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ヴィンランド・サガ 21

 そろそろこの間読んだ「ヴィンランド・サガ」最新刊の感想を書こうかな…と思ったら、発売したのは8月下旬だったことに驚きました。そんなに前だったっけ?!本を買っても読まずに積んでおくことを「積読」と言いますが、私の漫画の場合、読んだ後そのまま積んでおいてます…。


ヴィンランド・サガ 21
幸村誠/講談社、アフタヌーンKC/2018

 戦いの中にある、ヨーム戦士団の本拠地、ヨムスボルグ。砦から脱出する途中に傷を負ったレイフ。レイフを戦場から遠ざけるためトルフィンとエイナルはトルケルに話すが、相手にしてもらえない。砦の中にはグズリーズが取り残されている。グズリーズを助けるために再び秘密の井戸の通路から砦に侵入するトルフィンとエイナル、ヒルド。その後を、トルケルの手下であるアスゲートに命じられ、シグルドが追っていた。砦の中に侵入したトルフィンたちとシグルド。トルフィンたちはバルドルのもとへ案内され、グズリーズと再会する。どうやって砦を抜け出すか…そこへ、フローキがやって来る。一方、シグルドは…。砦の外では、ガルムが…。


 21巻の山場はトルフィンとフローキの対面。トルフィンは19巻で、父・トールズを殺したのはフローキだと知ります。トルフィンの表情、感情が一気に変化する。もう自分から人を殺す戦はしない。仲間を守るためであっても人を殺すことはしない。どんな時も、そういう立場だったトルフィンですが…。アシェラッドのもとでトールズの仇を討とうとしていた少年の頃のトルフィンとも違う。あの頃も殺気に満ちていたが、このフローキに会ったトルフィンは全然違います。これまで積もり積もった父への想い、真実を知った衝撃。その全てが、恨み、怒りとして暴走している。こんなトルフィンは初めて見る。バルドルの言葉も重い。まだ少年だというのに、祖父がどんな人間か知っている。知っているからこそ、バルドルも戦士団を継ぎたくないし、戦もしたくないのだと思う。

 「元気君」シグルドは、トルフィンの後を追って砦の中へ。しかし、兵士に見つかってしまい大変なことに。コミカルな部分もあるのですが、かなりやばい状況です。そんな状況で、シグルドの手下の太っちょさん(名前がわからない…すみませんw)が、鋭い質問を。シグルドは本当はグズリーズのことを好きではないと指摘。それに続く言葉。
シグやんが本当に望んでいることはなに?
本当に望んでいることをしなよ
そのほうがグズリーズさんもシグやん自身も幸せになれるよ
たぶんね
(78ページ)
 この言葉が、後半、終盤のシグルドを変えた、のか…?

 砦から脱出する方法を探り、ある手に出たトルフィンたち。砦の中は大変なことに。でもうまくいくんじゃ…と思っていたら、この人の登場…ガルムです。本当にタイミング悪い奴だな!シグやんピンチ。どうなる!

 シグルドへの鋭い質問もそうですが、砦の中で処刑された名もなきヴァイキングの兵士の会話もポイントです。20巻同様、ヴァイキングたちの中にも、自分たちの生活、生き様について、「これでいい」と思っていない者もいる。これが、トルフィンたちをヴィンランドへ向かわせる動機となるはずなのですが…まだまだ長そうです。まずは、ヨムスボルグを無事に脱出できるのか?21巻に続く。

・20巻:ヴィンランド・サガ 20

 ところで、帯にも書いてあるのですが、「ヴィンランド・サガ」アニメ化決定です!!
コミックナタリー:「ヴィンランド・サガ」WIT STUDIO制作でTVアニメ化、幸村誠も歓喜
◇アニメ公式サイト:アニメ「ヴィンランド・サガ」
 いつかはアニメ化するだろう…でも、血がいっぱい流れる、残虐なシーンが沢山、物語も長い(トルフィンの少年時代だけで終われない)ので、アニメ化は難しいだろうと思っていたのですが…本当にアニメ化しますか!来年放送予定。動くトルフィンやアシェラッド、少年時代の美少年クヌートを観たいです!ユルヴァちゃんも観れますね!
 アニメ公式サイトでは、幸村誠先生と、籔田修平監督の釣りをしながらの対談が面白いです。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-31 22:47 | 本・読書
 本屋で見つけて気になった本です。この頃、ハヤカワノンフィクションはよくチェックします。


羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
ジェイムズ・リーバンクス:著/濱野大道:訳/早川書房、ハヤカワ・ノンフィクション文庫/2018


 著者のジェイムズ・リーバンクス氏はイギリスのイングランド北西部、湖水地方で羊飼いをしている。家は、600年続く羊飼いの家系。物心つく頃には、祖父が営む農場の仕事を手伝っていた。父も農場で働いている。
 ジェイムズ氏にとって、農場と羊飼いの仕事が生活のすべてだった。しかし、年齢が上がるにつれて、現実が見えてくる。中等学校では、農場の家の子どもであることはバカにされる理由だった。学校の授業でも、湖水地方や羊飼いの歴史などには触れない。ジェイムズ氏は落ちこぼれ、学校から自ら去った。
 その後は農場の手伝いをしていたが、祖父が倒れ、他界した。祖父の農場を相続すると言うことは、借金など難しい問題を含んでいた。それで父と対立、ジェイムズ氏はそのころ読み始めた数々の本に惹かれ、学問の世界へ自ら向かうことになる。教育センターに通い、大学受験を目指す。それもオックスフォード。ジェイムズ氏はオックスフォード大学に入学する。


