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 今日の特印。
日本郵便:特殊切手「米国からのハナミズキ寄贈100周年」の発行

 1912年に日本から、アメリカへ桜が寄贈され、ワシントンD.C.に植えられました。そのお礼に、アメリカから1915年、ハナミズキが贈られました。それから100年。その記念の切手です。
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 シートの左側部分はアメリカと共通のデザイン。アメリカでも発行されます。今回の切手は、このシートのイラスト・デザインがとても気に入っています。美しい。もう1シート欲しくなります…。

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 桜とハナミズキ両方に特印を。今回の特印は16日木曜日までやってます(手押し印のみ)。桜の季節なので、季節のお便りにぴったりの切手でもあります。
by halca-kaukana057 | 2015-04-10 21:43 | 興味を持ったものいろいろ
 先日読んだ「ツタンカーメン発掘記」に関連して、古代エジプトのことをもう少し勉強してみようと思い、手に取った本。
・感想:ツタンカーメン発掘記


古代エジプトうんちく図鑑
芝崎めぐみ/バジリコ/2004

 古代エジプト文明・考古学の入門本。開いて驚いた。全て手書き(手描き)。イラストや漫画はもちろんのこと、文章も手書き。厚めの本で、これを全て手書きで書いてしまった…まずそこがすごい。

 ヘタウマ?でゆるいイラスト・漫画で、古代エジプト神話から遺跡の数々、エジプトを世界に紹介した古代から近現代までのエジプトロジストたち、著者の芝崎さんのエジプト旅行記、極めつけはファラオ140人全員集合!入門本と書きましたが、結構マニアックなところまでつっこんでいます。「はじめに」にもある通り、有名どころから読んでいくことも出来ます。参考文献も多いので、この次に読む古代エジプト関係読書ガイドにもなります。入門編からマニアックなところまで網羅しているのがすごい。

 古代エジプト…知っているようで知らないことが多過ぎる!というのが読んでの感想。
 まず、古代エジプト神話も、太陽神ラーやヌト神、トト神、オシリスにイシスにセト、ホルス、アヌビス…と名前とどんな神なのかは知っていても、物語としては知らない部分が多かった。改めて古代エジプト神話を読んでみて…とてもユーモラス。オシリス・イシス・ホルス親子とセトの戦いはキリがない。個性的で、おおらかで、ぶっ飛んでいるところもあり、面白い。矛盾していたりややこしいところもある。「何故そうなる!?」とツッコミたくなるところも多い。そこも魅力的。神々も様々。お気に入りの神様を見つけるのも楽しい。どこか、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」を思い起こさせるところもある。

 ちなみに、本の話からずれますが、宇宙好きとしては、このところ海外の探査機は古代エジプトに関しているものが多いと感じている。昨年、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着、着陸機を彗星の核に着陸させたヨーロッパの探査機「ロゼッタ」と着陸機「フィラエ」は古代エジプトのヒエログリフ解読の鍵となった遺跡にちなんでいるし、「はやぶさ2」のライバルとなるアメリカの小惑星探査機「オシリス・レックス」が向かう小惑星の名前は「ベンヌ」。フェニックスの原型となったと言われる鳥「ベヌウ」のことで、オシリスの心臓から生まれたという説もある。宇宙開発機関では古代エジプトブームなのか?(「ロゼッタ」が打ち上げられたのは10年前のことで…)

 エジプトロジストたちのお話も、笑いながら読めます。トップバッターからしてハワード・カーターだし(カーターを語れば、同時代、関わりのあったエジプトロジストが次々と登場するので便利でもある…?)、イタリア人のベルツォーニは豪快と言うか雑と言うか…でも次々と発掘、発見を続けていくのは一体…。ベルツォーニのパトロンだったイギリス人ヘンリー・ソールトがベルツォーニを妬み、それがますます不幸を呼び寄せてゆく…という話には、人生とは…と考えてしまった。ヒエログリフを解読したシャンポリオンの努力には感服。そのシャンポリオンのところで衝撃の事実。ロゼッタ・ストーンはヒエログリフ解読にあまり役に立っていなかったと…!!?ちゃんと勉強しないとわからないことって多い…。

 歴代ファラオ解説は、有名どころから初めて聞く名前までたくさん。有名なファラオでも、結構知らないことが多い。ここで、遺跡や王墓に関して読む時に、古代エジプト神話は切っても切れないのだなと思う。時代で変化もある。ファラオそのものについても面白いし、つくった神殿、発掘や研究の歴史も興味深く語られている。様々な説があり、謎が謎を呼び、それが古代エジプトの魅力なんだろうなと思う。
 興味を持ったのが、第21王朝のネコ2世。名前が可愛い。スエズ運河よりも2500年も前に、紅海とナイル川を繋ぐ運河の工事に着手し、フェニキア人の船乗りにアフリカ大陸を1周させたそう。
 この歴代ファラオ解説はかなりディープなことも書いていて、でも親しみやすい漫画やイラスト、著者のツッコミが面白くてどんどん読んで、また読み返して…古代エジプトのファラオも深い。

 古代エジプトは、天文学とのつながりも深い。本の最後のほうに天文学に関することも書いてあります。シリウスがナイル川の氾濫する時期、農耕を始める時期を報せる星だったのは有名ですね。天の川を天のナイル川と見ていたことも。ピラミッドがオリオン座と関係があるという説も有名ですが、スフィンクスも関係あるかもしれない、と。古代エジプトの頃は、ネオンも光害もなかった。どんな星空を、古代エジプトのファラオや人々は見ていたのだろう…。

 これを読んでいると、エジプトに行きたくなります。旅行記はトラブル・事件の連続。出会った人々も、商魂たくましい人もいれば、どう反応したらいいのかわからない人も…。エジプトは結構広い。治安の問題もある。それを乗り越えての遺跡の数々には、圧倒されるんだろうなぁ。

 この本、本当に面白いです。読んでいるうちにディープな古代エジプトの魅力にハマれます。本当に全部手書きは凄い。
by halca-kaukana057 | 2015-02-12 22:56 | 本・読書

ツタンカーメン発掘記

 この記事で、読むと書いた本。読みました。
思い出の"発掘" 山岸凉子「ツタンカーメン」再読

ツタンカーメン発掘記〈上〉 (ちくま学芸文庫)

