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ヴィンランド・サガ 15

 今年読んだ本は今年のうちに感想を書く…漫画2冊目。「ヴィンランド・サガ」15巻です。


ヴィンランド・サガ 15
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2014

 アイスランドに16年ぶりに帰って来たトルフィン。父・トールズの死から、その間のことを、母・ヘルガや姉・ユルヴァたち家族に語る。そして、戦争や奴隷制から逃げてきた人々が暮らせる国を、レイフがかつて語ってくれた"ヴィンランド"に築く、という志も。しかし、問題はトルフィンやエイナルたちは一文無しであること。国をつくるのには金が要る。どうするか…。トルフィンの生家の村から少し離れたところの農場主・ハーフダンなら貸してくれるかもしれない…が、トルフィンは幼い頃ハーフダンと会っていた。亡き父トールズとも面識がある。悪党として有名なハーフダンだが、トルフィンは会いに行くことにする。
 そのハーフダンの息子・シグルドは、結婚を控えていた。花嫁はグリーンランドの、レイフの親戚でもあるグズリーズ。しかし、グズリーズはこの結婚に気が向かなかった…。


 表紙のおさげの女の子…この子がグズリーズです。15巻はこのグズリーズが実質的なヒロインです。勿論トルフィンのヴィンランド行きの話も進みます。

 16年ぶりのアイスランド。登場人物たちは皆成長し、老い、時間の流れを感じさせる。ユルヴァの本格的な再登場が嬉しい。前巻14巻のユルヴァの登場はとてもインパクトがありました。お母さんになっても変わってないwユルヴァちゃん最強wと思ってしまいましたが、15巻では大人の女性として、家族を持つ母親としてのユルヴァの一面が。トルフィンを散髪するシーンの姉弟の会話は、お互い成長してはいますが、"姉弟(きょうだい)"なんだな、と感じます。そして、16年間、アイスランドを離れている間に起こったことを語り、"ヴィンランド"を目指すと告げる。16年も経っていたのか…。その間に起こったこと、トルフィンが経験したこと。本編では詳しく語ると紙面が足りなくなるので割愛されますが、これまでトルフィンが経験したことを回想しながら読むと、その話を聞いている家族たちの気持ちになれます。

 "ヴィンランド"を目指し、国をつくると決めたものの、現実問題が…資金。お金はいつの時代も大きな問題ですね。その資金を借りるために、目星をつけたのが、あのハーフダン。1巻で、奴隷を酷使し、逃げた奴隷を探してトールズ、トルフィンの家にやってきた、あの男です。金と暴力で全て解決しようとした、あの悪党。トールズはひるみませんでしたが。1巻を引っ張り出して読み返しました。絵柄も1巻と15巻では随分と変わったなぁ。何かと因縁をつけてくる。そのハーフダンも、16年後、年齢を重ねていました。相変わらず大農場を経営していますが、以前の奴隷の扱いと、今(15巻)での金を貸して返せなくなった農民への扱いは、ちょっと違います。ハーフダンにも変化が。そして、息子・ジグルドが結婚を控えている。ジグルドはかつての若い頃のハーフダン…というよりは、以前トルフィンとエイナルが奴隷として働いていたデンマークのケティル農場の次男坊・ノルマルを思い出します。強がりなワル。そのジグルドを言い諭す父・ハーフダン。ハーフダン、変わりました…。でも、"ヴィンランド"行きの資金を借りるのは、一筋縄ではいきません。

 1巻を読み返していて、ハーフダンの農場から逃げてきた奴隷を埋葬するシーンで、トルフィンがトールズに「ここからも逃げたい人は…どこに行くの?」(1巻、193ページ)と尋ねていた。トルフィンは、小さな頃から「逃げ場所」を意識してきたのか。

 15巻のヒロイン・グズリーズ。小さい頃からレイフの話を聞いて、船乗りになりたいと思ってきた。でも、女は船乗りになれない。結婚し、子どもを産み育て、家庭を守る。そんなこの時代の(いや、今でも変わっていない)典型的な女性の生き方に馴染めない。性格も男勝りで、思い切りがいい。親戚関係であるレイフには女は船乗りになれない!と反対されても言い返す。子どもの頃のグズリーズが、レイフからグリーンランドの外の世界について話を聞くシーンが印象的です。「世界」は広いのに…、"狭い"家庭におさまらなければならないこれからの自分。
あーあ
「世界は広い」なんて知らなきゃよかった
(158ページ)

 ふてくされるグズリーズのこの言葉、気持ち、わかります。世界は広いのに、可能性は無限に広がっているはずなのに、自分は狭いところから抜け出せない。できることだって少ない。何やっているんだろう…よく思います。「繋がれたアジサシ」がこの15巻の副題ですが、まさに「繋がれた」状態。

 ちなみに、ユルヴァもトールズ譲りの男勝りで力の強い女性ですが、今はその強さは家庭を守ることに使っている。母・ヘルガさん譲りですね。

 そのグズリーズと、ジグルドが結婚する意味。ハーフダンとレイフが親戚関係になるようにして、ハーフダンは何を考えているのか。ジグルドとグズリーズの結婚式の後、2人だけになった時に語られます。船乗りになることを諦め、「それぞれに与えられた役割を果たす」ことをやろう、と決心しますが…ラストシーン、言葉を失いました。何が起こったかわからなかった。グズリーズ…一体…!?

