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ヴィンランド・サガ 21

 そろそろこの間読んだ「ヴィンランド・サガ」最新刊の感想を書こうかな…と思ったら、発売したのは8月下旬だったことに驚きました。そんなに前だったっけ?!本を買っても読まずに積んでおくことを「積読」と言いますが、私の漫画の場合、読んだ後そのまま積んでおいてます…。


ヴィンランド・サガ 21
幸村誠/講談社、アフタヌーンKC/2018

 戦いの中にある、ヨーム戦士団の本拠地、ヨムスボルグ。砦から脱出する途中に傷を負ったレイフ。レイフを戦場から遠ざけるためトルフィンとエイナルはトルケルに話すが、相手にしてもらえない。砦の中にはグズリーズが取り残されている。グズリーズを助けるために再び秘密の井戸の通路から砦に侵入するトルフィンとエイナル、ヒルド。その後を、トルケルの手下であるアスゲートに命じられ、シグルドが追っていた。砦の中に侵入したトルフィンたちとシグルド。トルフィンたちはバルドルのもとへ案内され、グズリーズと再会する。どうやって砦を抜け出すか…そこへ、フローキがやって来る。一方、シグルドは…。砦の外では、ガルムが…。


 21巻の山場はトルフィンとフローキの対面。トルフィンは19巻で、父・トールズを殺したのはフローキだと知ります。トルフィンの表情、感情が一気に変化する。もう自分から人を殺す戦はしない。仲間を守るためであっても人を殺すことはしない。どんな時も、そういう立場だったトルフィンですが…。アシェラッドのもとでトールズの仇を討とうとしていた少年の頃のトルフィンとも違う。あの頃も殺気に満ちていたが、このフローキに会ったトルフィンは全然違います。これまで積もり積もった父への想い、真実を知った衝撃。その全てが、恨み、怒りとして暴走している。こんなトルフィンは初めて見る。バルドルの言葉も重い。まだ少年だというのに、祖父がどんな人間か知っている。知っているからこそ、バルドルも戦士団を継ぎたくないし、戦もしたくないのだと思う。

 「元気君」シグルドは、トルフィンの後を追って砦の中へ。しかし、兵士に見つかってしまい大変なことに。コミカルな部分もあるのですが、かなりやばい状況です。そんな状況で、シグルドの手下の太っちょさん(名前がわからない…すみませんw)が、鋭い質問を。シグルドは本当はグズリーズのことを好きではないと指摘。それに続く言葉。
シグやんが本当に望んでいることはなに?
本当に望んでいることをしなよ
そのほうがグズリーズさんもシグやん自身も幸せになれるよ
たぶんね
(78ページ)
 この言葉が、後半、終盤のシグルドを変えた、のか…?

 砦から脱出する方法を探り、ある手に出たトルフィンたち。砦の中は大変なことに。でもうまくいくんじゃ…と思っていたら、この人の登場…ガルムです。本当にタイミング悪い奴だな!シグやんピンチ。どうなる!

 シグルドへの鋭い質問もそうですが、砦の中で処刑された名もなきヴァイキングの兵士の会話もポイントです。20巻同様、ヴァイキングたちの中にも、自分たちの生活、生き様について、「これでいい」と思っていない者もいる。これが、トルフィンたちをヴィンランドへ向かわせる動機となるはずなのですが…まだまだ長そうです。まずは、ヨムスボルグを無事に脱出できるのか?21巻に続く。

・20巻:ヴィンランド・サガ 20

 ところで、帯にも書いてあるのですが、「ヴィンランド・サガ」アニメ化決定です!!
コミックナタリー:「ヴィンランド・サガ」WIT STUDIO制作でTVアニメ化、幸村誠も歓喜
◇アニメ公式サイト:アニメ「ヴィンランド・サガ」
 いつかはアニメ化するだろう…でも、血がいっぱい流れる、残虐なシーンが沢山、物語も長い(トルフィンの少年時代だけで終われない)ので、アニメ化は難しいだろうと思っていたのですが…本当にアニメ化しますか!来年放送予定。動くトルフィンやアシェラッド、少年時代の美少年クヌートを観たいです!ユルヴァちゃんも観れますね!
 アニメ公式サイトでは、幸村誠先生と、籔田修平監督の釣りをしながらの対談が面白いです。

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by halca-kaukana057 | 2018-10-31 22:47 | 本・読書
 今日、9月20日はシベリウスの御命日。61年目です。普段ならCDについて書いていましたが、今年は本。シベリウスに関するとても興味深い本を読みました。昨年、シベリウス没後60年、フィンランド独立100年に合わせて出版されました。

シベリウス (作曲家 人と作品)
神部 智/ 音楽之友社 /2017

 シベリウスの伝記と、作品解説に関する本です。
 日本語でのシベリウスの伝記というと、今まで数は多くなかった。1967年、菅野浩和氏による「シベリウス 生涯と作品」が最初。私もこの本は持っていますが、やはり古い。資料が少なかったのだ。他にもいくつかありますが、本当にいくつかだけ。他の作曲家はもっと沢山出てるのに…。ようやく、シベリウスの伝記の決定版が出ました。それだけ資料も出てきて、研究も進んだということだ。シベリウスの生涯と、その頃に作曲された作品の作曲経緯などが書かれ、「作品篇」ではそれぞれの作品の解説があります。

