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海とドリトル 3

 また発売からしばらく経っての感想になってしまった…。


海とドリトル 3
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2015

 戌飼と付き合い始めた七海。それでも烏丸研での研究の日々は続いていく。新しい事務員の川名、インドからの留学生サティシュ(通称:王子)を迎え、七海も卒論に向けて動き出す。戌飼が七海と付き合っていることを知った万里子は、ショックを受けつつも、密かにある行動に出る。
 そんな烏丸研も学祭で出店することになる。七海の提案でイカの姿焼きを売ることに。川名の厳しい予算制限を何とか乗り越え、出店は無事成功。その打ち上げの席で、七海は川名と話し、川名と烏丸の過去を知る…。


 戌飼さんと付き合い始めた七海が初々しい。でも、恋愛と研究は別。七海は七海の、戌飼は戌飼の研究を続ける。そんな2人を見る万里子…
「わたしは戌飼さんの将来を思うからこそ立ち止まってたのに」(24ページ)
「でもよく考えれば大体あんな2人が続くわけないじゃんか ばからし」(25ページ)
「あの子が戌飼さんの将来をダメにしようとするのなら わたしは―」(34ページ)

 怖いです。万里子さん怖いです。やっぱり戌飼さんのことが好きで、未練持ってたんじゃないですか。でも、万里子さんは、「研究と恋愛は両立しない」と考えるタイプ。戌飼さんが将来有望な研究者だからこそ、研究者としての成功を願っている。そのためには自分の恋心は隠し打ち明けず、他の誰か…七海のことですが、恋愛という研究者にとって縛り付けるものを持ち込む人は邪魔者でしかない。排除させようとする。好きだからこそ、自分は手を引く万里子の気持ちはわからないでもない。でもやっぱり怖い。このシーンの後に、七海の烏丸研での初めてのゼミのプレゼンに対して、容赦なくダメ出し、批判をする万里子さん…七海の発表が未熟、不十分であるのは確かなのですが、それ以上の何かも感じずにはいられませんでした。深読みですかね?

 研究者の世界の厳しさは、これまでも何度も出てきました。その厳しさを新たに語る人…事務員の川名さん。2巻のラストで出てきた眼鏡の女の子です。事務員なので研究には直接は関わっては来ないのですが、烏丸先生と関係のある人物でした。烏丸先生は川名さんのお父様の研究室の後輩。川名さんのお父様はポスドクのまま、研究者を辞めてしまった。一方の烏丸先生は、川名さんのお父様よりも先に准教授になり…。川名さんのお父様と烏丸先生のやりとりの回想がとても辛い。そして、同じ研究者だった烏丸先生の元奥様も…。川名さんの言葉が七海に突き刺さります。やはり、研究と恋愛・結婚は両立できないものなのか。研究者の世界はこんなにも厳しいものなのか。七海自身も研究者を続けていけるのか。そう思い詰める七海への、戌飼さんの言葉も、現実をしっかりと捉えている、頼もしい言葉に感じられました。まずは目の前の研究。

 七海の実家の金沢へ戌飼と帰省し、動物園でイヌワシを見る犬飼さんはやはり研究者です。そして、ついに…。万里子の手回しで、戌飼さんにイギリスの研究室行きの話が。戌飼にとっては願ってもない機会。しかし、七海のことが…。戌飼さんに打ち明けられ、研究室に座り込んでいた七海にウミガメの例えで研究者としての成長を語る烏丸先生は、優しくも強い。川名さんのお父様のことを思うと苦しくなるが、烏丸先生が厳しい研究者の世界を生き抜いてここまで来ることのできた理由がわかる気がします。

 犬飼も旅立ち、万里子は以前から言っていた研究者としての情熱がなくなったと研究を辞め(この次の行動が何とも…何のつもりだ…?万里子さんの言ってた「計画」の全容って何なんだ…!?やっぱり万里子さん怖い)、七海は研究者としてどうありたいのか。ふとしたきっかけでクジラのバイオロギングと烏丸研に出会い、途中で編入し、七海は他の人よりも研究者としての月日は短い。それでも、七海は海洋生物に魅了されている。161ページ、3巻ラストで烏丸先生が七海にかけた言葉に、私も少し光が見えた気がしました。
 14話「死に至る病」、15話「深く潜ったペンギンは光を見たか?」この2話のタイトルがとても好きです。厳しい自然の中で生きる生物たちに、何かを教えられているような、何かを考えずにはいられないような、そんな気持ちになる3巻でした。

 4巻で完結とのこと。どうなるのだろう。

・前巻2巻:海とドリトル 2
by halca-kaukana057 | 2015-11-12 22:42 | 本・読書

Im ~イム~ 2

 3巻が出るまでは少し余裕があるようなので、2巻はゆっくりと感想を…。


Im ~イム~ 2
森下真/スクエア・エニックス・ガンガンコミックス/2015

 マガイを探してイムと陽乃芽がやってきた神社「御空神社」。そこで出会った少年・竜。竜がマガイに襲われそうになった時、イムよりも先にマガイを倒したのは、御空晴吾(みそら・はるご)という青年。イムを敵対視し、倒そうとする。陽乃芽とアヌビスの助けで戦闘を止めさせ、晴吾は御空神社で起こったこと、何故イムを恨んでいるのかを語る。そして後に、イムも「大罪人」と呼ばれている理由を話す。それは、3千年前、エジプトでのことだった…。

 1巻のラストでどうなるかと思いましたが、休戦になってよかった。イムが何故「大罪人」と呼ばれているのか、一体3千年前のエジプトで神官だったイムが何をしたのか。晴吾は何故イムを倒そうとするのか。それぞれの想いが交錯して、過去編はとても切なかった。

 晴吾が言っていた「アメン神官団」…古代エジプト神話・宗教では、大気の守護神。ただ、古代エジプトの神々の中では新しい方。中王国時代からの古代エジプトの首都・テーベ(現在のルクソール)にあるカルナック大神殿に奉られている。しかし、イム…イムホテプが活躍したのは古王国時代、ピラミッドは初期の階段ピラミッドの時代。アメン神信仰は新王国時代が最盛期。有名なツタンカーメンも、厳密な名前はトゥト・アンク・アメン(Tut-ankh-amen)と、アメン神に由来しています。この頃、アメン神官団も活躍します。先日読んだ「ツタンカーメン 少年王の謎」(河合望:著)にも出てきます。なので、実際には、イムホテプの時代にはアメン神官団はありません…が創作なので細かいことは気にしない。

