重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち

 去年のノーベル賞受賞式の近辺に書きたかった記事です…。
 2017年のノーベル物理学賞は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のライナー・ワイス(Rainer Weiss)博士、カリフォルニア工科大学のバリー・バリッシュ(Barry C. Barish)博士、キップ・ソーン(Kip S. Thorne)博士に授与されました。
Nobelprize.org : The Nobel Prize in Physics 2017

日経サイエンス:2017年ノーベル物理学賞:超大型干渉計「LIGO」を構築,宇宙から来る重力波を初めて観測した3氏に
 ↑LIGOの仕組みの解説もあり、わかりやすいです。
アストロアーツ:重力波検出に貢献した研究者3名、ノーベル物理学賞を受賞

 重力波を検出したレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」のプロジェクトに携わってきた3氏をはじめとする重力波観測と「LIGO」建設のノンフィクションです。


重力波は歌う――アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち
ジャンナ ・レヴィン:著、田沢恭子、松井信彦:訳/早川書房、ハヤカワ文庫 NF/ 2017(単行本は2016)

 アインシュタインによる一般相対性理論で、存在すると言われていた重力波。しかし、重力波による空間のゆがみは非常に小さく、アインシュタイン自身も観測出来るかどうかには不可能と考えていた。だが、重力波は存在する、観測することができる、という科学者たちが、少しずつ観測装置を考え出し、観測に向けて動いていた。
 その中のひとり、ジョセフ・ウェーバーは重力波に共鳴して振動するという「ウェーバー・バー」を作った。また、ジョン・ホイーラーやロナルド・ドレーヴァーという科学者も重力波検出に乗り出した。「ウェーバー・バー」では重力波を検出することはできず、ウェーバーは責め立てられた…。ウェーバーの最期がまたかなしい。

 国籍、出身、ルーツも異なる科学者たち。彼らがどのように科学者人生を歩み始めたのか、どこで重力波の研究と出会ったのか、それらを読むのは面白い。皆個性的だ。だが、重力波を検出する機器はどうやったらできるのか、どう建設するのか。なかなかプロジェクトは進まない。レーザー干渉計型重力波検出器のプロトタイプは作られるが、複雑な仕組みで、コントロールするのが難しい。ひとつひとつ、問題を解決していき、一方で、プロジェクトが正式に認められ、予算が出るように尽力する。科学者は、実験や研究だけやっているわけではないというのは、他の宇宙・天文プロジェクトでも読んだ。政治家や役人たちにわかるようにプロジェクトを説明し、予算を得られるようにしないと、肝心の実験も機器の開発も研究もできない。未知の世界に乗り込んでいく科学者というのは、マルチな才能を持っているのだなと本当に思う。

 途中、「LIGO」ってどういう仕組みだったっけ…?と何度も思うことがあった。この本を読むために、もう1冊重力波と「LIGO」に関して解説した本が欲しいと思ったほどだ。
 ノーベル物理学賞を受賞した3氏の中で、バリー・バリッシュ博士は一番後、1990年代になって「LIGO」プロジェクトの統括責任者になった。受賞したのは3氏だが、ホイーラーやドレーヴァー、ウェーバーらたくさんの科学者が重力波観測を目指していた。志半ばで亡くなったのが残念だ。重力波を観測し、ノーベル賞も受賞したことを天国で喜んでいるだろうか。喜んでいてほしいと思う。この「LIGO」プロジェクトでも、志を引き継いでいくという熱いものに触れることができた。

 ノーベル賞を受賞するのは、その成果が出てからしばらく経ってから、というのが多い(スーパーカミオカンデの故・戸塚洋二博士を思い出さずにはいられない)。今回の受賞は、重力波検出の報せが出てすぐの受賞。本当によかったと思う。「LIGO」だけでなく、日本の「KAGURA」も含めて、重力波天文学はこれからますます盛り上がる。その黎明期を伝える本として、とてもいい本だと思います。

 あと、先日亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士についても少し出てきます。キップ・ソーン博士とは友人で、科学関係の賭けをするが、ホーキング博士は賭けに弱い、と。答えが出そうもない妙な賭けもしている。科学者同士のこんな話題も面白い。

・「LIGO」の重力波検出の際に書いた記事:重力波天文学が始まる
 重力波は「聞く」。この本にも込められています。

 ちなみに、この本を買ったは、ノーベル賞受賞直後。帯がこれでした。
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 もし、2017年に受賞しなかったらどうなっていたんだろう…。現在は「ノーベル賞受賞!」になってます。