 まず、Sibeliusという姓に疑問を持っていた。当時、スウェーデン語系フィンランド人はラテン語風の姓を名乗ることはあったが、ではなぜ「Sibelius」なのか。その謎にも答えがあります。家系や家族も詳しく解説されています。「ジャン」というフランス語の名前・ペンネームは船乗りだった伯父が「ジャン」と名乗っていたのに由来しているが、その伯父さんや、シベリウスが幼い時に亡くした父・クリスティアンについても詳しく記載されています。シベリウス家は家計が苦しく、アイノ夫人は大変だったそうだが、それはシベリウスが幼い頃からもそうだったと…。音楽以外のことに関しても本当に詳しいです。

 そして、シベリウスはスウェーデン語系フィンランド人、という存在、立場もシベリウスの生涯でも、作曲においても、重要な要素となります。フィンランド語および文化の地位向上を目指した「フェンノマン」、スウェーデン語および文化の推進者の「スヴェコマン」。この両者は対立、せめぎ合い、フィンランド社会を二分してしまう。スウェーデン語を話すも(シベリウスはフィンランド語は話せるけれども苦手だった)、「カレワラ」などフィンランドの文化に関心があり、それを題材にした作品を作曲したシベリウス。シベリウスのアイデンティティは揺れ動いていた。「カレワラ」にちなんだ作品を発表する一方で、歌曲はスウェーデン語のものが圧倒的に多い(詩はルーネベルイなど、スウェーデン語系フィンランド人によるものが多いため)。「フェンノマン」と「スヴェコマン」はシベリウスにとって重要なキーワードになります。

 シベリウスは孤高の作曲家と言われる。特に後期の作風が、他の同時代の作曲家とは異なる技法、表現を使っていた。また、徐々に作曲しなくなり、アイノラで静かな晩年を送ったのも理由にあるだろう。でも、シベリウスは全く孤高ではなく、音楽家同士の交流もあったし、他の作曲家の作品に感銘を受けたこともあった。若い頃はワーグナーに傾倒していたが、バイロイト詣出をした後、目指す音楽はワーグナーではないと明言する。ヘルシンキ音楽院(現在のシベリウス・アカデミー)の教授だったブゾーニや、指揮者のロベルト・カヤヌス、リヒャルト・シュトラウス、シベリウスを尊敬し交響曲を献呈するほどだったレイフ・ヴォーン=ウィリアムズなど、様々な音楽家や人々と交流があった。シェーンベルクの作品を聴いて高く評価していたのには驚いた。音楽界は時代の過渡期、調性のない音楽が生まれる一方で、シベリウスは独自の道を歩んだとされるが、シベリウスは社会と断絶していたわけではなかった。

 各作品の作曲の背景も、知らなかったことが多く勉強が進んだ。交響曲第8番の作曲、破棄の経緯も記載されている。スコアを暖炉で燃やしてしまったと言うが、それは事実なのか。

 これまで、イメージや憶測で語られてきたシベリウス。勝手なイメージを持ってしまっていたと思う。

 菅野さんの別の本も面白いです。

シベリウスの交響詩とその時代 神話と音楽をめぐる作曲家の冒険

神部 智/音楽之友社


 「作曲家 人と作品」シリーズよりは難しいですが、こちらもおすすめです。
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by halca-kaukana057 | 2018-09-20 22:19 | 本・読書

天文の世界史

 火星の大接近と夏の夜の惑星祭り、ペルセウス座流星群と様々な天文現象があり、今年も何かと天文・宇宙は話題になっています。これまで、様々な天文・宇宙本を読んできましたが、その宇宙を人類はどのように見つめてきたのか。ルーツ、歴史を紐解いてみたいと思いません?ということでこの本。


天文の世界史
廣瀬 匠 / 集英社、集英社インターナショナル、インターナショナル新書 / 2017

 天文学の歴史というと、まずメソポタミアやエジプトと言った古代文明のもとで生まれた天文学に続いて、西洋の天文学の歴史について語られる。あと、アラビアの天文学。しかし、インドや中国といったアジア諸国でも天文学は進歩していった。古代マヤでも天文学は進んでいた。世界史は世界史でも、天文学の世界史、人類が宇宙をどう捉えていたのか、その歩みを辿る本です。
 著者の廣瀬さんは、アストロアーツで働いた後、天文学史の研究へ。古代・中世インドがご専門。ツイッターをやっていた時、フォロワーさんでした。何度か言葉を交わした方が本を出されている…不思議な世の中です。

 身近な太陽、月、地球に始まり、惑星、星座、流星や彗星、銀河などの記録や民俗、文化などなど。時間、年月日の概念と誕生、暦の作成…宇宙、太陽や月、星(星座)はそれらを生み出してくれた。運行に規則があって、一定である。そこから、権力者が変わり無く、絶え間なく、統治できるかという指針にもなった。動きが一定でない惑星や、彗星、超新星などは不吉とされた。星占いもそこから発展した。人類が宇宙の中で生きてきた、宇宙があって人間の生活や文化が生まれ変わっていったことの証でもある。現代人の多くの人は、天文現象があれば何だかんだと騒いで空を見上げるが、古の人々にとって宇宙は、もっと身近で、もっと見続けていたものなんだろうなと思った。昔は夜はこんなに明るくはないので、もっと星や月を見えたのもあるのかな、と。

 地域によって、星の見方も違う。メソポタミアの流れにある西洋の星座と、中国の星座は違う。でも、似ているところもある。星の並びが印象的なものだと、どこの地域でも結び方は同じになってしまう。星座だけでなく、太陽や月、暦、惑星などに関しても。インドについては今まであまり知らないことが多いので、興味深かった。

 近現代の天文学についても書かれています。望遠鏡の発達により、遠くの銀河や星雲なども観測できるようになった。天の川についても、銀河だったとわかる。さらには相対性理論、暗黒物質、ビッグバンと今現在も研究が続いている天文学、物理学に繋がる。遠くの宇宙が見えるようになれば、また謎が生まれる。新しい発見があれば謎も生まれる。天文学の歴史はその連続。今、研究している宇宙の謎が解けたら、また新しい謎が出てくるのだろうか。とても面白いです。