 晴吾との戦闘シーンは息をのむ。イムも様々な手を使って攻撃するが、晴吾も強い。イムへの攻撃を容赦しない晴吾に立ち向かい、イムを守ろうとする陽乃芽が勇敢で、優しくて強い。
貴方なんにも知らないでしょ!?イムの罪だけ知ってて イムって人間(ヒト)は知らないでしょ!?
貴方の悲しみとは比べ物にならないけど イムは私を孤独から救ってくれたの!!
その恩人を傷つけられたら 守ろうとするのは当然でしょ!?
(41ページ)

 1巻の感想で書くのを忘れたのですが、1話で最後は自分で始末する、とマガイのもととなっていた箱を自分の手で壊した陽乃芽もとても勇敢でかっこよかった。2巻でも陽乃芽はかっこいい。イムにどんな過去があっても受け止め理解する。過去は過去。何と言われようとイムは自分を救ってくれた恩人で友達。気の強い性格もあるけれども、長い間孤独で、人間関係のドロドロした部分を見てきたからこその視点なのかもしれない。

 晴吾の過去もかなり辛い。その晴吾に対して、心から詫びるイム。普段は強気で偉そうな態度ですが、他者の痛みは素直に、真摯に受け止め、謝罪すべき時は謝罪する。だてに神官をやっていたわけではない。大人な部分のイムもかっこいいです。

 この漫画に出てくるキャラクタたちはそれぞれ、傷と痛み、孤独を抱えている。イムも、陽乃芽も、アヌビスも、晴吾も。こぶしや竜もそう。彼らの傷や痛みは、誰よりも軽いとか比べられるものではない。そんな孤独を経験したからこそ、人を一面から見ないことや、友情をより強く感じられるのだろう。この漫画のこんなところが好きです。熱く、あたたかい。

 そして語られるイムの過去。「大罪人」の理由。ここで新キャラが2人。アメン神官団上位神官のコンス。イムが復活した時の身柄引受人でもある。王子様のようなキャラクタです。俺様なところがユーモラスですが、シリアスに語る時は語る。そして人をよく見ています。

 もうひとりは、ジェゼル王子。史実では古王国時代のファラオで、彼のピラミッドは古代エジプト初のピラミッド(階段ピラミッド。史実のイムホテプが設計した)。ですが、思い切り創作入ってます。思う存分割り切って創作を入れたほうが物語が面白い。
 そのジェゼル王子とイム。後にファラオになるであろう王子と、神官のイム。明るく情の深い王子は、国民のことを思い、イムを宰相にして一緒に王家と神官団が手を取り合い国民を守る国造りをしたい…そう願っていた。しかし、ジェゼル王子は自分も知らないある運命を背負っていた。それを知っていたイム。王子がそれを避けられるように尽力するが…最悪の事態、悲劇が起こってしまう…。読んでいてとても辛かった。ジェゼル王子がファラオになれば、きっといい国になるのに。クールだったイムも、明るく楽天的で優しいジェゼル王子の人柄に触れ、友情を深めていく。友達だからこそ助けたい。陽乃芽のイムに対する思いと重なります。それなのに…。イムは大変なことを起こしてしまう。イムが、というよりは、イムの周囲がイムを焦らせてしまった…。イムもかなりの魔力を持った神官だが、未熟なところがあった。本当に辛い。友達を守るつもりが裏目に出てしまうなんて…。
 ジェゼル王子もいい王子です。王子でも偉ぶったりしない。国民に対してとても優しい、頼りになる。だからこそ、ジェゼル王子があんな運命を背負ってしまったのが辛い。

 もうひとつ、この漫画は何かの犠牲の上に何かは成り立っている、ということもテーマなのかな。何の犠牲もない世の中はないと思うのですが、それでも、あまりにもこの犠牲は辛い…。

 その後、封印されてしまったイムとジェゼル王子。3巻ではイムがエジプトへ?ジェゼル王子はどうなる?3巻は来年発売予定。楽しみにしてます。

 巻末には、連載前の読み切り版の「イム」も収録されています。イムの雰囲気がかなり違う!これはこれでかっこいい。読み切り版はもう1作あるそうなのですが、そっちも読みたいです、是非。

・1巻感想:Im ~イム~ 1
・アメン神官団・史実の話はこちらで:ツタンカーメン 少年王の謎
by halca-kaukana057 | 2015-10-14 22:36 | 本・読書

[コミック版]天地明察 8

 感想を書こう書こうと思ってなかなか書けず…ようやく書きます。

天地明察 8
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2015

 宣明暦から授時暦への改暦へ、勝負を挑んだ渋川春海(安井算哲)。日食、月食の予報をどちらが当てるか外すか。最後の食の予報を外してしまい、授時暦への改暦はなくなってしまう。絶望の淵に突き落とされる春海。道策との勝負碁にも負け、道策の天才的な後の才能・力を認める一方で、自分は天文も暦も碁も中途半端だとますます落ち込んでしまう。星や日の観測にも意味を見出せなくなった時、えんが春海のもとにやって来る。塾に来るように、関孝和が春海に出題していたことを教えに。塾でその問題を見た春海は、かつて自分が関に出題した「病題」と同じ、問題そのものが間違っている問題だと気付く。何故そんな問題を今自分に出題したのか…春海は関に会う決心をする…。

 8巻、最後の前の最大の山場…
 ついに関孝和登場です!!
 その前に、改暦・授時暦側の春海の敗北、絶望…前巻7巻では妻・ことを亡くしてしまい、追い討ちをかけるように改暦失敗。このあたりは原作小説を読んだ時もとても辛かった。碁でも道策は目指す新しい碁をつくりあげるべく研鑽し、勝負碁でも勝ち続けている。一方のは春海は…。

 渋川春海のすごいところは、本業は碁打ち、算術や天文、天文観測、暦に関してはアマチュアなのに、どれもプロ以上の知識や技術を持ち、それらを組み合わせて改暦に挑むところ。いい意味でジェネラリストで、その強みを存分に発揮する。あと、多くの人々から信頼され、精進すること、研鑽を続けることを怠らないところも。でも、それは裏返すと弱点にもなる。広く手を出してもどれも中途半端。何も為せずに終わってしまう危険性もある。春海はその葛藤をずっと続けてきたが、多くの人々が春海のことを認め、信頼し、改暦による新しい時代のはじまりの希望を春海に託し、春海もそれで自信をつけてきた。それが、改暦失敗で何もかも崩れてしまった。春海の失望の様が、漫画だとさらに強く伝わってきます。