ハワード・カーター:著/酒井伝六、熊田亨:訳/筑摩書房



ツタンカーメン発掘記〈下〉 (ちくま学芸文庫)

ハワード・カーター:著/酒井伝六、熊田亨:訳/筑摩書房



 ツタンカーメン王墓の発掘者・ハワード・カーターによる一次記録。学術論文を書く前の下書きとして、一般向けに出版された。元々は全3巻からなり、1巻(発掘後に王墓を調査した考古学者・アーサー・メイスと共著)を発掘の翌年の1923年、2巻を1926年、3巻を王墓の出土品の整理が終わった1932年に出版している。この後で学術報告書を書く予定が、書く前に1939年に亡くなってしまう。学術報告書を完成させる前に亡くなってしまったのは残念ですが、この本を読んで、これだけでも残っていてよかった!と感じました。以前図書館で単行本のほうを読んだ時は難しくて、途中でギブアップしてしまった。でも、今回はすらすらと、魅了されながら読み終えました。以前は何が難しかったんだろう?訳文が新しくなったのかな?(詳細は不明)

 本題に入る前に、もうひとりの発掘者であり、パトロンであるジョージ・ハーバート・カーナヴォン5代伯爵の生涯について、姉のレディ・バークレアによる「故ロード・カーナーヴォンの伝記的な素描」も収録されている。以前は日本語版では割愛されていた部分らしい。カーナーヴォン卿の波乱万丈な、冒険の数々が書かれていてとても面白いです。当時まだそれほど普及していなかった自動車を愛し、愛車でドライブしていたところ事故を起こし、何とか命は取り留める。しかしその事故で健康を害し、特にイギリスの寒い冬は呼吸器系に悪かった。そこで、避寒のために訪れたエジプトで古代遺跡に魅了され、発掘にも携わるようになり、それがカーターと出会い、ツタンカーメン王墓発掘につながったと思うと、人生何があるかわからない、と感じます。ただ、発掘の翌年、1923年4月5日、亡き人になってしまったのは本当に残念です…。

 古代エジプトの歴史、考古学・発掘の歴史の部分も興味深く、それを経て、ツタンカーメン王墓発掘の記録は、読んでいるだけでドキドキする。もう掘りつくしたと大方の考古学者が思っていた王家の谷。本当に掘りつくしたのか?発掘した後の土砂を積んであったところは盲点になっていないか?発掘しつくしたようで、し尽くしていなかった場所を調べ、丹念に掘った結果が出たのが1922年11月4日。そして11月26日。出てきた階段を掘り下げ、王の名が記された封印のある漆喰の壁に穴を開け、中を見たカーター。沈黙するカーターに「何か見えるかね(Can you see anything.)」と尋ねたカーナーヴォン卿に、「はい、素晴らしいものが(Yes.Wonderful Things.日記では「Yes.It is wonderful.」)」としか答えられなかったカーター。先に上述した漫画(山岸凉子「ツタンカーメン」)を読んで絵で観ているのですが、文章だけでもその興奮や、ほぼ未盗掘の、史上初の封印つきの墓と収められている品々の光景は想像できます。この部分は、カーターも興奮気味の文章で書いていて、最初に目にした者にしかわからない興奮なんだろうなと伝わってきます。

 王墓に収められた数々の品々。亡き王のために、あの世でも暮らしに不自由しないようにと収められた品々。そこから読み取れる、古代エジプトの王や人々の生活・暮らし、宗教観、美術観。どんな暮らしをして、どんなことを考え、何を美しいと思って生きていたのか。王はどのような存在だったのか。第3部(3巻)のタイトルが「墓は語る」となっているのですが、まさに墓が物語っている。写真は当時メトロポリタン美術館の写真家だったハリー・バートンによる白黒の画像で、今はカラーの画像があるけれども、当時のことをうかがえる。

 ただ、ツタンカーメンは古代エジプトが揺れ動いた真っ只中に王になり、それに巻き込まれてしまった。先代の王・アメンホテプ4世(イクナートン)が大規模な宗教改革・アマルナ改革を行い、多神教だった古代エジプトを一神教に変え、反感を買うことになった。ツタンカーメンの時代に元の多神教に戻すのだが、そのせいか、後の王名表から抹消されてしまう。また、18歳ごろと若くして亡くなったため、他の王に比べて小さな規模の墓になってしまった。そのため、盗掘(小規模なものはあった)を免れることはできた…皮肉なような、結果的にはよかったような。小規模なツタンカーメン王墓でも大量の品々があったのだから、もし、他の王墓も未盗掘だったなら、どれだけの考古学的遺産…人類の遺産が遺されていただろう…と思ってしまう。

 そのアマルナ改革の結果のひとつが、「アマルナ美術」。まだ勉強不足で詳しくは語れないのだが、それまでの芸術様式とは少し異なる写実的な様式。座っているツタンカーメン王に香油を塗ってあげている王妃・アンケセナーメンの姿が描かれている黄金の玉座がその代表。この玉座の絵はとても好きです。玉座も美しい。あと、アラバスター製の蓮型の祈願杯もお気に入り。それら美術に関する記述もある。カーターは元々画家として、遺跡の壁画や発掘された品々のスケッチをするために調査団の一員としてエジプトにやって来た。その後、古代エジプトに魅せられ、公的な教育は受けなかったものの実地で発掘やエジプト考古学を学んだ。そんな画家として、美術方面から発掘された品々について語っているのが面白い。バートンの写真もありましたが、カーターは緻密なスケッチも残し、現在それらはオックスフォード大学グリフィス研究所に保管されている。壊れやすい花輪や工芸品も、器用に工夫して保存した過程も記されています。美術方面の技術も活かした発掘だったからこそ、古代を語る貴重な品々が今も残っているのだなと思う。

 史上初の封印つきの王墓で、気になるのが王の棺。何重にもなっている厨子と棺を開ける作業の困難さには大変だったのだな…と。そして、意外だったのが、王のミイラが3000年も経ってしまったせいで保存状態が悪くなってしまっていたこと。埋葬の際、香油を大量に注いだため、樹脂となって固まってしまい、棺もミイラも固まってしまっていた。逆に、それまで盗掘され、ミイラだけは発見されたものの方が保存状態がよかった。なんという皮肉。あの有名な黄金のマスクも、ミイラから取り外すのにかなり苦労した。そんな苦労話も発掘者の言葉で読める。