 新しいことだけではない。244ページの「「天文学の歴史」を疑うことこそ理解への第一歩」とあるように、天文学の歴史も諸説ある。ある概念が時間を経て、違う概念に変わってしまったことはよくある。過去も知ればまた謎や疑問、噛み合わないことが出てくる。専門家でない限りなかなか文献を探すのは大変だが、色々な説や文献に触れて、天文学の多様性を実感する。天文学の歴史の膨大さも、宇宙のように広がっているのだなと感じました。すごいね。

 宇宙天文についての基礎についても書かれているので、宇宙天文+天文学史の入門書になると思います。内容はちょっと難しいところもありますが、文章も親しみやすいと思います。


【過去関連記事】
天文学者の江戸時代 暦・宇宙観の大転換
カリスマ解説員の楽しい星空入門
「ブルームーン」とはそもそも何ぞや

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by halca-kaukana057 | 2018-08-11 22:22 | 本・読書
 クラシック音楽を聴くようになって10数年ぐらい(大人になってからなので、全然日は浅い)になるが、なかなかお近づきになれない作曲家が何人かいる。そのひとりが、グスタフ・マーラー。クラシックを聞き始めた頃、交響曲が苦手だった。「重い」「長い」「難しい」から。マーラーの交響曲はまさにそのどれにもあてはまる。しかも、マーラーといえば交響曲が圧倒的に演奏回数が多い(歌曲や室内楽もあるのに)。指揮者、オーケストラの「勝負曲」になることも多い。事あるごとにマーラーは演奏されている。聴く回数が増えて、以前よりはマーラーを好きになれたと思う。交響曲でも声楽付きの作品は好きだ。でも、まだ、お近づきになれていない感じはある。この本を読んだら、もう少しお近づきになれるんじゃないかと思って読みました。

マーラーを語る 名指揮者29人へのインタビュー
ヴォルフガング・シャウフラー:著、天崎浩二:訳/音楽之友社/2016


 2010年の生誕150年、2011年の没後100年に合わせて、世界的に活躍している指揮者、29人に、マーラーの作品について、作曲について、マーラーの人間について、指揮者としてのマーラーについてをインタビュー。年代も国も幅広く。

 この本を読んで思ったのは、私はマーラーの伝記をよく知らないということ。マーラーは複雑な背景を持っている。現在のチェコ(当時はオーストリア帝国)に生まれた。両親はユダヤ人。指揮者としてウィーンやアメリカで活躍し、ウィーンではオペラを指揮していた。そして作曲家として、11曲の交響曲、歌曲や室内楽を作曲し、自身の指揮で披露した。このぐらい。シベリウスと会って、交響曲について語り合った時、考え方が全く異なる、というエピソードは覚えている。が、それぞれの作品の作曲背景もよく知らないし、どんな指揮者だったのかも知らない。まずは伝記を読まないとなぁ、と思ってしまった。

 今でこそ、マーラーは世界中で当たり前のように演奏されている。「またマーラーか」と思うこともある程、演奏機会は多い、増えている。でも、以前はこんなにマーラーは演奏されていなかった。かつてはオーケストラの楽団員には、民謡の寄せ集め、悪趣味、と揶揄されていたのも初めて知った。
 マーラーはユダヤ人である。第二次世界大戦の時は既に亡くなっていたけれど、ユダヤ人排斥のナチスの方針で、マーラーは演奏禁止、レコードを聴くことも許されなかった。そういえばそうだった。それを忘れていた。マーラーは早くに死んでしまったが、それでよかったのかもしれない。そんな中で、こっそり家族がレコードを聴かせてくれた、などという指揮者たちの話を読んで、戦争や弾圧は個人の心の中までもは支配できないのだなと感じた。
 マーラーの作品を演奏、普及するのも地域差がある。結構遅い地域もある(例えば、フィンランドでは、1970年代に、元シベリウスアカデミー指揮科教授のヨルマ・パヌラがフィンランドで初めてマーラーチクルスをやったそうだ)。インタビューをした29人の指揮者の出身地はバラバラである。コンサートなんてあまりない、あってもマーラーが演奏されることなんて滅多にないところで生まれ育った指揮者もいる。マーラーとの出会いはそれぞれ異なり、面白いなと思った。

 マーラーの作品を積極的に演奏したバーンスタイン(今年生誕100年)は、交響曲第6番「悲劇的」、第7番などから、20世紀の戦争、破壊的な大惨事(カタストロフ)を予言していたと言っている。それについてどう思うか、という質問もあった。指揮者たちの答えが興味深い。単純に言葉を受け取るのではなく、指揮者たち各々が勉強をして、そこからその質問に対しての答えを導いているのは、なるほどと思った。

 指揮者としてのマーラーについての指揮者たちの考え方、見方も面白い。マーラーは、数多くのオペラを指揮していたのに、何故オペラを作曲しなかったのか。これは興味深い。調べてみたら、一応作曲はしたが、破棄、紛失してしまったという。声楽付きの交響曲、特に交響曲第8番はオペラの雰囲気でもある。ここからマーラーのオペラ感がわかるのだろうか。

 マーラーと、同時代の作曲家の関係も面白い。シベリウスは、現代作品への作曲への流れに納得できず、孤高の立場を貫いた、作曲ができなくなったと言われている。マーラーはどうだろうか。マーラーがもしもっと生きていたら、どんな作曲をしただろうか。他にも、マーラーと関係のあった、マーラーに影響を受けた作曲家の話が出てくる。ショスタコーヴィチがマーラー好き、マーラーに影響を受けていたとは知らなかった。そのショスタコーヴィチに対して、ピエール・ブーレーズの反応が…そうだったのか。