 そして、関孝和登場!どんなキャラデザで描かれるかな?と楽しみにしていました。イメージ通りです。初めて顔を合わせる2人。春海に怒りをぶつける関。春海を「盗人」と怒鳴る関ですが、何の「盗人」だったっけ…と原作小説を再読しました。原作小説では、改暦のために春海たちがたくさんの算術家たちが見出した術理を駆使して計算する…という内容が説明されているのですが、漫画では少しだけしか書かれていなかったので「あれ?」と思ったのでした。あと、春海の内面よりも、関の怒りのほうに注目してしまう。小説だと関に怒鳴られている春海の心の中も細かく描写できますが、漫画だと関の怒りの強さを表現するために春海の内面の描写は少なくなっている。これは小説と漫画の表現の違いで仕方がない。

 漫画で読んで、小説を再読して、関孝和という人は本当にすごい人だな…と思う。道策と同じように天才なんだけれども、道策とはまた違う雰囲気。関はひとりで授時暦を研究し、考察した。同じように授時暦を研究していた春海たちとは違う視点で。ただ、関はひとりだった。算術、数理に関しても天才過ぎて、孤独。碁打ちの家系に生まれ碁打ちであるべきなのに、算術や天文に興味を示し、本業よりも改暦に人生を捧げることになった春海の孤独。
この人は孤独だっただろう…
天才故に理解もされず その鋭さ故に収まる場を持たず
流浪する思いで一人で生きてきたのだろう
(80~81ページ)

 春海のことを理解していたからこそ、改暦に失敗した怒りは大きなものだった。あの怒りには悔しさも含んでいたのだろう。そして、関による授時暦の研究・考察も「託された」春海。受け取った春海の思いと覚悟、言葉、表情に引き込まれました。やっぱり、春海にしかできない。春海はやっぱりすごい。

 再び改暦へ歩みだした春海。「士気凛然、勇気百倍」絶望から一気に這い上がった春海のこの言葉、大好きです。そしてえんさんへの求婚。えんさん、本当に美人で聡明で、強くて、しっかりしていて…素敵な女性です。ここで、「安井」姓から「保井」に改姓します。道策が相変わらずですw道策、本当にいいキャラですw

 えんさんと婚礼を挙げ、一緒に星空を見上げながら、天文を熱っぽく語る春海…かつて同じようにことさんにも語っていた。ことさんも、えんさんも、春海が天文について熱弁するのを微笑んで聞いている…哀しい別れもあったけど、春海はいい奥さんに恵まれたなぁ。ことさんとも、えんさんとも、いい夫婦です。
 また、春海も齢をとった。顔が老いてゆく描写もいいです。

 また活き活きと天文を学び、目指すところが見えた春海。関とも親しくなり、その新たな目指す暦について語り合うシーンが好きです。建部さん…!春海の口から「精進せよ精進せよ」の言葉が…涙腺攻撃まともにくらいました…。

 さぁ、物語はクライマックス。次の9巻が最終巻です。冬発売の予定。終わっちゃうのが寂しいですが、待っています。春海が最後に見るものを、見たいです。

・7巻感想:[コミック版]天地明察 7
・6巻感想:[コミック版]天地明察 6
by halca-kaukana057 | 2015-10-02 23:50 | 本・読書

宇宙兄弟 26

 読んだ本、漫画の感想を今日も書きます。今日はこれ。

宇宙兄弟 26
小山宙哉/講談社・モーニングKC/2015

 六太たち「ジョーカーズ」の乗ったアレスⅠロケットは無事打ち上げ成功。オリオン宇宙船の飛行も順調、月への旅が始まった。せりかと絵名もいるISSとランデヴーし、着陸船「オクトパス」とドッキング。六太は月への飛行の間、宇宙での暮らしや無重力を紹介するビデオレター「週刊六太」を始める。そして月が近づいてきた時、六太に緊急の連絡が。シャロンが自力で呼吸できなくなり、人工呼吸器をつけることになった、と…。


 ムッタ、ついに宇宙にやってきました!!喜んで大はしゃぎの「ジョーカーズ」のクルーたち。特にフィリップは超ハイテンションで大騒ぎwそんなムッタに一通のメールが。ちゃんと打ち上げを見ていたんだ…!じわっと来ました。

 徐々に地球から離れ、地球の丸みがわかる距離になるあたりも胸が熱くなります。現実では、アポロ計画以来、有人の宇宙飛行は地球周回軌道だけ。現実に、再び人類が月を目指す時が来るのか、どうなのか…と思ってしまいます。
 そんな中で始めた「週刊六太」。人類が再び月を目指す時代になっても、宇宙での暮らしや無重力では物体の動きはどうなるのか、気になるのかなと思いました。今よりは宇宙は身近になっているだろうけど、やっぱり疑問には思うだろうし、地球周回軌道と月へ向かうあたりでは違いもあるはず。いつの時代も、宇宙は不思議でいっぱい、興味津々です。

 そしていよいよ月が近づいてきたところで、シャロンに異変が。ついに自力で呼吸が出来ない、人工呼吸器をつけることになった。その手術の日は、「ジョーカーズ」が月に着陸する日。その着陸で起こったトラブル。手術中、シャロンの希望で着陸の中継をBGMとして流している。夢の中のシャロンが"見た"ムッタの姿が印象的。緊急事態にビンスさんたちNASAも焦りを隠せない…。そんな中、ムッタがとった行動がすごい。手に汗握るシーンでした。本当にムッタはやってくれます。

 月面での第一歩…日々人の大ジャンプを思い出しますが、ムッタはどう来る…こう来たか!!wムッタ父のコメントが的確過ぎて笑えますwそして26巻でも、ムッタ父からのメッセージがいい。本当にムッタ父はかっこいいと思えました。

 27巻の予告が最後に書いてあるのですが…27巻、今度は何が起きるんだ…?とても心配です…。

・25巻感想:宇宙兄弟 25
by halca-kaukana057 | 2015-09-19 22:43 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 16

 読んだ漫画の感想が全然進まない…溜まる一方…そんなに多くは読んで無いのに…。ひとつひとつ。まずは「ヴィンランド・サガ」16巻。表紙、トルフィンが赤ん坊にごはんを食べさせている…!?真剣だけど優しそうなトルフィンの表情に成長と心境の変化を感じるとともに、一体何があったのか…!?と思ってしまいました。


