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群緑の時雨 4【最終巻】

 ようやく感想を書きます。好きな作品の最終巻は、感想を書いてしまうと「本当に」終わってしまう気がしてなかなか書けません…。

群緑の時雨 4
柳沼 行/メディアファクトリー・フラッパーコミックス/2013

 ついに式桜(しきさ)の城に着いた霖太郎たち。湖の真ん中にあり、難攻不落の城と呼ばれ、これまで謎の光によって士々国(ししこく)の者たちは命を落としてきた。どう城を攻めるか作戦を練る。5年もの間城に篭っていることは可能なのか、誰かいるとすればどれだけの者がいるのか…勘解由の助言により、作戦を立てる。そして夜になり、幾手に分かれ、城へ向かって舟を出した。しかし、城の中からの攻撃により、霖太郎、府介、伊都、勘解由の4人だけが城にたどり着いた。そして4人が中で見たものは…


 まさかの展開が待っていました。1巻からミステリアスな存在だった式桜の城の謎も、3巻で府介が「心の中を見せない」のも、全てが解けました。まさかの展開ですが、とてもかなしい、辛い展開です。でも、そんな状況でも、潔く、凛々しく、まっすぐ前を向いている爽やかさ。柳沼先生の物語も絵も、絵の魅せ方も、全てがこの物語を物語っています。セリフも勿論だけど、セリフだけじゃない。ひとコマひとコマの全てで。

 武士としての誇り、生きる志。これらをテーマとしてきたこの物語ですが、「武士の誇り」と一言で言っても様々。霖太郎には霖太郎の「誇り」があり、府介には府介の「誇り」があり、伊都には伊都の「誇り」がある。それは、誰かと共に寄り添い共有できる、一緒に磨き続けられるものでもある一方で、対立しどちらかを排除しなくてはならないものでもある。士々国は式桜を敵として、対立し生き残るために倒してきた。でも、式桜の者にも「誇り」はある。式桜の城の中で出会った者、そして起こった出来事は、まさに「誇り」と「誇り」のぶつかり合い。それは国という枠を越えることもある…。この式桜の城の中での出来事が、衝撃的で、でも、これまでのことに納得がいく。謎が全て解けた。それぞれの「誇り」を、最後まで貫き通す。その志、強く繊細な気持ちに、強く胸を打たれました。1巻から読み返して、これはこういうことだったんだ…と思うと、切なくなります。

 最終話、勘解由さんの謎も解かれます。勘解由さんも謎めいた存在だったが、勘解由さんも「誇り」や「志」を持っていた…いや、霖太郎・府介・伊都の3人の成長と友情を見て、取り戻していった。私がこの物語を読んでいた視点は、勘解由さんに近かったのかもしれない。勘解由さんに伊都が語った決意にも驚いた。

 そして最後…。かなしい、さみしいけれど、やはり前を向いている。心の中の強さ。この爽やかさ…!大きな拍手を送りたいラストです。しかも、「スピカ」へのまさかのつながりが…!?そう来るか…!巧い、にくい演出でした。

 4巻と、短編の作品ですが、読み応えはたっぷり。何度でも読み返したい作品です。柳沼先生、再び素晴らしい作品をありがとうございました!!

・3巻:群緑の時雨 3


 柳沼先生の次の作品が楽しみです。
by halca-kaukana057 | 2013-05-28 21:52 | 本・読書

群緑の時雨 3

 この頃、漫画や本を読んだはいいが感想を書いてない、書くのが遅い。発売を楽しみにして、じっくりと読んだのに、この作品もいつ出たんだっけ…(あれ


群緑の時雨 3
柳沼 行/メディアファクトリー・フラッパーコミックス/2012

 15歳になった霖太郎たち。霖太郎と府介は城に呼ばれ、家老から式桜(しきさ)国の城へ向かうように命じられる。霖太郎たちの暮らす士々国(ししこく)は、式桜と戦をしていたが、5年前に士々が勝ったはずだった。しかし、実はまだ戦いは終わってはいなかった。式桜の残った当主と家臣たちは湖の真ん中にある城に逃げ込み、城へ通じる橋を破壊。現在でも篭城しているという。しかも、船で城へ向かおうとすると、光とともに巨大な水柱が立ち、多くの武士が犠牲になった。一国一城の令が下り、式桜の城を何としてでも落とさねばならなくなった。先に式桜へと向かった第一陣は全滅、第二陣からの連絡も無い。霖太郎と府介たちは第三陣として、式桜の城へ向かうことに。そんな中、江戸へ行ったはずの伊都が帰ってきていて、話も既に聞いており、ついてくることに。式桜への道の途中、霖太郎たちが出会ったのは…

