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数学ガール

 コミック版を読んだので、今度こそ読むぞ!と読んだ「数学ガール」原作。これまでのエントリで何度か話題に出しましたが、今日は(今日こそ)純粋に作品について書きます。


数学ガール
結城 浩/ソフトバンククリエイティブ/2007

 ストーリーはコミック版とだいたい同じですが、少し違います。"僕"と数学をこよなく愛する才女・ミルカさん、"僕"から数学を教えてもらっている後輩のバタバタっ娘・テトラちゃんとの、数学のある日常が描かれます。コミック版ではなかったテトラちゃんが"僕"に数学を教えてもらいたいと出した手紙、テトラちゃんとの出会いも。テトラちゃんと"僕"がどうやって出会い、数学を教えてもらうようになったのか詳しい経緯がコミック版では省かれていたので、やっと謎が解けました。さらに、コミック版ではテトラちゃんは数学初級者という感じに描かれていますが、原作ではかなり高度な数式にも取り組んでいます。驚いた。

 コミック版と原作を読んでみて、数学に対するイメージはやっぱり「難しい」。微分?Σ?log?高校でやったけど、よく思い出せない。冒頭の「あなたへ」にある通り、数式は眺めるだけで物語ばかりを追ってしまう部分も少なくない。でも、この数式はどこへ向かい、どこへ行き着くのか、続きが読みたいとページをめくる。はっきりと理解はできないけれども惹かれる、不思議な気分を味わった。きっと、学生の頃も同じことを思っていたのかもしれない。数学は私にとってとっつきにくくて難しくて、テストの点も悪いし苦手…だけど、わかるようになりたい。近づいてみたい。数学に今よりも少しでも親しめたらいいな、と。でも、私は学校の数学以上のことはしようとしなかった。学校の数学だけでも精一杯。宿題やテスト、受験対策もぎりぎり。結局、学生時代の数学と私の関係はそれだけで終わってしまった。

 今、「数学ガール」を読んで、数学に対する見方が変わった。わからないことは多い。わからないままにしていることも多い。でも、数学はわからないことが多いからこそ面白い。かつて無意識に抱いていた数学に少しでも親しめたらいいなという想いを叶えてくれたこの本に感謝したい。数学の魅力を教えてくれて、どうもありがとう。

 しかし、レオンハルト・オイラーはすごい数学者だったんだな。オイラーについて興味を持った。巻末の参考文献にある、オイラー関係の本を読んでみようかな。
 ちなみに、現在続編の「フェルマーの最終定理」を読んでいます。新キャラ・ユーリの登場で、第1弾よりもわかりやすいなと感じている。続編も面白い。数式はどこへ向かうのか、どんな謎が秘められ、何が見つかるのか。ワクワクしつつ読んでます。

 最後に、logは天文学でもよく使うのに…すっかり忘れている自分…ダメじゃんorz

[コミック版]数学ガール 上
[コミック版]数学ガール 下

 あと、作者の結城浩さんのサイトに、仮想トークイベントがありますのでこちらもどうぞ。もう読んでしまった方も、これから読もうと思っている方、なんとなく興味を持った方にも。
『数学ガール』トークイベント
by halca-kaukana057 | 2009-10-08 21:46 | 本・読書
 現在国際宇宙ステーションに長期滞在中の若田光一宇宙飛行士。滞在1ヶ月を過ぎました。そんな若田さんが、ISSとは、宇宙飛行士の仕事について語っているのがこの本。フライト直前に出版されました。これは長期滞在している間に読まないと。


国際宇宙ステーションとはなにか 仕組みと宇宙飛行士の仕事
若田 光一/講談社・ブルーバックス/2009

 ISSがどんなところなのか、どんなモジュールがあって、それぞれどんな機能・役割をしているのかについての解説から始まって、ISSに向かうためのロケット・宇宙船について、ISSで行われている実験について、ISSでの暮らし・衣食住について等読めばISSのあらゆることがわかります。そしてそれ以上にこの本で語られているのが、宇宙飛行士の仕事について。私自身、宇宙飛行士の仕事がどんなものなのか、実はよくわかっていなかった。ISSの建設をしたり、ISSやシャトルで科学実験をしたり…。でも、どのように?地上ではどんな訓練をしているの?そんな宇宙飛行士の仕事について、現役宇宙飛行士である(しかも執筆当時はISS長期滞在を目前に控えた)若田さんが書いている。若田さんご自身の訓練の体験談を元に書かれているので、具体的でよくわかります。

 この本でよく出てくる言葉が、若田さんが宇宙飛行士にとって最も重要な資質と言っている「運用のセンス」。「運用のセンス」とは、ひとつのシステムを使ってある作業をする時、安全で確実に、効率的に作業を遂行するためにそのシステムをよりよく運用して作業する能力のこと。ある機材を使って何かの作業をするにしても、持っている能力は個人個人で異なるため、運用の方法も異なる。これまで私は、宇宙飛行士がひとつのミッションをこなす時作業のやり方は誰がやっても同じだと考えていた。ところがそうではないらしい。ひとつのミッションを行う際、いつも条件は同じとは限らない。何かトラブルが起きるかもしれないし、周りの環境(ISSが昼と夜のどちらの状態にあるか、その時の他のクルーの作業状況など)もその時によって異なる。しかも、宇宙飛行士はひとりで仕事をするのではない。何人ものクルーがチームになって仕事をする。地上には管制官もいる。そのクルーや地上の管制官とのやりとりでも、また状況は変わってくる。その刻々と変わる状況の中で臨機応変に対応し、個々人の能力を最も発揮して作業をするためには、現在の自分と周りの状況をしっかりと把握していなければならないし、他のクルーや地上の管制官とのコミュニケーションが円滑に行わなければならない。そのために必要なのが、「運用のセンス」なのだそうだ。
 この「運用のセンス」は、宇宙飛行士の仕事だけでなく、私たち地上の一般の仕事にも当てはまる部分が多いなと感じた。この部分はビジネス書感覚でも読めます。

