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 本屋で気になったので購入。ポップな感じの表紙。裏表紙のあらすじを読んで「なんだこれ?」「マジなのか?」と思う…。色々な意味でものすごい本だった。


人間をお休みしてヤギになってみた結果
トーマス・トウェイツ:著、村井理子:訳/新潮社、新潮文庫/2017

 筆者のトーマス・トウェイツさんはロンドンに住むフリーランスのデザイナー。安定した仕事がなく、彼女に怒られ、将来のことが心配。悩ましいことばかり。姪っ子の犬の散歩をしながら、人間特有の悩みを数週間消せたら楽しそうだなぁ…と思っていた。その日その時だけのことをして生きていく。そうだ、人間をお休みしてしまおう。ここでは、親しみをこめてトーマスさんと呼ばせていただきたい。トーマスさんは、早速、医学研究支援等を目的とするイギリスの公益信託団体・ウェルコムトラストに申請書のメールを送り、見事資金提供してもらえることになった。その内容とは、象になって、四足歩行に適応する外骨格を製作すること、草を食べて消化できる人工胃腸を開発すること、脳内の将来計画と言語中枢のスイッチを切ってしまうこと。象になりきって、アルプスを越えること。
 その後、色々あって、計画は象からヤギに変更になる。しかし、トーマスさんはヤギになることを諦めなかった…。


 現代的なフランクな文章で読みやすいです。セルフツッコミばかりで、それが面白いけれども自虐的。上述したあらすじを読んで、何のことやら…と思う。要するに、「ヤギ男」になりたい。意味がわからないw

 人間をお休みして、ヤギになる。ヤギと一緒にのんびりと暮らすだけ…ではない。身体も心もヤギになりきるのが目的。最初は象だったのだが、紆余曲折あってヤギに変更した。この過程がまた意味がわからない展開w

 しかし、トーマスさんは本気である。まず、人間の思考をやめるために、人間の思考とは何か、ヤギならどうなるのかを哲学的に考える。イギリスの虐待されたヤギの保護施設へ行き、ヤギの思考について学び、人間の言語による思考をやめるために言語神経科学の医師を訪ね実験を受けてみる。四足歩行をするために、義足を作ってもらい、そもそもヤギの身体はどうなっているのか、解剖学者がヤギを解剖するところを見て身体の仕組みを学ぶ(解剖の箇所はカラー写真があり、苦手な人は注意)。ヤギになりきるために、ヤギのありとあらゆることを専門家に訊ねるこの情熱はすごい。ヤギの身体と心の仕組みを知る過程で、人間との違い、人間はどんな生き物なのかを知ることもできる。文章はフランクで、自虐セルフツッコミも多く、やっぱり意味がわからないのだが、真面目な本ではあります。脳に磁気刺激を与えて言語停止実験をしたり、草を食べてヤギと同じように消化するために使う酵素や人工の胃のくだりは、狂気も感じるほど。そこまでしなくても、いくら何でも危険だって…と思うが、トーマスさんは本当に真剣なのだった。すべてはヤギになりきるため。すごい。

 義足も出来上がり、いよいよスイスのヤギ農場で、ヤギと一緒に暮らす時が来た。ヤギ農場は山の上にある。そこまでたどり着くのも大変。二足歩行で上り下りするのも大変だった斜面を、義足を着けてヤギとして上り下りしなければならない。ヤギたちと一緒に。ヤギとして暮らすのはちっとも楽ではないではないか!でも、トーマスさんはヤギとしての生活を満喫する。楽しんでいる。象からヤギに変更になったとはいえ、ふと思いついたちょっとしたアイディアを、本気で実現してしまったトーマスさん。うん、おかしいw(褒め言葉です)

 トーマスさんは、ヤギとして最後の望みを叶えるため、アルプスへ。山を越えるトーマスさんの写真を見ながら、私も「がんばれトーマス、負けるなトーマス」と応援してしまった。
 このプロジェクトは、2016年イグノーベル賞生物学賞を受賞した。くだらない、バカバカしい思い付きから始まったが、とても興味深く、ヤギになりきることを貫き通すトーマスさんに感動してしまうのは何故だろう…何であれ、本気になるって素晴らしいことだと思う。トーマスさん、最高にカッコイイ、クールだよ(絶対にマネはしたくないけど)

 トーマスさんは元々、大学の卒業研究だったゼロからトースターを作ったことで注目されたのだそう。その本も出ているので読んでみたい。
by halca-kaukana057 | 2019-04-14 22:09 | 本・読書