 2巻の最後のあらすじも書いておきました。2巻の感想でも書きましたが、ここから、1巻の冒頭のあのシーンへと繋がっていくのですね。

 15歳になり、すっかり凛々しくなった霖太郎と府介。しかし、2人は別の道を歩んでいる。霖太郎は立派な武士になろうと剣術の鍛錬を怠らず、腕も上達してきている。一方府介は、剣術よりも学問に興味がある。そして、式桜に向かうことになっても、霖太郎はためらいも無いが、府介は曇った表情を。式桜への旅の道中も、何かを隠しているような府介。かつて、伊都と剣術で勝負すると約束したことを覚えているかと迫る伊都。覚えている、武士に二言は無いと言うが…伊都の言うとおり「心の中を見せない」。府介の言動が気になるも、隙がない、まさに「心の中を見せない」のでますます気になってしまいます。一体何を考えて、何をしようとしているのだろう…。

 15歳になった伊都、美人になりました。可愛い。でも、相変わらずのおてんば。事あるごとに勘解由さんを叩くのも相変わらずです。と言うことは、江戸でもずっと剣術の鍛錬をしてきたのだろう。江戸で、良家のお嬢さんとして、しかも姉たちのように嫁に行くことを家族に望まれているのに。伊都のことだから、家族の目を盗んで、自分だけの場所を見つけて鍛錬していたのであろう。剣術への考え方は、ますます厳しくなっている伊都ですが、それも鍛錬の結果なのだろう。

 さて、霖太郎は、第二陣の一郎太と再会。かつて、霖太郎の父が戦で背中を切られて死んだことを罵っていた武士の一人。その一郎太との会話が、また柳沼先生らしい…。旅の途中の斬られた士々の先陣の武士たち、最後に出てきたある者の冷酷な告白、殺陣のシーンもあり、柳沼先生もこんなシーンを描くのか!(表現の幅が広がったと思うと嬉しい)と思ったのですが、その後は柳沼先生の「物語」だなぁと、哀しいけどじわりと来ました。

 府介の言動も謎ですが、式桜の城も謎です。ミステリーです。5年も篭城、光の柱、そして式桜の武士たちが言う城にあるもの、城の存在…。4巻でいよいよ城に乗り込むか、どうなるか。楽しみです。

・2巻:群緑の時雨 2
by halca-kaukana057 | 2012-11-14 23:27 | 本・読書

群緑の時雨 2

 待望の2巻、じっくりと読んでいました。「群緑の時雨(じう)」2巻です。


群緑の時雨 2
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ/2011

 病床の母のため、一日でも早く一人前の武士になり戦に向かいたいと思い、霖太郎は士々国の武芸大会に出ることを決める。しかし、霖太郎の剣術の腕では、とても太刀打ちできるような大会ではなかった。一方、武芸大会に女子であるため出ることを許されなかった伊都。殿様に直談判するために、府介とともに城に忍び込もうとする。2人が城に忍び込もうと奮闘する中、城内では武芸大会が始まった。
 士々国は、隣国の式桜(しきさ)国との戦を続けていたが、士々国が勝利を収め、戦は終わったとの報せが国じゅうを駆け巡った。そんな中、士々国家老の差床家は江戸の普請に参加するようにと幕府から命ぜられる。伊都も共に江戸へ向かうことになったが、江戸に向かうもうひとつの目的を聞いた伊都は…。


 2巻で、物語がひとつの方向へ向かおうとしている。まずは霖太郎の武芸大会。剣術は決して強くはない霖太郎。しかし、力・技術を気力・精神力でカバーしようと立ち向かう姿は、弱くも見えるが強くも見える。大会後、家老(後のキーパーソンとなります)のひとりから、こんな言葉をかけられる。戦に向かわせてもらえるのかと聞いた霖太郎の言葉に対しての言葉。
剣の道は 心を鍛える道 戦の道は 心を削る道
お前さんはまだまだ削れるほどの心にはありますまい
今はひたすら剣の修行を続けなさい
(52ページ)

 剣術は、戦で、実戦で使ってこそのもの…と思っていましたが、考えてみれば現代にも剣道がある。柔道などの武術全般も同じだと思う(多分…武術は一切経験したことがないので、想像ですが…)。戦とは切り離された、己の心を鍛える、磨くための剣術・武術。これは時代を超えて、剣術以外のことにも言えると思う。仕事でも、趣味でも。実戦のためでもあるけれども、それ以上に自分を鍛えることがどれほど難しいか。技術を高めるとともに、精神力をも高める。自分が取り組んでいる様々なこと…仕事や、ピアノ、宇宙天文などの趣味でも当てはまるなと思いつつ、読みました。挫けそうになったら、私も霖太郎と同じように、この言葉を思い出そう。