 一方、トルフィンたちは新たな冒険へ。"ヴィンランド"へ行くための資金稼ぎの大冒険です。命懸けではありますが、レイフのおじさん、冒険家の血が騒いでますねwトルフィンもエイナルもやる気十分。"ヴィンランド"へは大きな回り道に見えますが、どうなるのだろう。この大冒険、私も楽しみです。レイフさんは若くないので、どうかご無事で!

・14巻:ヴィンランド・サガ 14
by halca-kaukana057 | 2014-12-12 22:33 | 本・読書
 そろそろ夏至ですね。ということで、北欧旅行記を。「ロボット」という言葉を世に出した「R.U.R」のカレル・チャペックによる旅行記です。


北欧の旅 カレル・チャペック旅行記コレクション
カレル・チャペック:著/飯島周:訳/筑摩書房・ちくま文庫/2009

 1936年7月、チャペックは妻と妻の兄とともにデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの旅に出る。北欧とあるので、フィンランドも入っているかと思ったら無かった(残念)。その旅のことを、チャペック自身によるイラストとともに書き綴ったのがこの本。

 冒頭「北への旅」で、チャペックは北欧諸国(フィンランドは抜けているのでスカンディナヴィア3国)への想いを書いている。同じヨーロッパでも、北は少し違う、と。しなやかで厳しい自然、深い森。そんな北をひたすら目指したい、巡礼したい、と。

 皆が皆ではないが、北という地はどうしてこれほど人を惹きつけるのだろう。私も北国に住んでいるのに、更に北に惹かれている。今住んでいる北国でも、季節が巡るごとに発見すること、再確認・再認識することが多い。これまで様々な北欧に関する本を読んできたが、文章でその北国の魅力を豊かに描いている。チャペックの可愛らしいイラストも一緒に楽しめる。チャペックはこんなに絵を描く人だったんだ。

 自然の描写は、読んでいるだけで北欧の自然を思い描ける。色彩豊かな文章に惹かれる。深い森、トウヒやモミの木、白樺。シダやベリー。南の方とは表情が異なる太陽、陽の光。白夜。北へ行けば行くほど、無駄なものはそぎ落とされてゆく。船でノルウェーのヨーロッパ最北の地・ノールカップを目指す。黒い断崖絶壁がそびえるその地を、チャペックはこう記している。
ここはヨーロッパの終点ではない。これはヨーロッパの始発点なのだ。ヨーロッパの終点は、あの南のほうの、人々の間の、あの、この上なく忙しい場所だ――。
(230ページ)

 何もない、この北の地が始まり…納得できる。

 出会った人々の描写もあたたかく、ユーモラスだ。現地の人々の民族性に心惹かれたチャペック。人々が住む街も、人々も、無駄がそぎ落とされているように読める。一方で、アメリカから布教のために来た教団に対しては、皮肉たっぷりに語っている。そのユーモアに、思わずニヤリとしてしまった。ただ、アルコール販売に制限があることだけは、チャペックにとって困り事だったようだ。

 チャペックがデンマーク、スウェーデン、ノルウェーを旅したのは、1936年。第2次世界大戦への流れが表われてきた頃。この後、この3国も戦争に巻き込まれてしまうのかと思うと心が痛む。現在は様々な面で注目されている北欧諸国だが、約70年前の北欧諸国の空気を味わうのにもいい本です。

 ただ、私としては、やはりフィンランドが無いのが残念です…。
by halca-kaukana057 | 2014-06-07 22:15 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 14

 相変わらず漫画(読んだ本全般)の感想を書くのが遅いです…。ようやく書きます、「ヴィンサガ」14巻です。


ヴィンランド・サガ 14
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2014

 クヌート王率いる部隊とケティル農場側の戦は、クヌート側の圧倒的な力によりケティル農場側は壊滅。クヌートはケティル農場側に降伏勧告を出す。停戦の条件は、ケティル一族全員の投降、平和喪失(事実上の国外退去命令)。もう戦える兵力も僅かだが、トールギルはまだ戦うつもりでいる。だが、農場の主のケティルが意識不明の中、ケティルが跡継ぎと決めたオルマルに決定権が。オルマルは降伏を受け入れることに。
 一方、レイフ・エリクソンと再会し、「ヴィンランド」を目指すことにしたトルフィンは、エイナルとともに農場をあとにしようとしていた。しかし、ケティルたち一族のことが気になるトルフィンは、クヌートに会って和平交渉しようと部隊の者に名乗り出るが…。

 奴隷編のフィナーレです。いよいよトルフィンが「ヴィンランド」へ向かう時が来た…の前に、ケティル農場での戦の始末が。このままでは、ケティル農場はクヌート率いるデンマーク軍に搾取されてしまう。奴隷として働き、その暮らしは楽ではなかったとは言え、トルフィンは大旦那スヴェルケルや農場の主ケティル、エイナルや”蛇”をはじめとする客人たちがいたからこそ、「ヴィンランド」に向かおう、「ヴィンランド」に新しい国をつくろうという気になれた。アルネイズやガルザルの悲劇とともに。そんなケティル農場を見捨ててはおけない。トルフィンとクヌートはこのまま再会せずに終わってしまうのかと思っていたのですが、再会へ向かいます。

