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 以前から読もう読もうと思っていた本。2015年のニールセン生誕150年に合わせて出版された本でした。


カール・ニールセン自伝 フューン島の少年時代 デンマークの国民的作曲家
カール・ニールセン:著、長島要一:訳/彩流社/2015

 デンマークの作曲家、カール・ニールセン。彼が1927年に刊行したこの自伝。生まれてから、1884年にコペンハーゲンの音楽アカデミーに進学しコペンハーゲンに向かうまでのことが書かれている。1994年には映画化もされたそうだ。ニールセンはデンマークのユラン半島のすぐそばにあるソーテルンに生まれた。家は貧しい農家。12人兄弟の7番目。姉の何人かは病気で亡くなっていた。また、きょうだいは大人になるとアメリカやオーストラリアに移住した。

 ニールセンの子ども時代は、とてものびのびとしていた。デンマークの豊かな自然の農村で、別の農家や瓦工場で手伝いをしていた。この本にはきょうだいたちのことがいきいきと書かれている。家は貧しく、モノはなかったが、おおらかな家族の姿には親しみを感じられる。
 ニールセンは14歳になる前に堅信式(キリスト者として成人したことを示し、キリスト教への入信を完成させる儀式)を挙げ、学校を終えた。学校を終えると、奉公に出なくてはならない。ニールセンは雑貨屋で働くようになった。
 一体どこで音楽を学んだのか。ニールセンの父はヴァイオリンとコルネットを演奏し、宴会でヴァイオリンを演奏して家計の足しにしていた。ニールセンもヴァイオリンを弾くようになり、父の代わりに演奏することもあった。母は歌が得意で、澄んだ声でよく歌っていた。ニールセンが小さいころ、薪が1本ずつ違う音を出すことに気づき、槌で叩いて「演奏」することもあった。ニールセンは音楽を特別なものと学んだわけではなかった。両親との生活の中に音楽があって、それをよく聴いて、模倣するところから始まっている。そして自分なりにアレンジしたり、宴会の場で演奏する曲を作曲したこともあった。オーデンセの町で初めてピアノを見て弾いた時のことは印象的だ。後に、ニールセンは他の学校の先生からヴァイオリンのレッスンを受けることもあり、どんどん上達していく。

 ニールセンが音楽を生業にしたのは14歳の頃。働いていた雑貨屋が倒産し、家に戻っていた頃、オーデンセの軍楽隊に欠員が出たので、応募することにした。軍楽隊には管楽器しかない。ニールセンは父からコルネットを教えてもらい、猛練習し、試験に合格した。軍楽隊では信号ラッパを吹くことと、アルトバスーンを担当した。ニールセンにとって、音楽は仕事であった。プロとして十分に演奏できるようになっていた。演奏したことのないアルトバスーンをすぐに演奏できるようになったのは、耳から覚えた感覚と実践力があったからだろう。
 軍楽隊での仕事が安定すると、ニールセンはピアノを買い、J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」などを練習するようになった。同時期に、酒場でオウツェンという年老いたピアニストと出会う。ニールセンはオウツェンからピアノや音楽を学び、また、オウツェンのピアノとニールセンのヴァイオリンで、ハイドン、モーツァルトやベートーヴェンのヴァイオリンソナタを演奏していた。

 やがて、ニールセンはオーデンセ大聖堂の音楽監督のラールセンからヴァイオリンの個人レッスンを受けるようになる。それが当時フューン島で教師をしていたベアンツェンの目に留まり、コペンハーゲンの音楽アカデミー進学へ繋がっていく。

 この自伝には、音楽をどうやって学び、仕事としていったかについても書いてあるが、多くは家族のこと、日常のことだ。兄弟とこんな遊びをした、兄弟がこんなことをした、ある日の食卓はこんなことがあった。ほのぼのとしている。一方で、農場は、動物の生と死にも直面する。さっきまで生きていた家畜を殺して、その日の夕飯になることもある。こんな毎日の中でニールセン少年は人間として成長していく。音楽家の面だけでない、人間としての、農家の息子としてのニールセンが描かれている。その姿は素朴で、おおらかだ。後に作曲する交響曲にも、そんなタイトルがつくことになるのは偶然だろうか。

 自伝の本編の後には、解説としてその後のニールセンについても書かれている。音楽アカデミーを卒業し、作曲家として歩み始めたニールセン。様々な作品を作曲する。

 ニールセンの音楽がどのように始まったのか。それ以前に、ニールセンがどんな人間だったのか。興味深い本だった。
by halca-kaukana057 | 2019-02-01 20:48 | 本・読書

