。迫害をおそれ、アメリカに亡命。その背景が、聖書に通じるのだろうか。美術も、音楽も、西洋文化を理解するのは聖書は基礎なんだなと実感しました。なかなか馴染めないところもあり、すんなりと受け入れられず…と言っていられないのだな、と。その彫刻は、大理石や石灰岩だけでなく、特定の場所から採れた石を使っているものも多いです。その質感が、古代ギリシアやローマの遺跡のように見えます。しかも、聖書がモチーフだから尚更。シャガールの、これまでとは違った一面を観ました。

 そんな立体作品を観ると、不思議な絵画も、わかる、と感じました。立体を、二次元で表現しようとしたんだ。シャガールにとっては、二次元でも三次元、もしくは四次元だったんだ、と。そのイマジネーションに驚きました。一体どうすれば、こんなイメージを思いつくのだろう。次から次へと表現したいイメージがあって、それを形にできる。思い浮かんだイメージを、ないものとするのではなく、形にして、現実に見せることができる。これってすごいなと思いました。

 シャガールの作品には、鶏やロバ、魚など、動物もよく出てきます。陶器の後ろや、絵画の横のほうに描いてある。それが可愛い。「アレコ」背景画でも、動物が描かれていますね。

 展覧会の期間中、一日に4回、「アレコ」背景画の特別鑑賞プログラムがありました。照明、音楽、ナレーションで、バレエ「アレコ」のあらすじをたどり、背景画の見どころを紹介します。照明の当て方ひとつで、いつも観ているはずの「アレコ」背景画が違って見える。どこに注目すればいいかがわかる。バレエ「アレコ」で使われた、チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 op.50「偉大なる芸術家の思い出に」が流れる。どんなバレエだったのかな…と思います。

 バレエについては、展覧会で、初演の際の映像を上映しています。モノクロの映像ですが、いきいきとした物語は感じられました。上演されないかなぁ、観てみたいです。

 今回は、常設展も観てきました。常設展でも、一体どうしたらこんなイメージが思いつくのだろう、そのイメージを形に出来るのだろう…と考えていました。成田亨の「ウルトラマン」の怪獣たちや、棟方志功の作品など。不思議です。

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 奈良美智「あおもり犬」。この日も大人気でした。

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 青森は桜の季節でした。美術館の周りに桜が植えてあります。花と白い建物。合います。

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by halca-kaukana057 | 2018-04-30 23:00 | 旅・お出かけ

日の名残り

 この本の感想も昨年のノーベル賞授賞式あたりに書きたかった。ノーベル賞関連書をもうひとつ。今まで、カズオ・イシグロ氏の作品は読んだこともなかったし、全然知らなかった(教養がない)。ノーベル文学賞受賞で、代表作の紹介を読むことが増え、読んでみようかなと手にとりました。


日の名残り
カズオ・イシグロ:著、土屋政雄:訳/早川書房、ハヤカワepi文庫

 イギリスの貴族の大きな館、ダーリントン・ホール。この屋敷はダーリントン卿の屋敷だったが、卿の死後、アメリカ人のファラディに渡る。ダーリントン卿の時代から執事を務めてきたスティーブンスは、引き続きファラディの元で働いている。ファラディが少しの間アメリカに帰るので、その間、休暇を取らないかと言われたスティーブンス。ずっと屋敷を守り続けてきたので最初は戸惑ったが、屋敷の召使が次々と辞めてしまい、人手が足りなくなってきた。かつてダーリントン卿の時代に女中頭を務めていたミス・ケントンのことを思い出し、ミス・ケントンに話せば何とかなるかもしれない…。ミス・ケントンに会うため、ファラディに借りたフォードで旅に出たスティーブンス。旅の間、思い出すのはダーリントン卿の時代の屋敷での様々な出来事や人々のことだった…。


 読んで、最初に思ったのが、スティーブンスの生真面目さ。頭が固い…という表現はちょっと違う。執事として、召使たちをまとめ、全員の仕事の状況を把握し、仕事を割り振る。ダーリントン卿や卿のお客(貴族や政治家、有名人も珍しくない)に快適に、居心地よく過ごしてもらうため、滞りなく仕事を進め、何か要求があれば応え、忙しさを表に出したり、何かあっても取り乱したりしてはならない。なので、「頭が固い」という表現は違うだろう。スティーブンスは自分の仕事も、召使たちの仕事も、しっかり把握し遂行していた。でも、やっぱり非常に生真面目である。執事とはこういうものなのかもしれないが、そのスティーブンスの生真面目さ、まっすぐさが滑稽に思えるところがよくあった。不器用にも思える。イギリスのドラマ「ダウントン・アビー」を観ていれば、執事や女中の仕事や上下関係についてもっと知ることができて、楽しめたかもしれないと思う。