 タイトルと表紙カバー写真に惹かれて買った本だが、いい意味で期待を裏切られた。のどかな牧場で羊たちに囲まれ、のんびりとファーマーの生活とイギリスの湖水地方の美しい自然を楽しんでいる…という内容の本ではない。羊飼いの仕事はとてもハード。趣味で飼っているわけではない。生活の糧である。育て、競売に出し稼ぐ。出産シーズンは大変だ。羊飼いの仕事の現実を隠すことなく書かれている。口蹄疫の流行の惨劇もリアルに描かれるし、血が流れることもある。全てそのまま書いている。理想郷のような癒し系の文章よりも、現実をしっかりと受け止め正直に書いている内容に好感を持った。

 農場の男は、本を読むものではない、とこの本で出てくる。本を読むのは仕事を怠けている証拠。本を読む暇があったら働け。羊飼いの男に学問は必要ない、という考え方だ。ジェイムズ氏も、子どもの頃はそんな風に育った。しかし、祖父の死後、父と対立した頃、母方の祖父が遺した本を読み漁るようになる。その本の中に、ウィリアム・H・ハドソン「ある羊飼いの一生」という本があった。その本は、ジェイムズ氏にとってかけがえのない本になる。この本も、その「羊飼いの一生」を意識したのだろう。

 イギリスの湖水地方と言えば、「ピーター・ラビット」のビアトリクス・ポターによるナショナル・トラスト運動がある。学校で習ったのを覚えている。「ピーター・ラビット」などの絵本作家というよりも、ファーマーで自然を保護する活動をした人として知られているそうだ。農場のこともよく知っている。農場を舞台にした絵本も描いている。こんな一節がある
「ポターの作品がいまだ高い人気を誇るという日本では、スミット・マークなどのエピソードは読者にどう受け止められているのだろう?」(380ページ)
絵本よりも、ピーター・ラビットはキャラクターとして愛されている…という日本の現実を申し訳なく思った。
 他にもワーズワースなど湖水地方を描いた作家も登場する。文学方面からのアプローチも出来るのはありがたい。

 オックスフォード大学に進学しても、羊飼いの仕事から離れたわけではない。休みになると湖水地方に戻り、農場を手伝う。大学卒業後、農場に戻ったが、ユネスコ世界遺産センターの「エキスパート・アドバイザー」として観光が地元共同体に利益をもたらす仕組み作りの仕事もしている。インターネットの発達によって、農場の仕事と掛け持ちすることができるようになった。600年続く農場も、新しい変化を受け入れ、また続いていっている。

 羊飼いの仕事は厳しい。でも、羊飼いたちは品評会や競売で勝ち取った賞のプライドを持ち、厳しくも美しい自然の中で羊たちを育てている。オックスフォードで学んだことも、羊飼いの仕事も、自分で選んだ。自分で選んだからこそ、この本に書いてあることは力強い誇りに満ちている。大学を卒業し、戻ってきた時の箇所がいい。
 眼のまえにそびえる湖水地方のフェルを眺め、ついに家に戻ってきたのだと実感した。フェルが友達のように私を取り囲んでいるくれているような気がして、拳を宙に突き上げて叫んだ。「やっと帰ってきたぞ!」
(277ページ)
 目の前にあるものを受け入れ、果敢に人生に挑戦もする。そんな生き方に触れられる本です。文章もすっと入ってきます。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-29 22:23 | 本・読書
 NHK BSプレミアムで放送された「刑事モース オックスフォード事件簿」(原題:ENDEAVOUR)、完全にハマりました…。
・前の記事:「刑事モース」が面白い!

 第3シリーズ最終回の第13話(Case13)、面白かったです。「愛のコーダ」(Coda)。何と言ってもサーズデイ警部補がかっこいい。ギャング相手でも尻込みせず、肝が座っている。ギャングを力で抑え込むシーンも。それが、モースとやり方や意見が異なり、一時的に不協和音になってしまったのが、このドラマの根底に流れる哀愁や暗さを感じさせていい。体調不良の原因(Case9で出てくるのですが、Case9を観ていないためどういう状況なのか詳しくは知らない)を自ら解決してしまったのは何と言っていいかすごい。一方のモース。ギャングとはいえ、力で抑え込む、力で白状させる方法には納得できない。サーズデイとは別に、一般人のフリをしてさりげなく怪しい人物に近づき聞き込みをする。検視の部屋に、コンサート帰りなのか黒のボウタイのフォーマルでやって来たのは、本当モースらしいwモースの金銭感覚についても新しい情報が。一体何に金をつぎ込んでいるんだ…コンサートやレコード、酒か…?山場のシーン、まさかこんな展開になるとは。サーズデイの娘のジョアンも父譲りなのか強いです。どんな状況でも周りをよく見て、事件の手がかりになるものをさりげなく見つけるのもモースらしいです。
 それぞれの登場人物もよかった。トゥルーラブ巡査の私服を見れたのは嬉しい。ストレンジがモースより出世が早かった理由も感じられました。ブライト警視正、今回もいい役どころです。物語の山場のシーンで、デブリン医師が取ろうとしたした行動も、デブリン医師らしいなと感じました。
 第4シリーズが早く観たくなる終わり方。サーズデイ家は寂しくなるなぁ…。モースにとって、家族みたいな家だったのに…。