 しかし、クヌートはイングランドを支配するデンマークの王。かつて従者であったとは言え、今は奴隷から解放されたばかりのトルフィン。簡単に会えるわけがない。クヌートの部隊の者に暴力をふるわれても、応戦しないトルフィン。アシェラッドに騙され、戦うことになってしまった時の父・トールズを思い出します。トルフィンは、トールズ、そしてアシェラッドの真意を確実に受け継いだのだな…殴られ続けるトルフィンの姿は痛々しいばかりですが、トルフィンの本当の強さを実感しました。

 そして、ついに再会したトルフィンとクヌート。エイナルも、ヴァイキングに家族を殺され支配され、奴隷になったこれまでの思いの丈をぶつけます。エイナルも強くなった。
 クヌートも、トルフィンと同じように楽土をつくる、と言っている。王となり、その途中である。そのクヌートの国づくりの根幹には、ヴァイキングとキリスト教の思想があった。キリスト教を信じつつも、ヴァイキングはそれに反する。ならば、ヴァイキングを救う国をつくろう、と。クヌートも、ノルドの王、ヴァイキングの王として、何が出来るか、何をすべきか、考えていたのです。ヴァイキングたちと、支配下のイングランドの人々と、父・スヴェンの亡霊の声の間で。あの美少年だったクヌートが、すっかり風貌も変わって王となって再登場した時は一体どうしたことかと思いましたが、王としての道は茨の道だった、この今の姿はその道を歩いてきた証拠なんだな…とクヌートの姿を見て思います。

 新しい国をつくる…トルフィンもクヌートも同じことを言っている。しかし、目指すもの、思想は異なる。トルフィンが選んだ思想、行動には納得しました。前巻13巻で、苦しいばかりなのに何故生きなければならないのかという言葉を残して死んだアルネイズを思い出します。ノルド人・ヴァイキングの思想・力・強さからはみ出してしまった、落ちぶれてしまった者はどうしたらいいのか。行く場所、生きる場所が無い…今ここには無くても、別の場所にならあるかもしれない、いや、つくろう。それぞれの国をつくるトルフィンとクヌート。トルフィンの考えを聞いた後のクヌートの笑顔がとても印象的だった。これまで、父・スヴェンの亡霊にうなされてきたのがふっきれたように。クヌートとトルフィンが再会できて、本当によかった。

 そしてもうひとつの再会…トルフィンがアイスランドに里帰りします。父・トールズを殺したアシェラッドに復讐をすると誓って、アイスランドを飛び出したトルフィン。十何年ぶりです。ヘルガ母さんとの再会には涙腺が…。そして、お待ちかねユルヴァ姉さんも再登場!!待ってました!!再会は…読んでのお楽しみとだけ言っておきます…ユルヴァちゃんはやっぱり最強です…。

 15巻からはいよいよ「ヴィンランド」を目指すことになるはず。盛り上がってまいりました!!

・前巻13巻:ヴィンランド・サガ 13
by halca-kaukana057 | 2014-04-29 22:05 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 13

 読んだ本、とりわけ漫画の感想が滞っております。今日こそ書く。

ヴィンランド・サガ 13
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2013

 クヌート一行は、ケティルの農場を目指して航海中。フローキ率いるヨーム戦士団もともに。一方、一足先にケティルの農場に帰って来たケティル、トールギル、オルマル。そしてトルフィンを探してやってきたレイフ・エリクソン。トールギルは農場の奉公人たちを鼓舞し、戦の準備を始める。戦のことは客人の蛇たちにも知れ、客人たちもまた、彼らの考えで戦の準備をする。
 ガルザルとの逃亡しようとし、またその逃亡を助けようとして捕らえられたトルフィン、エイナル、アルネイズ。トルフィンは、逃亡のため蛇と闘ったことを思い出す。戦士をやめ、力をもって戦うことをやめたトルフィンは、蛇との闘いを悔やんでいた。闘わずに、人を傷つけ殺さないでいられる方法を探し求めていた。
 そしてクヌート一行が農場に到着。戦いが始まった…


 何故クヌートがケティル農場を狙うことになったのか…11巻を読み返しました。イングランドを支配したクヌート。支配下に置くために、デンマーク人部隊をイングランドに駐留させていたが、その維持費はイングランド人の税金から。イングランド人からは勿論不満が。新たな財源を捻出するため、デンマークの農場を接取。その第一の候補となってしまったのが、デンマークの豪農ケティル。しかも、オルマルやトールギルがクヌートに謁見した際、問題を起こして(利用され起こさせられた)、ますますターゲットに…。という経緯でした。

 ケティル農場での戦と、戦わなくても済む方法を考えるトルフィンの対比。12巻のアルネイズさんの逃亡未遂を知ったケティルのアルネイズに対する暴力とも対比されます。規模の大きな戦いのシーンが久々に描かれましたが、以前は壮絶だ…悲惨だ…読むのが辛い…と思っていたのですが、トルフィンの問いを思うと、とても虚しく見えてきます。勿論、戦いの描写は今回もとても緻密で、迫力満点で、グロテスクなほどリアル。それなのに、ケティル農場側も、クヌート側も、こんな戦いをしてどうなるの、と思ってしまう。戦いのきっかけが、財源捻出のための農場接取だからこそますます。