宇宙と人間 七つのなぞ

 物理学者の湯川秀樹博士の本は、色々と出ています。その中からこの本を。


宇宙と人間 七つのなぞ
湯川秀樹 / 河出書房新社、河出文庫/2014年

 この本は元々、1974年、「ちくま少年図書館」の中の1冊として刊行された。少年向けの科学の本なので、文章は講義を受けているような語り口調で親しみやすい。しかし、内容はちょっと難しめのところもあるかも。じっくり読んで、理解したいと思う本です。

 この本で語られる「七つのなぞ」とは、「宇宙のなぞ」、「素粒子のなぞ」、「生命のなぞ」、「知覚のなぞ」、「ことばのなぞ」、「数と図形のなぞ」、「感情のなぞ」。宇宙や素粒子、数学は湯川博士の専門だが、知覚、ことばや感情については執筆に苦労したそうだ。

 先日読んだ「宇宙に命はあるのか」(小野雅裕)は、ひとつのテーマを根底にして、宇宙開発や宇宙探査の歴史と現在、未来、何を目指しているのかを総合的に語った本だった。この湯川博士の本も、科学を総合的に語った本。その科学は、どんなに高度なものであっても、元々は私たちの身の回りにあるものから発展していった、というのが面白い。遠くの宇宙も、目に見えない素粒子も、難しい数学も、身の回りにあるものを観察し、調べることで発展していった。高度な科学を研究しようと思ったら、まずは身の回りに興味を持つことが大事なのだなと感じた。

 ことばについては、湯川博士がお孫さんの成長を「観察」した結果が書かれている。この本のために「観察」しようとしたわけではないが、一緒に遊んでいるうちにどのようにことばを理解し覚えていくのか、お孫さんの例が書かれている。言語学もやはり身の回りから発展していくのか。人間が学問を発展させていった過程もわかるようで面白い。

 科学は現実にあるものを観察、証明していくものだと思っていたが、「ノン・フィクション」の科学もある。数学の素数や複素数は「ノン・フィクション」だが、量子力学には必要なこと。湯川博士の時代ではまだ予測の段階のものもある。予測だけれども、それがないと現実の科学法則が成り立たない。確かに、科学には「ノン・フィクション」が存在する。これも面白いと思った。現代で言うなら、ダークマターもそのひとつ。重力波やヒッグス粒子も「ノン・フィクション」だったが、現実にあると観測された。湯川博士がもしまだ生きていたなら、興奮していただろう。

 知覚、感情の章で、博士はこう述べている。
私はいつも言うのですけれども、学校で習うこと、あるいは教科書に書いてあること、参考書に書いてあることはだいじに違いないけれども、それを覚え、また理解したら、それでいいと思うのは、たいへんな錯覚です。学校や書物で習うことを覚え、理解する、その根底には膨大な別の情報の獲得と記憶があるということを無視してはならない。目なら目を通じて、あるいは耳を通してはいってくるものもあるし、そのほかの感覚器官を通ってはいってくるものもある。そういう仕方で得たたくさんの情報を知らぬ間に自分で整理したり、覚えたりしているということが、意識的に勉強することと平行している。それは学校では直接には習わないことですが、それは学校で習うことと同じくらい重要だと思うのです。(211ページ)
 普段何気なく生活していることこそが、学ぶことに繋がっている。それをおろそかにしないでほしい。意識してほしい。そんな博士のメッセージは、とても重要だと思う。

 身の回りは、たくさんの謎に繋がっている。そう思うと、この世界は面白いなと思います。

 ちなみに、この本の冒頭で、神話の宇宙観のひとつとして、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の宇宙創世の箇所が引用されています。大気の娘・イルマタルが世界を生み出す箇所。シベリウスは、この箇所をソプラノ独唱とオーケストラのために「ルオンノタール」として作曲したあの箇所です。世界各地に創世神話はありますが、その中から「カレワラ」が取り上げられたのが嬉しかったです。

【過去記事:湯川博士の本】
旅人 ある物理学者の回想
目に見えないもの
by halca-kaukana057 | 2019-03-18 23:14 | 本・読書
 NHKのラジオ「夏休み子ども科学電話相談」の、鳥の分野の先生としておなじみの川上和人先生。「はいどうもこんにちは川上でーす」の挨拶にはじまり、ユーモアを交えた軽快な口調で、鳥のことをわかりやすく教えてくれる先生です。その川上先生の本が話題になっているとのこと。まず、この本が文庫化されました。テーマは恐竜…?!川上先生が、恐竜をどう語るのか…?


鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
川上和人/新潮社、新潮文庫/2018(単行本は2013年、技術評論社)

 かつて、地球で繁栄を極めていた恐竜。その恐竜から進化したのが鳥。恐竜は絶滅してしまったが、鳥類は現在も地球上のありとあらゆるところに生息している。ならば、恐竜の末裔の鳥類から、恐竜がどんな生物だったのか推測することができるのでは?ということで、鳥類学者の川上先生が、鳥類の視点から恐竜を語ります。


 「はじめに」で、こう書いてあります。
この本は恐竜学に対する挑戦状ではない。身の程知らずのラブレターである。(8ページ)
 こうあるように、この本は川上先生の恐竜への愛に溢れている。恐竜の種類、分類にはじまり、恐竜の生態について、鳥類と比較、鳥類から推測している。

 思えば、恐竜がいたことを示すものは、化石しかない。もう絶滅してしまっていないのだから。いくら鳥類が末裔で、爬虫類が恐竜に近い類だとしても、やはり違う。化石には皮膚や内蔵、骨格のなかった箇所は残らない。羽毛があったという説がどんどん広まっているが、色はわからない。卵は出てくることは珍しい。証拠が少ないのだ。
鳴き声は?
何を食べていたか?
繁殖はどのようにしていたか?
巣はどんなものだったか?
群れか単独か?
夜行性か?
毒は持っていたのか?…などなど、化石に残らないことの方が多く、恐竜の生態を解き明かすのに重要なことばかりなのだ。そんな恐竜のわからない点を、鳥類から分析する。とても興味深かった。鳥類のことも、恐竜のことも学べる。現在、地球上には様々なタイプの鳥類がいる。ペンギンやダチョウのように飛ばない鳥もいる。大きさも、食べるものも、行動時間も範囲も様々だ。きっと、恐竜も鳥と同じように様々なタイプの恐竜がいたに違いない。ちょっとした骨格の特徴から、似た鳥類を挙げて生態を推測する。数少ない証拠。人間の行動心理から犯人の人物像を推理する探偵のようだ。

 この本の面白さはそこだけではない。川上先生の文章がとにかく面白い。ジョークやユーモア、古いネタを交え(ネタの説明の脚注もあるw)、文章のテンポがとてもいい。いつの間にか惹き込まれている。堅苦しくなく、軽快。ラジオでの語りをそのまま読んでいるようだ。恐竜にも鳥類にも詳しくなくても、ユーモアたっぷりの文章で、ニヤリとしながらイメージがしやすい。この本を、公共の場で読むのはちょっと危険かもしれない。ニヤニヤしたり、吹き出しそうになったりする。そのくらい面白い。

 鳥は恐竜から進化した、ということで、始祖鳥など、恐竜と鳥類の間にあった恐竜についてはじっくりと語られる。どのくらい飛べたのか。羽は今の鳥類と同じか、違うか。身体の特徴は?逆に、今の鳥類になるために何が必要か、という視点も面白い。
 そして、恐竜の最大の謎と言えば、絶滅してしまったこと。どのように絶滅への道を辿っていったのか。一方で鳥類はどのように生き延びたのか。恐竜と鳥類の間にあった「恐鳥」の仲間たちはどうなったのか。逆に、鳥類と哺乳類が絶滅したシュミレーションが面白い。

 今、生き延びている鳥類の図鑑より、恐竜の図鑑の方が多いという事実には驚いた。この本で、恐竜も好きだけど鳥類も好きだと思えた。恐竜と同じ時代に生きた鳥類についての研究も、まだこれかららしい。どちらも、様々な化石が発掘されて、研究が進むことを願ってやまない。

 文庫版の解説は、同じく「電話相談」で、恐竜担当の小林快次先生。川上先生と小林先生が一緒になると恐竜から鳥の話になったり、鳥から恐竜の話になったり、名コンビになっています。川上先生からの恐竜への「ラブレター」を受け取り、小林先生も絶賛。しかし…小林先生も本当に文章が面白い。

 川上先生の本と言えば、「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」(新潮社)。こちらも文庫化を楽しみにしています。来年あたり出るかなぁ?
by halca-kaukana057 | 2018-12-16 21:43 | 本・読書
 久しぶりに切手の話を。今日は今年は理化学研究所創立100年(フィンランド独立と同じ年だったんだな)。その記念の切手が出ました。
日本郵便:特殊切手「理化学研究所創立100周年」の発行