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# by halca-kaukana057 | 2018-04-16 22:36 | 本・読書

雷、霰、のち晴天とISS

 今は国際宇宙ステーション(ISS)が日没後の空に見えています。これまで、2回ほど国際宇宙ステーション(ISS)を目視したのですが、どれも撮影に失敗。観ただけでもブログに書いてもいいのですが、一文だけになってしまう。こういう時、twitterって便利だだったなと思います(でも戻る気は一切ない。再開したいとは全く思わない。本当の意味での独り言つぶやきツールで、フォローしない、フォロワーもいない、リプライもリツイート等も受け付けないのなら考えますが、それじゃSNSじゃないね。)。

 今日は夕方、空が暗くなったなと思ったら、雷が一発落ちました。その後強くあられが降る。当地では4月に入っての雪は珍しくありません。昨日一昨日も雪は降ってた。しばらくして、窓の外が明るくなったなと思ったら、晴れてる。これは、ISS見えるかもしれない。時間と方角を調べて待ちます。

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北の空を行くISS.左から右へ飛んでいっています。ISSの軌跡の上に、北斗七星のひしゃくの部分の4つの星が。金井さーん、手を振りました。

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東の空へ向かうISS.雲に入り、ISSも見えなくなりました。画像左には、北斗七星の柄の部分。北斗七星を分割撮影する構図になりました…北斗七星とISSを撮りたかった。

 本日、水星探査機「MMO」の愛称・メッセージの応募が締め切られました。愛称は全くわかりません。読めません。当たるといいなぁ。
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# by halca-kaukana057 | 2018-04-09 22:14 | 宇宙・天文

明日は、いずこの空の下

 上橋菜穂子さんの作品も積読があるのですが、今日は新しく出たエッセイを。

明日は、いずこの空の下
上橋菜穂子 / 講談社、講談社文庫 / 2017

 作家であり、文化人類学者の上橋さん。フィールドワークや、作品の取材も兼ねて、世界のあちこちを旅する。そんな旅のルーツは高校生の頃。旅は母と一緒のことも多い。世界各地で体当たりの旅のエッセイ集です。

 「精霊の守り人」をはじめとする「守り人」シリーズ、「獣の奏者」シリーズなどでお馴染みの上橋さん。物語の舞台となる、リアリティのある異世界の設定にはいつも驚かされます。土地だけでなく、気候や民俗風習、言語、食べ物、政治、経済…その異世界全部。モデルの場所はあるのだろうかなどと思ったことも。作家であると同時に、文化人類学者として、オーストラリアのアボリジニの研究もされている。フィールドワークで現地へは何度も足を運んでいる。そんな上橋さんは旅上手なんだろうな…と思いきや、そうでもない。身体が弱く、体調を崩しやすい。方向音痴。語学も苦手。子どもの頃から世界のファンタジー文学を読みふけり、その世界に憧れても、家でぬくぬく寝て、本を読んでいる方がいい…。美味しいものがあれば尚更…。「ホビットの冒険」のビルボのように。何だか笑えてしまいます。上橋さんのお気持ちがよくわかる。私も家にいる方がいい。

 でも、作家になるためなら何でもやってやる。上橋さんの背中を押すのは、そんな気持ちと旺盛な好奇心。女子高生時代の、イギリス研修旅行がその原点。「グリーン・ノウの子どもたち」の作者、ルーシー・M・ボストンさんに会ったエピソードは、上橋さんの今に繋がる大きな力なったんだなぁと思います。

 多いのが、食べ物の話。とにかく食べ物が美味しそうな上橋作品ですが、普段から様々な文化の暮らしの中にある食べ物に注目しているからこそ、あんな美味しそうな料理が次々と出てくるのだなぁと。でも、上橋さんが読んできたファンタジー文学でも、食べ物、料理の表現を大事にしている作品もある。そんな作品のよいところを、しっかりと引き継いでいるのですね。上橋さんの作品も、このエッセイも、お腹が空いている時(しかもすぐにご飯にありつけない時)に読むのは危険かも知れません…。

 上橋さん以上にアクティヴなお母様との旅のエピソードも面白い。タフでどんどん飛び込んでいくお母様にすごいなぁと思っていました。私も、家でごろごろしている方が好きなのに、旅に出るとアクティヴになれる。旅に出ることで、また違う自分の一面を引き出している、違う自分に会えている気がする。