 そして、士々国は戦で勝利を収め、太平の世が始まると国の人々は喜んでいる。しかし、霖太郎にとっては、戦に行って戦うことをこれまで目標としてきたので、複雑である。これからどうやって生きていくか。そんな霖太郎に、勘解由さんが言った一言。
戦で功を成すことよりも
己にとっての生きていく志を見つけることのほうが よっぽど難しいもんだぜ
霖太郎にとっての 真の志を早く見つけることだな
(79ページ)

 その通りだなぁと思います。何か世の中に大きな流れがあると、それに乗って勝ち上がっていけば成功を収められる。しかし、例えば価値観が多様となった現代なら、何を目標・志としていけばいいかわからないと迷うことも少なくない。私自身、そうだ。こうなりたい、という漠然としたものはあるけれども、はっきりとした”真の志”を見つけられずにいる。見つけようと動いている最中だ。本当に見つかるのかな、とモヤモヤした気持ちになりつつ…。霖太郎にとって、”真の志”とは何なのか。これまでの”誇り”と絡めて、霖太郎の成長が楽しみです。

 さて、霖太郎のことばかり語ってきましたが、伊都にも大きな動きが。江戸普請に行くことが決まったが、その江戸行きの裏にはもうひとつの目的があった。勿論、伊都が素直にその話を聞くわけが無い。ここで、伊都が心の内を霖太郎と府介に初めて話します。何故、女子なのに剣術に励んでいるのか。霖太郎と府介は親から離れて(離れざるを得ずに)暮らしているが、伊都も同じでした。家老という良家に生まれ、姉たちの人生・生き方を見て、自分もこれからどうなるのか知っている。でも、伊都は、自分で自分の道を探したい。そう、伊都は、ただ単におてんばで物好きで剣術に励んでいたわけではない。誰かに決められた道ではない、自分の生きる道を探すために。良家の娘さんなのに、伊都が竹を割ったような性格である理由もつかめてきました。1巻の時は、「ふたつのスピカ」の幼い頃のアスミみたいな感じと思ったが、この2巻を読んでマリカのようなところもあるんだなと感じました。やっぱり、前作「スピカ」も出てきてしまうなぁ。

 2巻の後半、伊都が江戸に行ってから5年…。霖太郎も府介も、凛々しい少年になりました。15歳か。戦が終わり、国も、人々の生き方・暮らしも変わった。霖太郎は剣術に励み、府介は剣術よりも算術や自然のことに興味を持っていた。そんな中、霖太郎と府介がお城へ呼ばれる。呼んだのは、あの武術大会で出会った家老。士々国と式桜国の戦は、本当はまだ終わっていなかったのだ、と…。ああ、ここであの1巻冒頭のあのシーンに繋がってゆくのか。その緊急の召集後、2人は伊都と再会する。さあ、物語はどう進んでゆくのか。これからが本番といったところ。ミステリアスな部分もあり、楽しみです。

・1巻:群緑の時雨 1
by halca-kaukana057 | 2011-12-20 21:37 | 本・読書

群緑の時雨 1

 「ふたつのスピカ」完結から1年半…。柳沼行先生の新作が登場です。単行本化を待ってました!

群緑の時雨
柳沼 行/MFコミックス フラッパーシリーズ/メディアファクトリー/2011

 時は江戸時代初期。江戸から北に遠く離れた士々国(ししこく)。10歳の少年・中谷霖太郎(なかたに・りんたろう)は、下級武士の武家で育てられている。育ての父は、戦で背中を切られて死んだことから、不名誉な噂を立てられ他の武士達から蔑まれていた。霖太郎は、「清風塾」という小さな寺子屋で学んでいたが、そこで2人の同年代の少年少女と出会う。士々国家老の娘で、女子だが何かの目的のために剣術の腕を磨き続ける差床伊都(さしゆか・いと)。遠くの村から、遠い親戚の家へ養子に貰われて来た志木府介(しき・ふすけ)。3人は、武士として、そして己の誇りのために修行に励む…。


 タイトルですが、「ぐんりょくのじう」と読みます。「群緑」は、日本画で使われる色である「群青」と「緑青」を混合した色のこと。そして「時雨」を「しぐれ」ではなく「じう」と読む理由…。タイトルからして何か深い意味があると感じました。そして、「スピカ」は近未来の宇宙SFファンタジーでしたが、新作は時代物!柳沼先生の時代物…山本周五郎のような感じになるのかなと想像してみたり。読む前から想像が膨らむ作品です。