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顕微鏡や薬品の瓶など、いかにも理研らしい図案。シンプルに可愛らしくデフォルメされているのも親しみやすいです。

 理研といえば、新元素ニホニウム(Nh)で話題になりましたが、そのニホニウムの切手もあります。押印機特印はニホニウムの図案でした。郵頼しようと思ったのですが、諸事情により郵頼できず…。郵頼には定額小為替が必要なのですが、土日祝には販売してなかったのが敗因です。悔しい…。

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切手シートの周りにも、様々な理研らしいデザインが。この切手、とても気に入りました。特印の手押し印は、5月2日まで、全国の一部の郵便局で取り扱っています。是非どうぞ。
by halca-kaukana057 | 2017-04-26 22:11 | 興味を持ったものいろいろ

海とドリトル 4 [最終巻]

 これまた何月に買って読んだんだっけ…という漫画の感想を…。


海とドリトル 4 <完>
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2016

 大学4年の夏。烏丸研は毎年恒例のフィールドワークへ。その前に、七海はクジラにロガーを付ける時の捧を改良したいと考えていた。ロガーを付ける際に過って海へ落ちてしまった経験から、安全に確実にロガーをつけられるようにしたいと棒や吸盤を研究室に入りびたりで試していた。そんな七海を研究者向きだと見ていた烏丸。そして、卒論前の小笠原でのフィールドワークが始まった。七海はあのマッコウクジラに出会いたいと願っていた…。


 いよいよクライマックスです。七海の大学生としての研究もクライマックス。卒論へ向けて、フィールドワークが始まります。ロガーを安全に効率よくクジラにつける方法・仕組みを考え、試していた七海。研究者は調べるための道具も作らなければなりません。でも、それも楽しいと取り組む七海。烏丸先生が研究者向きだと思うのも頷けます。改良ロガー付け捧も見事完成。大活躍です。

 一方、七海と戌飼の関係…こうなりましたか…。離れてしまっては、恋よりも研究。2人にとってはこれでよかったのかもしれません。その後の七海ですが、ネタバレになるので書けません。そう来るか!そう来たか!?驚きでした。4巻はそれが大きな柱となってくるのですが、ネタバレになるので書けません。

 烏丸先生の子どもの頃の回想が興味深かった。研究の第一歩は、相手を知りたい、それが何なのか知りたいという気持ちから始まるのだろう。

 海洋生物研究の道に進んだ七海。烏丸先生や陸男さん、戌飼さんも。海洋生物研究は「観察すること」が第一。普段は見えないものを見たい。より詳しく観察するために、クジラや海鳥にロガーをつけ、ウミガメを飼育する。じっくりと見て、その生物が何をしているのか、何のためにそのような行動をとっているのか、観察するうちにその生物に思い入れも出てくる。七海が出会ったあの大きなマッコウクジラのように。観察することに感情は必要か。必要かもしれないし、余計な思い入れは必要ないのかもしれない。でも、長く見ていくうちに思い入れも出てくる。その生物の行動がよりわかった時、愛着も沸くかもしれない。その生物を面白いと思って見ている時点で既に、何らかの感情を持っているのかもしれない。例えば、研究対象のクジラが恋人というように。

 その観察したい、よく見たい、よく知りたいという感情は、人間が相手でも当てはまるのだろう。面白いヤツだと興味を持って、その人の行動を見ているうちに、どんどん気になり、「好き」になっている。恋愛感情に繋がることもある。恋愛感情も、相手をよく知りたい、ずっと見ていたいという感情が働く。そして、その人の新たな面や、好きだと思っている面を見て、より愛しいと思う。行動生物学と恋愛感情は似ているのかもしれない。

 卒論も無事に提出し卒業、そして更なる研究者への道へ進んだ七海。1巻で落ち込んで、行き場を見失っていた七海が、自分の道を見出した。物語は終わってしまうが、七海や陸男さんのように研究者の道を進んでいる学生さんは沢山いる。彼らの学問の道が喜びあふれるものであればと思う。

 番外編は川名さんと陸男さんのお話。川名さんの父は厳しい研究者の道をあきらめてしまった。川名さんはそんな父のことを見ているので、七海たちとは立ち位置が違う。でも、親子で新しい道を見出したよう。陸男さんは烏丸研のお母さん的存在だと思っていたら、そんな面があったのですか…。これも面白い。

 海洋生物研究を舞台にした、面白い漫画でした。ありがとうございました!