 一方、GYAO!で配信中の第1シリーズ。全部観ました。面白かった。Case5、これも寂しく切なくなるお話。「家族の肖像(Home)」のタイトルの通り、様々な家族が描かれます。サーズデイ家、サーズデイの過去も明らかに。Case13でもそうですが、ジョアンは危険な男や場所に惹かれるのでしょうか…。モースも、実家に戻ります。とはいえ両親は離婚、幼いエンデバーを引き取った母は亡き人。父は再婚したので、モースの実家とは言えないかも。父との確執はあるけれども…実の父である。Case5でもギャングが出てくるのですが、ギャングの家族についての部分も興味深い。

 今回の記事の本題。このCase5で、興味深いシーンがありました。ストーリーそのもののネタバレにはならない範囲で書きます。Case5で、「プロムスに行った」というせりふが出てきます。「プロムス」、勿論、7月から9月までロンドンで開催される音楽祭「BBC プロムス(Proms)」のことです。ここでテンションが上がった私。「「ハフナー」とマーラーの4番」が演目だったそうなのですが、後で、9月3日とわかります。何年の話だ?
Wikipedia:刑事モース〜オックスフォード事件簿〜
 Wikipediaによりますと、Case5は1966年1月。前の年のプロムスなので、1965年9月3日の公演。調べました。

BBC Proms:Prom 42
 ありました!プロムスの公演記録は、全て公式サイトにあります。どんな昔のものも検索できます。
・モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K385「ハフナー」
・ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」(Schelomo) (チェロ:ジャクリーヌ・デュ・プレ)
・オネゲル:パシフィック231
・マーラー:交響曲第4番 ト長調 (ソプラノ:ヘザー・ハーパー)
 /ノーマン・デル・マー:指揮、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
 チェロがデュ・プレ!正式なデビューが1961年だったので、その数年後。プロムスの常連になったころです。多発性硬化症と診断されたのが1971年。人気を集めていた頃だったのか。オネゲル「パシフィック231」が入っているのも面白い。指揮のノーマン・デル・マーはプロムス常連の指揮者。ラストナイトも指揮しています。この頃は、マルコム・サージェントがプロムスの多くの公演を指揮していた。この年のラストナイトもサージェントです。
 これはモースは聴きに行きたかっただろう。モースはプロムスの全公演を記憶していそうだ。毎年その年のプロムスの全公演日程が発表されればチェックするだろうし、この頃はBBCのラジオで放送されていたのだろうか。モースの部屋にはレコードプレーヤーはありますが、ラジオは見たことがない。でも、ラジオ放送があれば聴いていそうだな。

 ドラマはフィクションですが、現実とリンクさせてある。適当にしない。ちょっと感激しました。イギリスのドラマですから、気になる人は調べているだろう。そこまで考えて練った脚本なんだと感じました。Case5の他の部分も練ってあるなぁと感じました。

 さて…第1シリーズも観終わって、第3シリーズの放送も終わって、「モースロス」になりそうだ…。第2シリーズを観たいが、第1シリーズ配信終了後(11月9日まで)、GYAO!でやってくれるのだろうか。やってくれたらいいなぁ。もし配信されないとなると、どこで観られるか…。探してみよう。
 ちなみに、WOWOWでは第4シリーズを放送予定。Case14は無料放送らしい。イギリス本国では、第5シリーズまで放送。現在第6シリーズを制作中とのこと。NHKだとまだまだイギリスには追いつけませんが、頼りはNHKだなぁ。

 ちなみに…。フィンランドでも、「ENDEAVOUR」放送されています。フィンランド語版タイトルは「Nuori Morse」。英語で言えば「Young Morse」です。若いモース、そのままです。
YLE TV1:Nuori Morse – suosikkisarjan viides kausi
 フィンランド国営放送(YLE)で放送中。現在第5シリーズだそうです。日本より進んでる!いいないいなー…。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-27 22:43 | 興味を持ったものいろいろ
 小惑星リュウグウ上空に滞在中の小惑星探査機「はやぶさ2」。先日、リュウグウがあまりにも岩がゴロゴロした地形で、タッチダウンを来年1月に延期する、というニュースがありました。でも、タッチダウンに向けて、今出来ることをしています。

 そのひとつが、着陸リハーサル。リュウグウに降下し、出来る限り近づきます。その第3回目のリハーサルでは、タッチダウンの際の目印になるターゲットマーカーが分離されました。

JAXA:小惑星探査機「はやぶさ2」搭載ターゲットマーカの小惑星Ryugu(リュウグウ)への投下について

アストロアーツ:「はやぶさ2」着陸リハでターゲットマーカーの着地に成功

 「はやぶさ2」は、10月25日、高度12mまで降下しました。その際、ターゲットマーカーを分離。ターゲットマーカーは無事にリュウグウに着陸しました。上記リンク先に画像があるのですが、はやぶさ2の影が、これまで以上に詳細まではっきりとしています。そこまで近づいたんですね。リハーサルも順調だった模様。あとは、着陸に適した場所が見つかればなぁ…。

 ターゲットマーカーには、初代「はやぶさ」と同じように、一般から募集した名前が印字されています。勿論、私も応募しました。

「はやぶさ2」メッセージキャンペーン応募開始+イプシロンロケットも…!
「はやぶさ2」に襷をつなげ 「はやぶさ」帰還3周年&「はやぶさ2」メッセージキャンペーン募集中のお知らせ
【大切なお知らせ】「はやぶさ2」メッセージキャンペーン、締め切り迫る!
【大事なお知らせ】「はやぶさ2」名前・メッセージキャンペーン、募集期間延長!