ヴィンランド・サガ 16
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2015

 結婚式の夜、花嫁のグズリーズは花婿のシグルドを無意識に刺し、逃げた。一方、ギリシアに向けて出航の準備をしていたトルフィンたち。グズリーズに気付き、話を聞く。やっぱり船乗りになりたい、生き方を自分で選びたい。そう言うグズリーズを、トルフィンは一緒に行こうと誘う。レイフたちの了承も得て、すぐに出航。シグルドはトルフィンたちがギリシアに向かったことを知り、船を出し追う。海を渡り数日後、北海のシェトランド諸島の島に立ち寄ると、人々が襲われていた。トルフィンは島の家の中で、赤ん坊を抱いた母親に出会う…


 15巻のラストが大変なことで終わってしまい、続きが気になっていました。
みんなが……当たり前にできることが できなきゃいけないことが……っ できない……
(15ページ)

このグズリーズの言葉に、とても共感しました。私も皆が当たり前に出来るようなことが出来ない…と悩み、悔しい思いをすることがよくあります。グズリーズが普通にお嫁に行って、妻となり母となり家庭におさまることができないと涙する…11世紀なら尚更です。でも、21世紀も変わらない…「普通」から外れれば、変に見られる。トルフィンみたいな人がいたら、どんなに気が楽になるだろう。トルフィンも苦しんで、「普通」から外れて、ようやくここまでたどり着いたのですが…。

 トルフィンは、ノルドの戦士の生き方から外れ、剣や戦のない社会を望んでいる。それは、父・トールズも同じだった。しかし、トルフィンが幼い頃に見たトールズの最期、トールズも結局最期まで剣は持っていた、捨てられなかったという話にドキリとした。アシェラッドを相手に、剣を抜いた…。ギリシアまでの旅路で、人を傷つけるかもしれない。そんな心配をしているトルフィンと、話を聞くエイナル。エイナルがとても頼もしい。トルフィンも強いけど、エイナルも精神的に強くなった。2人の友情にじんわり。

 その後立ち寄った島で、一族同士の争いに巻き込まれ、息絶える間際の母親から赤ん坊・カルリを託されたトルフィン。旅に新しい仲間が増えましたが…赤ちゃんの世話の仕方を誰一人知らない…。11世紀は育児は女性・母親の仕事。レイフおじさんも知らない。勿論トルフィンも知らない。グズリーズも…。悪戦苦闘しつつもお世話する様はユーモラスです。
 その一方で、家族を殺されてしまったカルリが、大きくなってからそのことを知ったら、その対立していた一族に復讐する義務がノルドの男にはある…という話は辛い。復讐をしなければ臆病者として社会から外される。人を殺したら復讐されるというルールがあるから社会は保たれている…ノルドの現実を語るトルフィンの表情が、とても重いです…。しかも、これが結構重要な話で…。

 しかし、トルフィンたちはただギリシア目指して旅をしているのではない。シグルドから逃げなければいけないという使命もある。本当に大変な旅です。

 海を渡り、ノルウェーのベルゲンに到着した一行。ベルゲンと聞いて、作曲家・グリーグの故郷だ!と反応してしまったw(勿論、時代は全然違います)グリーンランドやアイスランドでは少ない森林に驚くグズリーズ…そうだなぁ…確かに…。
 そこで出会ったもの…まずは熊。久々にトルフィンの戦闘シーンを見ました。やっぱり強い…。そしてもうひとり、女性の狩人・ヒルド。物静かな女性ですが…過去を語り始め…なんてこった!!ラストシーン、一体これはどうなるの!?17巻、17巻早く読みたいです!!気になります!!

・前巻感想:ヴィンランド・サガ 15
by halca-kaukana057 | 2015-09-10 22:07 | 本・読書

山羊座の友人

 今回も普段は滅多に読まない少年誌から。ネットの「ジャンプ+」で連載された漫画です。偶然「ジャンプ+」を読んだら、タイトルが気になって(私も山羊座なので)読んだら面白かった。単行本化して嬉しいです。元々は小説が原作の漫画です。


山羊座の友人
原作:乙一/漫画:ミヨカワ将/集英社・ジャンプコミックス/2015

 高校生の松田ユウヤの部屋は強い風がいつも当たってきていて、ベランダには様々なものが飛んでくる。その中に、1ヵ月後の日付の新聞記事の切れ端があった。学校では、ユウヤは平穏に過ごしているが、若槻ナオトという同級生の男子が、金城アキラという不良に目をつけられ、いじめられていた。気にはしていたが、見て見ぬ振り、何もしないでいた。そんなある夜、家に帰る途中のユウヤは声をかけられる。声の主は若槻ナオト。手には血のついたバットを持っていた。金城アキラを殺した、というのだ。これから逃げるという若槻を、ユウヤは引き止める。部屋に匿い、更に一緒に東京に逃げることにした。ベランダに飛んできた1ヵ月後の日付の新聞記事には、高校生が殺害された事件で事情聴取を受けていた高校生が自殺した、と書いてあった。若槻を助けたい。そう思うユウヤだったが…。

 この漫画の感想をいつ書こうか迷っていました。先日、いじめが原因で高校生が自殺したのは本当に痛ましい。この漫画でもいじめのシーンは容赦なく描かれています。読むのが辛い。でも、惹き込まれた。ユウヤの部屋の不思議なベランダ。未来の新聞。ユウヤと若槻の逃避行。ユウヤの姉の夫は刑事で、若槻が語る事件の詳細に疑問を抱いたユウヤは逃げながらも、姉に捜査のことを聞いてみる。ユウヤが導いた結論。若槻の選択。そして…。最後はまさかの展開でした。ユウヤがなかなか賢い。鋭い。

 タイトルの「山羊座」。若槻が山羊座生まれで、ヤギに関する雑学に詳しい。身代わりに人々の罪を背負う山羊。若槻がスケープゴートの話をする…。この物語の鍵です。

 ユウヤから見て、自分と同じ普通の高校生の若槻。その若槻が殺人を犯したとは思えない。そして、ベランダに飛んできた未来の新聞記事が本当なら、若槻が自殺するのを阻止したい。自首しようとする若槻を、その日付までは自首させまいとするユウヤ。それまでは友達でもなかった2人。でも、ユウヤはいじめに対して何も行動できなかったから、今度こそは助けたいと思う。一方の若槻は淡々と、でも心には何かを押し込んでいる。感情をあまり表現しないからこそ、若槻君の感情を想像できる。

 ユウヤの周りの同級生にはもうひとり、本庄ノゾミという女子生徒がいる。ユウヤのベランダのことを知っていて、若槻へのいじめについて先生に相談をしていた。真面目で、なかなか賢そうな眼鏡っ娘。ユウヤのベランダに飛んでくるものに興味を持っている。逃避行中は勿論出てこないのですが…。

 最初は、ただ物語の発端になる新聞記事が飛んでくる、ということのためにこのベランダがあるのかなとおもっていたのですが、それ以上の意味があった…それがわかる最後がとてもかなしかった。とにかく、この漫画は最後まで読まないとわからない。

 感想を詳しく書きたいのですが、この作品はネタバレしたくない。是非最後まで読んで欲しい。ということで詳しく書けない…もどかしい…!