・3巻:海とドリトル 3
by halca-kaukana057 | 2016-05-10 22:05 | 本・読書
 最近JAXAの衛星の名付け親キャンペーンも無く(「はやぶさ2」の向かう小惑星の名前を募集していたけど、難しくて何も思いつかなかった)、何か面白そうなイベントはないかなと思っていたら、ありました。

JAXA:ISAS:ERG衛星にあなたの応援メッセージを載せよう!

 地球を360度ドーナツ状に地球の磁場にとらえられた陽子・電子からなる放射線帯を「ヴァン・アレン帯」と呼んでいます。二層構造になっていて、内側の層は赤道上高度2000~5000km、外側の層は10000~20000kmに広がっています。ヴァン・アレン帯の高エネルギー粒子は、人工衛星の搭載機器に障害を起こし、観測はきわめて難しいものでした。ヴァン・アレン帯があることはわかっていても、そのメカニズム、中身はよくわからないままです。
 そのヴァン・アレン帯を探査する「ジオスペース探査衛星(ERG:エルグ衛星)」が、2016年度中にイプシロンロケットで打ち上げられます。26年もの長い間、オーロラ観測をしてきた衛星「あけぼの」の後継機です。
◇詳しくは:ファン!ファン!JAXA:「あけぼの」のバトンを受け継ぐ探査機「ERG」

 この「ERG衛星」に、名前とメッセージを載せて一緒にヴァン・アレン帯の探査をしよう!というキャンペーンを開催中です。名前とメッセージはバランスウェイトに刻印され、衛星に取り付けられます。日本語・全角50文字、アルファベット・半角100文字まで。不思議なヴァン・アレン帯を、応援メッセージをつけて名前が宇宙飛行する…なかなかないチャンスです。

 締め切りは4月25日まで!お早めにどうぞ!
(明日3月17日に、サーバーメンテナンスのため、応募フォームが止まります。)
by halca-kaukana057 | 2016-03-16 21:41 | 宇宙・天文

重力波天文学が始まる

 報道から数日経ってしまいましたが、これを書かないわけにはいかない。

国立天文台:LIGOによる重力波の直接検出について
アストロアーツ:アインシュタインの予測から100年、重力波を直接検出
ナショナルジオグラフィック 日本版:重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 ノーベル賞級発見の手法と意義、天文学の新たな広がりを詳しく解説

東京大学宇宙線研究所:【コメント】LIGO-Virgoの重力波発見に関するKAGRAグループからのコメント
 ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生が計画代表をされています。梶田先生の先輩・恩師である故・戸塚洋二先生も喜んでいらっしゃるに違いない…。

 何か大きな発表があるとあり、もしかして重力波を観測したのでは?と噂されていたはちらりと耳にしたのですが、本当でした。マジでした。驚いた。こんなに早く重力波を観測できたなんて!!もっと先のことだろうと予想してました…。

 「重力波」とは、アインシュタインの一般相対性理論で予測された「時空のゆがみの伝播」。質量を持った物質が存在・運動すると時空にゆがみができ、光の速さで広がっていく。ブラックホールや超新星爆発、中性子星の連星の合体などから発生すると考えられてきたが、直接の観測例は無かった。
 アメリカの重力波観測所「LIGO(ライゴ)」で、昨年、約13億年前に起こったブラックホールの合体によって放出された重力波を観測。人類初の観測例となりました。

 100年も前に発表されたアインシュタインの一般相対性理論が、実際の宇宙での光の動き、天体の動き、時空で本当に有効だったことが証明されました。計算と理論だけで、遠く広い宇宙での目に見えない重力と時空の関係について、計算と理論だけで予測していた。本当に凄い。

 重力波を観測することは今後の天文学の課題とされてきました。今回の観測はアメリカの「LIGO」だけでしたが、ヨーロッパや、日本でも「KAGRA(かぐら)」がこれから稼動・観測を始めます。今回は1つの観測所だけだったので、そのブラックホールの詳しい方向を調べることはできませんでした。これが、複数の観測所で観測できれば、詳しい方向、位置を特定できます。重力波の観測はこれから、今スタートしたばかりなのです。そんな瞬間に立ち会えた…感激です。

 これまで、人類は様々な方法を使って宇宙を観測してきました。可視光の天体望遠鏡。X線、赤外線、紫外線、電波などの様々な波長。さらに、望遠鏡や観測装置を宇宙に打ち上げ、空気が邪魔をしない、より鮮明で精密な観測を目指してきました。でも、それらの波長を使っても、観測できないものがありました。ブラックホールはX線や電波で観測はしていましたが、説明しきれないものがありました。ところが、重力波は、ブラックホールから直接発せられたもの。重力波の観測で、これまで説明できなかったものが説明できるようになりましたし、ブラックホールのことがより詳しくわかるようになりました。重力波を観測することは、新たな天文観測のはじまりです。望遠鏡には見えませんが、重力波観測装置は、「宇宙のさざ波」を観測する望遠鏡です。その装置も有効であることも証明されました。もう一気に沢山のことが証明され、スタートしました。興奮せずにはいられません!!