 2013年のことです。この時、こう書きました。
応募した後に表示される「登録ID番号」は、大切に保管しておいてください、だそうです。
 この理由が、これです。
JAXA はやぶさ2プロジェクト:星の王子さまに会いにいきませんか ミリオンキャンペーン2 ターゲットマーカ・再突入カプセルへの搭載位置を調べよう
 応募した名前が、ターゲットマーカーのどの部分に印字してあるのか検索できます。その際、「登録ID番号」を使います。こういうことだったのか。…しかし、5年も前。ID番号、どこ行ったっけ…?という人も大丈夫。登録した名前で検索できます。が、同じ名前の方もいると、候補がいくつか表示されます。
 メールボックスを念入りに調べたところ、ID番号を記録したメールが出てきました。場所がわかりました。よかった。

 ターゲットマーカーは全部で5個あります。5個とも同じ位置に印字されています。このターゲットマーカーが「はやぶさ2」を導きますように。
 ターゲットマーカーそのものは、初代「はやぶさ」と同じです。相模原のJAXA宇宙科学研究所(ISAS)相模原キャンパスに展示されている「はやぶさ」模型に、ターゲットマーカーの模型も付いています。お近くの方、相模原に行く予定の方は是非見に行ってみてください。そして、カメラのシャッターの光をターゲットマーカーに当ててみてください。光ります。
・光るターゲットマーカーについてはこのレポをどうぞ(ちょっと長いです):緑の中に、宇宙科学の最前線  JAXA・宇宙科学研究所 相模原キャンパスに行ってきた
 今は、新しい展示棟ができました。展示もグレードアップしているそうです。また行きたいなぁ。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-26 21:34 | 宇宙・天文
 たまたまBSプレミアムを観ていたら、面白い海外ドラマに出会いましたよ。
NHK:刑事モース ~オックスフォード事件簿~

 コリン・デクスター原作の「主任警部モース」(原題:Inspector Morse)シリーズ。そのモースの新米刑事時代を描いたのが「刑事モース」(原題:Endeavour)。1960年代のオックスフォード。真面目で仕事熱心な若い刑事巡査・エンデバー・モース。鋭い観察眼と推理力を持っているが、まだまだ未熟。死体や血が苦手で見ると気分が悪くなる。短気で、突っ走るところもあり、上司たちからは煙たがられていた。警察を辞めようと辞表を書いて持ち歩いてもいた。そんなモースの才能を見込んだ警部補のサーズデイはモースをアシスタントにする。オックスフォードの町で起こる様々な事件に、モース、サーズデイたちは立ち向かう。

 現在、BSプレミアムでは第3シリーズを放送中…でもあと1話。第10話(Case10)から観たので、それまでの話がわからずさっぱり…。しかもCase10はモースの立場や環境、雰囲気がこれまでと全然違う回。前の9話(Case9)で何があったんだ?わからない状態。それでも、映像の美しさや、物語の面白さに惹かれました。ネタバレになるのであまり書けませんが、ある事件で警察を離れていたモース。しかし、そんなモースの周囲で事件が起こってしまう。もう警察は辞めたと思っていても、天性とも言える観察力、ひらめきで事件の核心に近づいていく。それに加え、聞き込みや遺留品などの捜査も地道に行う。モースには刑事の仕事が合っているんだなと思いながら観ていました。

 物語を彩るのが、音楽。モースはクラシック音楽が好き。特にオペラが好きで、歌うこともある(「主任警部モース」では、ワーグナーが特に好きなんだとか。「刑事モース」ではワーグナーはあまり出てこない模様)。モースの聴いているレコードや、登場人物の演奏が場面を盛り上げる。事件に音楽が関係することも。ドラマの始まりが、クラシック音楽とともに始まり、事件の断片のような映像が散りばめられる。何かが音楽とともに始まる予感。これが美しい。ドラマの舞台となるお屋敷の数々も美しいです。
 その一方で、1960年代…第二次世界大戦の傷跡も残っている。戦場で戦ったこともあるサーズデイの過去が重い。

 これは最初から観たい、と思っていたら、第1シリーズの5話がGYAO!で配信中です。
GYAO!:刑事モース~オックスフォード事件簿~ シーズン1
 11月9日まで。無料です。第1話(Case1)は、実際はパイロット版だった。第2話(Case2)が、実質の1話です。第3話まで観ましたが、面白い!ますますハマりました。Case1の事件の経緯、ラストには切なくなります。特に面白い!と思ったのはCase3.オペラが事件の鍵となります。オペラ好きなモースの知識がフル回転。警視正のブライトには「オペラ君」と呼ばれてしまうほど…。事件の合間に、立ち寄るサーズデイの家。サーズデイ家の奥さんや子どもたちはモースを家族のように迎えてくれるところにもじんわり。モースの家族、生い立ちには影がある模様…第3シリーズでも明かされている途中です。その影、孤独にも向き合ってくれるサーズデイがいい「親父」です。ラストのサーズデイの言葉がよかった…。

 サーズデイをはじめ、カウリー署の刑事、警官たちも味のある人ばかり。ただ、第3シリーズから観てしまった、その後第1シリーズを観るとモースとの関係が全く違う。最初は煙たがられ、出しゃばらずに事務仕事をしろを言われていたモース。それが第3シリーズでは全然違う。そこまでの変化の過程を、第2シリーズで観たいです。
 サーズデイは先述したとおり「親父」。突っ走りがちなモースをたしなめ、警察の仕事の大事なことを教え、モースを信頼している。署の上司たちに冷たく扱われるモースを助ける。上司であり、父親的な存在。また、愛妻家で、妻がランチに作ってくれるサンドイッチを楽しみにしている。いつも「中身は何かな~」と言うと、モースに中身を当てられ、不機嫌になってしまう…。Case1のラスト、モースをファーストネームで呼ぶシーンがよかった。
 巡査部長のジェイクスも、モースを煙たがっている一人。しかし、第3シリーズのCase11を先に観てしまったので、そこに至るまでを観たい…。巡査のストレンジは、モースを応援してくれる人のひとり。頼りになります。警視正のブライトは英国の警察の偉い人、というイメージ。こちらも第3シリーズのCase12が…。本当かっこいい。警察医のデブリン医師、とてもいいキャラしています。「刑事モース」になくてはならない存在です。