 宇宙飛行士の仕事は、宇宙でだけ行われるのではない。宇宙で仕事をするためには、その何倍もの訓練を地上で積まなければならない。地上での訓練も様々。2人乗りの戦闘機のようなT-38ジェット機に乗っての操縦訓練や、ロボットアームや船外活動の訓練。さらにグループでのリーダーシップ・フォロワーシップ・チームワークを磨くための夏山・冬山での登山訓練や海底施設での訓練もある。これらの若田さんの訓練体験談を読んでいると、宇宙飛行士の仕事は本当に多岐にわたっているのだなと感じる。それは、宇宙空間という一歩間違えば死ぬかもしれない過酷な環境で仕事するためのもの。いかに宇宙空間が厳しい世界か、実感させられる。

 有人宇宙飛行は、人間が行ってその体験を人間が語ることが出来る点がメリットだと考えていた。この本を読んで、宇宙機の機器を最大限に活用するために、その時の状況によってやり方をすぐに変えながらミッションを遂行していける点もメリットなのかなと感じた。勿論、そこは過酷な宇宙空間であることは忘れてはならないことではある。

 面白いと思ったのが、アメリカNASAとロシアの訓練方法の違い。以前、「月をめざした二人の科学者 アポロとスプートニクの軌跡」を読んでその違いを実感したが、この本でも実感した。質実剛健なロシア宇宙開発は、訓練や試験でも表れます。ガガーリン宇宙飛行士訓練センター(通称「星の街」)の教授たちのいかめしさ、かたくなさ、ひたむきさを想像したら厳しそうだけれども面白いと感じてしまった。やっぱりロシアはロシアだった。そんなロシア宇宙開発が大好きであります。

 宇宙飛行士や宇宙開発に関わる仕事を目指しているは勿論、国際宇宙ステーションや宇宙飛行士って凄そうだけど何が凄いのかよくわからない…そんな方にオススメします。是非若田さんが長期滞在している間に。帰ってきてからのISS長期滞在体験談が楽しみです。


******

 ISSに滞在中の若田さんから、ISS内解説ツアー動画が届きました。ISSの中を若田さんが日本語でガイドしてくださいます。宇宙日本食の紹介に、宇宙から見た日本列島もあるよ。以下JAXAのサイトからどうぞ。
JAXA 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター:若田宇宙飛行士のISSツアーを公開
by halca-kaukana057 | 2009-04-24 22:11 | 本・読書
 新宿のライブハウス「ロフトプラスワン」で、「ロケットまつり」というイベントが時々催されている。著書「恐るべき旅路」他宇宙開発ジャーナリストの松浦晋也氏、著書「宇宙へのパスポート」他SF作家の笹本祐一氏、漫画「なつのロケット」「まんがサイエンス」他漫画家のあさりよしとお氏ら宇宙作家クラブが開いている、ロケット・宇宙開発についてとことん語りつくすトークイベント。私も一度行ってみたいと思っていたのだが、その内容がDVD付きで書籍化された。これは嬉しい。

はてなキーワード:ロケットまつり とは


昭和のロケット屋さん ロケットまつり@ロフトプラスワン
林 紀幸+垣見 恒男:語り/松浦 晋也+笹本 祐一+あさり よしとお:聞き手/エクスナレッジ/2007

 日本のロケット開発は、「日本ロケットの父」糸川英夫博士の「ペンシルロケット」から始まった。そのペンシルロケット開発から糸川先生と仕事をしてきた林さんと垣見さん。林さんは糸川研究室に就職し、「ロケット班長」としてロケットの打ち上げ現場で仕事をし続けた。垣見さんは富士精密(現在は日産自動車→IHIエアロスペース)で、糸川先生のロケットを設計していた。2人の日本のロケットのお話がとにかく面白い。糸川先生の現場でのエピソード・とんでもない話や、ロケット開発のノウハウや裏話。こんな話を書籍化していいのか?と思うような、あらゆる意味で危険なお話まで。日本のロケットの歴史を、順に追っていきます。ロケットの仕組みについても、さらに勉強できました。仕組みはわかっていても、それをどう作るのかについてわかっていなかったり。それについても詳しく、現場の視点で書いて(語って)ある。現場で体験したからこそ話せる話の数々は、技術の伝承の面でも、体験の伝承の面でも貴重だと思う。

 以前、「月をめざした二人の科学者」の記事で、アメリカの宇宙開発は演出を大事にしヒロイック的なイメージ、ロシア(旧ソ連)のイメージは細かいことにはこだわらず、実用的でタフ。では日本は?日本のロケットは、職人技だと思う。日本の技術そのものが職人技だと思うのだが、ロケットも同じく。林さんも、垣見さんもまさに職人。ロケットを知り尽くし、技を極めている。そのような方がこんなフランクに、昔の貴重なお話をしてくださる。お話から、ロケット打ち上げ場や製作所の空気や雰囲気が伝わってくるようだ。やっぱり、私は何であれ現場の空気が大好きだ。現場にいる人の、現場の話が大好きだ。

 この本を読んでいて、こういう場がどんどん増えればいいと思った。ロケット・宇宙開発に限らず技術職全体…いや、どんな仕事でも。日本が「技術立国」として成長していったのには、現場で楽しみながらも仕事に打ち込んだ技術者たちがいたからこそ(「プロジェクトX」みたいだ)。そのような方のお話を聞ける場が、もっと増えればいいと思う。製作のコツも、苦労話も、失敗談も、武勇伝も、今だから話せる驚きエピソードも。そして、若い世代へのメッセージも。それらのお話には、学ぶことが沢山ある。この本でも、技術的なこと、仕事上のこと、心理的なこと、人間関係などで学ぶことが沢山あった。そして、優れた技術を後世へ引き継いでいきたいと、強く思った。技術も人間に宿るのだから。私は技術職ではないけれども、もしそのお手伝いが出来るならと、この記事を書いている。