 そんなトルフィンの前に、レイフ・エリクソンさんが…ようやく再会できました!!よかった、よかった…。ケティルに暴力を振るわれ、瀕死のアルネイズさん。暮らしていた村が戦に巻き込まれ、子どもは死に、奴隷になり、夫のガルザルも再会できたと思ったら死んでしまった。アルネイズさんの最後の言葉がつらい。
なぜ……生きなければならないの?苦しいばかりなのに……(162ページより)

 現代でも、同じような言葉をよく耳にします。生きていても苦しい。働いても働いても、生活が豊かにならない。子どもを育てるのであればますます苦しい。仕事、人間関係、毎日の生活のあらゆる場面で板ばさみになっている。一方で、経済的にも文化的にも、あらゆる面で豊かな生活をしている人もいる。権力を思いのままにしている人もいる。そんな理想には届かない。心身疲れきり、もう生きる気力もない。

 クヌートが揮った力、権力。当時のノルド人にとっての力、強さ。そこからはみ出してしまった奴隷たち。最強の戦士と呼ばれた男を父に持ち、その父もノルド人にとっての力・強さから離れ、自分自身も戦士になったトルフィン。そしてトルフィンも奴隷となり、心もノルド人にとっての力・強さから離れた。死ぬしかないはみだした者も自由に暮らせる、戦もない世界へ…無いなら作りたい…。

 トルフィンのヴィンランドへの旅が始まります。最後のトルフィンとエイナルの決意がとても熱い。ますます楽しみです。

・11巻:ヴィンランド・サガ 11
・12巻:ヴィンランド・サガ 12
by halca-kaukana057 | 2013-10-26 23:19 | 本・読書
 先日の「北への扉 ヘルシンキ」に続き、フィンランド・北欧関係本をもう一冊。


TRANSIT(トランジット)19号 美しき北欧の光射す方へ
講談社・Mook(J)/2012

 旅行関係のムックです。昨年12月に出た号が、北欧特集。表紙のオーロラの写真しかり、中も写真がとにかくきれいで、美しい。色合いもいい。北欧の色というのはこういうものかなぁ、と思ってみたり。

 旅行記エッセイのような箇所もあるし、北欧諸国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェー)をそれぞれ紹介する箇所もある。更に、北欧神話やヴァイキングの歴史と疑問、サーメ(サーミ)のこと、食のこと、北欧と言えばデザインということでデザイン特集も。また、福祉国家、子どもを育てるための環境づくり・教育が充実している、など理想国家として挙げられることもある北欧諸国の実情にも迫っています。実際のところ、どうなのか。お手本にしたいところもあるし、日本とは違う、日本からは見え難い問題も抱えているのだなぁと感じます。

 そして、「北欧」とは一体何なのか…とも思います。「北欧」と呼ばれる国々は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド。でも、この本では「北欧4ヵ国」はフィンランドを除く4ヵ国になっている。私としては、「スカンディナヴィア諸国」だなぁ…。ゲルマン人系のノルド人(ヴァイキングの民族)の国々という点で(フィンランドだけは、民族も言葉も異なる。)。「北欧」のイメージも、国によって違いはあるなと感じます。海と深いかかわりを持って生きてきたノルウェー、北欧の中で最も大きな国であるスウェーデン、酪農と風のデンマーク、森と湖のフィンランド、島国で厳しい環境のアイスランド。そして、独特の文化を持っているサーメ(サーミ)。読んでいると、専門書のような詳しさとは違う、北欧の奥深さを感じます。

 音楽についても紹介しているのですが…クラシック音楽がないのが残念。北欧はクラシック音楽も盛ん。まず、北欧の三大作曲家・グリーグ、シベリウス、ニールセン。他にも沢山の作曲家がいる。オーケストラも多いし、著名な演奏家・指揮者も次々出てくる。なんといってもフィンランドは世界で活躍している指揮者が多い(シベリウス音楽院指揮科が凄い)。CDも多いし、来日公演も多いので、コンサートで聴く機会もあると思う。そこも特集して欲しかったなぁ。あと、民族音楽も。それから、北欧と言えば合唱大国。合唱も特集して欲しかった…(きりがない

 北欧通史で、その年代の北欧が舞台の文学作品に限らず、漫画やアニメを紹介しているのは嬉しかった。ヴァイキングを描いた漫画「ヴィンランド・サガ」(幸村誠)、フィンランドの20世紀初頭を描いたアニメ「牧場の少女カトリ」。この2作は外せない。

 北欧の色々な面に触れられる本です。
by halca-kaukana057 | 2013-02-25 23:16 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 12