 この発表があった日、2月12日は、日本の電波天文衛星「はるか」(MUSES-B)が打ち上げられた日でした。電波望遠鏡のパラボラアンテナは、組み合わせるとその距離分の直径の仮想の電波望遠鏡で観測しているのと同じデータを得ることができます(「干渉計」といいます)。地球上の電波望遠鏡を組み合わせても、宇宙は広く、電波を発する天体は遠い。精度が足りない…。そこで考え出されたのが、電波望遠鏡を宇宙に飛ばして、地球よりも大きな干渉計をつくろう!という壮大な計画でした。その技術を実証するため「はるか」は打ち上げられ、地球上の電波望遠鏡と一緒に、電波を発するブラックホールなどの天体を観測し、実際に出来ると証明しました。スペースVLBI、「VSOP」のはじまり、新しい天文観測の方法がスタートしました。しかし、本番となる「はるか」の後継機(ASTRO-G)は、目標とする精度を達成できるアンテナをつくることができず、予算も足りず、計画中止になってしまいました。現在はロシアの「スペクトルR」・「ラジオアストロン」計画で進められています。

 また、X線では、新しい日本のX線天文衛星「ASTRO-H」が水曜に打ち上げ予定。本当はこの12日だったのですが、天候不良で延期になりました(重力波検出で大騒ぎになっている時に打ち上げられていたら正直追いきれない…延期でよかったとちょっと思っています…)。X線天文学は日本のお家芸。重力波を観測できるようになりましたが、電波観測やX線観測も宇宙の謎を解くために重要な手段です。

 そして始まった「重力波天文学」。「宇宙のさざ波」は「観る」、というより「聴く」という言葉が合うでしょうか。時空がゆがんで、それが波のように伝わってくる。それをキャッチすれば、大元の天体のことがわかる。考えただけでワクワクします。重力波を観測することで、また新しい謎も出てくると思います。教科書も図鑑も一気に書き変わる。それがたまらなくワクワクします。

129. 重力波検出の意義と今後の進展(2016/2/12)
 今回の観測がどういうものなのか、わかりやすく解説しているサイトがありました(でもちょっと難しいです。2,3回読んでみてください)。「太陽質量」という単位がある。初めて知りました。質量が大きいものほど観測されやすいが、地上では地震などの「ノイズ」があり影響を受けてしまうので、あまり巨大過ぎると検出できない、というのがまた面白い。
by halca-kaukana057 | 2016-02-15 22:27 | 宇宙・天文
 しばらくの間放置してました…生命進化学習ゲームアプリ「コダモン」。上野の国立科学博物館での特別展「生命大躍進展」も終わっちゃった(巡回展がある模様?)。アニメ「ピカイア!」の再放送も、Nスペ「生命大躍進」一挙再放送も終わった…でもゲーム「コダモン」は続いています。

 残るは、サル、霊長類から類人猿、そして人類への進化の道。系統樹もまっすぐです。
"新しい世界へ旅立とう"
"さぁ いま進もう!"
(「ピカイア!」OP elfin'「colorful fantasy」より。アニメOP/EDのCDも買っちゃいましたよ。OPが爽やかで好きです)


 最初はこのお猿さん。今年は申年なのでちょうどいい?
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 プレシアダピス。色はかなりデフォルメされてますね。

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 ダーウィニウス、この子がとても可愛い!「生命大躍進展」の目玉のひとつ、ドイツで発見された「イーダ」と名づけられた全身骨格化石はこのダーウィニウスでした。

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 アーキケプス、いかにも木の上で器用に生活していたお猿さん。

 動物園などでお馴染みのお猿さんも出てきますよ。
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 ゴリラ!プレイ画面は、ゴリラだらけ…濃いです。黒いですw
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 チンパンジー!可愛いですねぇ。勿論、可愛いだけじゃなくて、これらの霊長類がどう人類へ繋がっていくのかもわかります。