 印象に残った話が2つある。ひとつは、「人生に消しゴムはいらない」。糸川先生の言葉だそうだ。
とにかく戻ることができないんですよ、人生だけは。皆さん、今おいくつか知りませんけど、人生は現実と、今と、先のことしかないですから、終わったことをくよくよしてもしょうがないですよ。失敗の場所に立ち会えたというのは、ラッキーだったと思うことが一番大切です。
(68ページ、林さん)

 それと、日本は失敗すると「原因の追求」ではなく「責任の追及」をする人が多いという話。失敗のデータを残していかなければいけないのに、「失敗の責任を取れ」と責任者を辞職させて、データを残さず失敗を隠蔽してしまう。そうすると、また同じ失敗が起きる。これは革めなければいけないことだよなぁ。

 今も「ロケットまつり」は続いている。現在は人工衛星をいくつも設計したNECの小野英男さんを招いての「衛星まつり」も。続きの刊行も期待しています。そしていつかは「ロケットまつり」に行きたいな。地方からだと厳しいなぁ…。
by halca-kaukana057 | 2009-02-22 22:48 | 本・読書
 昨年7月亡くなられた物理学者・戸塚洋二先生。「スーパーカミオカンデ」でニュートリノの観測をし、師である小柴昌俊先生についで、ノーベル賞受賞は間近と言われていた。しかし末期のガンのため、受賞前に無念にもこの世を去ってしまった。その戸塚先生が自身のガンの治療についてや、育てている花のこと、そして科学のことについてブログを書かれていた。一度読んだことがあったのだが、戸塚先生が筆者だったとは全くわからなかった。

A Few More Months(その後、「The Fourth Three-Months」と改題)

 このブログの「科学入門」の部分をまとめ、さらに最期のインタビューや、講演記録を収めたのがこの本です。

戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!
戸塚 洋二/講談社/2008
(*「mc2」の2は累乗の2です)

 冒頭に収められた「最後のインタビュー」を読んでいると、戸塚博士の科学への熱い想いと若い世代への期待を強く強く感じる。大学・大学院でのこと、師である小柴先生とのエピソード、ドイツで研究していた時の話、奥様とのこと、環境問題について思うことなどなど。第一線で活躍する科学者であるのに、まだまだ勉強が足りない、もっと勉強したいことがある、と。もっと時間が欲しい、と。ガンを抱えているのに、その尽きない好奇心と、意欲と、情熱に心打たれた。

 「科学入門」の部分も、難しいけれども戸塚先生の温かい語りかける文章に助けられながら読んでいる。アインシュタインの特殊相対性理論が物理学の世界をどう切り拓き、革新していったのか。それに基づいて、太陽がどうやって輝いているのかを解き明かし、またニュートリノの観測という謎と問題が生まれる。光と宇宙の形成について。あらためて宇宙論は難しいけど面白いと実感した。昨年、ノーベル物理学賞を受賞された小林誠・益川敏英両先生のクォークの話も出てきます。

 難しい数式も、結構出てきます。でも、それよりも戸塚先生の語る「科学の面白さ」に引き込まれてしまって、文章だけでも読みたい、理解したいと思い読み進めた。裕子夫人による「出版にあたって」の部分に、こう書かれてある。
夫はここにある文章を投稿する前に、「君にもわかれば誰にでもわかる」と私に読ませました。私が率直に「難しい。数式が出てくると飛ばして読んでるの」というと、「これを読むのは優秀な子供たちだから大丈夫だと思う。それに、もしわからなくても、何かのきっかけになればそれでいい」と申しておりました。
 私も、この「科学入門」が、若い人たちが科学を考えるきっかけになれば幸いだと思います。
(5ページより)


 さらに、この本の中でアメリカの理論物理学者・ジョン・バコールについて語られる部分があります。バコール博士は、ハッブル宇宙望遠鏡の建設を推進した方。ハッブル望遠鏡をシャトルで打ち上げ後、トラブルでピンボケの画像しか撮れない事が判明。バコール博士はすぐに修理をしなければならないとアメリカ下院に赴いた。その時に、彼は「宇宙望遠鏡で何が観測できるか」ではなく、予想外のものを見つけるのが科学だ、と。どういう風に質問していいかわからないような発見でないと、面白くない。想像もしないような対象物を観測することが、発見の醍醐味なんだ、と述べ、予算もつき修理が決まったのだそうです。

 「難しい」「すんなり理解できない」「予想もしなかった」ものこそ面白い。科学には、宇宙にはそれが沢山ある。わからないものだらけだ。ニュートリノもそのひとつで、研究を通して戸塚先生はその面白さを長年にわたって実感してこられたと思う。この「科学入門」で、もっと沢山の人に科学の面白さを伝えたい。きっかけになるだけでもいい。そんなメッセージをこういう形で残してくださって、本当にありがとうございましたと伝えたい。ブログと合わせて読むと、戸塚先生の科学者として、人間としての生き様に触れられる。もっと、戸塚先生の語る科学のお話を読みたかった。早過ぎる死が、本当に惜しまれます。

 最後になりましたが、戸塚先生のご冥福をお祈り申し上げます。
by halca-kaukana057 | 2009-01-30 23:01 | 本・読書
 音楽評論家のロラン=マニュエル氏と若手ピアニスト・ナディア・タグリーヌ嬢が音楽に関して徹底的に語り合う「音楽のたのしみ」シリーズ第3巻。ロマン派~現代までの音楽史と、宗教音楽について取り上げます。
第1巻:音楽のたのしみ1 音楽とはなんだろう
第2巻:音楽のたのしみ2 音楽のあゆみ ―ベートーヴェンまで