 さて、読んでみて…、まだ1巻のため、物語がどこに進むのか、霧がかかっているような状態。しかし、物語のキーポイントとなりそうな要素はいくつか出てきています。
 まず、霖太郎の父の死と、”誇り”。戦で背中を切られること…それは敵と向き合わなかったことを意味する。しかしそれはあくまで噂話に過ぎない(と、府介が指摘。府介、かなり賢い子です)。自分が実際に見たもの、それを信じ続け、どう生きるかが大事。”誇り”を持ち、まっすぐに生きようとし始めた霖太郎。爽やかです。
 次に、伊都のこと。父が家老という良家の娘でありながら、懸命に武術の修行に励む。我流ながらも、動きはすばやい。すばしこい。小さい頃のアスミを髣髴とさせますw江戸時代、女子ながら武術に励む理由。伊都が秘めている想い。ただおてんばなだけな女の子ではない。どう成長するのか、楽しみです。
 そして、第1話冒頭で成長した伊都が語っている”あるもの”。府介が実の父から教わった”あるもの”。これは「スピカ」でも少し出てきましたが、この「群緑の時雨」ではメインの鍵になりそうな予感です。

 登場人物であと気になったのが、隻眼の浪人・鴨居勘解由(かもい・かげゆ)。見た目は怪しい…というよりは、好き気ままに暮らしている浪人。しかし、戦歴や話す言葉の奥深さから、3人を見守り、そっと導く存在になるかと思います。その勘解由さんをも、隙をみて刀で打ちのめす伊都…。強い…。


 ちなみに、単行本1巻発売記念に、柳沼先生へのインタビューがありました。
コミックナタリー:[Power Push] 柳沼行「群緑の時雨」
 これを読むと、物語はゆっくりと、しかし着実に進んでいる模様。柳沼先生が描きたいと思っているシーンについてのお話は、読んで納得でした。時代物を選んだ理由にも。今後も目が離せません。

 これまで、時代物の小説・漫画には「歴史」タグをつけましたが、この作品は史実には基づいていないので、「時代物」タグとします。で、長くなりそうなので「柳沼行」タグ作りました!

【「ふたつのスピカ」関連記事】
「ふたつのスピカ」最終巻に寄せて
ふたつのスピカ 16(最終巻) 
by halca-kaukana057 | 2011-04-10 22:22 | 本・読書
 ようやく心の整理もついたので、「ふたつのスピカ」16巻、最終巻感想を書きます。
「ふたつのスピカ」最終巻に寄せて


ふたつのスピカ 16
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ/2009

 宇宙学校宇宙飛行士コース4年次に進級したアスミ。2010年の「獅子号」の打ち上げ、そして事故から17年。アスミが搭乗する日本の有人ロケットの打ち上げが迫っていた。アスミの父・友朗はこれまでの生活から、新たな一歩を踏み出そうとしていた。宇宙学校を卒業し、それぞれ別の道へ進んだケイは、別の道で宇宙への想いを温め続けていた。医学コースに編入したマリカは授業で忙しい日々を送る。そして、アスミの乗る新「獅子号」が打ち上げられた…。

 ライオンさんと出会い、父の背中を見て、宇宙への夢を育み続けてきたアスミ。その夢がついに叶えられる。しかし、この16巻前半ではアスミ本人の言葉や宇宙への想いは少ない。むしろ、アスミ自身のシーンが少ない。打ち上げまで描かれるのは、ケイやマリカ、府中野、友朗たちの現在や、子どもの頃の回想シーン。でも、そのシーンがアスミの宇宙へ向かう心境を間接的に、ささやかだけれども強くあらわしていると感じた。アスミが宇宙に行くことは、アスミだけの夢ではない。秋も含めた、皆の夢。この「皆」には、読者も含まれると私は思う。アスミ視点ではなく、周りの視点から、夢へのカウントダウンをドキドキしながら待ち、そのドキドキを共有しているような感じになった。一緒にアスミを見守り、応援しているような。そしてその数少ないアスミの出発前の言葉が、胸に響く。特に友朗へ電話するシーン。まずここで泣いた。

 そして打ち上げ、宇宙へ。アスミが見た地球の青さ…。私もきっと、友人や家族に会って伝えたいと思うだろう。でも、うまく言葉に出来るか、自信がない。

 後半は帰還後。唯ヶ浜花火大会で皆と再会の予定が…。アスミにとって、宇宙飛行士へ導いてくれた存在であり、どんな時もそばにいて励ましてくれた大きな存在であったライオンさん。そのライオンさんが…。アスミが宇宙へ行くことは、ライオンさんの夢でもあった。ライオンさん自身、「獅子号」事故で死に宇宙への夢を断たれてしまう。そんなライオンさんにとっても、アスミは希望であり夢を叶えて欲しい存在。アスミが夢を叶えて、ライオンさんも気持ちの整理が付いたのだろう。