 ちなみに、原作は乙一さんの同名小説。原作小説も読んでみようと検索したのですが、ない。単行本・文庫化されていない。雑誌に掲載されたものらしいのですが、その雑誌も何年も前のもので入手困難。単行本・文庫化しましょうよ…。漫画の単行本が出ると決まった時、もしかしたら小説も一緒に出るのかなと思ったら違った。一緒に出してくれたらよかったのに。漫画は原作そのままなのか変えているのかわかりませんが、原作も読みたいです。
by halca-kaukana057 | 2015-08-16 21:35 | 本・読書

Im ~イム~ 1

 新しく読む漫画が増えました。いつものペースだと2巻が出てしまうので、その前に感想書きます。


Im ~イム~ 1
森下 真/スクウェア・エニックス・ガンガンコミックス/2015

 高校1年の羽羽方陽乃芽(はわかた・ひのめ)は、家は代々続くオカルト蒐集家、昔から呪われている一族と噂され、人々に避けられていた。特に陽乃芽は8年前口から火を噴いて倒れたと噂され、陽乃芽は8年の間声を出せず、関わると呪われると噂されていた。入学した高校でもひとりぼっちの陽乃芽。そんな陽乃芽の前に突然、不思議な少年が現れる。わけのわからないことを話し、町の人々に追われていたその少年を家に連れ帰った陽乃芽。"イムホテプ"と名乗るその少年…古代エジプトの大神官で後に神とあがめられた存在。イムホテプは瞬時に陽乃芽は偽物の神「マガイ」に憑かれ呪われていると見抜く。イムホテプの力で一時的に声を取り戻した陽乃芽。しかし、陽乃芽に憑いているマガイを倒さねば陽乃芽の呪いは解けない。イムホテプは陽乃芽の部屋で、マガイの元凶となっているあるものを見つける…。


 古代エジプト神話がモチーフになっている漫画と聞いて読んでみました。少年漫画、アクションものはこれまであまり読んだことのないジャンル。でも、すんなりと読めました。主人公のイムホテプですが、カバーを外した表紙にも史実の解説が書かれています。古王国時代、第3王朝のジェセル王(今後出てくる模様)の宰相。古代エジプト最初のピラミッドはこのジェセル王の階段ピラミッドで、設計をしたのはイムホテプ。内科医でもあった。この漫画のイムホテプは、その史実のイムホテプとはちょっと違う感じになっています。
 しかし、古代エジプトでも初期の第3王朝。解説にも書いてあるのですが、ツタンカーメン王(第18王朝)とは1300年ほど離れている。ツタンカーメンの時代を現代だとすると、イムホテプの時代は奈良時代、という例えがわかりやすい。確かに。古代エジプトの歴史は本当に壮大、長い。考えるだけでクラクラしてきます…(でも好きw)

 話を漫画のイムホテプ(通称:イム)に戻して、現代日本に甦りやって来たイム。偶然出会った陽乃芽は、偽物の神マガイに憑かれていた。イムが現代に甦ったのは、マガイを祓うため。独りぼっちの陽乃芽が、心の拠りどころとしたあるもの。独りぼっちの陽乃芽にとって、現実世界は辛い場所でしかない。それよりも自分だけの拠りどころがあればいい。そんな陽乃芽の心を読み取り、「貴様は人と向き合うのが怖いだけだろう?弱虫め」(31ページ)と厳しいけれどもその通りのことを言うイム。見た目は少年だが、大神官だからかなり賢く、人生経験はあるのだろう。

 この漫画には、陽乃芽だけでなく、心の奥底に他者とは分かり合えないと思い込み、自己を追い詰める孤独や弱さ、罪悪感を抱えた人が登場する。陽乃芽に拒絶されつつも友達になりたいと近づいてきたクラスメイトの白花こぶし。何かと恐ろしい噂のある「御空神社」にお参りに来た少年・竜。人の目を気にしすぎてしまうこぶし。とても危険なこと、恐ろしいことが起こるかもしれないが、すがれるもの、希望を託せるものがそれしかない竜。そんな弱さを持つ心の内を理解しようとするのは陽乃芽にしかできないことだな、と。

 特に竜が抱えていたものは重かった。時に人は、それがネガティヴ、負の結果をもたらすものだとわかっていても、それを生きる支えとしてしまうことがある。悪循環で成り立っている人生。それを変えようとするのはとても難しい。でも、負の連鎖を生み抜け出せなくなるものを支えにしているのはやはりよくない。陽乃芽にとっても、竜にとっても。

 そんな人の弱さにつけこむマガイ。イムとマガイのバトルシーンは迫力があります。だが、イムも何かを抱えている…?落ちこぼれの見習いで、一人前の神になるためにイムの元で修行をすることになったアヌビス(アヌビス神が三頭身…可愛い…!)や、最後に登場した男が、イムを「大罪人」と言う。過去に何があったのか。それは2巻で明かされる、か?(単行本派なので最新話は読んでません)これから面白くなってきそうです。最後に出てきた男にイムが話しかけていた言葉は、古王国時代ではなかったよなぁ。このあたりも創作ですね。でも、実際の古代エジプトの神々をモデルにしているマガイや、こんな用語も調べていけば古代エジプトに詳しくなれるかも。漫画はこういう気軽なところから入れて面白い。

 2巻は9月発売予定。来月ですよ。少年漫画のペースは早いですね…。

 最後に。陽乃芽の姓・「羽羽方」の由来はこれ(の著者)ですよね?すぐにわかりました。気が強く、徐々に心を開き始める、ツインテールの陽乃芽ちゃん、可愛いです。こういうキャラ好きですw
 となると、最後に出てきた男には名前の由来はいるのか?ちょっとわからない…。
by halca-kaukana057 | 2015-08-10 23:35 | 本・読書