 昨年読んだ本の感想がまだまだあるんだ。今日は「ヴィンランド・サガ」12巻。


ヴィンランド・サガ 12
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2012

 1018年10月、ケティル農場では平穏な日々が続いていた。エイナルもアルネイズも懸命に働いていた。トルフィンはその仕事の合間に、用心棒の”蛇”が大旦那・スヴェルケルに聖書を読んでいるのを盗み聞きしていた。そんな中、農場敷地の中を馬で走る一人の男が。少し前に逃亡した奴隷で、”蛇”の手下のひとりを殺し逃げている途中だという。その奴隷の顔を見たアルネイズは、「ガルザル!」と叫ぶ。その奴隷もアルネイズに反応。なんと、2人は夫婦だった…。2人で故郷に帰ろうと言うガルザル。しかし、2人とも奴隷の身。しかも、ガルザルは人を殺し逃亡中である。ガルザルを捕らえようとする”蛇”。アルネイズの幸せのためにも、逃がしてあげたいエイナル。でも、”蛇”たち”客人”はエイナルが敵う相手ではなく、それ以前に人を殺せるのかと止めるトルフィン。落ち着いたところで、トルフィンとエイナルは、アルネイズからカルザルとのこと、何故別れて2人とも奴隷になってしまったのかを話し始める。


 11巻は、農場の主のケティルがクヌートと従士のトールギル(ケティルの長男)に会い、クヌートがケティル農場を狙うところで終わったのですが、その続きは12巻ではお休み(気になる…!)。12巻は、そのケティルが農場を留守にしている間、逃亡した奴隷のガルザルとアルネイズの再会がメインです。11巻で少し出てきたガルザル。11巻のおまけマンガで予告があったのですが、その通りでした。しかし、まさかアルネイズさんと夫婦だったとは…!!

 ガルザルと共に逃げたいが、とある事情で(ネタバレ防止)で波風を立てたくない、とその想いを抑えようとするアルネイズさん。でも、心は揺れ動く。一方のガルザルは何をしてでもアルネイズと共に逃げ、また家族で穏やかに暮らしたい。そのためなら、手段は選ばない…。そんなガルザルの想い、そして離れている間に起こったことを思い出し、詫びるアルネイズ。ガルザルの想いは止まらず、”嵐”は加速して大きくなってゆく。

 そんな2人を見て、トルフィンとエイナルが、再び”理想の世の中”について語り合う。戦争と奴隷を無くすことは出来るのか?戦うことを好み、手段はどうあれそこでの勝利を誇りとするノルド人。そして略奪してでも得た富も、ノルド人にとっての誇り。それが当たり前。トルフィンも以前はそうしてきた。しかし、父・トールズの仇だと見なしてきたアシェラッドが死に、ケティル農場で奴隷として働くうちに、戦士であるノルド人とは違う考え方をするようになった。戦って人を殺すことが、本当の戦士ではない。父・トールズ、そしてアシェラッドが言っていた”本当の戦士”を模索するトルフィン。戦って人を殺すことを否定すれば、ノルド人としては”仲間はずれ”にされてしまう。…もしかして、トールズがノルウェーやデンマークから離れたアイスランドで暮らしていたのは、戦いを否定し、自ら望んで「仲間外れ」になったから、なのだろう。
(最初から読み直さねばならぬな。)
 この部分に関しては、巻末の幸村先生のあとがきコラム(?)にも書かれています。幸村先生が何を描きたいのか。11世紀ノルド人の民衆の暮らし、少数派の歴史、知りたいものです。

 戦いを否定するノルド人だけじゃない。この世界には、その社会・コミュニティの「当たり前」に疑問を抱いたり、何らかの理由でドロップアウトしてしまい(させられてしまい)、「仲間外れ」になってしまうことが少なくない。いじめもそのひとつと言えるだろう。「仲間外れ」=その社会・コミュニティでの存在を否定されること。でも、その社会・コミュニティの外でなら、「仲間外れ」にはならないはず。「ここではないどこかへ」と逃げるのも、生きるために必要なことがある。大切なのは、自分が生きること、だから。

 そんな殺し合いの連鎖から抜け出し、”仲間はずれ”が平和に暮らせる世界を作りたい…。トルフィンの考えがだんだん具体化してきました。そして思い出したレイフのおっちゃんが話していたあの場所…。レイフのおっちゃん、11巻でケティル農場に行こうとしていた。トルフィンとの再会、実現してください…!

 アルネイズとガルザルの”嵐”はどんどん大きくなってゆく。トルフィンとエイナルも協力することに。”蛇”さんとトルフィンの対決シーンが凄い。”蛇”さんもかつてはトルフィンのようなヴァイキングの戦士だったのだろうか。トルフィンも戦いたくないとはいえ、その動きが鈍っていないのが凄い。そしてガルザルとアルネイズの2人の最後が…。アルネイズさんはこの後どうなってしまうのだろう。

 さて、13巻は話を元に戻してケティルが農場に戻ってくる。クヌート、そしてレイフのおっちゃんとトルフィンが再会するかどうか。気になる…!