 そして、人類へ…
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 アウストラロピテクス。

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 このプレイ画面は大丈夫なんでしょうか…問題ありません、NHKの科学学習アプリですから…でも、かなりシュールです…。

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 ネアンデルタール人。
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 そして遂に現在の人類、直接のご先祖様登場!!(「ご先祖様」は「地球大進化」ですw)
 石器をつくり使うようになり、脳も大きくなり、言語を使いコミュニケーション出来るようになり…。この頃の言語はどんな言語だったのかなぁ。それが、どのようにして現在の多様な世界中の言語に分かれていったのかなぁ…興味深いです。

 この人類への系統樹の中で、レア生物も出てきます。最後のレア生物には驚いてしまいました。大きいです。新生代のレア生物も3種全て見つけました!

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 ホモ・サピエンスをクリアすれば…完全クリアです!ラストでは、このようなメッセージが出てきます(全部スクリーンショット撮れなかった)。ああ、クリアしたんだな、この「コダモン」をクリアするということは、勿論自分自身を含む現代の生命全てに繋がっているんだな…と実感します。これまでクリアしてきた古生代、中生代、新生代の系統樹図鑑も眺めてしみじみしてしまいました。
 そういえば、何度もこの系統樹、消えたりデータが吹っ飛んだりしましたね。それも、「何もかも皆懐かしい…」(アニメ作品違います)

 というわけで、ようやく「コダモン」完全クリアしました!!終わりました!
 でも、もう一度最後のメッセージを読みたくて、人類への道を進んでいたりしますw古生代にももう一度戻ってみたくもなります。古生代が一番好きです。レア生物に驚き、一喜一憂していたのも「何もかも皆懐かしい…」(2回目)
 以上、ありがとうございました!!

 「コダモン」関連記事は下の「コダモン」タグからどうぞ。
by halca-kaukana057 | 2016-01-08 23:03 | 興味を持ったものいろいろ

目に見えないもの

 ノーベル賞受賞式あたりにこの記事を書きたかったのだが、大幅に遅れてしまった。


目に見えないもの
湯川秀樹/講談社・講談社学術文庫/1976

 今年のノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生。ニュートリノ振動、ニュートリノに質量がある、という研究。素粒子物理学は日本のお家芸とも言われる分野。それを切り拓き、日本人初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士。湯川博士の本を読むのは「旅人 ある物理学者の回想」以来です。

 前半は、湯川博士の物理学講座のような、物質とは何か、原子、分子、そして中間子とは何かという話。今読むと、ここから更に素粒子物理学に繋がっていって…と思えるのですが、書かれたのは昭和18年、20年…まだ戦時中。そんな時代に、湯川博士は「目に見えない」物質の根源の理論を考え、研究していた。もし、現代の理論物理学、素粒子物理学の最先端の話を湯川博士が聞いたら、どんな反応をするだろう…。今回の梶田先生のノーベル物理学賞の受賞に何を思うだろう。喜ぶだろうか。そんなことを思いながら読みました。

 後半は、湯川博士の生い立ちや、科学や自然などに関するエッセイ。エッセイというより、「随筆」「随想」と言った方がぴったりくる。二人の父、研究生活。中間子理論の研究については、日本の素粒子物理学黎明期をリードした坂田昌一博士の名前も出てくる。2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠先生、益川敏英先生も坂田博士の弟子であることを真っ先に思い出した。湯川博士や坂田博士がいたからこそ、今の素粒子物理学があるのだな、と実感する。

 以前「旅人~」を読んだ時、静かで物寂しいと感じ、そう書いた。第3部の随筆・随想の部分は、詩人のような趣もある。ひとつの事柄に対して、静かに、深く、考えをめぐらせる。静謐な言葉に、湯川博士だけでなく、寺田寅彦や中谷宇吉郎など優れた科学者は文章も美しいと感じる。特に、「未来」と「日食」という短い文章が気に入った。感情という科学では捉えきれないもの、記憶、そして未来という不確かなものを、じっと見つめている。その中で、「科学」は何ができるか。可能性であり、希望である、と。科学に対して、研究することに対して、そして人間に対してとても真摯な方だったのだなと思う。