 王墓の発掘には、数多くの考古学者が協力していました。漫画で出てきた考古学者たちが次々と出てきて、愛着があったのもすんなりと読めた理由かもしれない。特に、ヒエログリフの解読に協力したアラン・ガーディナーと、アメリカ人のジェームズ・H・ブレステッド。漫画ではブレステッドは息子のチャールズとともにカーターの親友として描かれていますが、実際はとても偉い考古学者。ブレステッドの著書が何度も引用されているのですが、それも読みたいと思ってしまった。だが、当地の図書館にはない…。大学図書館とかじゃないと無いだろうなぁ…。

 ということで(?)バートンによる写真や、カーターの記録や日記も保管しているグリフィス研究所のサイト。
The Griffith Institute:Tutankhamun
 英語ですが、画像も多いので見ていて飽きません。カーターの日記も、直筆のもののスキャン画像もあります。カーターだけでなく、ガーディナーやカーターをエジプトに連れて行ったパーシー・E・ニューベリー、カーターの恩師であるフリンダース・ピートリー他、エジプトロジストたちによる記録もたくさん。全然飽きません。
 しかも、このグリフィス研究所の公式ツイッターが、カーターの日記botになってますw公式です!w
Twitter:Howard Carter (@discoveringTut)
 その日の日記の内容をツイートしてくれます。もし、当時ツイッターがあって、カーターがツイートしていたらこんな感じなのかな?いや、発掘に専念したいのにメディアや野次馬、観光客の対応に狼狽していたカーターにはそんな余裕なしだな…それ以前に気難しく神経質な性格だったというし…。今だから出来ることですね。

 最近、ツタンカーメンに関してショックなニュースが。
産経ニュース:ポキリ! ツタンカーメン王「黄金マスク」のひげが折れる 修復もずさん エジプト
AFPBBNews:ツタンカーメンのあごひげが外れた!黄金のマスクに接着剤の痕
ロイター:ツタンカーメンの仮面からひげ脱落、博物館の粗悪修復が問題に
 なんてこった!問題は、ひげが取れたことではなく、その後接着剤でいい加減な修復をしてしまったこと。接着剤の痕が外から見てわかる状態であること。ひげの部分は元々取れていました。この「発掘記」にある画像、バートン撮影の写真でも、ひげはとれた状態です。カイロ博物館もとれた状態で展示していたのを、見た目がいいから、とつけた状態で展示をはじめ、今に至るのだそう。
 この接着剤の痕は、直せるようです。よかった…。
 ちょうどこの本を読んでいる時にこのニュースが入ってきて、驚きました。
by halca-kaukana057 | 2015-01-29 22:52 | 本・読書
 先日、NHKで放送されたこの番組。
NHK番組表(12月14日):「ダウントン・アビー」の舞台 ハイクレア城の秘密

 20世紀初頭のイギリスの伯爵家を舞台にしたドラマ「ダウントン・アビー」。気になってはいましたが観ておらず。この番組の放送の後の放送回を観てみました。

 今回の記事はドラマの話ではなく(紛らわしくてすみません)…その舞台となった「ハイクレア城」にまつわる話。この番組の予告を観て、「ハイクレア城」という名前に記憶がありました。どこかで聞いたことある。あれ、あれ…あ、もしかして…?そして、そのハイクレア城に住んでいる8代目カナーヴォン伯爵、ということろで、はっきりと思い出しました。
 カーナヴォン卿、ツタンカーメン王墓を発掘したひとりで、イギリス人考古学者・ハワード・カーターのパトロンの5代目ジョージ・ハーバート伯爵のことだ!!(番組内では「カナーヴォン」でしたが、一般的には「カーナヴォン」表記で普及していると思う、ああややこしい)とんでもないところでつながり、自分でも驚いていました。勿論番組はしっかりと観て、今もカナーヴォン伯爵家が続いていること、5代目伯爵のことを「曽祖父」と語る現8代目カナーヴォン伯爵とハイクレア城に残るツタンカーメンや古代エジプトの記録に興奮していました。すごいなぁ。ここにカーナヴォン卿が住んでいたのか…。

 と、何故こんな詳しいのか、思い入れがあるのか。この漫画が始まりでした。

ツタンカーメン (1) (潮漫画文庫)

山岸 凉子/潮出版社


 漫画界の巨匠・山岸凉子先生の作品「ツタンカーメン」。ちなみに、私も間違えていたのですが、山岸先生のお名前の「凉」は「にすい」。「さんずい」の「涼」ではないのですね。あと、「モーニング」で新連載が始まりましたね!読みました!この「ツタンカーメン」も歴史ものですが、新連載も歴史もの、読みます!

 話がずれましたwこの「ツタンカーメン」が、ハワード・カーターが主人公のツタンカーメン王墓発掘物語の漫画なのです。連載開始当時から読んでいました。ただ、その頃はタイトルは「封印」というタイトルで連載され、第1部が終わった後、待てども待てども第2部が始まらず…。数年後、本屋で単行本を見つけた時、掲載誌とタイトルが変わっていたことをようやく知りました。