 指揮者たちの、マーラーに対する考え方はそれぞれである。クールに徹している人、マーラーともし会って話が出来るなら是非、という人。この29人全員のマーラーを聴きたい…いや、それは大変なことになるな…。

 ズービン・メータがブルーノ・ワルターを通じて、アメリカで妻・アルマと会った話が面白かった。マーラーがどんな人だったのかも語ってくれた。アルマも、こんな人だったんだな、と感じた。
 直接の話でなくても、戦時下での反ユダヤのことや、こんなにマーラーが演奏される前の話など、昔の話は特に興味深い。しかし、この本でインタビューを受けた指揮者のうち数名は亡くなってしまった。この本の形で残ってよかったと思う。

 「やがて私の時代が来る」と言ったマーラー。マーラーの時代は、今来ているのだろうか。マーラーの音楽にお近づきになれただろうか。まずは作品を聴くのと同時に、ちゃんとした伝記を読むことからかも。

 ちなみに、マーラー以上にお近づきになれていない作曲家…ブルックナー。版問題から、作品の巨大さから、聴いても、4番と9番以外聴き分けられない。続編で「ブルックナーを語る」を出してもらえないだろうか…。でも聴かないと話にならんのだよなぁ…。

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by halca-kaukana057 | 2018-07-28 22:20 | 本・読書

Im ~イム~ 10

 遅れがちになる漫画の感想。発売したのは5月でした。早く書かないと次の巻が出てしまう。


Im ~イム~ 10
森下真/スクウェア・エニックス、ガンガンコミックス/2018

 コンスが、ジェゼルの遺体(ミイラ)を持ち去った。様子がおかしいとコンスの後をつけていたセドも攻撃されてしまった。セドとラトは黒アザを持っているコンスを止める為に護衛に付いていたのだ。コンスは、唯一の肉親、弟を九柱神に奪われ、神官団を憎んでいた…コンスが神官団に入団し、黒アザを発症した頃から、ヘシレはそのことを秘密にして、黒アザの治療法の研究に使っていた。魔法を使うと黒アザが侵食するため、ラトとセドを護衛につけた。一方、トトはミイラのほうを心配していた。アポフィスがジェゼルの肉体を得て、世界中の人々に散らばった心の闇がアポフィスに戻ってしまったら、アポフィスは完全復活する。イムは、以前アトゥムの「器」と話した時のことを思い出していた。アトゥムが言っていた思い出せない「ある人」を探したい…イムはその約束も守ろうと、アポフィスがいる「原初の丘」へ向かう…。


 ミステリアスな存在だったコンス。力はあり、飄々としているけれども、常に何かを隠しているそぶり。イムに協力的なようで、何かありそうな感じではあった。九柱神のことになると憎しみの感情を持つ(でも人前では出さない)。黒アザを持っている。コンスの本性が出てきました。イムがアトゥムの「器」と話をしたのは8巻の最後のほう。神官団本部の街で人々がマガイ化し、そのマガイを回収するのに駆け回っていた途中、イムは力尽きて倒れてしまう。その時、アトゥムの「器」と会い、話した。9巻の最初で、倒れている間、アトゥムの「器」と話した、と言った際、コンスが激しく反応した。ということは…?
 九柱神の「器」というのも、今までよくわからない存在でした。そうか、誰か人に乗り移らせているシステムなのか。アトゥムだけでなく、あとの8人も元々は一般人だったということか。8巻の最後で、セトも、「器」について話していた。神官団のシステムは、よくわからないというか、結構強引で残酷ではある。大きな組織だから、オシリス家のような人たちもいるし、色々な考え方の人がいて、利害や思想で派閥を作ったり、駆け引きしているのだろう。

 そのコンスや、アポフィスからジェゼルのミイラを取り返すため、イムたちは「原初の丘」へ向かう。世界の始まりの場所。行くためにはイムの魔法と、陽乃芽のセクメト神の魔法が必要。陽乃芽ちゃん、がんばりました!他の上位神官たちから陰口を叩かれても動じず、魔法を的確に発動させることに集中している。陽乃芽ちゃんが魔法を発動させる際、セクメト神のお面?を被っている?もしくは、セクメト神の顔になる?んですね。「原初の丘」は不思議なところです。そこで、コンスとのバトル…に対抗したのは、なんとあの人!イムも驚くほどの強さの魔法。改心して戻ってきてくれたのが嬉しいです。

 コンスの魔法も初めて見たが、強い。こんなに強かったんだ。ミイラを奪う際もかなり強い魔法を使った模様。ただ、長く持たない。黒アザに侵食されてしまっている。

 「原初の丘」では、新しい敵が登場します。アクエンアテン。しかも、あの姿で。とってもシュールではある。確かに、史実からしてアメン神官団の敵だもんなぁ。
 コンスとのバトル、アクエンアテンとのバトルだけでなく、クレオパトラにラムセスも再登場します。クレオパトラに対抗するのは、女同士、ラトさん。追いついたイムの、クレオパトラに対する言葉がぐっと来る。敵側ではありますが、同じエジプトの者だからね。さらに、ラムセスは…この人本当に強いです。精神的にも強いです。信念も強い。物事を見据えていました。ラムセス…かっこいいぞ。あの陽乃芽ちゃんとのバトル、そこで陽乃芽ちゃんの言葉を覚えていたんですね。このバトルと、クライマックスで、クレオパトラがどうなったのかわからない。どうなったんだ?