星の案内人 3

 今度は買って読んでから時間が経たないうちに感想を書こうと思います。天文・プラネタリウム・星見漫画「星の案内人」第3巻です。


星の案内人 3
上村五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2015

 "おじいさん"の私設プラネタリウム「小宇宙」。「小宇宙」の常連のトキオは、ある日学校で「ヴァイオリンを弾けるって本当?」と噂になる。トキオは人前ではヴァイオリンを弾けなくなっていたので、噂されても困る。トキオがヴァイオリンを弾くことを知っていて、学校で噂になる…言ったのはコータだ。そう思ったトキオがいつものように「小宇宙」に行くと、コータがいた。更に、「小宇宙」にはいつものように常連の人々が集まって盛り上がっている…コータにイライラしていたトキオは、「ここはプラネタリウムで飲み食いするところじゃない!!」と言い、出て行ってしまう。ひとりになったトキオは、初めて「小宇宙」に来た時のことを思い出す…。

 3巻はトキオ君がメインです。1巻、最初の頃は、「小宇宙」にいるのはおじいさんとトキオだけだった。それが、何らかのきっかけで偶然訪れ、おじいさんのプラネタリウムに魅せられ、今のように賑やかな「小宇宙」になった。おじいさんとトキオ、「小宇宙」とトキオがどう出会ったのか、過去のお話がついに語られます。両親と離れ、フミおばさんの家で暮らすようになったトキオ。ヴァイオリンも弾けなくなり、失意の中にいたトキオが、ある日いつもと違う道を歩いて、「小宇宙」にたどり着いた。おじいさんに出会い、プラネタリウムを見せてもらい、宇宙の話を聞く。それから、「小宇宙」に通うようになったが、トキオ以外に誰も来ない。その後、人々が集うようになった。おじいさんとトキオだけの「小宇宙」でも、人々が集うようになった「小宇宙」でも、トキオが願うことは同じ…。

 「小宇宙」に集う人々は、自分のことも考えているけれども、それ以上に他者のことを考えている。心の奥に何かを抱えていて、日々もがき、生きづらさを感じている。それは、人を思う優しさを持っているからじゃないだろうか。あのやさぐれ小説家の志村さんも(志村さんについては後ほどまた)。心に傷を抱えているからこそ、人の痛みも優しさもより強く感じられる。ただ、時々素直になれないだけ。トキオも、コータも。この15・16話で、ちっぽけだったトキオの新たな"宇宙"が生まれ、始まった。「宇宙」という言葉の由来は、空間と時間両方の広がりを意味している(ざっくり過ぎる解説ですみません…話すとかなり長くなります…もっと詳しく知りたい方は、資料はありますので検索してみてください)。そういえば、音楽も、空間と時間に関係しているような。

 あと、2巻も読み返してみて気がつきました。トキオやフミおばさんは「ヴァイオリン」と、おじいさんやコータたちは「バイオリン」と話し、表記されている。音楽や楽器に対しての考え方やとらえ方がこの一言でわかってしまう。凄い…書き分けている…!!感激しました。あと、トキオやコータが通う田舎の学校では、ヴァイオリンなんて珍しい楽器。特別視されるのも無理はない。トキオ君のヴァイオリン演奏はかなりの腕前だったと伺えます。何を弾いていたのだろう?やはりバッハか。ベートーヴェンも弾いてそう。

 17・18話では、瀬尾さんがかつて勤めていた会社の後輩・小野崎さんが登場。これまたかなりのひねくれ者…やっぱり、色々と抱えているのですが…。ひねくれ者と言えば、志村さん。志村さんの指摘が鋭い。一方で、おじいさんも小野崎さんに対して、おじいさんのやり方で迫ります。おじいさん、一癖二癖ある「小宇宙」に集う人々を何だかんだ言って説得させてしまう…一番のツワモノです…。
 太陽系の微妙なバランス。木星の"役割"。ちょうど今、日没後の西の空に木星が見えていますが、木星がもし無かったら、あの木星が違う動きをしていたら…と思うと恐ろしくなります。太陽系であれ、銀河や銀河団、宇宙全体をどんな力がどう作用していて、今のこの宇宙が成り立っているのか。そこまで考えてしまいます。本当に宇宙は壮大です。だからこそ惹かれます。

 19話は、2巻の13・14話で登場した犬のクロと、クロと仲が良かった少女・ナノハちゃん、そして行方不明になっていたクロとナノハちゃんをクロの家まで送っていった瀬尾さんの友人・千田さんのお話。14話ではさらっと取り上げられていた部分に、こんな物語があったとは。
 この19話のタイトルが「スーパームーン」…。これ、天文用語じゃない…。最近ネットで取り上げられるようになった言葉…おじいさんよく知っていたなぁ…。でも読んでみると、「スーパームーン」という言葉だけ借りて、あとは天文から外れてない。問題ない、よかった。同じ満月でも、月の楕円軌道の地球に近い点(近地点)と遠い点(遠地点)での大きさと明るさは異なっている。それを、ナノハちゃんから見た千田さんに当てはめた。地球から見える月のように。ナノハちゃんと千田さんは今後も出てくるはず。ナノハちゃん、がんばれ!

 さて、トキオ君にとって、寄り添ってくれる存在だったけど、今は辛い存在であるヴァイオリン。15・16話でトキオ君の新しい「宇宙」が始まりましたが、20・21話でついに…。新しい「宇宙」が始まっても、星が生まれるまでは時間がかかる。生みの苦しみを味わうトキオ。そんなトキオに志村さんの言葉が突き刺さるけれども的を得ている。
(トキオ)ぼくはどうせ何をやったってだめなんだ。
(志村)今のそのトキオ君は何をやったってダメだね
いっぱいになったコップに水を注ぐにはどうしたらいいと思う
というよりそんなコップ大事にする価値ある?壊しちゃえばいいと思わない?
(144ページ)

 トキオにとってのいっぱい水が入っているコップ…かつての「ヴァイオリンを演奏していたトキオ」に戻ろうとするのではなく、新しい星が生まれたトキオへ。"生まれ変わった"トキオの表情がとても清々しい!一方の「小宇宙」。トキオやコータの担任の先生と、校長先生。校長先生も、若き日の失敗から、新しい「宇宙」が始まり、星が生まれた。いっぱい水が入っているコップを壊し、新しいコップを手に入れた。

 思えば、新しい星が生まれるためには、超新星爆発を起こした星の残骸の塵やガスが再び重力によって集まり、新たな星雲となり星が生まれる。何かが始まるためには、何かが終わる必要がある。トキオも校長先生も、心の中で終わりを告げた星の残骸から、新しい星が生まれ、再び輝きだしているのだろう。この3巻で一番印象に残っている部分。私も、かつての自分、いっぱい水が入っているコップにこだわっている。こだわりながら、新しい何かを探してつかもうとしている。これじゃ何もつかめない、生まれないな。読んでいてようやくわかった気がする。
 