 スティーブンスは何度も「品格」という言葉を使う。執事の「品格」、イギリス人の「品格」などなど。「品格」とは何か、と問う。仕事への誇り、その仕事を何があっても完璧に遂行すること、プロフェッショナル、という意味でも使われている。スティーブンスの父も執事で、ダーリントン・ホールで働いていた。しかし、老いは仕事にも影響する。様々な仕事ができなくなったが、執事の仕事を全うした父。父が生死をさまよう中、屋敷では重要な国際会議が開かれていた。その仕事に邁進したスティーブンス。家族よりも仕事を取った(という表現は合っているのだろうか…そういう問題ではないと思うが、現代の私から見ると「家族より仕事を取った」と思ってしまう)。執事の父も、それを望んでいたかもしれない。息子も立派な執事になったのだから。スティーブンスも父を尊敬している。

 そんなスティーブンスにとって、女中頭のミス・ケントンは不思議な存在だったが、本当は信頼できる仕事のパートナーだ。スティーブンスとミス・ケントンはなかなか噛み合わない。でも、どこかで合うところもある。毎晩、ミス・ケントンの部屋でココアを飲みながら打ち合わせをする「ココア会議」でも、意見が噛み合わないことがある。スティーブンスはダーリントン卿の申しつけの通りに仕事をし、決断することがあれば表向きには感情を挟まずに決断する。ミス・ケントンは感情も込めて仕事をしている。でも、ミス・ケントンは仕事はしかりやっていた。新しい女中が入れば、しっかりと教育して、見事な女中に育てた。どちらも仕事には誇りを持っている。ミス・ケントンが「品格」という言葉を使うことはないが、ミス・ケントンにも女中として、人間としての「品格」はある。そのミス・ケントンとの再会は…良い再会だなと思った。スティーブンスが、ミス・ケントンに声をかけられなかったあの日の出来事が、静かなかなしみを誘う。

 この物語で、スティーブンスが旅をしているのは1950年代。ダーリントン卿に仕えていて回想されるのは、第1次世界大戦後から第2次大戦後にかけて。変わりゆくヨーロッパ、変わりゆくイギリス。戦争の足音が屋敷を、ダーリントン卿を巻き込んでゆく。スティーブンスは、執事として、ダーリントン卿やお客のために働く。ダーリントン卿を敬愛し、信じていた。しかし、ダーリントン卿は、どんどん歴史の渦に飲み込まれてゆく。ダーリントン卿に何があったのか、スティーブンスが知らなかったわけではない。お屋敷に何の目的で誰が来て、というのは知っていた。だが、職務なので、深入りはしない。ダーリントン卿の友人であるコラムニストのディビッド・カーディナルがある晩突然屋敷を訪れ、その晩、屋敷で何があるのか探っていたエピソードから、スティーブンスの立場がわかる。スティーブンスの立場では、そうするしかなかった。それも、執事の「品格」だろう。ラストシーンのスティーブンスは、泣いてはいるが、「品格」はそのままだ。ダーリントン卿のもとで職務を成し遂げた。何があっても取り乱さない。過去を振り返り、その過去に何か間違いがあったとしても、生きている限り未来はある。その未来をどうするかは、これから自分が決めることだ。スティーブンスだけの話ではない。ミス・ケントンも。ミス・ケントンはスティーブンスよりも先に、そのことに気づき、決めてしまったが。

 旅の道中のエピソードも面白い。田舎の人々が、スティーブンスのことを紳士と間違えて、恭しく接する。それに対するスティーブンスがまた生真面目で、不器用だ。その不器用さが、心優しくも思える。

 文体は最初は固いかなと思ったのですが、読んでいくととても心地よいです。静けさがちょうどいい。訳者の土屋さんが、この作品を訳すきっかけになったエピソードがあとがきで書かれているのですがこれもまた面白い。まさかフィンランドが関係するとは。他にも読んでみたいカズオ・イシグロ氏の作品があるので、読んでいこうと思います。
 「日の名残り」は映画化もされています。DVDがあるので、こちらも観てみようと思います。原作とどう違うのかな。

 先日の「重力波は歌う」といい、カズオ・イシグロ氏の作品といい、2017年のノーベル賞は早川書房さん大当たりですね。

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by halca-kaukana057 | 2018-04-23 23:26 | 本・読書