・前巻:ヴィンランド・サガ 11
by halca-kaukana057 | 2013-01-16 23:05 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 11

 この作品は単行本の出るペースがゆっくりなので、焦らずじっくりと読めます。


ヴィンランド・サガ 11
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2012


 1018年、イングランド国王となったクヌートは、故郷のデンマークに一時帰国した。クヌートの兄・ハラルドは、父・スヴェンの死後デンマーク王となっていたが、病に倒れ臥せっていた。病のハラルドを見舞う、弟・クヌート。ハラルドは病床で、デンマークを譲ると言う。クヌートは、早く元気になって欲しいと言うが、そこでクヌートが見たものは…。
 一方、トルフィンはケティルの牧場で、エイナルとひたすら農地を開墾していた。森の最後の一本の木を倒し、喜ぶ2人。この土地での種まきが終われば、トルフィンとエイナルは自由の身になれる。自由を目の前にして、トルフィンは…。一方、ケティル農場の近隣では、不穏な事件が起こっていた。
 ケティルは、ハラルドのお見舞いに、息子のオルマルと王宮へ向かう。しかし、ハラルドは既に死去していた。困ったケティルは、次のデンマーク国王とよい関係を築いておこうと、クヌートの従士をしているオルマルの兄・トールギルに頼んで取り次いでもらおうとする…。


 表紙はクヌートです。11巻はクヌートがメイン。あの美少年が随分と変わってしまいました…。外見だけでなく、中身も。アシェラッドの最期の策略・芝居で父・スヴェンの死後、イングランド王となった。かつては父のことはよく思っていなかったが、随分と変わってしまいました。いや、王となった結果、変わるべくして変わったのだろう。イングランドとデンマークを支配し続ける王であり続けるため、”楽土”を築くために。王となれば、政治・国を治めることからは逃れなれない。しかも、イングランドという他民族の国を支配しているのだから、イングランド人の反逆などにも敏感にならなくてはならない。戦力を維持するために出した案…厳しい内容です。
 そのクヌートが、父・スヴェンと語るシーン…。国王は、孤独、か…。
 あと、クヌートの目指す”楽土”って、何なのだろう?アシェラッドたちと一緒に行動していた時のものと、同じなのか、変わってしまったのか…?

 一方、10巻で”本当の戦士”とは何か、悟り始めたトルフィン。真面目に農地を開墾し、最後の一本を倒した時の笑顔。トルフィンの笑顔は、アイスランドでの幼き頃、亡き父・トールズたちと平和に暮らしていた時以来ではないだろうか。ああ、トルフィンって、こんな風に笑うんだった、と安心しました。食事のシーンでも、エイナルやアルネイズさんたちと和やか、賑やかに。これから自由の身になったら、トルフィンはこんな暮らしをして欲しい。そう思っていたのに…。
 クヌートの”楽土”の話も出ましたが、トルフィンも”理想の世の中”について語るシーンが。これは、クヌートのものと重なるのか、それとも対極のものなのか。

 クヌートに謁見したケティルとオルマル。クヌートの従士をしているトールギル。この3人がクヌートに会ったことで、穏やかだったケティル農場での物語が一気に加速し始めました。さらに、トルフィンを探し続けるレイフ・エリクソンさんも再登場。今度こそ再会できそう!でも、トルフィンとクヌートも再会してしまうのか。再会したら、どうなってしまうのだろう。12巻が待ち遠しい展開です。


 最後のオマケ4コマ。シリアス展開の息抜きですw「プラネテス」からですが、幸村先生のオマケ4コマが好きですw

・前巻10巻:ヴィンランド・サガ 10
by halca-kaukana057 | 2012-02-09 23:25 | 本・読書
 NHKBSプレミアムの北欧スペシャル、堪能してます。こんなに北欧・フィンランドに関する番組が放送されまくっているなんて信じられません。とりあえず、録画が大変なことになっています…。

 たくさんの番組の中から、印象的な番組を。「ぐるっと北欧5000キロ ~スカンディナビア半島・港町巡り~」。女優の野村佑香さんが、ノルウェーのアルタから、フィンランドのトゥルクまで、船を乗り継いで港町を旅する番組です。

NHK 北欧スペシャル:ぐるっと北欧5000キロ ~スカンディナビア半島・港町巡り~ 前編・バイキング 美しき船を求めて
ぐるっと北欧5000キロ ~スカンディナビア半島・港町巡り~ 後編・バルト海 一瞬の夏のしあわせ

 番組では、途中船を降りて港町を歩き、現地の人々と触れ合いながら、彼らの暮らしや文化、自然、歴史などにも触れます。スカンディナヴィア諸国(ノルウェー・デンマーク・スウェーデン)がメインなので、この3国について語る上で欠かせない存在である、ヴァイキングについての話題がとても多く、興味深かったです。

 ヴァイキングと言うと、北欧の大男たちが船で世界各地を回り、略奪や侵略、そのためには惨殺もいとわない…そんなイメージを持たれがちです。実際そうではあるのですが、ヴァイキングはそれだけではない。北欧の海で獲れた魚を加工し、船で向かった先でそれらと他の地域の産物を交換し、交易していた。船も、木や船に関する深い知識と巧みな技を生かして、丈夫で速く進む船を造ることができた。ヴァイキング船の技術をそのまま受け継いでいる職人さんを訪ねるシーンがあったのですが、その職人さんが言っていた言葉が印象的でした。ヴァイキングには略奪などの誇れない歴史もある。でも、彼らは多くのことを教えてくれる、と。そのヴァイキング船の職人さんだけでなく、野村さんが乗ったノルウェーの船の船員さんたち、干しタラを作っている漁師さん、鉄を加工して船の部品を作っている職人さん、デンマークで酪農を営みチーズを作っている農家の方も、皆、ヴァイキングの時代に生まれた技術を受け継ぎ、その歴史を守りながら暮らしている。1000年も前にヴァイキングによって生み出された数多くのものが、現代の北欧・スカンディナヴィアの人々の暮らしを支えている。