 神官団に入る前のコンスも、クレオパトラも、ラムセスも、友情や愛情で結ばれた人がいる。でも、引き裂かれてしまう。友情も愛情も邪魔されたり、すれ違ったりで相手に伝わらない、伝えられないことは現実でもある。私もそんな気持ちをずっと抱えている。それが、心の闇になってしまっては困るのだが、自分独りで思えば思う程暗いものになってしまう。何より、イムとジェゼルも、トトとアポフィスもそうだ。相手に伝えて、伝え返してもらえるのか。コミュニケーションとして成立するのか。不安はあるが、相手にぶつかっていくしかない。できないなら、あきらめるしかない。

 クライマックスです。ガンガン本誌の連載では、既に最終回を迎えたそう。読みたい…。9月発売予定の最終巻、11巻を待ちます。

Im ~イム~ 9
Im ~イム~ 8
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by halca-kaukana057 | 2018-07-22 22:40 | 本・読書

Im ~イム~ 9

 新刊として出たのは1月だったか…春になる前に感想を書きましょう。


Im ~イム~ 9
森下 真/ スクウェア・エニックス、ガンガンコミックス / 2018

 人間をマガイ化する黒アザの出る薬を仕込まれ、アメン神官団本部の街は大混乱に。それぞれが戦う中、イムは「記憶抹消大魔法(ダムナティオ・メモリアエ)」を使い、街もマガイ化した人々も元通りにする。イムを「救世主」と崇める人々たち。だが、その後イムは倒れ、眠り続けてしまう。再び目覚めたイムを待っていたのは、知らない間に元通りになった街と、イムを「救世主」と呼び讃える人々だった。イムは3000年前、ジェゼルを助けようとした際、「記憶抹消大魔法」を使ったが、それ以後は使わないと決心していた。イムが眠り、記憶を失っている間、何が起きたのか。イムが覚えているのは、九柱神(エネアド)のアトゥムの「器」と会っていたこと。イムは九柱神に会いに行く。そこで、世界創世の神話の真実を知ったイムは…


 9巻も展開が早く、次々と新しい情報が出てきます。一度読んだだけでは覚えきれない、過去のエピソードや伏線を、なんだったっけ…と思い出すのも必要。濃いです。

 イムのおかげで、街も人々も救われた。「何も無かった」ことになった。その結果はよいことですが、イムにとっては信じられない、納得できないこと。イムも覚えていない。記憶に無い。「記憶抹消大魔法」を使ったのは誰…?ということで、その謎解きの旅に。
 その前に、イムはその謎を陽乃芽に話す。もうひとりの自分がいて、それが「記憶抹消大魔法」を使ったのではないか。また、何かが起き、皆の記憶どころか、皆の存在も消されてしまったら…そんな不安を、陽乃芽が吹き飛ばし、背中を押します。大神官で、誰よりも賢く、誰よりも強いイムにも弱みや悩みがあって、それを信頼している人に話すことが出来るようになった。いい友情です(陽乃芽にとっては「友情」ではなく…?)。そして、イムの本心。ジェゼルと仲直りがしたい。これらについては、9巻終盤でも出てきます。

 九柱神と会ったイム。そこで語られるのは、九柱神以前の創世神話。「混沌の八柱神(オグドアド)」、その守護神アポフィスと「記録者」月の神トト。あのアポフィスも神なのか…。そして、「記憶抹消大魔法」の本当の使い道も明かされます。淡々と語るアトゥムに、「神」であるアトゥムに対して怒りをぶつけるイムの言葉がすごくいい。
 イムは今度はトト神に会いに月の宮殿へ。トト神のこれまでと、イムやファラオたちに宰相として仕えていた大神官たちが何なのかが明かされます。そう来たか…。トト神と、イムの対峙。トト神は、あくまで中立で、世界を記録する。しかし、イムホテプは、「親友」ジェゼル王のために、「記憶抹消大魔法」を使った。中立になりきれてなかった…。イムが「お祓い箱」と呼んでいる「月光の魔水晶」の秘密も明かされます。たくさんの謎が明かされるのに、更に新たな謎、情報が出てくる。すごいなぁこの創作世界…。
 再びアポフィス登場。アポフィスがトト神に語ったのは、トト神には信じられないこと。トト神は中立の立場とはいえ、人間と同じように、人格、感情を持っている。イムとジェゼル、トトとアポフィス。「友達」のための戦いが始まります。

 読んでいる側も、イムの真実に混乱しますが、イムの周囲の人々も大混乱。ユート君ですら理解しきれない…。稲羽くんの言う通りなら(これが真実なのですが)、どうやってアポフィスを倒すんだ…?何かアポフィスの弱点、バグでもあるのか?
 そして、上述した、イムの本心、ジェゼルと仲直りしたい、ということも伝えられます。しかし、マガイに肉親を殺された稲羽くんや晴吾たちにとって、それは許せることではない。いくらジェゼルではなくアポフィスの仕業だったとしても、ジェゼルもマガイに関係していた。稲羽くんにとってジェゼルは許すことのできる人ではない。でも、信頼しているイムのことも思うと…。反発しても、「仲間」というつながりがそれを超えていく。かつては晴吾と対立していたイムですが、稲羽くんとも対立し、理解し合えた。ひとりひとりと、こういうシーンがあるのがいいですね。

 ラスト、また非常事態発生。ついにあの人が…!!この人にも悲しい思いのまま終わってほしくない。どうするんだ。10巻を待ちます。ついに10巻まで来たんですねぇ。

・8巻:Im ~イム~ 8
 この9巻は、さらに遡らないとイムの真実や本心にたどり着けません。本当に9巻は濃いです。
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by halca-kaukana057 | 2018-03-23 22:27 | 本・読書
 大分前に読み終わったのに、感想を書かずにいる本のひとつです…。