 世界各地の星にまつわる神話や伝承は、星空をよく見ていた古来の人々の観察眼から生まれたものだとわかる。この漫画は、星にまつわる神話や伝承を、ギリシアだけでない世界各地のものから、そして様々な視点から取り上げていて、作者さんはよく勉強されているんだなとわかる。その上で、人間の物語にも当てはめてくる。星空には、人間の生き様が、心が映る。

 21話のラストは涙腺緩みます。新しい一歩を踏み出したトキオ。さぁ、どこへ行こう。これからが楽しみです。

 おまけ漫画も面白い。本編ではほとんど出番が無かったフミおばさんが…。そして、ギリシア神話のゼウスの見方も変わりました。小野崎さんはまた出てくるかな。志村さんとのひねくれ者対決がこれからどう進むのか、気になります。

・2巻感想:星の案内人 2
 最初はオムニバスのような感じだったのに、すっかり「物語」になっているのが感慨深いです。
by halca-kaukana057 | 2015-07-10 22:37 | 本・読書
 このブログでも今まで何度か取り上げたことがある、占いライターの石井ゆかりさん。HPでの毎年、毎週の星占い、ツイッターでの毎日の星占いはついつい読んでしまいます。一般的な星占いと違って、曖昧なんだけれどもそれが逆にイメージをかきたてる。様々なとらえ方が出来る。人々が占いに求めるであろうラッキーとアンラッキー、幸運と不運、幸せと不幸…そんな二元論で語られない文章が好きです。

 石井さんが出した「3年の星占い 2015-2017」という本のプロローグには、短い小説のような文章が載っています。それを12人の漫画家さんたちがそれぞれイメージを膨らませて、漫画化したのがこの本です(ちなみに、石井さんとは何の打ち合わせなども無く、漫画家さんたちがそれぞれ自由に描いたとのこと)。
WAVE出版公式サイト:石井ゆかり12星座シリーズ:3年の星占い
 ↑特設サイト。各星座のプロローグの解説もあります。


星の恋物語
石井ゆかり:原作/
山田デイジー、谷川史子、日坂水柯、天乃咲哉、海野つなみ、稚野鳥子、種村有菜、糸井のぞ、ウラモトユウコ、志村貴子、藤原薫、天堂 きりん:漫画
/幻冬舎・バーズコミックススペシャル/2015

 「3年の星占い」は、山羊座のため、山羊座のしか読んでいません。なので、まず志村貴子さんの山羊座の物語「秘密」から読みました。「3年の星占い」のプロローグでも、過去と現在と未来、そして「秘密」とは何かということが短い物語になって書かれています。「3年の星占い」の方では、主人公は男性のように私は読めたのですが、漫画では女性になっている。そして、「秘密」の内容も掘り下げている。その主人公が抱える「秘密」にドキリとした。「秘密」にどう向き合うか…。隠し続け、向き合うのが怖くもあり、でも向きあってみた過去。誰にも言えない「秘密」に向き合った最後の部分「あれはわたしのラブレターだったのか 抗議だったのか」(154ページ)その気持ちがわかる、と思った。この漫画で、「3年の星占い」の元の物語もさらに深まったように読めた。

 他の星座は「3年の星占い」の元の物語を読んでいないので、漫画だけ。12人の漫画家さんそれぞれの個性がこの1冊の漫画で一気に味わえる。舞台も現代だったり、どこか遠い国のファンタジーの世界だったり。双子座の「こわいひと」は日坂水柯さん。「数学ガール」コミカライズの方だ!と独特の絵を見てすぐにわかった。漫画も、最初は女性が主人公なのかと思いきや、男性が主人公の視点でも読める。凄い。どの作品でも、石井さんの占いのように「これが幸せ、これが不幸」と決め付けてないのが面白い。この漫画のあとがきに、石井さんはこう書いている。
日々は「いいこと」「わるいこと」という枠組みにはまりきらない、もっとたくさんの色のもので溢れています。(中略)明日という日が「いい日」でも「悪い日」でもない、「かけがえのない大切な日」だということに気づいて頂けるだろうと思いました。
(181ページ)

 舞台や主人公たちの設定が変わっても、この12の漫画では、皆それぞれその日、その時を懸命に生きている。その中で、様々なことがある。学業や仕事で色々あったり、誰かと出会ったり、話したり。皆それぞれの強さ、たくましさ、優しさ、ひたむきさがあっていいなと思った。どんな日でも、「かけがえのない大切な日」と生きていけたら、と思う。

 ちなみに、12の漫画はどれも好きなとこが合って選べないのですが、特に好きな作品を選ぶなら、牡牛座、双子座、蟹座、蠍座、射手座、魚座かな(選んでも多い。山羊座は自分の星座なので別です)。

【過去関連記事】
星をさがす
都会の星
 これまで読んだ石井ゆかりさんの本。

[コミック版]数学ガール 上
[コミック版]数学ガール 下
 双子座の漫画を描いた日坂水柯による漫画「数学ガール」。「数学ガール」シリーズの原作は第3作まで読んだが、その後読めてない…。読むのにかなり時間がかかるので敬遠してしまっています…。
by halca-kaukana057 | 2015-06-26 22:22 | 本・読書

ReLIFE 3

 ちょっとしたきっかけで読み始めた漫画「ReLIFE」。無料漫画アプリ「COMICO」で絶賛連載中。アプリでも読めますが、単行本から入った私は単行本でも読んでいます。
・1・2巻感想:ReLIFE 1・2

ReLIFE 3
夜宵草(やらいそう)/泰文堂・アーススターコミックス/2015

 学業・成績も敵わず、学級委員になれず、話してみても侮辱されているとしか思えず、とうとう我慢が出来なくなってしまった…玲奈は千鶴が廊下に置いていた千鶴の鞄を奪ってしまう。階段でその玲奈と出くわした新太。新太は玲奈が持っている鞄が千鶴のものだと気付く。「日代さんのものじゃ…」と新太が言いかけると、玲奈は階段を大急ぎで下りて逃げようとする。止めようとする新太。新太の手を振り払おうとする玲奈は、バランスを失って階段から落ちそうになり、新太も一緒に階段から落ちてしまう。落ちて倒れている2人を発見した千鶴。2人は気を失い、保健室に運ばれる。目が覚めた新太は、玲奈の行動から、辞めた会社で働いていた時のことを思い返す。そして玲奈も目を覚まし、新太は再び玲奈に千鶴の鞄のことについて尋ねると…。

