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友だち幻想

 少し前から、この本が本屋で平積みになっていたり、紹介POPがついていたりするのをよく見ます。売り上げランキングでも上位。でも、この本、大分前に出ていた本のはず。と言いつつ読んでなかった。せっかくなので読みました。



友だち幻想
菅野 仁 / 筑摩書房,ちくまプリマー新書 / 2008

 2008年、10年前に出版された本です。でも、中身は10年経っても色褪せない。10年前はまだそんなに広まっていなかったSNSでも悩むことが書いてある。コミュニケーションツールは変わっても、コミュニケーションにおいての悩みは変わることはないのか…。

 「友だち幻想」とは、私たちが友達・親しさに抱く様々な「幻想」のこと。友達は大事、人と人との繋がりは大事、親友がほしい。でも、いじめや引きこもり、そこまで行かなくても、人間関係でのちょっとしたズレが心を悩ませることは多い。教育大学の社会学の先生が中高生向けに書いた本ですが、大人が読んでも勉強になります。とても興味深いですし、コミュニケーションにおいて「なんでこんなこと悩まなくちゃいけないんだろう」と思うモヤモヤが晴れる本です。

 人間関係、「他者」(自分ではない他の人全員。血縁関係にあっても「自分ではない他の人」)は脅威であると同時に、生のよろこびを与えてくれる存在でもある。二重性がある。その二重性に振り回され、人間関係で悩むことになる。あまり気が進まないけど参加していないと不安になる人との集まり(ママ友の集まり等)、メール即レス(今ならLINEの既読無視。他のSNSでも即レスを重視する文化はありますね)。更に、皆と仲良くしなければならないとい風潮。学校で植えつけられる考え方ですが、著者の菅野さんはこの考え方に警鐘を鳴らしています。皆の中に入れないと悩んだり、相性が合わない子がいるけど仲良くしなきゃいけないの?という悩みを持つ子が必ずと言っていいほど出てくる。この学校では皆と仲良くしなければならないという考え方は、昔のひとつの村に小学校がひとつあった歴史が関係しているのはなるほどと思いました。まさにムラ社会。

 ここで大事になってくるのが、他者との距離感。パーソナルスペース(物理的な距離でもあるし、心理的な距離でもある)という言葉もありますね。その人にとって他者との心地よい距離感は、人によって違う。友達や恋人で、その距離感が違うことでトラブルになってしまうこともある。これもわかる。友達とはいえこれは言ってもいいんだろうか、別の人たちは親密に仲良くしているけど自分はこれでいいんだろうか、と思うことはよくあります。

 そして、今の学校はフィーリングを一緒にして同じようなノリで同じようにがんばろうとする「フィーリング共有関係」で人間関係やクラス運営を成り立たせている。皆同じように考えて、同じ価値観を共有して、結びつきが強いんだよね、という考え方。ここから距離感や考え方がズレると、最悪いじめに繋がる。「フィーリング共有関係」ではなく、お互い最低限守らなければならないルールを基本に成立する「ルール関係」を基本に考えた方がいい。最低限のルールさえ守ればあとは自由。ここにも納得。
 フィーリングを第一に考えていると、違う、合わないと感じる人に対して、敵対心を持ったりする。でも、同じクラス、同じ職場にいなきゃいけない。合わないと思う人でも、並存はする。距離を置いて、態度を保留する。最低限挨拶はする。ここは本当に納得したところです。実際、合わない人と距離を置いて並存していても、何らかのきっかけで交流することがあって、やっぱり合わないと感じたり、言動にイライラしたり。フィーリングを持ち込んでしまっているんだな、と感じます。どう並存するか。この本ではそれ以上深く突っ込んでいませんが、別の本や、人に相談して方法を探っています。

 この本でもうひとつ、深く頷いたのが、「君たちには無限の可能性もあるが、限界もある」(115ページ)。子どもの頃には、可能性は無限だよ、努力すれば何でも出来るんだよ、と教えられますが、大人になるにつれて限界を知っていく。子どもの頃(学生時代)と大人(社会人)になってからのギャップで挫折する人もいる。子どもであっても、限界を感じ挫折した時にどう対処するか。それを教えていくのも大事、と。ポジティヴな面は強調し、ネガティヴな面は敬遠する…教えにくいのはわかる気がするけど、ネガティヴをどう処理するか。大人になるにつれて自分で自然に身につけろ、では酷。その挫折を乗り越えれば、新たな方向に進めるかもしれない。人生の「苦味」と「うま味」と表現していますが、そっちのほうが大人だなと思います。

 こう紹介していると、随分とクールな立場の本なんだな、と感じます。実際、クール、現実的です。青春学園ドラマのような教育に夢と情熱を持っている人にとっては拍子抜けすると思います。でも、決して「友達なんて全部幻想」「余計な人間関係を持つな」とか言っているわけではありません。生のよろこびを与えてくれる友情を築くために、「コミュニケーション阻害語」を紹介しています。「ムカつく」「うざい」など。異質なものを即遮断し(先述した通り、合わない人とは「距離を置いて、態度を保留する」無理に仲良くする必要はないけど、拒絶、敵対するものでもない)、思考を停止し、コミュニケーションを断絶してしまう言葉です。また、感情や論理を表現する多様な言葉を得、対話能力を鍛えるために、読書も大事だと言っています。この本の菅野さん考え方は、古今東西の哲学、社会学、教育学などの先人の本、思想を元にして書かれています。この本のあちらこちらに、様々な先人が登場します。やはり読書は大事なんだと思います。