天文学者たちの江戸時代: 暦・宇宙観の大転換
嘉数 次人 / 筑摩書房、ちくま新書 / 2016


 江戸時代。日本の天文学は、それまでの中国からのものに加え、西洋の天文学も取り入れ、変化していった。暦の作成、日食や月食の観測と予測、月やさまざまな惑星の観測、最新の宇宙論。江戸時代に活躍した天文学者を紹介しながら、江戸時代に日本の天文学がどのような方向に進んでいったのかを俯瞰できる本です。

 江戸時代の天文学者というと、「天地明察」で有名になった渋川春海。歩いて海岸線を測量し、正確な日本地図をつくった伊能忠敬。また、天文学を推し進めた将軍・徳川吉宗などが出てくる。でも、それだけじゃない。江戸時代、日本の天文学はこうなっていたのかと、興味深い内容の本です。

 渋川春海に関しても、「天地明察」の範囲でしか知りませんでした…。史実ではあるけれども小説なのでフィクション、脚色も勿論入っている。この本では、渋川春海がどのように「貞享暦(じょうきょうれき)」や「天文分野之図」などを作っていったのか、ざっと書いてある。中国の暦や星座を用いてきたが、それを日本の地理に合わせたものに作り変えた。事実だけ読んでも、渋川春海のすごさを実感する。

 江戸時代の天文学者が次々と出てきます。以前、このブログでも取り上げたことがある麻田剛立も勿論登場します。数々の業績も素晴らしいのですが、麻田剛立のすごいところは、研究スタイルをオープンにしたこと。当時の学問は閉鎖的で、師に入門すると、学んだことは他人にも家族にも話さない、同門の者にも話さない、師に無断で著作物を出さないなど、門下だけでひっそりと研究を進めていた。一方、麻田剛立は、全てをオープンにしたわけではなかったが、大坂や日本各地の研究者を交流、議論するなど自分の知識を門下以外の人にも伝えていた。月食を観測していた際にも、見物人にも望遠鏡や観測機器を公開して、一緒に観測していたという。今では当たり前のようなことだが、当時は珍しいことだった。

 その、麻田剛立の弟子として紹介されるのが、高橋至時(たかはし よしとき)、間重富(はざま しげとみ)。高橋至時は、伊能忠敬の師匠。寛政の改暦、「ラランデ暦書」の翻訳にあたる。江戸時代、どの科学分野でもネックになったのが、オランダ語からの翻訳だろう。「ラランデ暦書」の翻訳も難航した。
 また、この頃になると、地動説や、彗星の研究、天王星の観測もあった。

 江戸時代、鎖国のため、西洋の学問はなかなか入ってこない、そのため、日本での科学分野での研究もなかなか進まない…というイメージを持っていた。語学の壁もあったが、思った以上に江戸時代の天文学はいきいきしていた。限られた中でも、試行錯誤や工夫、想像力をもって宇宙に挑んでいった先人たちのことを知ることができてよかった。

【過去関連記事】
天地明察
 小説の方です。コミカライズの感想もあります。
月のえくぼ(クレーター)を見た男 麻田剛立
 麻田剛立の児童向けの伝記です。児童向けですが、大人でも楽しめます。この本と合わせてどうぞ。

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by halca-kaukana057 | 2018-03-14 22:05 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 20

 19巻の感想を、この20巻の発売日に書いて、その後すぐ20巻を買って読んだのですが…感想を書くのは遅くなってしまいます。



ヴィンランド・サガ 20
幸村誠 / 講談社 アフタヌーンKC / 2017

 ヨーム戦士団の内紛に介入せよと、トルケルにクヌート王の勅令が下った。しかし、トルケルはクヌート王の命令など関係無く、ただ戦争をしたいと言う。一方のフローキ側のヨーム戦士団。ガルムがトルフィンではなく、ヴァグンを殺害してしまったため、厄介な展開に。要塞の地下牢に捕らえられたガルムは、同じく捕らえられているレイフ、エイナル、グズリーズと再会する。
 トルフィンはレイフたちと待ち合わせをしているオーゼンセに到着。ギョロからレイフたちが人質になったこと、ガルムがヨムスホルグに来いという伝言を聞かされる。やはり戦うしかないのか…。どうしたらいいか分からず呆然とするトルフィンに、ギョロが思いをぶつける。
 ガルムがヴァグンを独断で殺害してしまったことを、フローキ側はトルケルに釈明するが、トルケルは交渉決裂、と退ける。そして、フローキ側から放り出されたガルムはトルケルを挑発。トルケルはガルムと一騎打ちをすることになる…。


 本格的に戦争が始まりました。冒頭のクヌート王の言葉が印象的です。クヌート王も楽土建設のために何をするのか考え、動いているが、ヴァイキング、ノルドの戦士たちの考え方は変わらない。思う存分戦って死ぬ。ガルムも同じことを考えている。地下牢でガルムとグズリーズが会話していましたが、そのシーンにその考え方の違いがはっきりと表れていました。グズリーズにとっての「普通の生活」と、ガルムやノルドの戦士たちにとっての「普通の生活」とは何なのか。答えの出ない問題です。ただ、クヌート王は、王として、この方向に向けようとしています。トルフィンも目指す方向に向かいたい…けれども、トルフィンには足りないものが多い。まず、クヌート王のような権力がない(あれ?権力…?)。

 19巻の感想で、トルケルとガルムは似た者のように思えると書きましたが、全くの似た者同士でした。2人の一騎打ちはすごい。あのトルケルと互角に戦えるなんて。戦う前、ガルムはトルケルの年齢のことを言っていましたが、トルケルっていくつぐらいなんでしょう?ガルムはまだ10代?