重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち

 去年のノーベル賞受賞式の近辺に書きたかった記事です…。
 2017年のノーベル物理学賞は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のライナー・ワイス(Rainer Weiss)博士、カリフォルニア工科大学のバリー・バリッシュ(Barry C. Barish)博士、キップ・ソーン(Kip S. Thorne)博士に授与されました。
Nobelprize.org : The Nobel Prize in Physics 2017

日経サイエンス:2017年ノーベル物理学賞:超大型干渉計「LIGO」を構築,宇宙から来る重力波を初めて観測した3氏に
 ↑LIGOの仕組みの解説もあり、わかりやすいです。
アストロアーツ:重力波検出に貢献した研究者3名、ノーベル物理学賞を受賞

 重力波を検出したレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」のプロジェクトに携わってきた3氏をはじめとする重力波観測と「LIGO」建設のノンフィクションです。


重力波は歌う――アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち
ジャンナ ・レヴィン:著、田沢恭子、松井信彦:訳/早川書房、ハヤカワ文庫 NF/ 2017(単行本は2016)

 アインシュタインによる一般相対性理論で、存在すると言われていた重力波。しかし、重力波による空間のゆがみは非常に小さく、アインシュタイン自身も観測出来るかどうかには不可能と考えていた。だが、重力波は存在する、観測することができる、という科学者たちが、少しずつ観測装置を考え出し、観測に向けて動いていた。
 その中のひとり、ジョセフ・ウェーバーは重力波に共鳴して振動するという「ウェーバー・バー」を作った。また、ジョン・ホイーラーやロナルド・ドレーヴァーという科学者も重力波検出に乗り出した。「ウェーバー・バー」では重力波を検出することはできず、ウェーバーは責め立てられた…。ウェーバーの最期がまたかなしい。

 国籍、出身、ルーツも異なる科学者たち。彼らがどのように科学者人生を歩み始めたのか、どこで重力波の研究と出会ったのか、それらを読むのは面白い。皆個性的だ。だが、重力波を検出する機器はどうやったらできるのか、どう建設するのか。なかなかプロジェクトは進まない。レーザー干渉計型重力波検出器のプロトタイプは作られるが、複雑な仕組みで、コントロールするのが難しい。ひとつひとつ、問題を解決していき、一方で、プロジェクトが正式に認められ、予算が出るように尽力する。科学者は、実験や研究だけやっているわけではないというのは、他の宇宙・天文プロジェクトでも読んだ。政治家や役人たちにわかるようにプロジェクトを説明し、予算を得られるようにしないと、肝心の実験も機器の開発も研究もできない。未知の世界に乗り込んでいく科学者というのは、マルチな才能を持っているのだなと本当に思う。

 途中、「LIGO」ってどういう仕組みだったっけ…?と何度も思うことがあった。この本を読むために、もう1冊重力波と「LIGO」に関して解説した本が欲しいと思ったほどだ。
 ノーベル物理学賞を受賞した3氏の中で、バリー・バリッシュ博士は一番後、1990年代になって「LIGO」プロジェクトの統括責任者になった。受賞したのは3氏だが、ホイーラーやドレーヴァー、ウェーバーらたくさんの科学者が重力波観測を目指していた。志半ばで亡くなったのが残念だ。重力波を観測し、ノーベル賞も受賞したことを天国で喜んでいるだろうか。喜んでいてほしいと思う。この「LIGO」プロジェクトでも、志を引き継いでいくという熱いものに触れることができた。

 ノーベル賞を受賞するのは、その成果が出てからしばらく経ってから、というのが多い(スーパーカミオカンデの故・戸塚洋二博士を思い出さずにはいられない)。今回の受賞は、重力波検出の報せが出てすぐの受賞。本当によかったと思う。「LIGO」だけでなく、日本の「KAGURA」も含めて、重力波天文学はこれからますます盛り上がる。その黎明期を伝える本として、とてもいい本だと思います。

 あと、先日亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士についても少し出てきます。キップ・ソーン博士とは友人で、科学関係の賭けをするが、ホーキング博士は賭けに弱い、と。答えが出そうもない妙な賭けもしている。科学者同士のこんな話題も面白い。

・「LIGO」の重力波検出の際に書いた記事:重力波天文学が始まる
 重力波は「聞く」。この本にも込められています。

 ちなみに、この本を買ったは、ノーベル賞受賞直後。帯がこれでした。
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 もし、2017年に受賞しなかったらどうなっていたんだろう…。現在は「ノーベル賞受賞!」になってます。

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by halca-kaukana057 | 2018-04-16 22:36 | 本・読書