 まずはGYAO!で第1シリーズを観ます。その後もGYAOで配信してくれるかなぁ。NHKでも再放送しないかなぁ。DVDがないかなと思ったのですが、行動範囲のレンタル店に置いてない!なんてこった!
 あと、「主任警部モース」シリーズの原作を読みます。

ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

コリン・デクスター/早川書房


 これが第1作。原作では、モースはファーストネームの「エンデバー」をなかなか明かさないそう(ドラマでも)。「エンデバー」と聞くと、まずスペースシャトルを連想しますが、由来は勿論、ジェームズ・クック船長の船の名前。
・関連記事:手のひらの中のEndeavour

 「主任警部モース」は、イギリスでは「シャーロック・ホームズ」と同じぐらい、いや、ホームズ以上に人気のあるミステリーシリーズとのこと。「ホームズ」の次は「モース」か?
(勿論、「ホームズ」は今も大好きですよ)

インターネットTVガイド:【英国ドラマ通信】Vol.5 ショーン・エヴァンスの魅力から読み解く「刑事モース~オックスフォード事件簿~」三つのキーワード
 若いモース役のショーン・エヴァンスさん、かっこいいです。エヴァンスさんご自身と、モースのキャラクターには通じるところがある模様。

【追記・訂正】
 現在BSプレミアムで放送されているのは、「第3シリーズ」です。第4シリーズってどこから出てきた。訂正します。
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by halca-kaukana057 | 2018-10-23 23:08 | 興味を持ったものいろいろ
 久々に万年筆の話題です。今私が使っている万年筆は、セーラー「ほしくず」にセーラージェントルインク・ブルーブラック。プラチナ「プレピー」にプラチナカートリッジインク・ブルーブラック。この2本だけ。他の万年筆はお休み状態。もったいない。

 以前から、気になっているインクがあります。セーラーの「四季織(しきおり)」。
セーラー万年筆:SHIKIORI
セーラー万年筆 公式ウェブサイト:SHIKIORI 四季織 十六夜の夢(いざよいのゆめ) 万年筆用ボトルインク[全16色]

 セーラーのボトルインクは、ジェントルインクのシリーズでした。以前、「エピナール」のインクを買いました。もう廃盤になってしまいました…。その後、季節限定で出たという四季織のカラーのインクが復刻。万年筆で「四季織」シリーズが出た後、ジェントルインクは「四季織/SHIKIORI」シリーズに統合されました。インクの瓶の形、容量も変わりました(減りました)。でもお値段は変わらない。

 日本の四季がテーマで、パイロットの「色彩雫(いろしずく)」と似ています。似たような色もあります。が、パイロットとセーラーはインクの性格も違います。似たような色でも、微妙に違ってくるのだろう。そこが万年筆インクの奥深いところ(沼)。

 この中で気になっていたのは、「山鳥」。青緑色のインクです。サイトを見ていたら、「仲秋」も気になった。どちらも秋の色です。

 買ってしまいました。
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 「山鳥」と「仲秋」です。
 早速万年筆に入れてみます。
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 山鳥は青緑色なのですが、渋さと濃さがあります。青が強めに出るとブルーブラックのようです。今回入れたクリアーキャンディはMF(中細)ですが、太目のニブに入れると楽しそう。色の変化が気に入りました。「仲秋」は濃いグレーに紫が入っています。この色合い好きだ…。「色彩雫」の「冬将軍」に似ているかなと思ったのですが、まず濃さが違う。あと、「冬将軍」は青みが入っています。どちらも好きだなぁ。

 箱には、説明書きの小さなリーフレットが入っています。各色の説明も。書いてみました。
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 山鳥。書いてからしばらくすると、また色合いが変わります。落ち着いた青みの強い青緑です。渋めで落ち着きがあるけれども、普通のブルーブラックとは違う青。数日、数ヶ月、数年後の色の変化が楽しみになるインクです。やっぱり好きだ。

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 仲秋。仲秋の名月の夜空なんですね。明るい星が少ない秋の夜空という感じです。秋だけじゃなく通年使いたいインクです。細めのニブ(細字。「ほしくず」あたり)に入れると、はっきりとしたシャープな文字が書けると思います。

 どちらも落ち着いた色で気に入りました。日記や、考え事の記録をしたり、メモをとったりする時に使いたいです。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-22 22:15 | 興味を持ったものいろいろ
 昨日、国際水星探査計画BepiColombo(べピコロンボ)の、日本とヨーロッパの探査機2基が、アリアン5ロケットで打ち上げられました。打ち上げ成功、探査機は太陽電池パネルを開いて、無事に航行中です。
水星磁気圏探査機「みお」(MMO)の打上げ結果について
sorae:「みお」水星へ出発!日欧探査機、アリアン5ロケットで打ち上げ成功
アストロアーツ:水星探査機「ベピコロンボ」打ち上げ成功