 レイフさんたちが人質になったことを知らされたトルフィン。誰も殺さずに、レイフさん、エイナル、グズリーズを助けるなんて無理だ…と迷いますが、ギョロの言葉がはっきりと、でも重い言葉でした。理想は誰も殺さずに助けたい。でも、トルフィンやギョロにとって大事なのは誰か。助けなきゃいけないのは誰か。そして、助けられる力を持つのはトルフィンしかいない。過去を打ち消すのではなく、今自分が持つ「力」をどう使うのか、トルフィンにとってこれからの課題になりそうです。とはいえ、ヒルドさんが見張ってるんだよなぁ…。

 ヨムスホルグに捕らえられた3人に、味方が1人。トルフィンにとっても味方かもしれません。バルドル君も苦労する…。グズリーズはどうなってしまうのか。シグルドとトルフィンが再会…状況はこれはこれでよかったのかもしれない…。普通の状況だったら、シグルドは何をするか…。前向きなシグやん、「友達の多い」シグやん…重い展開の20巻で、こんなシグやんがいいキャラしています。グズリーズ、一気に大人になりましたね。美人さんになってきましたね。

 ヨムスホルグでの戦のシーン。ノルドの戦士たちの「普通の生活」と先述しましたが、ヨムスホルグのヨーム戦士団の兵士でも、トルケルやガルムとは少し違う人もいるのかもしれない。そんな描写がいくつか。戦争真っ只中の21巻でも、こんな描写があるかなぁ。

・19巻:ヴィンランド・サガ 19
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by halca-kaukana057 | 2018-02-18 15:53 | 本・読書
 100年目のフィンランド独立記念日に、ぴったりの本を読みました。こういう本が読みたかった。


物語 フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年
石野 裕子/中央公論新社・中公新書/2017
 フィンランドは帝政ロシアから独立して100年。しかし、その前にも歴史があり、独立後、現代に至るまで苦難も多々あった。人口500万人、ロシアとスウェーデンに挟まれた小さな国。それでも、しっかりとした存在感を示し、特徴ある文化などで世界に注目されてきた。そんなフィンランドはどのように生まれ、どんな道を辿ってきたのか。

 フィンランドの歴史というと、私もよくわかっていなかった。スウェーデンに支配された後、帝政ロシアに支配される。独立しようというナショナリズムが興り、「カレワラ」といったフィンランド固有の文化が注目される。ロシア革命のドサクサにまぎれて独立し、その後白衛隊と赤衛隊で内戦が起きる。ようやく国が統一されたと思ったら、冬戦争に継続戦争。敗戦国となったが、戦後は産業、経済面での復興を遂げ、その中からフィンランドデザインの製品が生まれた。トーヴェ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズが人気となり、今では様々な面で世界から注目される国である…ぐらい。ざっくりと。

 この本は、フィンランドの起源から始まります。紀元前、フィンランドに人が住み始め、鉄器時代には定住、貿易も始まっていた。スウェーデンにどのように統治されていたのか。その時代に、戦争も三度あった。その後、知識人も生まれたが、ロシアとスウェーデンが対立。フィンランドはロシアに渡ってしまう。

 独立100年と聞くと、新しい国なんだなと思う。でもそれは、フィンランド共和国となってから。独立前にも、他の国に組み込まれていてもフィンランドはあった。そこで暮らしている人たちがいた。フィンランドは小さいながらたくましい国と言われる。そのルーツは、独立のずっと前から育まれていたのだろう。

 帝政ロシアの支配化での状況、独立までの経緯も詳しく書かれています。そして独立はしても、内戦が起きる。他国と戦うならまだしも、同じフィンランド人同士なのに、戦わなければならない状況というのはどんな状況だろう…胸が痛む。

 この本で初めて知ったのが「大フィンランド」構想。カレリア地方も広くフィンランドに組み込もう、領土を拡大しようという動きだ。これが、継続戦争で目指すものとなる。冬戦争は独立を保つために巻き込まれて戦争することになったが、現在、継続戦争は領土拡大の意図があったことがわかっているそうだ。また、スウェーデン語系フィンランド人やサーミの人々などに対して、フィンランドへの「同化」政策もあった。今でこそ福祉国家と呼ばれるフィンランドでも、そんな歴史があったのだ。だからこそ、今のフィンランドがあるのかもしれない。

 大戦後も、ソ連に翻弄されつつも、したたかに、たくましく冷戦下をしのいでいく。資源がないので産業を興そうと、マリメッコやアルテック、イッタラ、ノキアなどが躍進し始める。「ムーミン」もこの頃生まれた。資源のなさは、教育の充実にも繋がった。100年は短いように思えるが、たくさんのことがあった。

 今も、フィンランドからは新しいものが生まれ続けている。アップルの躍進でノキアは下火になっても、また新しい分野で伸び始めた。IT分野での、ベンチャー企業の躍進もめざましい。柔軟さや多様性も、フィンランドにはある。

 この本は主に政治、経済の面を中心に書かれているが、フィンランドはどの時代でも興味深い国だ。面白いことをやっている。芸術や文化面に関しても、コラムがある。フィンランド語とスウェーデン語。サウナにムーミンにサンタクロース。この本には書ききれなかった魅力もある。どんな切り口から見ても、フィンランドは面白い。そんなフィンランドを支えてきたのは、フィンランドの人々のたくましさとしたたかさなのだろう。「sisu(シス)」と呼ばれる、「フィンランド人魂」なのだろうか。