 時は20世紀初頭。エジプト。考古局査察官で、発掘の現場監督もしているカーター。生真面目で正義感が強く、社交下手。絵が得意でその腕を買われ、17歳の時壁画を写し描きするためにエジプトに渡った。考古学も学び、発掘にも携わるようになる。そのカーターの前に事あるごとに現れる不思議な少年。紆余曲折ありながらも、カーターが巻き込まれるように、導かれるように、その瞬間に向かって時も人々も、カーターも動き出す。遺跡発掘にはお金も必要。そこへ、古代エジプトに魅せられ出資者となるカーナヴォン卿との出会い。アメリカ人で考古局の職員を現場監督に雇い(かつてカーターも一緒に発掘をしていた)「王家の谷」の発掘権を長年握っていたセオドア・デイビスがその発掘権を放棄。カーターとカーナヴォン卿の王家の谷発掘が始まる。
 その頃、王名表にも名前が無く、でもたまに王名のついたものが出土する"ツタンカーメン"という謎の王が考古学者たちを悩ませていた。まだ墓は見つかっていない。本当に存在したのか?何故王名表にも無い?もしかしたら、その"ツタンカーメン"の王墓はまだ見つかっていない…?しかも、"ツタンカーメン"は未盗掘の王墓かもしれない。当時、王墓を発掘しても既に盗掘され、金目のものは泥棒たちに奪われてしまっていた。カーターはその存在を信じ、粘り強く発掘を続ける。カーナヴォン卿が資金も尽きてきたので発掘をやめる、王家の谷発掘権を手放す、と言っても捨て身で説得し、あと1シーズンだけ、と続行を認めてくれた。
 その、発掘をやめると言われたカーターがカーナヴォン卿を説得しに向かったのが、邸宅のハイクレア城(作中では「ハイクリア城」と表記)。その他の場面でも出てきて、それで覚えていたのです。

 当時、連載を読んでいた10代の私は、この漫画で古代エジプトをはじめとする考古学に惹かれていきました。今思えば、史実は元にしているけれども、半分ぐらいフィクション入っている。第一カーターのキャラデザは史実と随分変えてある(後でツタンカーメン王墓発掘に関する本を読んだ時、史実のカーターの写真を見て全然違う!!と驚きました…w)、年齢も変えてある。それでも19世紀末から20世紀初頭のエジプト考古学の重鎮の学者たちも次々と出てくる。そして、作中でカーターが語る古代エジプト史、発掘と盗掘の歴史が活き活きと描かれ、魅了される。古代から既に始まっていた盗掘との闘いにはショックも受けました。歴史の勉強にもなる漫画です。
 また、カーターの周囲の人々も、皆いい味を出している。カーターにとって、カーナヴォン卿のほかに鍵となる人物が2人。カーナヴォン卿の愛娘のイーヴリンと、謎の少年に眼が似ているエジプト人の少年・カー。番組を観て、懐かしくなり再読したのですが、この2人とのエピソードがたまらなくグッと来ます。惹き込まれます。切ないです。イーヴリンとのエピソードは、前にも増して、切なく、やるせなく感じてしまったのは年齢のせいだろうか…。

 見事発掘しても、その後の方が大変というのもこの漫画で知りました。発掘したものの取り扱いと保存は最も重要。そのための資金も重要。しかも、発掘当時はエジプトの政治も変化していった時代(今もですね)。次々と困難が立ちはだかるも、精神的に強くなってゆくカーターの姿を応援したくなります。困難の中で、ひとつひとつ細かく記録し慎重に作業を進め、出てきたものから当時のことを紐解いてゆく。発掘の場面でも、ただ掘るのではなく、わずかな手がかりや観察して得られた考察を元に発掘してゆく。探偵の推理のよう(ちょうど「ホームズ」シリーズにハマっているので。どちらもイギリス人が活躍する話だ)。遺跡発掘の現実が興味深い。

 ハイクレア城が鍵となって、漫画を再読して、魅了された当時のことを思い出しました。私の思い出が発掘された気分です。と、同時に、大人になった今だから読み取れたことも沢山あるな、と感じました。私にとって、とても思い出深い作品です。

 この漫画を読んだからには、この本を読まねばなるまい。

ツタンカーメン発掘記〈上〉 (ちくま学芸文庫)

ハワード・カーター:著/酒井伝六、熊田亨:訳/筑摩書房


 カーター自身による記録。図書館で少しは読んだのですが、難しくて全部読んでいなかった。文庫化されていることを最近知り、もうこれは読むしかない。パラパラと読んでみたら、そんなにドラマティックな書き方はしていないのに、ワクワクしました。今ならきっと読めると思う。

【追記】読みました:ツタンカーメン発掘記
by halca-kaukana057 | 2014-12-30 23:13 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 15

 今年読んだ本は今年のうちに感想を書く…漫画2冊目。「ヴィンランド・サガ」15巻です。


ヴィンランド・サガ 15
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2014

 アイスランドに16年ぶりに帰って来たトルフィン。父・トールズの死から、その間のことを、母・ヘルガや姉・ユルヴァたち家族に語る。そして、戦争や奴隷制から逃げてきた人々が暮らせる国を、レイフがかつて語ってくれた"ヴィンランド"に築く、という志も。しかし、問題はトルフィンやエイナルたちは一文無しであること。国をつくるのには金が要る。どうするか…。トルフィンの生家の村から少し離れたところの農場主・ハーフダンなら貸してくれるかもしれない…が、トルフィンは幼い頃ハーフダンと会っていた。亡き父トールズとも面識がある。悪党として有名なハーフダンだが、トルフィンは会いに行くことにする。
 そのハーフダンの息子・シグルドは、結婚を控えていた。花嫁はグリーンランドの、レイフの親戚でもあるグズリーズ。しかし、グズリーズはこの結婚に気が向かなかった…。


 表紙のおさげの女の子…この子がグズリーズです。15巻はこのグズリーズが実質的なヒロインです。勿論トルフィンのヴィンランド行きの話も進みます。

 16年ぶりのアイスランド。登場人物たちは皆成長し、老い、時間の流れを感じさせる。ユルヴァの本格的な再登場が嬉しい。前巻14巻のユルヴァの登場はとてもインパクトがありました。お母さんになっても変わってないwユルヴァちゃん最強wと思ってしまいましたが、15巻では大人の女性として、家族を持つ母親としてのユルヴァの一面が。トルフィンを散髪するシーンの姉弟の会話は、お互い成長してはいますが、"姉弟(きょうだい)"なんだな、と感じます。そして、16年間、アイスランドを離れている間に起こったことを語り、"ヴィンランド"を目指すと告げる。16年も経っていたのか…。その間に起こったこと、トルフィンが経験したこと。本編では詳しく語ると紙面が足りなくなるので割愛されますが、これまでトルフィンが経験したことを回想しながら読むと、その話を聞いている家族たちの気持ちになれます。