◇打ち上げライブ中継の模様はこちらで観られます:国際水星探査計画BepiColombo/アリアン5型ロケット打上げライブ中継

 南米、フランス領ギアナのクールーにある、ギアナ宇宙センターから打ち上げられました。日本時間では午前中でしたが、現地は夜。
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 夜のため、打ち上げのスクリーンショットはあまりうまく撮れませんでした。
 アリアンスペースの打ち上げライヴ中継は、とても洗練されています。デザインもすっきりしていて、見やすい、わかりやすい。第1段分離などの映像が来るのが早い。生中継を観ていましたが、とてもスムーズなきれいな打ち上げでした。現地には國中先生も。中継に写っていました。管制室のスタッフの方々は、JAXAとESAの両方のロゴの入ったシャツを着ていました。

 ベピコロンボ計画の探査機は2基。まず、日本の「みお」。水星の磁気や薄い大気を観測します。ESAの「MPO」は、彗星表面の地形や鉱物の種類を観測します。水星までは2基は「MTM」に載りくっついていますが、水星周回軌道投入後、分離してそれぞれで観測します。ESAの「MPO」は愛称はつけないのだろうか。

 大変なのは水星にたどり着くまで。7年かかります。地球や金星、水星で9回ものスイングバイを行います。これまでの惑星探査機の中では最多。水星周回軌道投入も、太陽の熱や引力に負けないように行います。とても厳しい旅路です。
 水星には、これまでNASAの「マリナー10号」と「メッセンジャー」しか探査に行ったことがありません。大きな壁になるのが、太陽の熱。「みお」も「MPO」も耐熱対策はばっちりです。

 長い旅ですが、見守っていきたいです。どうぞご安全に!

◇「みお」JAXA/ISAS公式サイト:JAXA:ISAS:水星磁気圏探査機「みお」


ベピコロンボの壮大な冒険 | パート1:ロケット発射点へ!

 ESAによる、ベピコロンボ計画のアニメーション。「ロゼッタ/フィラエ」も可愛かったが、今回も可愛い。英語で観たいという方はこちらで:The epic adventures of BepiColombo | Part 1: to the launch pad!
 他にも、ドイツ語、フランス語、イタリア語などあります。


【過去記事】
水星探査機「MMO」の名付け親になろう! & 水星にメッセージを送ろう!
金井さん帰還、「はやぶさ2」往路イオンエンジン運転完遂、水星探査機「MMO」愛称決定
 「みお」の愛称選定も困難でした。本当に思いついて応募、当たった方はすごいです。
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by halca-kaukana057 | 2018-10-21 23:01 | 宇宙・天文

秋の紫陽花

 アジサイは、梅雨、夏の花。秋になったら枯れるだけ、と思っていたのですが、道端でこんなアジサイに出会いました。
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 元の色は赤っぽい紫色だったのでしょうか。鮮やかな、渋い赤に惹かれました。濃い色のアジサイなら、枯れた時、違う表情を見せてくれているかもしれない。
 街路樹や公園の樹木はそれぞれの色に色づいています。ナナカマドの赤い実も鮮やかです。遠くの山は、晴れていれば紅葉しているのが確認できます。そんな秋の色が好きですが、素敵な秋の色に出会いました。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-19 23:05 | 日常/考えたこと
 今回もシリーズではありませんが、シベリウス「クレルヴォ(クレルヴォ交響曲、クッレルヴォ)」 op.7 を聴いた感想を。9月、パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、NHK交響楽団で「クレルヴォ」を含む演奏会がありました。N響初演なのだそうです。意外。誰かやってるかと思った。コンサートに行けなくても、N響はFM生放送とEテレ「クラシック音楽館」でのテレビ放送があるのでありがたい。そのFM生放送の録音と、「クラシック音楽館」での放送を観ての感想です。
 ちなみに、N響、NHKは「交響曲」はつけない。「クレルヴォ」が交響曲なのか、交響詩なのかは研究されています。

パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、NHK交響楽団
ヨハンナ・ルサネン(ソプラノ)、ヴィッレ・ルサネン(バリトン)
エストニア国立男声合唱団

 以前、パーヴォ・ヤルヴィさんがロイヤル・ストックホルム・フィルと「クレルヴォ」を録音し、そのCDを聴いた記事を書きました。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 この記事で、こんなことを書いている。
現在、50代のパーヴォさんならどんな「クレルヴォ」を描くだろう?シベリウス作品でも規模やフィンランド語による独唱・合唱のため?かなかなか演奏されない「クレルヴォ」。オケや声楽独唱・合唱は変わるでしょうが、現在のパーヴォさんの「クレルヴォ」も聴いてみたいです。
 まさにこれが実現しました。21年後の実現です。聴きたかったものが聴けて嬉しい。

 そして、「クラシック音楽館」でのインタビューでも、興味深いことを仰っていました。
・「カレワラ」で、クレルヴォは「善」か「悪」か判断がつきにくい。シベリウスがクレルヴォの物語を取り上げたのが興味深い。(ちなみに、レンミンカイネンは「善」)
・フィンランドとエストニアは民族、言語的に近い。エストニア語は、フィンランド語の古語に近い。フィンランド語は、エストニア語の古語に近い。
・「クレルヴォ」の詩(「カレワラ」のクレルヴォの章)はフィンランド語の古語で書かれている。エストニア国立男声合唱団は、フィンランド語の古語を完璧に発音できる。
 「カレワラ」の中で、ワイナミョイネンやレンミンカイネン、イルマリネンは通して登場しますが、クレルヴォはクレルヴォの章しか登場しない。しかも、「カレワラ」の中でも他の章とは雰囲気が全く異なる。「悲劇の英雄」。しかも、若い頃のシベリウス、初期の作品。初めて交響曲を書こうとして、選んだのがクレルヴォの物語というのは確かに興味深い。レンミンカイネンよりも先に、何故クレルヴォを選んだのだろう。クレルヴォの何に惹かれたのだろう。
 フィンランドに様々な面で近いエストニア。エストニア語とフィンランド語の関係は初めて知りました。言語的に似ている、フィンランド人とエストニア人がそれぞれの母国語で会話しようとすればできないことはない、と聞いたことはあります。方言のような感じだと。「カレワラ」は古語で書かれているとは大体予想はついていましたが(声楽でも、イタリア歌曲集のイタリア語の歌詞は古い表現で、今のイタリア語ではあまり使わない表現だと学びました)、それがエストニア語に関係しているのは初耳です。パーヴォさんのエストニア国立男声合唱団が歌う「クレルヴォ」の男声合唱への大きな信頼と自信が感じられます。(ならば、これまで、今も「クレルヴォ」を歌い続けている数多くのフィンランドの男声合唱団はどうなんだろう…?と思ってしまいます。現代のフィンランド語を話すフィンランド人の方が弱いのか、と。他の国の男声合唱団は?)