 アスミが宇宙への夢を持ち始めた頃、アスミはひとりだった。ライオンさんはアスミにしか見えないから、アスミが宇宙への夢を素直に語り、それを聞いてくれるのはライオンさんだけ(府中野も微妙に巻き込まれていたが)。でも、今はケイやマリカ、府中野がいる。アスミはもうひとりではない。2巻あたりで、アスミがマリカに「ひとりじゃ宇宙へは行けないよ」と言ったことがあった。その時は、マリカへの言葉だと思ったが、今考えてみるとアスミ自身への言葉だったのかもしれない。

 この漫画を読んでいると、大切な家族や友人たちのことを想います。時々ひとりになると、その孤独に押しつぶされそうになることがある。でも、ちゃんと心でつながっている人がいるんだ。そんな人々の存在を想い、絆を大切にしたい。心からそう思います。

 最終話、アスミたちのその後と、アスミの新しい夢。宇宙に行くこと、それがゴールではない。また新しい夢の始まり。皆それぞれの道を進むが、宇宙への夢という共通項でつながっている。そんなラストシーン…余韻たっぷりの、「スピカ」らしいエンディングでした。

 この漫画と出会って9年。当時大学生だった私は、社会人になった。大学生の頃持っていた夢は叶えられなかったけど、そのために勉強したこと、努力したことはいい経験になったと思っている。夢とは呼べないかもしれないけど小さな願望や、夢の卵らしきものは今持っている。そして、この漫画を読んで人とのつながりを強く意識するようになった。前にも書いたとおり、昔は人と関わることをあまり好まない、マリカみたいな人間だった。でも、色々な人と出会って、人それぞれ考え方が異なること、それでもわかりあえる可能性はあることを徐々に経験していって、今に至る。この作品を読んで、アスミやマリカ、ライオンさんの言葉に何度共感したことか。今もコミュニケーションは得意とは言えない。気になる人に話しかけたくても勇気がなくてなかなか話しかけられないし、なかなか仲良くなれない。人と仲良くなるのにとても時間がかかる。不器用だと思う。それでも、今ある人間関係は大事にしたいな、と思う。

 最後まで温かい、味わい深い作品でした。この作品に出会えて、本当に嬉しかった。柳沼先生、本当にお疲れ様でした。そして、素晴らしい物語をありがとうございました。

長いですが、もう少し続きます 【続きを読む】
by halca-kaukana057 | 2009-10-27 23:36 | 本・読書

ふたつのスピカ 15

 ドラマ版も放送中の「ふたつのスピカ」原作、1年以上ぶりの新刊です!待ってました、待ちくたびれました!


ふたつのスピカ 15
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ/2009


 唯ヶ浜に帰省する途中、府中野は電車の中で崖崩れ事故に遭ってしまう。誰かの声で目覚めた府中野。何とか無事に生還し、そしてあることを決意した。
 冬休みが終わり、いよいよ4年次に進級する者が発表される。アスミ、圭、マリカ、府中野は。そして、旅立ちの日が…。

 1年以上待たされた甲斐がありました。待ってて良かったです本当に。陳腐な言葉しか見つかりませんが、感動の嵐です。

 宇宙飛行士コースは4年制。しかし、4年次に進級=宇宙飛行士として宇宙へ行くことが出来るのは限られた者のみ。進級できなかった場合は卒業…という厳しい現実。その4年次に進級するのが誰か、ついに発表されます。…うん、そう来たか。私も嬉しいという気持ちと同時に、苦しい・切ない気持ちも感じた。夢が実現する時、嬉しさや達成感を第一に感じるけれども、痛みも伴うこともある。それまでの夢を追う生活が終わり、失うものもある。宇宙学校での3年間があまりにも濃密過ぎて、その生活が終わってしまうことの寂しさだろうか。アスミたちが共に過ごす時間が限られてきただろうか。何ともせつない。

 進級発表後、4人はそれぞれ違う道へ進み始める。4人それぞれの決意と想い。でも、「宇宙へ行きたい」という想いは一緒。いつ宇宙に行けるか、それは問題にならない。14巻で「ひとりの夢じゃない」ということが強調されてましたが、15巻ではどんな道に進んでもきっと宇宙へ繋がっている。そして4人の絆も繋がっている。そんな2つの「つながり」も感じました。本当にマリカは強くなった。マリカの決意と、マリカが父と話すシーン…グッと来ました。