 "ヴィンランド"を目指し、国をつくると決めたものの、現実問題が…資金。お金はいつの時代も大きな問題ですね。その資金を借りるために、目星をつけたのが、あのハーフダン。1巻で、奴隷を酷使し、逃げた奴隷を探してトールズ、トルフィンの家にやってきた、あの男です。金と暴力で全て解決しようとした、あの悪党。トールズはひるみませんでしたが。1巻を引っ張り出して読み返しました。絵柄も1巻と15巻では随分と変わったなぁ。何かと因縁をつけてくる。そのハーフダンも、16年後、年齢を重ねていました。相変わらず大農場を経営していますが、以前の奴隷の扱いと、今(15巻)での金を貸して返せなくなった農民への扱いは、ちょっと違います。ハーフダンにも変化が。そして、息子・ジグルドが結婚を控えている。ジグルドはかつての若い頃のハーフダン…というよりは、以前トルフィンとエイナルが奴隷として働いていたデンマークのケティル農場の次男坊・ノルマルを思い出します。強がりなワル。そのジグルドを言い諭す父・ハーフダン。ハーフダン、変わりました…。でも、"ヴィンランド"行きの資金を借りるのは、一筋縄ではいきません。

 1巻を読み返していて、ハーフダンの農場から逃げてきた奴隷を埋葬するシーンで、トルフィンがトールズに「ここからも逃げたい人は…どこに行くの?」(1巻、193ページ)と尋ねていた。トルフィンは、小さな頃から「逃げ場所」を意識してきたのか。

 15巻のヒロイン・グズリーズ。小さい頃からレイフの話を聞いて、船乗りになりたいと思ってきた。でも、女は船乗りになれない。結婚し、子どもを産み育て、家庭を守る。そんなこの時代の(いや、今でも変わっていない)典型的な女性の生き方に馴染めない。性格も男勝りで、思い切りがいい。親戚関係であるレイフには女は船乗りになれない!と反対されても言い返す。子どもの頃のグズリーズが、レイフからグリーンランドの外の世界について話を聞くシーンが印象的です。「世界」は広いのに…、"狭い"家庭におさまらなければならないこれからの自分。
あーあ
「世界は広い」なんて知らなきゃよかった
(158ページ)

 ふてくされるグズリーズのこの言葉、気持ち、わかります。世界は広いのに、可能性は無限に広がっているはずなのに、自分は狭いところから抜け出せない。できることだって少ない。何やっているんだろう…よく思います。「繋がれたアジサシ」がこの15巻の副題ですが、まさに「繋がれた」状態。

 ちなみに、ユルヴァもトールズ譲りの男勝りで力の強い女性ですが、今はその強さは家庭を守ることに使っている。母・ヘルガさん譲りですね。

 そのグズリーズと、ジグルドが結婚する意味。ハーフダンとレイフが親戚関係になるようにして、ハーフダンは何を考えているのか。ジグルドとグズリーズの結婚式の後、2人だけになった時に語られます。船乗りになることを諦め、「それぞれに与えられた役割を果たす」ことをやろう、と決心しますが…ラストシーン、言葉を失いました。何が起こったかわからなかった。グズリーズ…一体…!?

 一方、トルフィンたちは新たな冒険へ。"ヴィンランド"へ行くための資金稼ぎの大冒険です。命懸けではありますが、レイフのおじさん、冒険家の血が騒いでますねwトルフィンもエイナルもやる気十分。"ヴィンランド"へは大きな回り道に見えますが、どうなるのだろう。この大冒険、私も楽しみです。レイフさんは若くないので、どうかご無事で!

・14巻:ヴィンランド・サガ 14
by halca-kaukana057 | 2014-12-12 22:33 | 本・読書
 今日12月8日はシベリウスのお誕生日。1865年。今年で149年。来年はいよいよ生誕150年です。シベリウスは私にとって、最も(と言ってもいい)親しみ深い作曲家。7曲(プラス「クレルヴォ交響曲」)の交響曲、ヴァイオリン協奏曲、管弦楽曲や劇音楽。室内楽や合唱、ヴァイオリンやピアノ曲は交響曲とはまた違った面が伺えて、どんどん聴きたくなる。でも、シベリウスも結構多作で、まだまだ知らない曲、聴いたことのない曲があります。CDは持っているのに聴いてない曲も。今日はそんなCD持ってるのに、今まであまり聴いてこなかった作品を。

 シベリウスの作品で有名な作品と言えば?と聞かれたら、多くの人は交響詩「フィンランディア」op.26と答えると思います。フィンランドの作曲家・シベリウス。ロシアの統治下にあるフィンランドの独立を願って書かれたという、力強く、美しい作品。中間部の「フィンランディア讃歌」は合唱曲にもなり、フィンランド第二の国歌として親しまれています。フィンランド語で歌えるようになるんだ、いつかきっと。

 その「フィンランディア」は元々、「愛国記念劇」という歴史劇の音楽の7曲目から生まれたもの。元々の題名は「フィンランドは目覚める」というタイトルでした。その「愛国記念劇」の曲も残ってはいるのですが、あまり演奏されない。ただ、シベリウスは「フィンランディア」発表後、「愛国記念劇」の中から3曲を選んで編曲し再発表。それが、この記事で取り上げる組曲「歴史的情景」第1番op.25.

 3曲にはそれぞれタイトルが付いていて、第1曲「序曲風に(All'Overtura)」、第2曲「情景(Scena)」、第3曲「祝祭(Festivo)」。どれも聴いていてとても楽しい。「フィンランディア」よりも牧歌的。聴いていると、シベリウスは金管楽器を使うのがうまいなと思う。弦楽器も木管楽器もだけれども、ここぞというところで金管が出てくる。時には高らかに歌うように、時には厳かに、時には勇ましく。第2曲「情景」は木管で静かに始まるけど、この曲も金管がポイント。ファンファーレのように登場する。第3曲「祝祭」は明るく朗らかに、リズミカル。「祝祭」と言っても、どんちゃん騒ぎのお祭りにならないところはシベリウスらしい。「アンダンテ・フェスティーヴォ(邦題:祝祭アンダンテ)」にも通じてゆくのかな。カスタネットとタンバリンが出てくるのが面白い。シベリウスがカスタネットを使うのは珍しいんじゃないのか?