 演奏は、ソフトな感じ。以前のロイヤル・ストックホルム・フィルとの演奏もソフトな感じでしたが、N響ともソフトです。第1・2楽章はこのやわらかさに加えてゆったりと。でも、音の質感は重め。根はずっしり、しっかりと張り、枝葉は柔らかな大樹をイメージします。第1楽章の主題はいつ聴いても胸を締め付けられます。「クレルヴォ」を作曲していた頃は、シベリウスはワーグナーが好きで、ベルリン留学の際に聴いたワーグナーのオペラに強い感銘を受けています。「クレルヴォ」はオペラ風だと感じます。でも、完全にワーグナーや、同じく強い感銘を受けたベートーヴェンの第九とは違う、シベリウスの音になっている。
 第3楽章、男声合唱は表現豊か。語るタイプよりも歌うタイプです。パーヴォさんが仰っていたように無骨、時にやわらかく。ソプラノとバリトンの独唱の2人を引き立てているようにも感じました。独唱は「クレルヴォ」ではお馴染みのルサネンきょうだい。メリハリ、キレがありますが、乱暴ではない。クッレルヴォの妹の告白の箇所が痛切で、かなしい。妹の死の後のクレルヴォの嘆きは、強く重く自分を責める感じ。クレルヴォでお馴染みのきょうだいですが、その時によって歌い方が異なるのは本当に興味深い。それぞれ、指揮者の考え方が違うんだなと感じます。
 第4楽章もソフトな感じ。クッレルヴォがウンタモ一族を滅ぼしに戦争をするのですが、もうちょっと硬い音でもいいかなと思う。金管はバリバリで、勇ましさ、力強さはよく伝わってきました。
 第5楽章、クレルヴォの死。最初は弱音で、じわじわと重く盛り上がる男声合唱に、ぞくぞくします。ソフトな演奏だけど、重めの音がいい味を出しています。ラストはどこか淡々としているけれども重く、力強く。カンテレで歌いつつも語る吟遊詩人のよう。

 「クラシック音楽館」で、日本語字幕付きで聴けたのはよかったです。なかなかありません、初めてです。いつもは記憶しているクレルヴォの章のあらすじを思い出したり、歌詞カードを見たりしているのですが、途中でどこかわからなくなることもあります。歌詞の詳細と一緒に聴けるのはいいなぁと感じました。N響で演奏されてよかった。

 歌詞の詳細を追いながら聴けたので、今回はこの話も書きます。第3楽章、第5楽章の歌詞は「カレワラ」のクレルヴォの章からとられていますが、シベリウスが変更した部分があります。クレルヴォが妹を誘い、きれいな宝物…金銀や布地を妹に見せるところの男声合唱の部分。
Verat veivät neien mielen,
Raha muutti morsiamen,

(布地は娘の心を揺るがせ
お金は花嫁の気持ちを変えた)
 「カレワラ」原詩ではこのようになっていますが、シベリウスは「Raha(お金)」を、「Halu(願望、憧れ)」に変えています。しかし、何者かがシベリウスの自筆譜を無断で書き換え、「Raha」に戻してしまいます。その後、ずっとこの箇所は「Raha」で歌われてきたのですが、2005年のブライトコプフ社「ジャン・シベリウス作品全集」ではシベリウスによる「Halu」に戻されています。今回の演奏では、N響機関紙「フィルハーモニー」に載っている歌詞では「Raha」でしたが、「クラシック音楽館」の訳では「憧れ」となっていました。結局、どっちで歌ったんだろう?

 今回のコンサート前半では、「レンミンカイネンの歌」op.31-1、「サンデルス」op.28、「フィンランディア」op.26(男声合唱つき)も演奏されました。「レンミンカイネンの歌」(NHKでは「レンミンケイネンの歌」と表記)は、「カレワラ」のレンミンカイネンを題材に、ユリヨ・ヴェイヨの詩を歌っています。「レンミンカイネン組曲(四つの伝説)」op.22のドラマティックさとは少し違う牧歌的な詩です。曲は、「レンミンカイネンの帰郷」と同じ楽想が活用されています。「サンデルス」は詩はスウェーデン語。ルーネベルイの詩です。1808年、ロシア-スウェーデン戦争のスウェーデンの将軍、ヨハン・サンデルスを歌っています。スウェーデン語系フィンランド人であるシベリウス、ルーネベルイがうかがえます。どちらもあまり聴かない歌で、「クレルヴォ」とは異なる雰囲気で興味深い。滅多に演奏されない曲が演奏されて嬉しいです。「フィンランディア」は男声合唱の入れ方は色々あるんだな、と感じました。