 そして卒業式。鬼教官のはなむけの言葉にもやられました。いつもは生徒たちをクタクタになるまで走らせ、しごき続けたあの鬼教官。鬼も、こんな想いでしごき続けたのか…。
多くの困難に直面することもあるだろう
困難とは常に痛みを伴うものだ 心も身体も疲弊させ足を止めてしまう
それでも 生き抜いてほしい
夢を持って 生きて生きて 生き抜いてほしい
(178~179ページ)

夢を持って生きていれば、遠回りしても、諦める結果になっても、その過程で何か学べるはず。全ては結果だけではない。仲間と夢を共有し、個を越えた「つながり」の強さで困難を乗り越えてきた。そして、どこからチャンスが回ってくるかわからない。アスミたちの3年間は、そんな3年間だったと思う。夢の途中で倒れた秋のためにも、夢を持って生きること。最高の旅立ちへのはなむけの言葉です。読み返したらまた…ああ。

 宇宙学校での日々が終わってしまうことがとても寂しい。今後の展開が気になる…と思ったら最後のページで重大発表が。そうか、そうなのか…。長かったようで、短かったようで。非常に感慨深いです。16巻は10月発売予定。楽しみにして待ってます。


*****

 ドラマ版第2話感想をちょっとだけ。マリカが熱いキャラになってる…。燃えてるよマリカが…。第1話でも感じたのだが、ストーリーの雰囲気が殺伐としている。観ていてハラハラする。
 うみへび座のアルファルドを出してくるとは予想外。アルファルド、好きな星です。脚本の人は天文に詳しいのかしら?
 さて、来週はもっと殺伐として雰囲気になりそうで怖いなぁ…。
・先週1話の感想:夢への持久力 ドラマ版「ふたつのスピカ」
by halca-kaukana057 | 2009-06-25 21:43 | 本・読書

ふたつのスピカ 14

 3月宇宙関係漫画出版ラッシュ、3冊目は「ふたつのスピカ」。今回は随分出るのが早かったなぁ…。

ふたつのスピカ 14
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス・フラッパーシリーズ/2008

 マリカと宇喜多家の秘密を追う新聞記者の伊地村は、マリカの父に会うために唯ヶ浜へやってくる。そこで伊地村は昔のことを思い出していた。
 一方、宇宙飛行士コースの最終課外訓練が始まった。4年に進級する、つまり宇宙へ行けるかどうかは、この訓練の結果次第。これまでの課外訓練を超える過酷な内容をこなすアスミたちだったが…。


 これまで宇宙への夢をいつも一緒に歩んできたアスミ・ケイ・マリカ・府中野。秋を亡くし、その夢・想い・絆はさらに強くなる。
「シュウの…シュウの想いも一緒に この星空の下で もう一度約束しようよ」(31ページ)
「もう…ひとりの夢ってわけにはいかないしさ」(46ページ)
「もうオメーひとりの夢じゃねんだよ!!」(113ページ)

 14巻では「ひとりの夢じゃない」ということが何度も強調される。秋の遺志を継ぐという意味だが、もうひとつ、4人で夢を、想いを共有するという意味も。最初アスミたちは宇宙への夢を個々に持っていた。それぞれどういうきっかけで、どういう想いで宇宙を目指したか。それは同じ宇宙学校に通っていてもバラバラだった。ところが、秋を含め5人で訓練を続け、心を通わせるうちに、その個々の違いのボーダーと言うか、境界みたいなものが薄れてきているのではないかと思う。アスミたち各々のスタートラインは別々。しかし、宇宙を目指す過程で混ざり合い、より強いものになっているんじゃないか…と。「ひとりの夢じゃない」ということと同時に、「ひとりじゃなかったから今まで頑張れた」ということも強調されている。それは他者に頼るようで、個々人の弱さの裏返しかもしれない。実際、最終訓練では切り離された個人それぞれの体力・精神力を試している。様々な場面で、生徒たちを「個」にしようとする。そこで弱さも出てくるのだが、「つながり」も簡単には消えない。最後に「個」を支えるのは「つながり」なのだ。

 特にその「つながり」の強さを実感しているのがマリカ。マリカの変化には本当に驚かされた。まさか1巻の登場シーンで、こんな展開は予想できなかった。「スピカ」はアスミよりも、何故かマリカの心の変化に注目してしまう…。アスミのことを見ていないわけではありませんが。

 さて、4年に進級できるのは誰なのだろうか…と考えたが、この物語が向かうのはそっちではないのかもしれない。夢を実現するのも大事だが、それ以上にその過程に重きを置くような展開なので、誰が宇宙へ行くのかが問題ではないのかもしれない。どうなるんだろう?