音楽のたのしみ (3)
ロラン=マニュエル/吉田秀和:訳/白水社・白水Uブックス


 バロック、古典を経て、ロマン派の作曲家とその作品へ。私にとってようやくイメージしやすい時代へ。しかし、同じロマン派でも音楽はどんどん多様化する。シューベルトやシューマン、メンデルスゾーン、ショパン、リスト、ワーグナー、ブラームス…同じ時代の作曲家でも、その作品のタイプも、作曲家の考えていたことも全く異なる。その異なるタイプの作曲家に対して説明するロラン氏と、そのロラン氏の話に果敢に突っ込みを入れるナディア嬢。やっぱりこの2人のやりとりが面白くてたまらない。会話としても面白いし、音楽に関する話題の内容・深さに関しても、会話の内容の面白さについては、吉田秀和氏の訳のよさも忘れてはいけない。こんな歯切れのいい、2人の熱意が伝わってくる会話を日本語で読めることに感謝。

 熱心に作曲家について語る2人だが、時代が進むにつれて、また2人の立場によっては「客観的に」話すことが出来ない話題もある。作曲家でもあるロラン氏にとっては、第23話で取り上げられるアルベール・ルセルは対位法の先生であり、晩年のフォーレと話したこと、ドビュッシーの演奏を目の前で聴いたことがあるなど、同じ時代を生きている作曲家も取り上げることになる。また、ナディア嬢にとっては、彼女の大好きなシューマン(趣味が一致して嬉しく思う)やドビュッシーを取り上げるとともに、ブラームスに関しては「ブラームスをきかされた時のフランスの音楽好きの典型的な反応」(130ページ)をしてしまう。でも、この本は音楽の教科書ではない。音楽と関わって生きている2人のフランス人それぞれの音楽に対する考え方、そして、いち作曲家・音楽評論家が見た生の作曲家の姿が伝わってくる。その言葉の背後にある熱意や感動に勝るものはない。そういう意味でも、この本のもとになったラジオ番組は貴重な番組だったのだろうと思う。

 この本を読んで、聴いてみようと思った作曲家が増えた。その一人がサン=サーンス。恥ずかしながら「動物の謝肉祭」(しかも「水族館」「白鳥」「化石」「終曲」のみ)しか知らなかった。選んだのがこれ。

サン=サーンス:交響曲第3番
ジャン・マルティノン指揮/フランス国立放送管弦楽団/マリー=クレール・アラン(オルガン)/ワーナーミュージック・ジャパン

 オルガン付の交響曲。初めて聴いたけど気に入った。暗くうねうねと管弦楽が続く。第2楽章第2部で、光が差すようにオルガンがじゃーん!!と輝かしく鳴り響く。こんなタイプの音楽は初めて聴いた。私にとっては斬新で、ワクワクする曲だった。この本によれば、ラヴェルはサン=サーンスを先生と仰いでいたそうだ。形式は確かに枠から外れているけれども、そこにワクワクさせるものがあるのではないか。この曲を聴きながら感じた。
 このCDにはフランクの交響曲も入っていたのだが、それはよくわからなかった…。違う方面から聴いてみようかな。


 宗教音楽の部分に関しては、音楽と祈りの関係について考えてみたり。仏教徒の私が考えるのには限界があるが、音楽には祈りを伝えやすくする効果もあるから、歌に祈りをのせるのかな?と。

 音楽は、まだまだわからないことが多すぎる。このシリーズもあと1巻。ロラン氏とナディア嬢との旅も、次のオペラの4巻で終わり。オペラか…ほとんど聴いたことがないのだが、この2人となら探っていけそうだと思う。CDを聴きつつ、ゆっくり読んでみよう。
by halca-kaukana057 | 2008-09-02 22:29 | 本・読書
 以前読んだ「音楽のたのしみ1 音楽とはなんだろうの続巻です。2・3巻では音楽史と数多くの作曲家たちを取り上げます。

音楽のたのしみ 2
ロラン・マニュエル/吉田秀和:訳/白水社・白水Uブックス/2008

 2巻でも作曲家・音楽評論家のロラン・マニュエル氏と、若手ピアニストのナディア・タグリーヌ嬢のやりとりが楽しくて痛快。ロラン・マニュエル氏は1巻ではナディア嬢のことを「お嬢さん」と呼んでいたのに対して、2巻では「ナディア」と名前で呼んでいる。一方、ロラン氏に対するナディア嬢の突っ込みもさらに鋭いものに。時にロラン氏を困らせてしまう。2人の息が合っている証拠だろう。

 2巻では、音楽史がテーマ。フランス(フランスのラジオ番組が元になっているので、フランス音楽を中心に語られてます)、イタリア、オーストリア、ドイツ、イギリス…などの音楽の特徴を紹介した後、「タイムマシン」と称するラジオを使って、時間を遡りその時代の各地域の音楽を聴いていく。音楽史ではあるが、ヨーロッパ各国の歴史も取り上げるので世界史・ヨーロッパ史のことを思い出さないとピンと来ない。これまでヨーロッパ史と音楽史を別々に捉えてしまっていたのだが、統合して考えたほうがよかったみたい。この本を読む時は、ヨーロッパ史の年表を持っていると役に立つと思う。