 シベリウス作品は交響曲第4番、第6番、第7番のような幽玄で独特の暗さも、澄んだ弦も魅力的。でも、こんな明るいシベリウス作品もある。お誕生日お祝いにはちょうどいい、と聴いています。こんないい曲があったんだなぁ。しかも、「フィンランディア」と元は同じだったとは。
 ちなみに、私が聴いたのは、ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ響。

 この「歴史的情景」、演奏会用の第2番もあるそうで。そちらも聴いてみたい。
by halca-kaukana057 | 2014-12-08 23:49 | 音楽

[コミック版]天地明察 7

 もう12月。今年読んでまだ感想を書いていない本の感想がたまっているので、今年中に書きたい。まずは漫画から。いつも感想が遅れる…。小説「天地明察」のコミカライズ、7巻です。

天地明察 7
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 改暦に向けて日々邁進する渋川春海(安井算哲)たち。その春海を支え、応援してきた妻・こと。元から身体が弱かったことが、病に倒れ、亡き人に。愛する妻を失い、お城での碁にも集中できない。さらに、北極出地で天測の旅を共にした伊藤重孝が危篤と知らされる。伊藤も帰らぬ人に。ことを救えず、伊藤との約束も間に合わず…無力に涙する春海。それから、春海は打ちひしがれたまま、暦の計算を黙々と続ける。そんな中、お城で道策との勝負碁が。勝負の前も暦のことで頭がいっぱいの春海に、道策は…

 原作ではあまり妻・こととのシーンが少なく、漫画では春海の天文の話をわからないけれども、春海が楽しそうに話しているのを優しい笑顔で一生懸命聞き、春海の改暦が成就するよう願っていた。春海も、身体の弱いことのことを心配し、家のある京都よりも江戸にいることの方が多いことを気にしていた。いい夫婦だったのに…。夫婦の仲むつまじいシーンが多かったからこそ、余計ことの死がショックです。原作を読んでわかってはいたけれども、それまでの描き方でも変わるのだな、と。
 更に、伊藤さんも…。春海にとって、学び続けること、精進し続けることを教えてくれた人のひとり。本当に残念です。

 一気に2人も大切な人を亡くしてしまい、打ちひしがれる春海。これまでは活き活きと、楽しそうに天測も暦の計算もしていたのに、31話では暦の計算をしていても、ただ機械的に計算しているだけ。目が死んだようです…。時間が無い、と。周囲の人々も心配するが、春海が感じているのはただ「後悔」。「間に合わなかった」…無念。

 改暦という世の中をひっくり返す大事業。春海がその主要人物に選ばれた理由のひとつが、若いから。何年、何十年かかるかわからない。長い事業では建部さんや伊藤さんのように途中で亡き人になってしまうことも少なくない。ましてや、現代よりも平均寿命の短い江戸時代。先日BSプレミアムで放送されていた映画「はやぶさ/HAYABUSA」でも、「はやぶさ」の飛行途中で亡くなってしまうプロジェクトのメンバーが(実話です)。その葬儀の席で、長いプロジェクトでは、メンバーが途中で亡くなってしまうことがある、とも語られました。現代も、江戸時代も変わりません。春海は専門家・プロではないが、天文学にも暦にも算術にも詳しく、お城で碁打ち衆として働き、帯刀はしているけれども武士ではない。暦に関係のある幅広い知識や、置かれている立場・そこから生まれる縁も、春海が改暦の中心人物として任命された理由ですが、もうひとつ、若さもある。でも、それは、春海よりも年上の改暦に関わっている人たちが、死ぬのを一番多く見る可能性もあるということ。春海、つらい立場です。

 そんな春海の目を覚ましたのは、やはり道策。道策が打った「天元」…北極星を意味し、不動の星、と以前春海は道策に教えた。春海も、道策も何も変わっていない。道策はいつでも真剣勝負。春海も同じ。碁でも、天測や算術、暦でも。真剣勝負だからこそ、面白い。道策らしいなぁ、と感じました。道策と春海のこの切磋琢磨する関係、いつまでも続いてほしい。

 もうひとつ、かなしい報せがあったものの、悲しみから立ち直った春海たちは、いよいよ宣明暦から授時暦への改暦へ動き出す。宣明暦に"挑戦状"をつきつける。日食と月食の予報が、どちらが当たるか勝負しようというもの。悲しみをバネに、更に大きな一歩を踏み出す春海。春海は先述したとおり、言ってしまえば”中途半端”な社会的立場にいる。だからこそ、社会的立場無しに、渋川春海として、改暦に取り組みたい。6巻で、改暦によって幕府と朝廷が対立するということが無いように。そう決心する32話のシーンが印象的です。

 久々に村瀬の塾を訪ねる春海。そこで再会したえんさん。色っぽくなりました…!嫁いだけれども、夫は死去。同じ悲しみを味わっている。そして、かつてのお互いのことを思い出し、語り合う。ことさんもいい奥さんだったけれども、えんさんも春海のことを理解してくれる存在。えんさんとの約束も増え、宣明暦への"勝負"が進む。授時暦の勝利が続く、が…。

 さて、また春海に試練が訪れる。どうなるのだろう。8巻も楽しみにしています!

・6巻:[コミック版]天地明察 6
by halca-kaukana057 | 2014-12-06 23:10 | 本・読書
 長らく積読にしてあった本をようやく読みました…。免疫学者の多田富雄先生のエッセイは、以前「生命の木の下で」を読みました。それ以来です。しかし、今回は、イタリア美術紀行…?