 時々、今の科学の礎を築いてきた科学者たちの言葉に触れたくなる。そんな本のひとつに、この「目に見えないもの」も入れたい。

・過去関連記事:旅人 ある物理学者の回想
by halca-kaukana057 | 2015-12-27 22:16 | 本・読書

海とドリトル 3

 また発売からしばらく経っての感想になってしまった…。


海とドリトル 3
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2015

 戌飼と付き合い始めた七海。それでも烏丸研での研究の日々は続いていく。新しい事務員の川名、インドからの留学生サティシュ(通称:王子)を迎え、七海も卒論に向けて動き出す。戌飼が七海と付き合っていることを知った万里子は、ショックを受けつつも、密かにある行動に出る。
 そんな烏丸研も学祭で出店することになる。七海の提案でイカの姿焼きを売ることに。川名の厳しい予算制限を何とか乗り越え、出店は無事成功。その打ち上げの席で、七海は川名と話し、川名と烏丸の過去を知る…。


 戌飼さんと付き合い始めた七海が初々しい。でも、恋愛と研究は別。七海は七海の、戌飼は戌飼の研究を続ける。そんな2人を見る万里子…
「わたしは戌飼さんの将来を思うからこそ立ち止まってたのに」(24ページ)
「でもよく考えれば大体あんな2人が続くわけないじゃんか ばからし」(25ページ)
「あの子が戌飼さんの将来をダメにしようとするのなら わたしは―」(34ページ)

 怖いです。万里子さん怖いです。やっぱり戌飼さんのことが好きで、未練持ってたんじゃないですか。でも、万里子さんは、「研究と恋愛は両立しない」と考えるタイプ。戌飼さんが将来有望な研究者だからこそ、研究者としての成功を願っている。そのためには自分の恋心は隠し打ち明けず、他の誰か…七海のことですが、恋愛という研究者にとって縛り付けるものを持ち込む人は邪魔者でしかない。排除させようとする。好きだからこそ、自分は手を引く万里子の気持ちはわからないでもない。でもやっぱり怖い。このシーンの後に、七海の烏丸研での初めてのゼミのプレゼンに対して、容赦なくダメ出し、批判をする万里子さん…七海の発表が未熟、不十分であるのは確かなのですが、それ以上の何かも感じずにはいられませんでした。深読みですかね?

 研究者の世界の厳しさは、これまでも何度も出てきました。その厳しさを新たに語る人…事務員の川名さん。2巻のラストで出てきた眼鏡の女の子です。事務員なので研究には直接は関わっては来ないのですが、烏丸先生と関係のある人物でした。烏丸先生は川名さんのお父様の研究室の後輩。川名さんのお父様はポスドクのまま、研究者を辞めてしまった。一方の烏丸先生は、川名さんのお父様よりも先に准教授になり…。川名さんのお父様と烏丸先生のやりとりの回想がとても辛い。そして、同じ研究者だった烏丸先生の元奥様も…。川名さんの言葉が七海に突き刺さります。やはり、研究と恋愛・結婚は両立できないものなのか。研究者の世界はこんなにも厳しいものなのか。七海自身も研究者を続けていけるのか。そう思い詰める七海への、戌飼さんの言葉も、現実をしっかりと捉えている、頼もしい言葉に感じられました。まずは目の前の研究。

 七海の実家の金沢へ戌飼と帰省し、動物園でイヌワシを見る犬飼さんはやはり研究者です。そして、ついに…。万里子の手回しで、戌飼さんにイギリスの研究室行きの話が。戌飼にとっては願ってもない機会。しかし、七海のことが…。戌飼さんに打ち明けられ、研究室に座り込んでいた七海にウミガメの例えで研究者としての成長を語る烏丸先生は、優しくも強い。川名さんのお父様のことを思うと苦しくなるが、烏丸先生が厳しい研究者の世界を生き抜いてここまで来ることのできた理由がわかる気がします。

 犬飼も旅立ち、万里子は以前から言っていた研究者としての情熱がなくなったと研究を辞め(この次の行動が何とも…何のつもりだ…?万里子さんの言ってた「計画」の全容って何なんだ…!?やっぱり万里子さん怖い)、七海は研究者としてどうありたいのか。ふとしたきっかけでクジラのバイオロギングと烏丸研に出会い、途中で編入し、七海は他の人よりも研究者としての月日は短い。それでも、七海は海洋生物に魅了されている。161ページ、3巻ラストで烏丸先生が七海にかけた言葉に、私も少し光が見えた気がしました。
 14話「死に至る病」、15話「深く潜ったペンギンは光を見たか?」この2話のタイトルがとても好きです。厳しい自然の中で生きる生物たちに、何かを教えられているような、何かを考えずにはいられないような、そんな気持ちになる3巻でした。

 4巻で完結とのこと。どうなるのだろう。

・前巻2巻:海とドリトル 2
by halca-kaukana057 | 2015-11-12 22:42 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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