 上橋さんが旅先で思った様々なことが、上橋作品に投影されている。ファンタジー文学というものに、上橋さんは何を考えているのか。何を表現したいのか。上橋作品をますます面白く読めるエッセイだと思います。もちろん、いち作家の旅のエッセイとしても面白い。読んでいると旅に出たくなります。
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# by halca-kaukana057 | 2018-04-06 22:08 | 本・読書

金井さん滞在中のISS,春の夜空を行く

 日本人宇宙飛行士の金井宣茂さんが、12月から国際宇宙ステーションに滞在中。それ以後、金井さんのいるISSを見たいと思いつつも、天候やタイミングでずっと見られませんでした。6月までだからチャンスはまだあるけど、早いうちに見たいなぁ…と思っていました。ようやく、条件のいい可視パスで、天候も良好。久しぶりのISS観望です。

 南西の空から、ISSが昇ってきます。明るい。ようやく見られた、金井さーん!と心の中で叫びながらちょっと手を振りつつ、撮影を。ルートを知って、このパスを狙いました。

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 オリオン座を通過するISS.撮っている間は興奮していました。なんといい構図!ISSはどんどん明るくなります。明るい星だらけのオリオン座にも負けません。

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 さらに明るさを増したISSは月のそばを通って、空の高い位置に。そのあたりを撮影しました。撮影している時は、そこに何の星座があるのかわからず。PCに取り込んで確認して、おお!と思いました。
 ISSの軌跡の右側、裏返しの?マークが横倒しになっているのがわかるでしょうか。しし座の獅子の大鎌です。しし座の主な全景も撮影できています。やった!今回はとてもいいパス、満足の画像が撮れました。

 ISSを見ながら、金井さんは日本上空ということで見ているだろうか…と思いました。お天気もよいので、日本列島の夜景がきれいに見えたと思います。金井さんの長期滞在は折り返しを過ぎました。これから、天候はよいと思うので、できるだけたくさんISSを見られればいいなと思います。
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# by halca-kaukana057 | 2018-03-25 21:04 | 宇宙・天文

Im ~イム~ 9

 新刊として出たのは1月だったか…春になる前に感想を書きましょう。


Im ~イム~ 9
森下 真/ スクウェア・エニックス、ガンガンコミックス / 2018

 人間をマガイ化する黒アザの出る薬を仕込まれ、アメン神官団本部の街は大混乱に。それぞれが戦う中、イムは「記憶抹消大魔法(ダムナティオ・メモリアエ)」を使い、街もマガイ化した人々も元通りにする。イムを「救世主」と崇める人々たち。だが、その後イムは倒れ、眠り続けてしまう。再び目覚めたイムを待っていたのは、知らない間に元通りになった街と、イムを「救世主」と呼び讃える人々だった。イムは3000年前、ジェゼルを助けようとした際、「記憶抹消大魔法」を使ったが、それ以後は使わないと決心していた。イムが眠り、記憶を失っている間、何が起きたのか。イムが覚えているのは、九柱神(エネアド)のアトゥムの「器」と会っていたこと。イムは九柱神に会いに行く。そこで、世界創世の神話の真実を知ったイムは…


 9巻も展開が早く、次々と新しい情報が出てきます。一度読んだだけでは覚えきれない、過去のエピソードや伏線を、なんだったっけ…と思い出すのも必要。濃いです。

 イムのおかげで、街も人々も救われた。「何も無かった」ことになった。その結果はよいことですが、イムにとっては信じられない、納得できないこと。イムも覚えていない。記憶に無い。「記憶抹消大魔法」を使ったのは誰…?ということで、その謎解きの旅に。
 その前に、イムはその謎を陽乃芽に話す。もうひとりの自分がいて、それが「記憶抹消大魔法」を使ったのではないか。また、何かが起き、皆の記憶どころか、皆の存在も消されてしまったら…そんな不安を、陽乃芽が吹き飛ばし、背中を押します。大神官で、誰よりも賢く、誰よりも強いイムにも弱みや悩みがあって、それを信頼している人に話すことが出来るようになった。いい友情です(陽乃芽にとっては「友情」ではなく…?)。そして、イムの本心。ジェゼルと仲直りがしたい。これらについては、9巻終盤でも出てきます。