 そしてもう一つ役に立つものがある。思い切って買ってしまったドイツ・ハルモニア・ムンディ(DHM)設立50周年記念 CD50枚ボックス。2巻で取り上げられる作曲家のほとんどは、バロック期の作曲家ばかり。バッハにヴィヴァルディ、テーレマン、ヘンデル、ドメニコ・スカルラッティあたりなら聴いたことはあるが、それ以外の作曲家は名前すら知らない人ばかり。だが、このDHMのボックスにはこの本で取り上げられている、聴いたことのない作曲家の作品が幾つもある。このCDボックスを買ったタイミングと、この本を読んだタイミングがちょうどぴったり合った。本を読みながら、CDで実際にどんな曲だったのかを聴く。CDだけ聴いてもその作曲家がいつの時代のどんな人だったのかわからないし、本を読んだだけだとどんな作品を書いたのかがわからない。タイミングが合って本当に良かった。

 この本を読みながら聴いたCDで気に入ったものがいくつかある。第12話で登場するカッチーニ。

Caccini:Le Nuove Musiche: Figueras, H.smith, Savall, Schola Cantorum Basiliensis

 17世紀初頭のイタリア・フィレンツェでは、それまで音楽を構成する要素は和声が中心だったが、徐々に対位法…つまり伴奏をもった歌に替わられようとしていた。ただ、言葉があって音楽が出来るのではなく、音楽から言葉が生まれ、歌に合わせて言葉をつけていった。そんな歌を、言葉と音楽がうまくつながり、呼応するようにしようとしたのが、ジュリオ・カッチーニだった。代表作「麗しのアマリッリ」など、このCDに収められている作品を聴いたが、本当に美しい。歌詞はよくわからないが(この本の中に、「麗しのアマリッリ」の日本語訳はある)、曲と声はのびのびとしていて、まさに「麗しい」。しかも、このカッチーニを天文学者・ガリレオ・ガリレイの父・ヴィンチェンツォ・ガリレイが支持・援助していたとのこと。へぇー。

 カッチーニの他にも、この本で読み、DHMのCDで聴いてその名前と作品を知った作曲家が何人もいる。まさかこんなところでこの2つの要素が繋がるとは思わなかった。

 J.S.バッハに関しても、その作品の完璧さ、バロック期の作品なのにロマン派的なところもある(「半音階的幻想曲とフーガ」BWV903)と書かれている。音楽を読み解く面白さを、私ももうちょっと理解できるようになりたい。また、モーツァルトに関しては、その親しみやすさゆえに初心者でも演奏できるような作品と捉えられてしまう、と。本当はモーツァルトほど演奏するのに難しい作曲家はないのに。
N(ナディア):モーツァルトは、他のどんな人より、高くて、しかも近づきやすく、親しみやすいような気がする……。
R-M(ロラン・マニュエル):その「神のごとき」モーツァルトは、また、あらゆる芸術家と人間の中で、最も謙虚に人間らしい人だったことを考えてください。モーツァルトは崇高さを手のとどくところにもってきてくれる。
N:やさしそうにみえて……。
R-M:やさしそうに見えるのは、明快で、見たところなんの努力も必要なさそうだからです。モーツァルトの音楽は、われわれの中に、われわれだってそれがかけそうだという不遜な妄想を植えつける。もっと悪いことには、[これは]われわれもよりよき世界の中にいた時に書いた音楽で、それをいまここに再発見したのだというような妄想を覚えさす。
(332ページ)

 まさにその通りだと感じる。ここにモーツァルトの偉大さがあるのに。2人の話は面白いだけでなく、作曲家たちへの尊敬と愛情がこもっているからより面白い。ベートーヴェンに関しても。

 最後、第30話~32話は3巻で取り上げられるロマン派への架け橋となる、ロマンティスムに関して。ロマンティスムにも色々ある。3巻も楽しみに読もう。
by halca-kaukana057 | 2008-07-24 21:58 | 本・読書
 「ドリトル先生」の月3部作に関連してか、月に関する本を何冊か読んでいます。その1冊目がこれ。

月の科学―「かぐや」が拓く月探査
青木 満/ベレ出版/2008


 2007年9月、H2Aロケット13号機に載って月へ旅立った日本の月周回衛星「かぐや(SELENE)」。「かぐや」の旅立ちは、月探査「第3の波」の始まりとなった。その「かぐや」を取材してきた著者の運用開始開始までのレポと「かぐや」の探査内容、「かぐや」に辿り着くまでの月探査の歴史、そして「かぐや」や月に関わる人へのインタビューをまとめたのがこの本。


 400ページ近くもある厚い本なのですが、そのほとんどが「かぐや」の探査そのものではなく、それに至るまでの歴史やインタビューなど。実際の探査の成果についてあまり触れられていない(時期的に無理だった?)のが残念だが、そこはこれから。月探査への歴史を読んでいると、米ソ(ロ)だけが争うように向かっていた天体に、日本やヨーロッパなども参加できるようになったことを嬉しく思った。対立とは違う、協力ともちょっと違う。競争であり、その競争が天文学・宇宙科学全体を引き上げていっている。こういうのは、参加する国が多いほうがより競争に拍車がかかり、レベルも高くなるのかもしれない。

 面白かったのが、第5章の寺薗淳也氏へのインタビュー。寺薗さんと言えば、この「かぐや」打ち上げの際のJAXA打ち上げライブ中継などに出演。JAXA・岩本裕之氏(通称:いはもとさん)と一緒に愉快なトークのライブ中継が印象的な方です。広報の方だと思っていたのだが、月を研究されていた方でしたか。アポロで解明できたこと、さらに深まった謎、「かぐや」に期待されていることなどについて語られています。月の地震「月震」の謎。地球なら大きくプレートのすれ違いによるものと、断層によるものに分けられるが、月震は5種類もある。その発生の仕組み、つまり月の内部構造がよく分かっていない。現在、既に「かぐや」の探査によって月の表と裏で重力が異なるということが発表されている。