生命の木の下で


イタリアの旅から 科学者による美術紀行
多田富雄/新潮社・新潮文庫/2012
(単行本は1992年誠信書房)

 以前の「生命の木の下で」でも、多田先生の多才ぶり、読みたくなる文章に凄いなぁ、いいなぁと思ったのですが、この「イタリアの旅から」でも変わりません。20年以上イタリアに通い、各地の歴史的建築や美術館、教会や寺院、神殿、遺跡などを観て歩いてきた多田先生。普通の観光地の観光スポットだけで無く、ガイドブックにも載らないようなところにも足を運び、じっくりと観て、言葉にしている。そんな科学者の視点での記述もあれば、文章がとてもきれいで、詩的なところもある。この本を読んでいたのは夏のこと。地中海の青い空と青い海、燃えるような緑、太陽の明るさとからりとした暑さ、朗らかな歌でも聞こえてきそうなイタリアの町の様子、そして歴史を伝える建築や美術作品の数々…イタリアには行った事はないですし、イタリアにもあまり詳しくない。イタリア美術も高校の世界史程度の知識しかないのですが、楽しく読みました。

 読んでいると、歴史的建築や美術品があるイタリアの町そのものが、歴史を伝えているなと感じる。そして、それらの建築や絵画を生み出した芸術家たちについての解説も面白い。イタリアの歴史の中でどう生きたのか。その歴史は決して平坦なものではなく、血や涙が流れたものもある。それらを経て、その建築や美術品も町も今に残っているんだ…と思うとその重さ・長さがとてつもないものに感じられる。少し前に読んだ小説「時の旅人」(アリソン・アトリー)で描かれた、その場所が歴史を記憶していて、何らかの拍子でその過去に触れられてしまうような。

 各地の町の描写も面白い。治安は決してよいとは言えない。「キウソ(Chiuso)」、つまり「closed」があまりにも多い。シエスタの時間もちゃんとある。日本とは全然違う、地中海文化だなぁ…と思う。いや、日本人が規律正し過ぎる、真面目過ぎるのか…?だが、町の人々との会話では、そんなことも関係ないと思ってしまう。現地の空気が伝わってくる。旅先のお料理についてもちゃんと語られます。出てくるたびに「美味しそう…」と思ってしまった。

 イタリアにもギリシア神殿がある。古代ギリシア・ローマ文化には興味があるので、じっくりと読みました。エトルリアも。謎めいていて惹かれる。サルジニアとマラリアの関係も興味深かった。ここは免疫学がご専門の多田先生だからこそ。病気は人類の歴史の中で脅威となってきましたが、こんな場合もあるんだな…。

 多田先生は2010年に他界されましたが、たくさんの著書を遺されました。また読みます。
by halca-kaukana057 | 2014-09-14 22:39 | 本・読書
 昨年11月に再放送(初回放送は2013年7月6日)されたNHKオーディオドラマ「天空の道標(みちしるべ)」。
・その感想記事:いつの時代も星を見上げる、願いをかける NHKオーディオドラマ「天空の道標」
 この物語に関しての所感は、上記記事に詳しく書きました。

 このラジオドラマの原作が、プラネタリウム番組「戦場に輝くベガ」(制作:山梨県立科学館)。そのプラネタリウムを原作に、もうひとつ、小説も書かれていました。

月刊 星ナビ 2014年 07月号 [雑誌]

KADOKAWA


 天文雑誌「星ナビ」7月号で「戦場に輝くベガ」のことが取り上げられていて、この物語に更に興味をもちました(ただし、この小説やラジオ版の元になったプラネタリウム番組と、現在上映されているリニューアル版は少し違うようです)。
 しかし、私の近隣のプラネタリウムでは上映されそうもない。なので、小説版を読みました。

Facebook:戦場に輝くベガ~約束の星を見上げて
 プラネタリウム上映の最新情報はこちらで。FBアカウントが無くても見られます。


戦場に輝くベガ―約束の星を見上げて
鈴木一美、浅野ひろこ/一兎舎/2011

 山梨県甲府市。織井花音は、プラネタリウムの学芸員をしている。7月のある日、甲府市内で不発弾が見つかった。花音は現場の近くに住んでいる、祖父・勝の姉の久子を案じて家を訪ねる。久子は自宅で待機していた。花音は、久子が作った七夕飾りに、「ありがとう ベガ」という短冊を見つける。何のことかと考える花音。その時、不発弾のことを報じていたテレビから、その不発弾が1945年7月6日、甲府空襲「たなばた空襲」で投下された焼夷弾だという話が聞こえてきた。その話に、久子は空襲のことを思い出し、当時の惨禍をつぶやく。七夕の空襲、「ありがとう ベガ」の意味。久子は、戦時中のことを花音に語り始める…


 物語がラジオ版と大幅に違います。どちらが原作であるプラネタリウムに近いのか…?ラジオ版は50分の物語なのでコンパクトにまとまっていますが、小説版は久子と和夫の家や家族について、学校でのことについても詳しく書かれています。ひとつのプラネタリウム番組から、内容の異なる小説とラジオドラマが生まれる。この「戦場に輝くベガ」という物語(史実を元にしたフィクション)の広さ、深さを実感します。

 物語は大幅に異なりますが、物語の根幹となる部分は勿論変わりません。和夫は海軍で偵察員として爆撃機「銀河」に乗り、「天文航法」を用いて位置や航路を星を使った天測で割り出す任務にあたっていること。和夫を慕う久子は、学徒動員で海軍水路部で働き、偵察員の天測のデータとなる「高度方位暦」をつくる。和夫は出陣前、久子とともに見た夏の天の川の中のベガを、離れていても見つめていようと久子と誓う。和夫は訓練をしている基地や爆撃機の風防から、久子は東京から、「高度方位暦」でも出てきたベガを見つめ、お互いの無事を祈り、手紙をやりとりする。お互いの無事を祈り、戦争とは何かと心の中で問いながら…。

 小説では戦時中の日本の動きや出来事、情勢、戦争に対しての久子と和夫の想い・考え方、戦争に巻き込まれてゆく久子と和夫と2人の家族や友人知人、戦争の惨劇も詳細に描かれています。ラジオドラマでも聴きながら涙腺緩みっぱなしでしたが、小説も涙無しには読めない。戦争で明日はどうなるかわからない時代、星を見上げ、また天文航法や高度方位暦を爆撃のために使っていた時代があった。約70年前のこの日本で。過去に実際にあったこと。あと、物語に出てくる甲府空襲があったのは、1945年7月6日から7日にかけて。「たなばた空襲」とも呼ばれています。

 和夫からの最後の手紙から引用します。
明るく輝くベガは、君が計算してくれた方位暦とともに、いつも夜空の道しるべになってくれました。
 どうか君もベガを見上げてほしい。つらい時、迷った時、きっと道を示してくれることでしょう。
 どこにいても、どんな時でも、私は君の幸せを願っています。どうか幸せに、強く生きてください。
 ベガが、そしてすべての星が武器としてではなく、希望の光を人々にもたらすために輝ける日がくることを祈っています。
(207~20ページ)