 私たちの暮らしの中の、当たり前だと思っていることが、実は何百年も、何千年も前からあるものがルーツだった知った時…自分と、見たことも無い歴史上の世界が繋がり、時空を越えたような気持ちになります。歴史の表舞台にあるのは、大きな史実だけ。でも、その奥には、人々が地道に暮らしてきて、それが今に繋がっている。だからこそ、今の私たちの暮らしがある。このヴァイキングを辿る旅で、ヴァイキングたちの暮らしについて、とても興味を持ちました。ヴァイキングを描いている漫画「ヴィンランド・サガ」(幸村誠:作)で、ヴァイキングの暮らしや日常も描かれ興味を持っていたのですが、ますます興味を持ちました。

 北欧と言うと、デザイン大国のイメージもあります。機能と美が調和した、シンプルで使いやすい、洗練された、でも地味とは違うデザイン。そのデザインのルーツも、ヴァイキングの造った船などに由来していた…というのが面白かったです。他にも、長い冬、家の中で暮らすことが多いため、その暮らしを彩り、豊かにするためという理由もあります。ストックホルムでデザインを学んでいる学生さんの言葉や考え方が印象的でした。

 メインがスカンディナヴィアなので、フィンランドはトゥルクのみ…とちょっと物足りないところもありました。でも、フィンランドで紹介されたのは、「リュイユ(Ryijy)」というフィンランドの伝統的なウールの織物。起源は、ヴァイキングの時代。スカンディナヴィアのヴァイキングは、フィンランドにもその勢力を広げていました。荷物を海水や雨から守るカバーとして使われ始め、そのうち船のカバーや寝具として使われるようになりました。現在ではタペストリーなど、インテリアとして使われています。「リュイユ」のことを、この番組で初めて知りました。この「リュイユ」に使うウールの糸は、天然色素で染められます。「リュイユ」を作っている人は、「天然の色は心の中にある色」と話していました。自然とともに生きてきた、北欧・フィンランドの人の言葉だなと感じました。

・リュイユについて詳しく:JDN スタイリッシュ フィンランド:01 リュイユにみるフィンランドデザイン

 旅をした時期が6月から7月だったため、ちょうど夏至のあたりで白夜を体験したり、デンマークで夏至祭に参加したりするのも興味深かったです。深夜12時でも、昼間のように明るい。どうやって寝るんだこれは…。夏になるとテンションが上がる理由が、わかる気がします。そして日照時間が極端に短くなる冬は、家の中でのんびり暮らす。私の地域も冬は雪がひっきりなしに降るために日照時間が少なくなり、気が滅入ることもありますが…北欧の冬の暗さを想像したら、恐ろしくなりました。これは確かに、家の中にマリメッコのような鮮やかなデザインのものが必要だ…。

 この番組は、明日土曜日、午後1時から前編後編一気に再放送されるので、興味のある方は是非どうぞ。パラボラアンテナがない方も、NHKオンデマンドで配信されているのでそちらでどうぞ。
by halca-kaukana057 | 2011-07-29 21:48 | フィンランド・Suomi/北欧
 先日、雑貨屋さんでこんなものを見つけて、即購入してしまいました。
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 北欧4カ国(アイスランドが無い…「スカンディナヴィア」を書かれているので、スカンディナヴィア諸国のことを指しているのでしょうが、それだとフィンランドは外れるぞ…?まぁ、細かいことは気にしないことにしよう…)の国旗がデザインされている手ぬぐいです。日本の手ぬぐいと、北欧のデザイン(国旗もデザインに含みます)の意外なコラボ。手触りもさらさらしていて、暑い日に役に立ちそうです。北欧の爽やかな夏を想像して、少し涼しく感じる、かも…。お気に入りの手ぬぐいになりました。

*****

 BSのパラボラアンテナをつけてから、約1ヶ月。一気に観る番組・録画する番組が増えました。そして、NHK・BSプレミアムでこんな私ホイホイな特集を組んでいます。

NHK北欧スペシャル

 明日23日~31日まで、北欧5カ国に関する番組が目白押し!街を訪ね、雄大な自然を堪能する紀行番組。芸術・音楽・文化に関する番組。さらに、「ムーミン」特集も。たまらないです…。

 新たに製作された番組も楽しみなのですが、有り難いのは過去に放送された北欧に関する番組が再放送されること。NHKスペシャルで地上波総合テレビで放送されたものの、短縮版で、BSで放送された完全版を観たいとずっと思っていた「ハイビジョン特集 世界里山紀行 フィンランド 森とともに生きる」も放送されます。DVD/BDも販売されていない(Nスペの短縮版なら出ている)ので、観るすべはないものかと思っていたのです。嬉しい!!
・Nスペ版感想記事:NHKスペシャル 世界里山紀行 フィンランド
・この番組は、この本がきっかけで生まれました:フィンランド・森の精霊と旅をする