リレー衛星「おきな」中継器(RSAT)の4ウェイドップラ観測データを解析して得られた重力異常-月の二分性の起源への新しい知見-

 この観測結果が、月震や月内部の謎、そして月がどうやってできたのか解明することに繋がるだろう。どうやってできたのかについては、国立天文台の小久保英一郎氏へのインタビューも興味深い。さらに、「かぐや」サイエンスマネージャー・加藤學氏へのインタビューも。人工衛星や探査機にとって、故障の原因となる太陽フレアは最大の敵。出来れば起こって欲しくない現象である。しかし、その太陽フレアが無いと観測できない、太陽フレアが無いと困る観測機器もあった。太陽フレアが無いと困ることもあるのか…。


 とにかく月は謎だらけだ。月探査「第3の波」もはじまったばかり。「かぐや」もまだまだ新しいデータを送り続けている。どんなびっくりするような探査結果が送られてくるのか、楽しみでならない。

 科学的な面だけでなく、月の伝説や民俗・風習について書かれた章もある。ちょうど星空案内人講座で天文と文化についての講義を受けたあとに読んだので、この部分もかなり興味深く読めた。本当に月は身近で、でも遠くて、不思議な天体だ。
by halca-kaukana057 | 2008-07-02 23:09 | 本・読書
 このところ、音楽理論や楽典に興味がある。ドイツ・ハルモニア・ムンディのCD50枚ボックスやその他バロック・古典派のクラシック音楽を聴いたり、「プレ・インベンション」でバロックのピアノ曲を演奏したりしているうちに、どんな秘密があるのか探りたくなった。簡単に独学できるものではないが、少しずつ紐解いてみたい。そんな想いで手に取ったのがこの本。図書館で見つけた。

音楽のたのしみ(1) 音楽とは何だろう
ロラン=マニュエル/吉田秀和:訳/白水社・白水Uブックス/2008


 この本は、1950年代、フランスで放送された同名のラジオ番組がもとになっている。作曲家で音楽評論家のロラン=マニュエル氏と、若手ピアニストのナディア・タグリーヌ嬢が、毎回各分野の専門家をゲストに迎え、音楽について語り合う。音楽とは、楽器とは、リズムや調性、形式など。どの話もとにかく深い。ついて行くのがやっと。



 その位、私にとっては難しい内容なのに挫折せずに読めたのはナディア嬢の存在がある。ロラン氏とゲストは、放っておくと専門用語を使いまくり、どんどん難しい話をしてしまう。しかし、ナディア嬢はわからない言葉があれば、恥じることなくすぐに質問する。なぜ?どうして?と常に考え、時にするどい指摘をする。「著者まえがき」に、ロラン氏はナディア嬢のことを「いつも目ざめている好奇心の針」(3ページ)と書いていたが、まさにそう呼ぶのにぴったりなぐらい、ナディア嬢の好奇心の針の鋭さ、アンテナの高さには驚かされる。私もナディア嬢のようにありたい。知らないことばかりでも卑屈にならず、知らないものは知らないと言って謙虚に学びたい。そして、人とじっくり話し、ウィットに富んだ会話が出来るように。

 この本を読んで、ナディア嬢とともに学んだことはたくさんある。第12話の調性。第17話のソナタとシンフォニー。ソナタの転調の決まりがようやくわかった。楽典の参考書のように、ささっと書いてあるわけじゃない。目的のページを開く時、どこだったっけ…?と迷うことも多いが、ロラン氏とナディア嬢とゲストたちの会話が、知りたかったことに引き込んでくれる。参考書ではなく読み物として。しかもその会話が容赦ない。

 ただ、難しい内容ばかりでもない。「音楽のたのしみ」とタイトルにあるように、音楽の楽しさにも重点を置いている章もある。第29話「新旧論争」、第30話「新旧論争《調子はずれ》」にあるように、形式や時代にばかり眼(耳?)を向けて、新しい音楽を理解しようとしない。教養が、音楽を純粋に聴くことを邪魔することもある。「開かれた耳」をもって、あまたある音楽に臨みたい。最後のロラン氏の言葉が印象的だ。
ナディア、偉大な精神たちは、俗人よりも、彼らのたのしみのすき好みについてやかましく言わない。それはかれらが、なんでもないものから何かをつくり出すことができるからです。それに、実はこのなんでもないものこそ、われわれが、音楽のたのしみが生れ、花咲くのを見る時、その中核になるのです。
(420ページ)

また、第7話・オーケストラの回のゲスト、指揮者のマニュエル・ロゼンタル氏の言葉も。
要するに、われわれの務めは音楽につかえるにある。わたしが、なんとかという指揮者をききにいくというのではなくて、何かの作品をききにいくというようになってもらいたいと思うのも、そのためです。音楽では、決して音楽以外のものをきいてはいけない。
(107ページ)



 ただ、私にとって困った点がこの本にはある。フランスのラジオ番組がもとになっているため、フランス音楽の話が中心になっている。フランスものが苦手なので、聞いたことがなくわからない話も多い。これはこの機会にフランスものを聴けということなんだろうか…。どこまで聴けるかわからないけど、ラヴェル、ドビュッシーあたりからもう一度挑戦してみようか…?ちなみに、第9話・ピアノの回のゲストは、あのフランシス・プーランク!(この本では「プランク」と表記)フランスものでもプーランクはいいなと思った。じゃ、プーランクをもう少し掘り下げれるところから始めてみようかしら。
(以前の記事:フランス音楽は苦手…だけどプーランク)

 この「音楽のたのしみ」は全4巻。もう少し、ナディア嬢と一緒に音楽のたのしみと秘密探しをしてみよう。
by halca-kaukana057 | 2008-06-28 21:58 | 本・読書
 フィンランドに興味を持ってから、フィンランド史にも興味を持ち始めた。特に20世紀。3つに分けるとすれば、1917年の独立へ向けての動き、独立後のロシア(ソ連)との関係、そして「冬戦争」「継続戦争」となるだろう。その中でも今回は「冬戦争」について書いてみようと思う。