 そして、この14巻最後MISSION:75のラストシーン…何ですかこれは?!またしても大混乱の展開で次巻待ち。…もうこれ以上泣かせないでくれ(14巻でもマリカがアスミに自分の本当の気持ちを話すシーンでジーンと来てしまったが)。15巻が待ち遠しすぎる。いや、フラッパー立ち読みしてくる。
by halca-kaukana057 | 2008-03-31 22:03 | 本・読書

ふたつのスピカ 13

 「ふたつのスピカ」13巻が出てしまいました。あの12巻の衝撃のラストの続きがどうなったのか、早く読みたい気持ちの一方で事実を知りたくない気持ちも…。複雑です。

ふたつのスピカ 13
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ



 新型シャトルの乗組員に見事選ばれ、筑波でメディカルチェックを受ける秋。検査を順調にこなすが、その最終日に吐血して倒れてしまう。どうやら秋の死んだ母と同じ病気を患っているらしい。そんな秋を、妹・さくらが見舞いに来た。宇宙学校のことや、友達のことをさくらに話す秋。そして…





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 これが13巻の帯付き表紙なのですが、店頭でこの帯を見ただけで泣きそうになった。秋…行くなよ!!MISSON:65~67を読み進めるのがとにかく辛い。

 そんな秋の運命に向き合うアスミたちは、哀しみも共有する。例え独りで涙を流していても、その気持ちはつながっている。独りで泣くケイに対して「私がケイちゃんにそばにいてほしくて」(77ページ)と言うアスミ。会場に来ず独りでいる府中野に対して「一番のともだちでしょ!」(60ページ)と言い放ったマリカ。哀しみの気持ちが言葉にならないからこそ、誰かの側にいたい、側にいてほしいと思う。わかる気がする。

 秋の件の後で、マリカのもとに不穏な影が忍び寄る。秋の病気との関連とマリカの秘密。そのことに関してマリカがアスミたちに話すシーンがあるのだが(MISSON:69)、そのマリカも175ページのライオンさんの言葉からもわかるように、誰かが側にいてほしい、それだけのことだったのだろう。

 ちょっと話がスピカからそれるのだが、以前「はてブついでに覚書。:ちょっと一緒に歩こうか。」というブログを読んで、誰かに相談するってアドバイスが欲しいんじゃなくて、ただ聞いて欲しい、ちょっと心細いから一緒にいて欲しいだけなんだと感じた。13巻でのアスミやマリカも同じなのだろう。

言葉は要らない。ただ受け止めてほしい。この人たちなら受け止めてくれると信じてる。

マリカのそんな声が聞こえるような気がした。 

 宇宙への想い、秋の想いをつないでゆくアスミたち。そして迫る最後の課外訓練。鬼教官も相変わらずの鬼だけど、いい先生だよなぁ。14巻はさらにマリカにも危機が迫るのか…?まだまだ安心できません。
by halca-kaukana057 | 2007-12-25 21:45 | 本・読書

ふたつのスピカ 12

 JAXAのプレスリリースの通り、星出彰彦宇宙飛行士の初飛行が決定しました。来年2月頃、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の2回目の建設が主なミッション。大変ですよ、土井さん、若田さんに続き、来年は日本人飛行士の宇宙飛行が3回もありますよ。こんなの初めてですよ、楽しみですよ!!

 そんなこんなで「ふたつのスピカ」12巻感想です。宇宙つながりってことで…前置きでした。

f0079085_2040546.jpgふたつのスピカ 12 (12)
柳沼行/メディアファクトリー/2007

 夏休みも近づき、アスミたちはいつもの5人で毎年恒例の旅行先を考える。くじ引きの結果、行き先はアスミと府中野の故郷であり、去年も訪れた唯ヶ浜に決定する。実は皆、唯ヶ浜行きを希望していたのだ。
 唯ヶ浜に着いた5人は、獅子号事故の慰霊碑を訪れ、ケイとマリカはアスミの実家に向かう。3人が実家にいるところへ、アスミの父・トモロウが帰ってくる。トモロウとともに、彼のロケット技師時代の話も聞きながら楽しく過ごす3人。翌朝、再び遠方へ仕事に出かけるトモロウは、ちょうど顔を合わせたマリカにアスミのことを話す。
 一方、秋は花火大会の準備で忙しい府中野を手伝っていた。その秋は電話である知らせを受ける。
 最後かもしれない5人の夏が始まった。



 宇宙学校の宇宙飛行士コースでは、学校からの参加枠があるミッションに参加できる生徒しか4年に進級することが出来ない。もしかすると、この3年生の1年が5人一緒にいられる最後の時間かもしれない。そんな思いで5人は唯ヶ浜での夏休みを楽しみます。