 さらに、「名曲探偵アマデウス」では、シベリウス「フィンランディア」の回を再放送。これも観たかったけど観れなかった。「アマデウス」は毎回丁寧な解説で、各作品をじっくりと味わうきっかけになって好きな番組なのですが、これまでシベリウス作品が取り上げられたのは「フィンランディア」と「交響曲第2番」。まずは「フィンランディア」から。天出探偵の鋭く、かつコミカルな推理が楽しみです。

 さらに、25日朝6時からの「クラシック倶楽部」は、レイフ・オヴェ・アンスネスのピアノリサイタルを再放送。アンスネスはノルウェー出身ということで、北欧祭りに参加です。ヤナーチェク、ドビュッシー、ベートーヴェンと、北欧作曲家の作品が無いのが残念ではありますが、アンスネスの演奏を朝から聴けるとは嬉しい限り。勿論録画もします。

 楽しみな番組を挙げるとキリがないのでやめておきます。現在、HDレコーダーの録画予約が大変なことになっています…。北欧スペシャルの番組以外もあるので、カオス状態ですw

 と言うわけで、明日から私は大変なことになりそうです。まずは明日放送の「名曲探偵アマデウス」フィンランディア。

【追記】
 今日、録画したのですが、お昼過ぎの地震で…。ああ…。もう余震はいいよ…。再放送があるので、もう一度録画します。地震は強かったですが、津波がなくてよかったです。
by halca-kaukana057 | 2011-07-22 22:02 | フィンランド・Suomi/北欧

ヴィンランド・サガ 10

 結構前に買って読んだのに、感想を書くまでに日が開いてしまいました。「ヴィンサガ」待望の10巻です。

ヴィンランド・サガ 10
幸村 誠/講談社・アフタヌーンKC/2011

 農場主ケティルの父である大旦那・スヴェルケルから馬を借りることが出来たトルフィンとエイナルは、懸命に荒地を畑として耕す。麦を育て、収穫し、売ることで、奴隷身分から脱することが出来る。張り切るエイナルの一方で、生まれて初めて畑作に挑むトルフィンは、農耕そのものに驚いてばかりいた。
 そんな日々の中で、トルフィンは悪夢にうなされ続けていた。心配するエイナル。トルフィンは、戦士だった頃のこと、父・トールズとアシェラッドのことをエイナルに話し始める…。


 まず、表紙を観て驚いた。これ…トルフィンだっけ?トルフィンです。9巻から更に雰囲気が変わりました。成長したということです。そういえば、この10巻ではトルフィンはいくつになっているのだっけ…?

 10巻は畑を耕し麦を育てるトルフィンとエイナルの日常の中で、ケティルと父である大旦那・スヴェルケルの考え方の違い、奉公人たちのトルフィンとエイナル(奴隷)への”差別意識”。そして、そこから発展する”憎しみ”と”暴力”について描かれます。冒頭や中盤で起こったことが、後半で全て収束します。凄いまとめ方、物語の作り方だと感じました。

 「ヴィンランド・サガ」は、最初トルフィンの”憎しみ”で成り立っていた物語でした。父・トールズを罠にはめ、殺したアシェラッド。そのアシェラッドに仇を討つため、子どもながらもアシェラッドの一味に加わり、仇討ちの機会を伺う。アシェラッドもそんなトルフィンの気持ちはわかってはいたが、己の目標の実現のため、トルフィンをそばに置いて、うまく動かしながら戦士とは何かを教え続けた。そして、デンマーク王スヴェンを殺し、その息子であるクヌート王子に自ら殺されることで、クヌートを王にするという命をかけた策略で目標を達成する。一方、トルフィンはアシェラッドに仇を討つ必要がなくなり、戦場から去り、今のケティルの農場で奴隷として働いている。過去の戦士だった自分も、アシェラッドに父の仇を討つことも、ここ、ケティルの農場には無い。でも、トルフィンの過去には、しっかりと刻まれている。過去の自分と今の自分が繋がらない。

 この、過去の自分と今の自分が繋がらないことによる、複雑な想いを、私も抱いています。トルフィンのような強い”憎しみ””仇討ち”ではありませんが、過去に追い求めていたこととは全く違う道にいる今の自分に、どう向き合ったらいいか。頻繁に悩みます。ネガティヴな面でも、ポジティヴな面でも、こんな複雑な気持ちを抱くことは誰にでもありうると思う。

 そして、ある事件をきっかけに、トルフィンは戦士だった自分、過去に抱いていた”憎しみ”に向き合うことになる。父・トールズに加えて、まさかのアシェラッド再登場です。アシェラッドが死ぬ際に遺した言葉の本当の意味が、ここで明瞭になります。8巻で死ぬ時に、殺してしまったけれども、「本当の戦士」だと認めていたトールズ。そのトールズが貫き通した「本当の戦士」の道へ、様々な人々の”憎しみ”や”かなしみ”、”死”と共に進んで行け!この力強い言葉。アシェラッドは本当に最後の最後まで魅力的な人間だった。

 9巻で無気力だったトルフィンが、この10巻で生きる道・場所を見つけ、畑と同じように開拓してゆく。物語がまた大きく動き始めました。これは11巻が待ち遠しいです。


【過去巻感想】
ヴィンランド・サガ 8
ヴィンランド・サガ 9
by halca-kaukana057 | 2011-05-26 23:00 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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