ニールセンの描いた風景

 昨日はシューマンの誕生日でしたが、今日はデンマークの作曲家・カール・ニールセン(ニルセン)の誕生日。昨年、シベリウスと同い年で生誕150年。その生誕150年が終わってしまいました。でも、昨年の今頃はそんなにニールセンを聴いていなかった。今は手持ちの交響曲全集も少し増えました。ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ響と、ミハエル・シェンヴァント指揮デンマーク国立放送響。ブロムシュテット&サンフランシスコ響は以前から評判は聴いていたので聴いてみた。管弦楽曲、オペラ「仮面舞踏会」全幕も入っていてお徳でした。シェンヴァント&デンマーク国立放送響は、ナクソスで安かったのですが、よかった!引き締まったいい演奏です。あと、パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響の演奏会で5番を取り上げてましたが、これもよかった。テレビ放送もされ、ニールセンの魅力が多くの人に伝わったようで嬉しいです。まだまだ交響曲全集は聴きたいのがあるので、ちまちまと聴いていきます。

 今日は管弦楽曲を中心に聴いています。特に好きなのが、序曲「ヘリオス」op.17。ニールセンの作品は、和音のぶつけ方やメロディーが独特です。以前も書きましたが、ショスタコーヴィチに繋がっていくよう。近現代の響きが苦手でちょっと…という方もいるかと思います。この「ヘリオス」はそんな方に是非。交響曲4・5番のような響きはそんなに出てきません。ギリシャ旅行中にエーゲ海の日の出に感動して作曲したという作品。エーゲ海の日の出から日の入りまでが音楽で描かれます。静かな弦のざわめきの中、ホルンや木管楽器などで日の出が描かれ、ゆったりとした朝の風景。日が昇るように、雄大に、徐々に盛り上がっていく様がとても美しい。そして、日の入りへ。また静かになり、夕暮れ、日の入り、宵の情景に。12分程度の作品です。とにかく美しい。

 もうひとつ、好きでおすすめなのが「フェロー諸島への幻想の旅」。フェロー諸島は、イギリス、ノルウェー、アイスランドの間の北大西洋に浮かぶ島々のこと。そのフェロー諸島へ向かう船、海や波、海鳥の鳴き声が最初は静かに、靄がかかるように、徐々にはっきりと聴こえてきます。中盤に出てくるメロディーは、フェロー諸島が起源の古い歌、後半は、フェロー諸島の民族舞曲で賑やかに。ひんやりとした空気と、海の情景のスケールが大きな作品です。

 ニールセンは交響曲を先に聴いて、独特の和音に病みつきになってしまったのですが、この2作品の情景描写もまた魅力的です。今日から生誕151年。まだまだニールセン、聴いていきたいです。

・前回の記事:生誕150年 ニールセンの交響曲を聴こう
by halca-kaukana057 | 2016-06-09 22:50 | 音楽
 昨年のシベリウス&ニールセン生誕150年メモリアルイヤーには、この2人に関する著書もいくつか出版されました。そのひとつがこの本。


ポホヨラの調べ 指揮者がいざなう北欧音楽の森
新田ユリ/五月書房/2015

 書名の「ポホヨラ(pohjola)」は、フィンランド語で「北、北国、北の方」という意味。シベリウスの管弦楽曲に「ポホヨラ(ポヒョラ)の娘」op.49がありますね。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」で、老賢者ワイナモイネンが出会った北の方に住む娘に求婚する物語をモチーフにした作品。この本の場合は、北欧、シベリウスのフィンランド、ニルセンのデンマーク、さらに、ノルウェー、スウェーデン、アイスランドも含みます。

 著者の新田ユリさんは、フィンランド人指揮者・オスモ・ヴァンスカ氏に師事、フィンランドでシベリウス、ニルセンをはじめとする北欧音楽に接し、研鑽を積んでこられた方。日本人指揮者の中では北欧音楽のエキスパートのひとり。シベリウス専門アマチュアオーケストラ・アイノラ響でシベリウス作品を指揮するほか、あちこちのオーケストラで北欧作曲家作品を指揮されています。