 その前にちょっと余談。少し前に、栄光ゼミナールという予備校が「フィンランドの奇跡」と題した広告を首都圏の電車内に掲示し、話題になった。フィンランドの充実した教育制度と高い学力を評価してのものらしい。地方在住の私がその広告を目にすることは無かったが、ネット上の画像などを見て

「フィンランドの奇跡…、それって冬戦争?」

と思ってしまったのは言うまでもありません…。


 「冬戦争」とは、1939年11月28日から1940年3月13日まで行われたフィンランドとソ連(当時)間の戦争の通称。「第一次ソ・フィン戦争」と通常は呼ばれる。以前から緊張していたフィンランドとソ連の関係だったが、1939年10月モスクワでフィンランド側はソ連側からひどい提案をされてしまう。カレリア地方などをよこせと言うのだ。その頃拡大していたナチス・ドイツへ対抗するため、ソ連はカレリア地方に軍事拠点を置きたいと考えていたのだ。この交渉は当然のことながら決裂。元帥であったマンネルヘイムは、軍事力の差がありすぎるとして戦争には反対していたが、11月28日ソ連はフィンランド側から砲撃されたことを理由に1932年に締結された不可侵条約を破棄、攻撃を開始した。

 超大国ソ連にとって、当時の人口300万程度のフィンランドは小国に過ぎない。3日で制圧できるとソ連側は読んで攻撃を始めた。しかし…3日経っても制圧できない。むしろ反撃されている。マンネルヘイム率いるフィンランド軍は、湖と森が入り組んだカレリア地方の地形を活かし、ゲリラ戦で挑んできたのだ。入り組んだ地形では戦車は不利。スキーを履いて移動する方が適していた(しかもフィンランド人はノルディックスキーは大の得意)。スキーで森の中を移動し、ソ連軍の戦車の前にいきなり現れて火炎瓶(ソ連の外相・モロトフの名前をとって「モロトフのカクテル」と呼ばれている)を投げつけてゆく。その上、武器やら食料やらを奪って戦闘。フィンランド人特有の頑固さ、粘り強さ、強さをフィンランド語で「sisu(シス)」と言うが、まさにそれが全面に出て、この反撃につながったのだろう。

 …という内容は以前「フィンランド近現代史を知らずにフィンランドを語れるか?!」でも書いた。冬戦争の話は何度読んでも衝撃的でびっくりする。そんな冬戦争の状況について書いた本を。

「雪中の奇跡」(梅本弘/大日本絵画/1989)
 冬戦争についてかなり細かく書かれてあるノンフィクション。あまりにも細かくて、軍事にあまり詳しくない私は読み進めるのが大変でした。それでも、細かい軍事用語にとらわれなければ戦争の流れはリアルに読んでいけるし、写真も多く、その写真を見ているだけでも戦争の凄さが伝わってくる。兵士もよく訓練されていたようで、戦争が長引くにつれて兵士たちも疲れきっていたようだが、それでも反撃を繰り返すあたりには言葉も出ない。主力となる武器も小型のライフル。「スオミ短機関銃」と国名をつけてある。ちなみに、この冬戦争で使われたスキーのストックには、日本の竹が使われている。

 もう少し読みやすい本ならこれも。
「ホワイトウォー 青い十字の旗の下に」(大久保公雄/文芸社/2002)
 小説版冬戦争。やっぱり軍事用語は大量に出てくるが、小説だから幾分読みやすい。戦闘シーンはリアルだし、展開もかなりドラマティック。「カレワラ」などのフィンランドに関する基礎知識も解説されている。

 さらに、マンネルヘイムの伝記も。
「グスタフ・マンネルヘイム フィンランドの白い将軍」(植村英一/荒地出版社/1992)
 マンネルヘイムの生い立ちからロシア将校時代を経てフィンランドに戻るまで、独立の内戦、冬戦争・継続戦争から大統領…と激動の生涯を描いている。「自らを守れない国を助けてくれる国はない」「大国の力をあてにしたり、利用することは、これに逆らうことと同じように危険である」という言葉が印象的。

 もっとわかりやすいものが見たい方は、このフラッシュをどうぞ。コンパクトにまとまっていて、とてもわかりやすいです。

 さらに、映画もあります。
ウィンター・ウォー ~厳寒の攻防戦~
タネリ・マケラ/ポニーキャニオン
 まだ観てはいないのだが、映像なのでさらにわかりやすく臨場感たっぷりに、冬戦争の激戦を把握できると思います。早く観たいなぁ。戦争そのものを描いたものではありませんが、昨年公開された「ククーシュカ ラップランドの妖精」は継続戦争の頃のフィンランド・ラップランドを舞台とした映画。これもまだ観てません。



 冬戦争は、結局フィンランドがソ連の要求を飲み、休戦協定を結ぶ残念な結果になってしまった。フィンランドの信じられない反撃にイギリス・フランスはフィンランド側に立って参戦しようとしていたのだが、中立の立場をとるノルウェー・スウェーデン・デンマークが、英・仏両国を通さなかった(この3国を通らないとフィンランドには行けない)ため、支援出来ずに終わってしまった。もし、英・仏が参戦していたら…歴史はどう変わっていただろう。今のフィンランドの姿も変わっているかもしれない。

そしてこの冬戦争の後、1941年夏、第二次ソ・フィン戦争「継続戦争」が勃発。ナチス・ドイツをめぐる世界情勢に巻き込まれてしまう。冬戦争であんなに頑張ったのに孤立してしまうフィンランド。継続戦争のフィンランドの立場はかなり切ない。