 「苦味」を味わって、生のよろこびの「うま味」も味わえる、と。
10年前…と考えて、アニメ「電脳コイル」も約10年前だったなぁと思い出しました。SFの物語の中で、他者とどう繋がるか、考えたアニメです。
・「電脳コイル」最終回を観た後で:誰かへつながる細い道

NHK News Web : Web特集 : 「みんな仲よく」の重圧にさよなら
 この本がNHKのニュースでも取り上げられました。これを読んで、この本を読んでみようと思ったきっかけです。
by halca-kaukana057 | 2018-10-04 23:23 | 本・読書
 4月からの再放送もしっかり観ていました。「宇宙(そら)よりも遠い場所」漫画2巻です。


宇宙よりも遠い場所 2
よりもい:原作 / 宵町めめ:漫画 / KADOKAWA メディアファクトリー、MFコミックス アライブシリーズ / 2018

 キマリたちが南極に出発する日が近づいてきた。報瀬や日向、結月と準備を進めるキマリ。一方、キマリの幼馴染のめぐみは南極へ行くことを決め、準備に励むキマリを見てもどかしい想いをしていた…。いよいよキマリが南極に出発する朝、めぐみがキマリの家の前にいた…。
 南極への玄関口、オーストラリアのフリーマントルに着いた4人。そこでは、「南極チャレンジ」の南極観測船・ペンギン饅頭号と、隊長の吟やかなえが待っていた。南極で行方不明の母と親しく、「南極チャレンジ」を共に立ち上げた吟たちにたいして、報瀬の態度は…。

 アニメでいうと、5話、7~9話です。4話は特別編で、6話は後でじっくり日向回のようです。

 5話(漫画だと5、6話)は何度アニメを観ても、そしてこのコミック版を読んでも、胸に突き刺さるけれども、勇気を貰える。失敗することを恐れて、何かをやりたいと思っても前に進めずにいたキマリ。そんなキマリのお姉さんのような存在のめぐみ。キマリは弱気で怖がり、勇気のない自分を「嫌い」と思っていた。めぐみにいつも背中を押され、一緒にいて、安心を得ていた。それが、報瀬と出会い、南極に行くと決めてからは失敗するかもしれないという現実にもめげずに南極に向かって前に進んでいた。これがキマリの視点。
 一方、めぐみの視点。「頼ってもらっている」自分が安心できる…キマリと一緒にいる時間が減って、それを自覚してしまった。そして、めぐみがとった行動。最初アニメを観た時は許せないと思いましたが、何度も観ている、読んでいるうちにめぐみの気持ちもわかると思った。(でも、悪い噂を流したことは許せない)
 学生時代にしろ、社会人になってからも、先輩でいる、リーダーを務め、「頼られている」のは気分がいい。でも、先輩だから、リーダーだから、自分が動かしているわけではない。後輩たちや他のメンバーも動き、支えている。先輩・リーダーの自分も支えられている。そのうち、後輩が一人前にできるようになったりするとさみしくなる。また頼ってくれないかな、何かあったら助けてあげるよ、なんて思ってしまっている(自分でもなんと傲慢か…)。ここで、考え方を変えられないとずっと傲慢な困った人のままだ。
 めぐみはキマリの出発の日にある決意をする。旅立つキマリのために、自分のために。50ページ、53ページのめぐみのセリフが突き刺さる。そんなめぐみに対するキマリの態度がまた強くてしなやか。キマリは一気に成長していた。
 この箇所で出てくる、日向の名言は事あることに思い出しています。
「人には悪意があるんだ。悪意に悪意で向き合うな。胸を張れ」

 7話から9話(漫画だと7話から9話)は、報瀬と吟を中心に、かなえたち大人の視点、船に乗り込んだキマリたちの視点でも描かれます。吟やかなえが思い出す報瀬の母・貴子のこと。「南極チャレンジ」の置かれている微妙な立場。大人たちの3年ぶりの南極観測への思い。この3年で何があったか。大人社会の現実を突きつけられるけれども、それでも南極に向かう。南極に向かわずにはいられない。そんな大人たちの姿がいい。
 キマリたちも、南極への航海の厳しさにぶちあたるも、102、103ページのキマリのセリフは事あるごとに思い出す。何かに挫けそうになった時、「選択肢はあったけど、自分で選んだんだ」と言い聞かせる。

 報瀬にとっては、母と向き合わねばならない航海。今までは、ただ「お母さんのいる南極に行きたい」という気持ちで突っ走ってきたが、その「南極に行く」ためには、様々なものが報瀬の前にあった。吟の存在もそう。吟から見た報瀬も、貴子のことを思い出さずにはいられない。だが、南極へ向かう厳しい航海、荒れ狂う海、行く手を阻む定着氷。戦い、乗り越える。何度も挑む。吟の中にも、報瀬の中にも、明るく逆境に立ち向かう貴子の姿があるのがじわりとくる。ラミングのシーンは熱いです!

 いよいよ南極到着。漫画を読んでていても、あのセリフを言ってしまいますね(勿論ひとりきりの部屋で) ざまーみろー!!
 それぞれの心の奥底に触れられる2巻、「よりもい」の魅力が詰まっています。

◇1巻:【アニメ コミカライズ】宇宙よりも遠い場所 1
by halca-kaukana057 | 2018-10-02 23:11 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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