 そんな新田さんが読み解く、シベリウスとニルセンの作品。各作品の作曲経緯、その頃のシベリウスとニルセンはどんな生活をしていたか、スコアの読解…などは他の本にも書かれています。この本の読みどころは、指揮者視点、フィンランドで学び、北欧作品に深く接してきた新田さんの視点。オーケストラのスコアにほとんど馴染みのない私には難しいところもありますが、指揮者はこうスコアを読み解いて、どう振るかを考え決めているのかと思うと面白い。各パートの演奏家がどう感じるか、についても。この本は、実際にCDなどで演奏を聴きながら読むのがいいと思う。2回ぐらい読みましたが、演奏を聴いたほうが「こういうことか!」とわかりやすい、より作品を楽しめると思う。

 内向的なシベリウス、パワーのあるニルセン。ニルセンに関してはまだまだ入門レベルなので、作曲背景やニルセンに影響を与えた人々についてなども興味深い。ただ、残念なのが、ニルセンは交響曲1,2,4番のみ。3,5,6番や協奏曲、管弦楽曲はない…。

 そのニルセンの前に、ニルス・ゲーゼも出てくる。デンマークの作曲家で、北欧音楽の父とも言われる。シューマン「こどものためのアルバム」op.68の第41曲北欧の歌「ガーデへの挨拶」は、ゲーゼの友人であったシューマンがゲーゼを意識して書いた作品。ゲーゼの名前の綴りGADE:ソ・ラ・レ・ミの音をモチーフにしている。また、グリーグ「抒情小品集」第6集op.57、第2曲に「ガーデ」という曲があり、これはゲーゼがなくなった後、その回想として書かれている。ゲーゼというと、この2曲を思い出した。が、ゲーゼの作品そのものは聴いたことがなかった。デンマークの音楽はドイツの流れを汲んでいること、そこから「北欧らしさ」がどう生まれてくるのか。聴いてみたい。ちなみにニルセンも、ブラームスの流れを汲んでいる。

 さらに、シベリウスとニルセンの後の作曲家も。フィンランドのクラミ、エングルンド、ラウタヴァーラ、ノルドグレン。ノルドグレンは、フィンランドと縁の深いピアニスト・舘野泉さんのために、左手のためのピアノ協奏曲を書いている。
 そして巻末には、北欧5カ国の作曲家200人のリストと楽曲紹介。シベリウスとニルセンの前の時代、同じ頃の作曲家たち、その後の、現在も現役の作曲家まで。少し前から、シベリウス、ニルセン、グリーグ以外の北欧の作曲家とその作品にも興味を持って聴き始めているので、このリストはありがたい。まさに北欧の深い森。現代作品も以前は身構えて馴染めなかったが、今は臆せず聴いてみている。聴こうと思って聴くと、響きやリズムがすっと入ってくることもあって面白い。フィンランドの現代音楽の振興を目的とした作曲家のグループ「korvat auki!(耳を開け!)」のことを思う。耳を開いて、自分から近づいていく姿勢が大事なんだな、と。

 マイナーな北欧音楽にどうやって接するかについても書かれていますが、私がひとつ付け足すとすれば、フィンランド国営放送YLEのクラシック専門ラジオ「YLE Klassinen」.ラジオなので番組表をチェックする必要がありますが、フィンランドのシベリウス以外の作曲家の作品も頻繁に放送されます。フィンランド国営放送なので、そのオーケストラであるフィンランド放送響(&フィンランド指揮者)の演奏が多いですが、CD化されていない音源も続々放送してくれます。こんな演奏あったのか!と思うものも。北欧ものだけでなく、ちょっとクラシック音楽を聴きたいなと思った時にもおすすめします。
YLE Klassinen※サイトに飛ぶと再生が始まるので注意!※
 スマートフォンからは、「YLE Areena」、もしくは「YLE Klassinen」のアプリでどうぞ。「YLE Areena」サイドバーのメニュー「Radio-opas」をタップすると番組表を表示することができ、再生できます。フィンランド語は、翻訳サイトを使って英語に翻訳してください。

 残念ながら、この本の出版社が倒産してしまい、この本も絶版に。北欧音楽に関するいい本が出たと思ったのに…
by halca-kaukana057 | 2016-03-02 23:04 | 本・読書
 今年はシベリウス生誕150年でもありますが、もうひとり、生誕150年・1865年生まれの作曲家が。デンマークのカール・ニールセン。「ニルセン」と表記されているのも多く、一体どっちがデンマーク語の発音に近いんだ?一応「ニールセン」の表記で書くことにします。ということで、シベリウスばっかり聴いてないでニールセンも聴こう、と以前から交響曲全集を聴いていました。ニールセンは6曲書いています。
 ちなみに、シベリウスとニールセン、フィンランドとデンマーク、会ったこともあるし、お互いの作品について言及したこともあるそうな。