 まず印象的だったのが、アスミの実家にて、トモロウがマリカにアスミのことを話すシーン。そして、ロケット技師としての職を絶たれ、夢を叶えられなかったトモロウに対して、マリカが問いかける。そのマリカに対してトモロウが言った言葉。
空が美しいと気付いたら
誰だって上を向いて歩くもんだよ
自分はこんな生き方しかできないけど
夢を追って生きてきた道に悔いはないよ(57ページより)
…いい事言うなぁ…トモロウさん。


 そして、宇宙飛行士選抜試験を受けていた秋のもとに嬉しい知らせが。その秋と、自分の病気についてマリカが語るシーンも印象的。宇宙に行く者と、行きたいけど行けないかも知れない者。現実は厳しいが、その現実がどうであれ同じ夢を追って過ごして来た時間はかけがえのないものだし、お互いの絆はライバルとかそういうものを通り越して強いものになっている。たとえ最終目標が叶えられなくとも、そこまでの過程は誇るべきものなんだと。私はトモロウさんのように、途中で挫折してしまった人間だ。でも、目標を持って努力していた日々のことは、今でもいい思い出になっている。そこんところが、すごく強く伝わってきた。

 MISSION:62、101~103ページのライオンさんの言葉も胸に深く心に残る。どんなに技術が進化し時代が進んでも、そこにある人々の想いはかけがえがない。不便な時代でも、その中で人々がいろんな想いをしてきたからこそ見えるもの、考えられるものもある。未来の人々が、同じようなものの見方・考え方をするとは限らない。今だからこそ、その人だからこそ見えるものがあり、考えられることがある。MISSION:64の府中野の隠された過去もそこにつながる。同じものを見ているからと言って、皆同じように見えるわけじゃない。様々な要因で異なって見える。その異なる視点が、各々の人の異なる感情・考え方を作っているんだ。

 最後、MISSION:64、最後のシーン…なんですかあれは!!ネタバレ防止のために何があったかは伏せておきますが、言葉がない。言葉にならない。えっと…その…とても混乱しています。これからどうなるんじゃぁああ!!

(13巻に続く)
by halca-kaukana057 | 2007-03-24 21:21 | 本・読書

ふたつのスピカ 11


 毎度お馴染み「ふたつのスピカ」11巻が出ました。

「ふたつのスピカ 11」(柳沼行、メディアファクトリーMFコミックス、2006)

 突然アスミを訪ねてきた幼馴染のかさね。予備校の講習を受けるために東京に出てきたとかさねは言っていたが、日中公園にいるところを府中野が目撃する。かさねは学校に馴染めず、家出をしてきたのだった。かさねは辛いことの全てを獅子号事故のせいにして逃げてきたとアスミに告げる。それに対して、アスミは「かさねちゃんはほんとうのともだちだから」と言う。
 宇宙学校では夏の課外訓練が始まった。9時間もの船外活動訓練を、開発中のロボット宇宙飛行士と比較されて行うものだった。長時間の作業に苦戦し、ケイたちはロボットに全く歯が立たない。ロボットに勝つ方法はあるのだろうか。


 前半はかさねとの話。何年も会わなくても「ともだちだよ」と言えるアスミの心の広さに乾杯(完敗)。かさねが獅子号事故でひどいやけどを負い、それを子どものころからからかわれコンプレックスとしてきたわけだが、彼女はそれを今自覚する。コンプレックス・劣等感や過去の嫌な思い出にすがって、「自分は不幸だ」と思ってその中に自分を押し込めてしまっているかさね。悲劇のヒロインになりきって、自分を不幸だと思うことは簡単だと私は思う。一方同じように獅子号事故で母を亡くし、左の腕力が弱いアスミはコンプレックスを抱えつつもひたすら空を見続け、前へ進む。アスミの言葉もそうだけど、その態度・行動力・信念は見ていて元気が出る。


 後半の課外訓練。ロボットには出来ない、人間だから出来ることを模索するアスミたち。リアリティあるなぁ。訓練中のハプニングも。何と言っても読みどころはアスミとマリカのこの台詞
わたしは大事な人が守ってくれたものを捨てるような行動はしません(アスミの台詞、MISSION:58、180ページ)

ともだちを貶されたら怒るのが普通でしょ(マリカの台詞、182ページ)


 マリカ…。本当に変わったなぁ…。


 最後に、コミックフラッパー公式サイトにて、11巻表紙の壁紙配布中。こちらからDLできます。
by halca-kaukana057 | 2006-11-27 22:19 | 本・読書

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