雷、霰、のち晴天とISS

 今は国際宇宙ステーション(ISS)が日没後の空に見えています。これまで、2回ほど国際宇宙ステーション(ISS)を目視したのですが、どれも撮影に失敗。観ただけでもブログに書いてもいいのですが、一文だけになってしまう。こういう時、twitterって便利だだったなと思います(でも戻る気は一切ない。再開したいとは全く思わない。本当の意味での独り言つぶやきツールで、フォローしない、フォロワーもいない、リプライもリツイート等も受け付けないのなら考えますが、それじゃSNSじゃないね。)。

 今日は夕方、空が暗くなったなと思ったら、雷が一発落ちました。その後強くあられが降る。当地では4月に入っての雪は珍しくありません。昨日一昨日も雪は降ってた。しばらくして、窓の外が明るくなったなと思ったら、晴れてる。これは、ISS見えるかもしれない。時間と方角を調べて待ちます。

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北の空を行くISS.左から右へ飛んでいっています。ISSの軌跡の上に、北斗七星のひしゃくの部分の4つの星が。金井さーん、手を振りました。

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東の空へ向かうISS.雲に入り、ISSも見えなくなりました。画像左には、北斗七星の柄の部分。北斗七星を分割撮影する構図になりました…北斗七星とISSを撮りたかった。

 本日、水星探査機「MMO」の愛称・メッセージの応募が締め切られました。愛称は全くわかりません。読めません。当たるといいなぁ。
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by halca-kaukana057 | 2018-04-09 22:14 | 宇宙・天文

明日は、いずこの空の下

 上橋菜穂子さんの作品も積読があるのですが、今日は新しく出たエッセイを。

明日は、いずこの空の下
上橋菜穂子 / 講談社、講談社文庫 / 2017

 作家であり、文化人類学者の上橋さん。フィールドワークや、作品の取材も兼ねて、世界のあちこちを旅する。そんな旅のルーツは高校生の頃。旅は母と一緒のことも多い。世界各地で体当たりの旅のエッセイ集です。

 「精霊の守り人」をはじめとする「守り人」シリーズ、「獣の奏者」シリーズなどでお馴染みの上橋さん。物語の舞台となる、リアリティのある異世界の設定にはいつも驚かされます。土地だけでなく、気候や民俗風習、言語、食べ物、政治、経済…その異世界全部。モデルの場所はあるのだろうかなどと思ったことも。作家であると同時に、文化人類学者として、オーストラリアのアボリジニの研究もされている。フィールドワークで現地へは何度も足を運んでいる。そんな上橋さんは旅上手なんだろうな…と思いきや、そうでもない。身体が弱く、体調を崩しやすい。方向音痴。語学も苦手。子どもの頃から世界のファンタジー文学を読みふけり、その世界に憧れても、家でぬくぬく寝て、本を読んでいる方がいい…。美味しいものがあれば尚更…。「ホビットの冒険」のビルボのように。何だか笑えてしまいます。上橋さんのお気持ちがよくわかる。私も家にいる方がいい。

 でも、作家になるためなら何でもやってやる。上橋さんの背中を押すのは、そんな気持ちと旺盛な好奇心。女子高生時代の、イギリス研修旅行がその原点。「グリーン・ノウの子どもたち」の作者、ルーシー・M・ボストンさんに会ったエピソードは、上橋さんの今に繋がる大きな力なったんだなぁと思います。

 多いのが、食べ物の話。とにかく食べ物が美味しそうな上橋作品ですが、普段から様々な文化の暮らしの中にある食べ物に注目しているからこそ、あんな美味しそうな料理が次々と出てくるのだなぁと。でも、上橋さんが読んできたファンタジー文学でも、食べ物、料理の表現を大事にしている作品もある。そんな作品のよいところを、しっかりと引き継いでいるのですね。上橋さんの作品も、このエッセイも、お腹が空いている時(しかもすぐにご飯にありつけない時)に読むのは危険かも知れません…。

 上橋さん以上にアクティヴなお母様との旅のエピソードも面白い。タフでどんどん飛び込んでいくお母様にすごいなぁと思っていました。私も、家でごろごろしている方が好きなのに、旅に出るとアクティヴになれる。旅に出ることで、また違う自分の一面を引き出している、違う自分に会えている気がする。

 上橋さんが旅先で思った様々なことが、上橋作品に投影されている。ファンタジー文学というものに、上橋さんは何を考えているのか。何を表現したいのか。上橋作品をますます面白く読めるエッセイだと思います。もちろん、いち作家の旅のエッセイとしても面白い。読んでいると旅に出たくなります。
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by halca-kaukana057 | 2018-04-06 22:08 | 本・読書


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