 今、私は平和な(身の回りに戦禍は無い)世の中で、平和に星を観ている。ベガもアルタイルも、七夕となれば普段星を見上げない人も探そうとする(はず。探してほしい)。そして星に願いをかける。七夕でなくても、ふと見上げた星空に、疲れや緊張が解けたり、遠くにいる誰かを想ったり、自分を励ましたり、きれいだなと見とれたりする。星はその人の心を映すと思う。希望がほしいと思っている人には希望になる。約70年前も、久子も和夫もベガを希望の光として見ていた。しかし、その一方で、戦争のために使われていたのも事実。昨年ラジオドラマ版を聴いてから、ベガを見るとこの物語のことを思い出すのですが、小説版を読んで、その想いがますます強くなりました。
(このあたりの詳しい感想はラジオ版の記事で。)

 こうなるとプラネタリウムも観たいのだがな…。ちなみに、現在公開されているのは、今年リメイクされた新しいバージョンです。旧版とは変えているところがあるようです。この小説とラジオドラマは、旧版を元にしています。

 「星ナビ」での記事、そしてこの小説版を読んで思ったのは、実際に「銀河」に乗って出撃した方、高度方位暦をつくっていた方の体験の記憶、証言、資料があったからこそ、この物語が生まれたということ。悲惨な過去を思い出したくない、親しい人を亡くして複雑な想いを抱きながらも語り、プラネタリウムを観た方も。久子と和夫はフィクションの人物だが、爆撃機「銀河」も実在したし、その爆撃機を誘導するための高度方位暦も実在した(もちろん、天文航法=戦争というわけではありません。ラジオ版の記事でも書きましたが、今は平和利用されているものも元々は軍事目的で生まれたものがある。それをどう使うか)。次の世代のために、と語ってくださった方々がいることを、忘れてはならないと強く思いました。

 昨晩、晴れていたのでラジオドラマ版を聴きながらベガを見上げていました。
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 今日は雲で見えませんが、ベガは変わらず、明るく輝いていることでしょう。晴れたら、またベガを見ます。
by halca-kaukana057 | 2014-07-07 22:23 | 本・読書

[コミック版]天地明察 6

 いつも楽しみに読んでいるのに、感想が遅くなる…。小説「天地明察」のコミック版。6巻です。


天地明察 6
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 渋川春海(安井算哲)たちの会津での改暦事業が始まった。最初は慣れず忙しく指揮を執っていたが、安斎や安藤たちの支えで平常心を取り戻し、天測に打ち込む。ひと月ほど後、会津肥後守・保科正之から「改暦による世の影響を考察せよ」との指標が立てられた。良い影響、悪い影響を話し合う春海たち。改暦の影響がいかに大きいかを思い知る春海だが、ある考えを思いつく。
 一方、お城での安井家と本因坊家の争碁も始まっていた。江戸に戻った春海は、知哲と道策による争碁に同席する。その後、久々に再会した春海と道策。久しぶりに勝負をする2人。春海は無意識に、あの「初手天元」を打ってしまう。


 原作を読んだ時も、今使っている暦(カレンダー)が変わったらどんなことになるだろうと考えたのですが、漫画でも考えてしまいました。ましてや、この時代は月日と曜日を知るためだけのものではない。しかもこの改暦は幕命によるもの。帝が執り行う儀礼を、幕府のものにしてしまうことになる。暦には縁起のいい方角についても書いてあり、人々の生活への影響も大きい。さらに幕府が定めた暦に従うことになるという、政治統制。幕府への反発、それによって起こりうる戦…。32ページからの、春海がひとり月を見上げて考え込むシーンに、グッと引き込まれました。天文が好きで、天文への憧れ、天文の理だけを純粋に追い求めてきた春海。それなのに、その天文・暦が、人の命や国の行く末をも巻き込むことになるかもしれない…。そんなことは望んでいないのに…思い悩む春海の強い願いをかみ締めつつ読みました。そんな中で、考えぬいたひとつの案。春海、本当に強くなった。それなのに、その結果が…。それでも、諦めない春海たち。いつかきっと改暦の日が来ると信じて。

 江戸に戻ってからの春海も、改暦に向けて一歩一歩歩んでいる。81ページ、膨大な資料を前に、妻・ことに「楽しいから!」と言い切る春海がとても好きです。改暦そのものも、改暦による影響も、とてつもなく大変なことは分かっている。でも、やっぱり天文は楽しい。天文が好きで、天の理を知りたくて、まだまだ進む道がある。そして、改暦も天文も、春海ひとりだけのものではない。北極出地の旅をともにした亡き建部様、伊藤様に「頼まれた」こと。ひとつ、実現しました。建部様のことを思うと…胸が熱くなります。

 天文の一方で、碁打ちでも大きな動きが。安井家と本因坊家の争碁が始まった。相変わらず天文・暦ばかりの春海に怒る道策。春海にとって天文・暦は春海ひとりだけのものではなく、様々な人の想いも託されている。その人々の想いを叶えたい。だからここまで来れた。…ならば、碁では、道策の想いも。道策は身なりも、碁も、立派に強くなりました。これまで私は春海の視点からこの漫画を読んでいたので、碁だけをやらない、天文・算術・暦なんて!と憤る道策の気持ちが、一途で一生懸命だがどこか滑稽なものに見えていました。しかし、今回の春海と道策の勝負を見て、道策の強さに魅了されました。碁のことはよくわかりません。ルールも何もわかりません。でも、2人の真剣勝負、道策の予想外の手にドキドキしました。

 春海の改暦・天文への真剣勝負も、これからが山場です。第28幕で、陰陽師の土御門泰福(つちみかど・やすとみ)も登場しました。今後の登場が楽しみです。

 原作にはないシーンがたくさん。物語がもっと深く、面白くなっている。えびし先生の絵も好きだ。いい漫画化だなぁ。物語はまだまだこれから。ずっと読みますよ。

・前巻:[コミック版]天地明察 5
by halca-kaukana057 | 2014-06-01 22:07 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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