 2巻の最後の部分もあらすじに書いておかないと話が繋がらないので、書いておきました…。あと、「ReLIFE」を読んだことが無く、この感想で初めて知る方もいらっしゃると思うので書いておくと、主人公の海崎新太は、実際は27歳。会社をとある理由で3ヶ月で辞め、それ以来無職→コンビニでアルバイトの生活をしていたところへ、「リライフ研究所」の夜明了(よあけ・りょう)と名乗る男から薬を手渡される。夜明は新太の過去を全て知っている。「リライフ研究所」ではニートを社会復帰させる実験を行っており、その研究所で開発した薬を飲むと見た目10歳程若返る。そして高校生として、1年間高校生活を送る実験の被験者になってほしいと頼まれる。新太は実験に協力することを決意。高校生として1年間を送ることになった…といういきさつ。詳しくは1・2巻感想、漫画本編をどうぞ。

 1・2巻では、成績優秀だが人と関わるのが大の苦手で友達もいないクラスメイトの日代千鶴、同じくクラスメイトで学業もバレー部の部活も一生懸命だけれども報われずネガティヴな感情を心の中に押し込めてしまっている狩生玲奈と新太がメインで描かれています。2巻で玲奈の精神面がとても心配だったのですが、ついに限界に来てしまった…。2巻で千鶴と玲奈のすれ違いを察していた新太ですが、千鶴の鞄を持っていたことで、玲奈が何をしようとしているのか、何を考えているのかをすぐに察知…やっぱり新太は周りのことをよく見ていて、人の心の動きに敏感で、優しくて、困っていたら何とかしたいとすぐ行動する、コミュニケーション能力高い。元の27歳の頃も、辞めた会社で働いていた頃も。辞めた会社では様々な人間に出会ったからこそ、更に人の心の動きにも敏感で、玲奈の行動もすぐに見抜けたのかな。大人、27歳の視点。

 その玲奈が、保健室で新太に鞄のことと心の奥底にあることを打ち明ける。逃げるな、と自分の行動と心と向き合わせようとする新太は、17歳の姿ではあるけれども27歳だ。
人を貶そうとする行為は結局は自分を貶す
(20ページ)

 この言葉、そしてここからの新太の言葉がグッと来ました。私も「自分なんて…」と自分自身を卑下して、他者と比べてしまい、僻み妬んで、ネガティヴモードに陥るとその人を貶したくなる。そんなことしても、自分の評価が上がるわけでもないのに。逆に自分を更に下げてしまう。
 一方、この新太の言葉(説教?)を聞いて、「何がわかるのよ!!」「なんであたしだけがうまくいかないの!?」と感情を爆発させてしまう玲奈の気持ちもよくわかる。頑張っても、頑張ってもうまくいかない。報われない。皆うまくやっているのに、自分だけ置いてけぼりで…結局また他者と比べてしまうわけですが…。この玲奈の心からの悲痛な叫びを受け止め、なだめる新太が優しい。結果が出ないからといって意味がないわけじゃない。「人と比べた順位だけが結果じゃない」(27ページ)そう信じたい。

 帰ろうとする新太を待っていた千鶴。2巻で千鶴と玲奈の心がすれ違っていたことを気にかけ、何とかしたいと夜明に相談するも、「石をどけたキレイな道を歩かせてあげることが 果たして本当に本人のためになるのか」と言われてしまった新太。その言葉を思い出し、千鶴と玲奈を対峙させることに。そして、新太の後に学校から出てきた玲奈を待っていた千鶴。一対一で本音を言い合う2人。そして、解けたある誤解。お互いの心がすれ違っていたことも、ようやくお互いに理解。千鶴も、他者と関わるのが苦手で、人の気持ちに鈍感であることを自覚している。そんな自分を変えたい。千鶴が玲奈に差し出した手…本音で、心の奥底からぶつかり合わないと手に入れられないものがある。本音で心の奥底から他者とぶつかり合うことを、大人になってからすることが少なくなったなと読んでいて感じました。私も千鶴ほどではありませんが、人と関わること、友達をつくることが苦手で、まさに高校生の頃、人間関係で悩んでいました。千鶴や玲奈のように本音を言うこともありましたが、相手は受け取らず…。大学になってからは部活で、いい意味で本音でぶつかり合うことが多く、最初は慣れず自分の殻に篭ろうとしていましたが、特に同期とは何度も何度も本音でぶつかり合い、手を差し出し取り合えた。この漫画を読んでいると、新太のように高校生にはなれなくても、その頃のことを思い返して、今大事にするものは何か、と考えます。

 玲奈に説教(?)した新太。しかし、新太も実際は他者と比べて結果にこだわり、頑張ることを諦めてフリーター(夜明からはニート呼ばわり)になった新太…自分自身への言葉でもあります。千鶴と玲奈の件がひと段落した後、現実は甘くないのにキレイ事を言ってしまっただろうか、と自分の発言を振り返る新太に夜明が言った言葉がこれまた印象的です。
確かにキレイ事だったかもしれません
でも嘘じゃない
思ってもいない言葉を上辺で並べるのがキレイ事かなと思います
そうじゃなく本心の願いから出た言葉なんだからいいじゃないですか?
汚い社会を見てきた海崎さんだからこその言葉だなぁと僕は感心しましたけど
確かに社会は甘くないのが現実だと思います
でも人を貶した奴らが上に上がれるようなそんな現実
正しくは無いですよね
(83~84ページ)

 本当にそうであってほしいと思う。

 後半はゴールデンウィーク。学校が休みで、ぐうたら生活をしている新太の部屋に、大神と杏が。追試続きの新太と杏のために、大神が勉強を見てあげるという約束が…。前回の感想で書き忘れたのですが、及第点をとるまで追試…つまり何度でもやり直すことができる。追試にうんざりしていた新太に夜明がそう言うのですが、新太本人が気付くべきだ、言い過ぎた…と後悔してしまう。夜明にとって新太は2人目の担当する被験者。1人目の回想が時々出てくるのですが、夜明も色々と抱えています。

 一方で、楽観的、カラッとした性格で、何を考えているのかよくわからないと思われている杏。新太と同じ編入生。その杏が、意外な行動に…そこに何故かあの人も…。やっぱり、という展開ではありましたが、ますます謎は深まるばかりです。オマケの番外編もうまく繋げています。シリアス展開の部分の感想を中心に書きましたが、コミカルな部分も多いので、楽しく読んでいます。

 COMICOではかなり先に進んでいて、4巻はいつ出るんだろう?本当に玲奈はあらゆる意味で報われてほしい…。
by halca-kaukana057 | 2015-06-02 23:17 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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