 フィンランドの歴史(特に政治経済面)について知りたいと思ったら、この本をオススメします。政治経済が苦手でも、新書なのでそんなに分厚い本でもないので、ゆっくりと読んでいけると思います。いい本が出ました。

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by halca-kaukana057 | 2017-12-06 23:17 | 本・読書

Im ~イム~ 8

 11月はツタンカーメン王墓発掘月間(4日が最初の階段を見つけた、26日に最後の壁に穴を開けて王墓の中に入った)のためか、BSプレミアムで古代エジプト関連番組が続いています。面白い。盛り上がっているところで、先日、エジプトではかなしい事件がありました…。かなしいです。
 そんなエジプトのことを思いながら、エジプトが舞台のファンタジー「イム」8巻です。発売から2~3ヶ月…まだ許容範囲のはずw6巻と7巻は一緒に感想を書いてしまい、まとまりに欠けたので今度は8巻だけで書きます。


Im ~イム~ 8
森下真/スクウェア・エニックス、ガンガンコミックス/2017

 エジプトにあるアメン神官団の本部内で、人々が次々とマガイ化し、アメン神官団は大混乱。アメン神官団本部の結界の中に入りこみ、イムと会っているジェゼル…アポフィスは本部内のマガイ化した人々と陽乃芽、どちらを選ぶか迫るが、イムはどちらも助ける、そしてアポフィスを倒してジェゼルを助けると言い切る。「お祓い箱」魔水晶を使ってマガイを回収するイム。それを見た本部の神官たちは、イムがあの大罪人のイムホテプだと気づき、イムを攻撃、罵る。そこへ助けに来たのは…。神官たちに必死に説明するイムだが…。
 一方、陽乃芽は、ハピに連れ去られ、アゥシルに捕らえられていた。アゥシルはオシリス家の嫡男。神官団の中心となる一族で、死を恐れない思想で危険視されている。アゥシルとハピは、かつて失敗した「セクメト計画」を陽乃芽を使って実行しようとしていた。抵抗する陽乃芽。そこにやって来たのは…。


 7巻のラストで、今の悪者になっているジェゼルはジェゼル本人ではなく、地獄にいる原初の邪神アポフィスに乗っ取られていることがわかりました。7巻、8巻と、これまでの謎、伏線が一気に回収されていくのでついていくのに大変です。読み応えあります。

 まず、イム側。これまでイムは大罪人とされながらも、人間性やその力などで晴吾たちから信頼され、友と認められるようになった。それまでには衝突や誤解もあった。日本からエジプトに戻ってきて、アメン神官団の本部では…最初からやり直し。やはりイムは大罪人のイムホテプで、神官たちからは危険視されている。神官たちから憎まれ、罵られ、石を投げられる…。そんなイムを助けたのは晴吾。イムの過去と現在を知っている晴吾。
「三千年前とは違うだろ もう失敗したくないんじゃねぇのか!?頼れよ!!!」(21,22ページ)
イムも、マガイ化のシステムと課題を理解。7巻で出てきたヘシレさんと同じく、マガイ化してしまった人たちを救いたい、守りたい。それが出来るのはイムの「お払い箱」だけ。神官たちは何をすべきか。それを神官たちに熱弁。ひとりでなんとかしようとしてパニックになっていたイムと、晴吾が来てからのイムの落ち着きが違う。イムは今も昔も大神官だけど、支える人がいてこその大神官なのだと(かつてはジェゼルがイムを支える立場だった)。

 一方の陽乃芽、アゥシル側。アゥシルは7巻で少し出てきていました。アメン神官団の中でも最高位の一族のひとつ、オシリス家の嫡男。ハピはアゥシルの部下。セクメトの力を使えるようになった陽乃芽を利用して、「セクメト計画」を実行しようとしていた。
 ここでやってきたのがラトさん、ユート君。2人はオシリス家の者であり、アゥシルの妹・弟。オシリス家と、アゥシルと、ラトさん、ユート君の過去が語られます。オシリス家の「伝統」に対して、疑問を持たず素直に育ったアゥシル。疑問を持ち出て行ったラト。オシリス家の本当の嫡男の印を授かったユート。アゥシルの葛藤、憎しみと、その反動。オシリス家のやり方、アゥシルのやり方には同意共感できないけど、アゥシルは置かれた環境、置かれた立場でやることをやって来たんだな…と切なくなります。
 アゥシルのやり方に対して、徹底的に反抗する陽乃芽ちゃんが男前。かっこいい。陽乃芽ちゃん、本当に強い子。

 8巻は、それぞれ全員が持てる力を振り絞って、誰かのために出来ることをしています。アヌビスも。あのかわいいアヌビスにこんな力があったなんて。アヌビスも神様なんだな、と。成長して、凛々しくなったアヌビスを想像するのはちょっと難しいですが…。

 イムも、力を使い…ここでハプニングが。イムが大変なことになってしまった。8巻、情報が多過ぎます…(面白いよ!)。一体何が起こったのかよくわからないまま、ラストも大変なことに…。イムがどうしてそうなった!?9巻はまた波乱が起きそう。イムがラストで言った通りになればよいのですが…。9巻を待ちます。

 最後に、アポフィス側。クレオパトラが復活してました。あまり登場しませんが、クレオパトラがアポフィスに聞いた言葉が気になりました。もしそうだとしたら…。何かの可能性も…。
 あと、コンスについての情報もまた増えました。コンスにフラグを立てないで…!!

Im ~イム~ 6・7
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by halca-kaukana057 | 2017-11-28 22:39 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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