 九柱神と会ったイム。そこで語られるのは、九柱神以前の創世神話。「混沌の八柱神(オグドアド)」、その守護神アポフィスと「記録者」月の神トト。あのアポフィスも神なのか…。そして、「記憶抹消大魔法」の本当の使い道も明かされます。淡々と語るアトゥムに、「神」であるアトゥムに対して怒りをぶつけるイムの言葉がすごくいい。
 イムは今度はトト神に会いに月の宮殿へ。トト神のこれまでと、イムやファラオたちに宰相として仕えていた大神官たちが何なのかが明かされます。そう来たか…。トト神と、イムの対峙。トト神は、あくまで中立で、世界を記録する。しかし、イムホテプは、「親友」ジェゼル王のために、「記憶抹消大魔法」を使った。中立になりきれてなかった…。イムが「お祓い箱」と呼んでいる「月光の魔水晶」の秘密も明かされます。たくさんの謎が明かされるのに、更に新たな謎、情報が出てくる。すごいなぁこの創作世界…。
 再びアポフィス登場。アポフィスがトト神に語ったのは、トト神には信じられないこと。トト神は中立の立場とはいえ、人間と同じように、人格、感情を持っている。イムとジェゼル、トトとアポフィス。「友達」のための戦いが始まります。

 読んでいる側も、イムの真実に混乱しますが、イムの周囲の人々も大混乱。ユート君ですら理解しきれない…。稲羽くんの言う通りなら(これが真実なのですが)、どうやってアポフィスを倒すんだ…?何かアポフィスの弱点、バグでもあるのか?
 そして、上述した、イムの本心、ジェゼルと仲直りしたい、ということも伝えられます。しかし、マガイに肉親を殺された稲羽くんや晴吾たちにとって、それは許せることではない。いくらジェゼルではなくアポフィスの仕業だったとしても、ジェゼルもマガイに関係していた。稲羽くんにとってジェゼルは許すことのできる人ではない。でも、信頼しているイムのことも思うと…。反発しても、「仲間」というつながりがそれを超えていく。かつては晴吾と対立していたイムですが、稲羽くんとも対立し、理解し合えた。ひとりひとりと、こういうシーンがあるのがいいですね。

 ラスト、また非常事態発生。ついにあの人が…!!この人にも悲しい思いのまま終わってほしくない。どうするんだ。10巻を待ちます。ついに10巻まで来たんですねぇ。

・8巻:Im ~イム~ 8
 この9巻は、さらに遡らないとイムの真実や本心にたどり着けません。本当に9巻は濃いです。
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# by halca-kaukana057 | 2018-03-23 22:27 | 本・読書

春分の宙

 今日は春分。当地は晴れ、そこまであたたかいわけではないですが、穏やかな一日でした。

 現在、夕空に金星と水星が見えています。なかなか見るのが難しいと言われている水星。夕暮れ時、西の空を観ると、金星が見えました。まだ空が明るかったせいか、薄雲のせいか、高度のせいか、そこまですごく明るくはありませんでした。水星は、空が明るくて見えず。もう少し暗くなってから再挑戦…金星と水星が見える位置にちょうど雲が出てきてしまいました。残念。

 なかなか夕方~日没後の時間、空を見る時間が取れず、この冬はあまり星見が出来ませんでした。しかも天気も悪かった。今日は、夜も晴れています。北の空に北斗七星が直立していて、春が来たんだなと感じます。冬の星座は西の空へ。長い冬が、ようやく終わろうとしています。

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 今シーズン初のオリオン座。
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# by halca-kaukana057 | 2018-03-21 21:40 | 宇宙・天文

水星探査機「MMO」の名付け親になろう! & 水星にメッセージを送ろう!

 プレスリリースが発表された時は、締め切りはまだ先…と思っていたら、いつの間にか締め切りが近づいてきてしまいました。ギリギリになってしまう前にブログに書いておきます。

JAXA:水星磁気圏探査機MMOの愛称、探査機に搭載するメッセージ等の募集について

水星磁気圏探査機MMO愛称募集キャンペーン


 日本とヨーロッパ宇宙機関(ESA)が共同で進めている水星探査ミッション「ベピコロンボ(BepiColombo)」。ESAが担当する、表面・内部の観測を行う「水星表面探査機 (MPO) 」と、JAXAが担当する、磁場・磁気圏の観測を行う「水星磁気圏探査機(MMO)」の2機で構成されます。今年10月、フランス領ギアナから、アリアン5型ロケットで打ち上げ予定。