 聴いたのは、パーヴォ・ベルグルンド指揮デンマーク王立管弦楽団の全集。シベリウスもベルグルンドから入りましたが、ニールセンもベルグルンドからになりました。間を置きながらちょこちょこと聴いてきましたが、ようやく全部聴き終わりました。

 聴いてみて、ニールセンもいい!
 シベリウスのように、聴いていて北欧の自然を思う…ということはあまりありません。フィンランドとデンマーク、「北欧」とひとくくりにされますが結構違う。ことばも全然違う、民族も国民性も文化も歴史も違う。ただ、ニールセンの音楽そのものが面白くて聴き入ります。

 どの交響曲も勢いがあって、リズミカル。弦も管も打楽器も独特で面白い。特に気に入ったのが、2番、3番、4番、5番。
 2番「四つの気質」…短気で怒りっぽい胆汁質の第1楽章、鋭く冷静、知的な粘液質の第2楽章、陰気でメランコリックな憂鬱質の第3楽章、陽気で活発な性格の多血質の第4楽章という意味で「四つの気質」(表題音楽ではないらしい)。それぞれ個性的で、特に第3楽章はきれいだなと感じました。

 第3番「ひろがりの交響曲(大らかな交響曲)」は第2楽章でソプラノとバリトンのヴォカリーズが入ります。舞台裏で歌っているらしい。何とも不思議な感じ。第1楽章の最初、金管の和音連打もかっこいい。そこから壮大なテーマ、さらに木管と弦のささやくようなメロディーが。かと思うとまた盛り上がる。この変化が気に入りました。第2楽章は木管がゆるやか、美しい。そこにヴォカリーズが入ってきて、やっぱり不思議な魅力のある曲です。第3楽章の溌剌、第4楽章は荘厳。第4楽章の弦の響きがじわりと来ます。

 第4番は「不滅(滅ぼし得ざるもの)」、ニールセンの交響曲の中では一番有名。作曲当時、世は第一次世界大戦真っ只中。ニールセンの戦争交響曲とも分析も。聴きどころは何と言っても第4部(単一楽章の曲ですが、4つの部分に分かれてCDには収められている模様)のティンパニバトル。2対のティンパニが激しい連打を繰り広げます。とてもかっこいい。第4楽章以外でもティンパニは大活躍。第3楽章の暗い弦にティンパニが映える部分が印象的です。何か不吉なものを予感させます。
 
 第5番は2楽章の交響曲。第一次世界大戦の後の暗さ、第二次世界大戦への予感などを表現している…との分析も。他の交響曲が速いテンポとフォルテの強い音で始まるのに対して、5番は静かに始まります。聴きどころは第1楽章の小太鼓(スネア)のアドリブ。これは演奏するのが大変だろうな…いや、打楽器奏者の腕のみせどころ?第2楽章のメロディーの暗いうねりも印象的。

 メロディーや響きがどこかしらショスタコーヴィチに似たところもあるとも感じました。ショスタコの方が後か。
 まだ聴き込んでいないので、これからもっと聴けば更に面白さを見つけられると思う。今回はベルグルンド盤を聴きましたが、ブロムシュテット指揮サンフランシスコ響のがいいらしい。新しい録音も出てきている。なかなか実演が聴けないけれども、もっと聴いてみたいなぁと思っています。
 実演といえば、今年4月にストックホルムで「シベリウス/ニールセンフェスティバル」なるものがあったそうで…シベリウスとニールセン、更に2人に関係する作曲家の作品を組み合わせて、北欧オーケストラ・北欧指揮者が勢ぞろい…というもの凄い企画。オンデマンドはもう聴けなくなってしまっていました…。日本でまだラジオ放送されてないよね?聴きたい…!
Sibelius-Nielsen Festival 2015 | Stockholm Concert Hall

 ニールセンの作品は、協奏曲はヴァイオリン、クラリネット、フルートの3作品。管弦楽曲も「ヘリオス」「アラディン」など。室内楽やピアノ曲もある。色々と聴いてみたいところです。
by halca-kaukana057 | 2015-11-18 23:02 | 音楽

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by 遼 (はるか)
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