 昨年はハンヌ・リントゥさんが東京都交響楽団で「クレルヴォ」を演奏。今年はパーヴォさんとN響。日本でもどんどん「クレルヴォ」を演奏して、もっと広まればいいなと思います。やっぱりフィンランド語の歌詞が壁になるかとは思いますが…。
 「クレルヴォ」の記事が多くなってきたので、タグを作りました。これからも、「クレルヴォ」を聴いたら書いていこうと思います。



【これまでの「クレルヴォ」シリーズ】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤
 ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう スロボデニューク&ラハティ響
 ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団 (2017年 シベリウス音楽祭より)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう ロウヴァリ&エーテボリ響
 サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団 (2017年の演奏会より)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう サロネン&ロスフィル
 エサ=ペッカ・サロネン:指揮、ロスアンジェルス・フィルハーモニック
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう オラモ&BBC響
 サカリ・オラモ:指揮、BBC交響楽団(2015年プロムスでのライヴ録音)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう リントゥ&フィンランド放送響
 ハンヌ・リントゥ:指揮、フィンランド放送交響楽団(2017年、フィンランド放送響のフィンランド独立記念日コンサートより)
まだまだ、シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう ダウスゴー & BBCスコティッシュ響
 トーマス・ダウスゴー:指揮、BBCスコティッシュ交響楽団
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by halca-kaukana057 | 2018-10-15 22:39 | 音楽

ある小さなスズメの記録

 以前読んだ本だが、ブログには書いていなかったことに気がついた。気のせいだった。せっかくなので再読して感想を。



ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
クレア・キップス:著、梨木香歩:訳/文藝春秋、文春文庫/2015(単行本は2010)


 1940年、第二次世界大戦中のイギリス、ロンドン。空襲の危機が迫る中、著者のキップス夫人(数年前に夫を亡くしている)は、対空対策本部の隣組支部で交代で空襲に備えていた。7月、任務から帰ったキップス夫人は、玄関先に生まればかりの瀕死の小鳥を見つけた。家につれて帰り、温め、あたたかいミルクを飲ませる看病を続けると、翌日の朝には小さな声で鳴いていた。それから、キップス夫人はこの小鳥、イエスズメを育てることになる。ある程度成長したら外へ放つつもりだったが、このイエスズメは、翼と足が曲がって十分に飛べる状態になかった。キップス夫人はそのまま、このイエスズメをクラレンスと名づけて育てることになった。クラレンスはキップス夫人に非常に懐き、空襲に脅える人々を癒す存在になった。また、クラレンスは感情豊かに振舞い、お気に入りのおもちゃで遊んだり、ピアニストでもあるキップス夫人のピアノ演奏に合わせて、巧みな歌を歌うようになった。終戦後もキップス夫人とクラレンスの日々は続いた。クラレンスの老い、最期の時まで…。


 読んだ後、動物の言葉がわかり、動物と心を通わせる「ドリトル先生」シリーズを思い出した。「ドリトル先生」は物語、フィクションだが、こちらはノンフィクション。キップス夫人とクラレンスはお互いの言葉がわかるわけではないが、鳴き方や仕草で言いたいことを読み取れる。エサをねだる時、一緒に遊びたい時、一緒に寝たい時、興味を示しているものがある時。スズメはこんなに感情豊かなんだなと感じた。私も子どもの頃、セキセイインコを飼っていた。籠の外に出て遊びたい時や、新しいエサ(特に青菜)を持ってきた時の興奮はよくわかった。ただ、このクラレンスほどは懐かず、賢くなかった。生まれてすぐに育て始めただけではないと感じる。

 クラレンスは翼と足が曲がっていた。が、成長するにつれて、うまく飛べるようになった。窓越しの外の世界に出会うこともあった。そこで、他の鳥に出会うこともあった。エサはキップス夫人があげていたが、いつしか飛んでいるハエを捕まえて食べることもあった。誰も教えていないのに、鳥としての本能を目覚めさせていく。その一方で、クラレンスはキップス夫人に甘え、気に入らないことがあると叱り飛ばし、ともに生きるパートナーとなった。動物と人間の超えられない溝があるはずなのに、クラレンスも、キップス夫人も、お互いを尊重している。不思議だとも思う。

 ピアニストでもあったキップス夫人は、クラレンスの歌を楽譜に起こしている。ターンやトリルを習得し、それを日々練習していた。「小鳥はとっても歌が好き」という歌があり、私のセキセイインコもテレビから音楽が流れると、一緒に歌う、もしくは負けじと一生懸命歌っていた。だが、楽譜に起こせるような歌い方ではない。ピアノのある環境で、クラレンスの本能と才能も開花していったのだと思う。

 クラレンスは後に、病気になり、そして老いを迎える。だが、ここでもクラレンスの生命力の強さをキップス夫人も、読者も実感することとなる。苦しむクラレンスのために効くような食材とアイディアを求めて鳥の医師を尋ねる。そのアイディアには驚いた。小鳥に食べさせてもいいのだろうか…とは思うが、効き目があったのだからいいのだろう…か。

 クラレンスはヨーロッパに多いイエスズメ、日本のその辺にいるスズメとは違う種類だ。その他の理由でも、日本のスズメではこんなことはできないだろう。スズメでなくても、何かしらの動物を飼っている人は多い。飼っている動物との様々なエピソードはあるが、「ペット」ではなく、お互い生物として尊重し、愛情を注ぐ存在としてのクラレンスとキップス夫人の記録は、とても興味深いものだった。梨木香歩さんの訳も、そんな誇り高いクラレンスを感じさせるような文章です。
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by halca-kaukana057 | 2018-10-08 23:04 | 本・読書

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