 その、JAXAが担当する「MMO」の愛称と、搭載するメッセージの募集をしています。
※締め切りは4月9日(月)10:00

 愛称だけ、メッセージだけの応募も出来ます。メッセージは、寄せ書きやイラストを郵送することも可能です。応募は上記キャンペーンサイトからどうぞ。

 「MMO」の愛称…考えているのですが、思いつかない…。先日の「しきさい」「つばめ」よりも難しい。水星は金星のように親しまれている和名、呼び名がない。磁気圏を観測するので「じきけん」と思ったが既にある。灼熱の惑星…イメージしにくいです。何だろうなぁ。4月9日までいい案が出てくればいいのですが…。

 メッセージは、文字数制限はないみたいです。データファイルの容量は1MBまで。動画も受け付けるとは、変わりましたね。

 愛称は、思いついたら何でも送る。これはないよね、と思ってもボツにしないで送る。ボツ案が採用されることはあります(「こうのとり」の時の教訓です)
 ギリギリまで考えてみます。休憩に、メッセージも考えます。

 最後にもう一度。締め切りは4月9日(月)10:00
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# by halca-kaukana057 | 2018-03-20 21:56 | 宇宙・天文

天文学者の江戸時代 暦・宇宙観の大転換

 大分前に読み終わったのに、感想を書かずにいる本のひとつです…。


天文学者たちの江戸時代: 暦・宇宙観の大転換
嘉数 次人 / 筑摩書房、ちくま新書 / 2016


 江戸時代。日本の天文学は、それまでの中国からのものに加え、西洋の天文学も取り入れ、変化していった。暦の作成、日食や月食の観測と予測、月やさまざまな惑星の観測、最新の宇宙論。江戸時代に活躍した天文学者を紹介しながら、江戸時代に日本の天文学がどのような方向に進んでいったのかを俯瞰できる本です。

 江戸時代の天文学者というと、「天地明察」で有名になった渋川春海。歩いて海岸線を測量し、正確な日本地図をつくった伊能忠敬。また、天文学を推し進めた将軍・徳川吉宗などが出てくる。でも、それだけじゃない。江戸時代、日本の天文学はこうなっていたのかと、興味深い内容の本です。

 渋川春海に関しても、「天地明察」の範囲でしか知りませんでした…。史実ではあるけれども小説なのでフィクション、脚色も勿論入っている。この本では、渋川春海がどのように「貞享暦(じょうきょうれき)」や「天文分野之図」などを作っていったのか、ざっと書いてある。中国の暦や星座を用いてきたが、それを日本の地理に合わせたものに作り変えた。事実だけ読んでも、渋川春海のすごさを実感する。

 江戸時代の天文学者が次々と出てきます。以前、このブログでも取り上げたことがある麻田剛立も勿論登場します。数々の業績も素晴らしいのですが、麻田剛立のすごいところは、研究スタイルをオープンにしたこと。当時の学問は閉鎖的で、師に入門すると、学んだことは他人にも家族にも話さない、同門の者にも話さない、師に無断で著作物を出さないなど、門下だけでひっそりと研究を進めていた。一方、麻田剛立は、全てをオープンにしたわけではなかったが、大坂や日本各地の研究者を交流、議論するなど自分の知識を門下以外の人にも伝えていた。月食を観測していた際にも、見物人にも望遠鏡や観測機器を公開して、一緒に観測していたという。今では当たり前のようなことだが、当時は珍しいことだった。

 その、麻田剛立の弟子として紹介されるのが、高橋至時(たかはし よしとき)、間重富(はざま しげとみ)。高橋至時は、伊能忠敬の師匠。寛政の改暦、「ラランデ暦書」の翻訳にあたる。江戸時代、どの科学分野でもネックになったのが、オランダ語からの翻訳だろう。「ラランデ暦書」の翻訳も難航した。
 また、この頃になると、地動説や、彗星の研究、天王星の観測もあった。

 江戸時代、鎖国のため、西洋の学問はなかなか入ってこない、そのため、日本での科学分野での研究もなかなか進まない…というイメージを持っていた。語学の壁もあったが、思った以上に江戸時代の天文学はいきいきしていた。限られた中でも、試行錯誤や工夫、想像力をもって宇宙に挑んでいった先人たちのことを知ることができてよかった。

【過去関連記事】
天地明察
 小説の方です。コミカライズの感想もあります。
月のえくぼ(クレーター)を見た男 麻田剛立
 麻田剛立の児童向けの伝記です。児童向けですが、大人でも楽しめます。この本と合わせてどうぞ。

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# by halca-kaukana057 | 2018-03-14 22:05 | 本・読書


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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