 ちなみに、アニメ「牧場の少女カトリ」でも、カトリたちの牧場での暮らしの中に20世紀前半のフィンランドとヨーロッパ史が垣間見える。1917年の独立までの部分だが、ロシアの支配に反発し独立運動に参加する青年アッキが逮捕されたり、カトリの母やクウセラ屋敷の主人が戦場ドイツへ向かうあたりは、ただのアニメでは収まらなくなっていると思うんだ。

 今でこそフィンランドは福祉・教育・デザインなどの分野で世界トップクラスの国になった。日本人の私から見ても、フィンランドはとてもいい国だと思う。でも、こうやって歴史を知るとただ平和にやってきたのではない。つまり、20世紀の激動の歴史があったからこそ、今のフィンランドがあるんじゃないかと思う。大国に挟まれて生きること、自力で自国の独立を、土地を、文化を守ることの辛さと重さを感じる。マリメッコの大胆なデザインだって、戦後の打ちひしがれた人々に何とか光を与えたいというデザイナーたちの思いによって生まれたのだし、トーベ・ヤンソンが「ムーミン」を書くにあたっても戦争の辛い思い出がある。フィンランドにあるものをただ「イイ!」と言うのではなく、その背景にあるもの、それを生み出すきっかけとなったものをもっと見つめていきたい。たとえそれが辛い・複雑な歴史であっても…、と思う。


 ちなみに、シベリウスは1957年に死去したわけだから、この2つの戦争を生き抜いた。作品を発表することはあまりなかったが、どんな風にこの2つの戦争を見ていたのだろうか。ちょっと気になった。
by halca-kaukana057 | 2007-06-11 21:44 | フィンランド・Suomi/北欧

フィンランド語のしくみ

 近頃フィンランド語の本が次々と出版されている。「かもめ食堂」や教育でフィンランドが注目されているからだろうか。何はともあれ、これまで数えるほどしかなかったフィンランド語の本が手に入れやすくなってきているのは嬉しい。

 フィンランド語のしくみ
吉田欣吾/白水社/2007

最も新しいフィンランド語の本がこれ。本屋で見つけて、ついつい買ってしまいました。「新書みたいにスラスラ読める!」「寝ながら読める外国語!」と帯に書いてあるとおり、気軽に、簡単に読めます。外国語の本と言うと難しい文法を表を使って解説したり、文法用語から理解しにくい本もありますが、この本はまさに新書のように文章で解説しています。ちょっとした時間に読んでいるだけで、フィンランド語のしくみが分かってしまうなかなか凄い本。小さいですがCDも付いていて発音も聞けます。表やイラストが付いている方が分かりやすいと感じる方には合うかどうかわかりませんが…。私もこの本でフィンランド語をもっと勉強しようと読んでいます。

 以前、「牧場の少女カトリ」7巻感想で、こんな疑問を持った。
これまでライッコラだのペンティラだのクウセラだの名前が出てきたが、この「ラ」は「~の場所」という意味のフィンランド語の格変化じゃないのか?「アイノラ(Ainola)」や「タピオラ(Tapiola)」と同じように。でも、ライッコラ屋敷でテームが書いてくれた証明書には「テーム・ライッコラ」と署名してあったからこれでいいのか?

この疑問に対する答えが、この本に書いてありました。フィンランド人の姓には「~ラ(-la,-lä)」で終わる姓がかなりあり、「~の場所、~の家」の意味に由来しているのだそう。例えば、Mattila(マッティラ)さんや、Heikkilä(ヘイッキラ)さんは、元々男性のファーストネームMatti(マッティ)、Heikki(ヘイッキ)に由来しており、「マッティの家」「ヘイッキの家」という意味だったものがそのまま苗字になってしまったのだそう。なるほど~。ファーストネームが形を変えて姓になってしまったのか。これは面白い。


 私が持っている、もしくはこれまで読んだフィンランド語の本も参考に紹介しておきます。
フィンランド語が面白いほど身につく本―ABCから旅行会話までマスターできる
栗原 薫/中経出版/2002
CD付きでも安かったので、初めてのフィンランド語の本として買ってみた。文法から旅行で使える会話文まで一通り学べます。もっと文法を知りたい人のために、文法の解説もあります。単語をイラストで学べるページもあり、なかなか使えます。でも、やっぱり文法は難しいと感じます。




旅の指さし会話帳〈35〉フィンランド―ここ以外のどこかへ!
青木 エリナ/情報センター出版局/2002
以前紹介した本。タイトルどおり、イラストばっかりで視覚で覚えられるフィンランド語。現地の人に本を見せながら、指差しで会話できる(らしい)優れもの。旅行で遭遇するであろう様々な場面に合わせてページが構成されているので見やすい。巻末の単語帳も簡単な辞書感覚で使える。
ただ、イラストがもう少し見やすいものだったらもっとよかったのにな…と思う。カラフルなんだけど、ごちゃごちゃしていて読みづらい。もっとシンプルなイラストを…と思うのは私の好みの問題だけ?
以前紹介した記事:読んだ本メモ





語学王 フィンランド語
千葉 庄寿/三修社/2006
比較的新しい本。図書館で借りて読んだ。会話文が面白い。実際にありそうな場面を想定した会話文なので、現実味があってすぐ役に立ちそう。その会話文ごとにポイントが絞られていて読みやすい。巻末のミニ辞書も使える。ただ、ちょっと高めでCDも別売り。





 色々ありますが、まずは読んで勉強しなきゃ意味がない。カトリを見習って、寝る前10分でもいいから読んで少しずつ勉強しよう。それから、「カトリ」DVDも10巻から最終巻12巻まで借りてきた。いよいよクライマックス。観るのが楽しみです。
by halca-kaukana057 | 2007-03-04 21:43 | フィンランド・Suomi/北欧

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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