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 もう11月…なのに、夏に行った展覧会のことを書きます。今更…ですが、この展覧会のことは書いておきたい。何故今頃になってしまったか…えっと…何故だろう…?

 すっかりリピーターとなってしまっている青森県立美術館。春の「フィンランドのくらしとデザイン」展は最高でした!夏はうって変わって、空と飛行機がテーマの展覧会。「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」。2010年に「ロボットと科学」展も開催したことを思い出しました。今度は飛行機か!こっちも大好きですよ。行きますよ。

◇春のフィンランド展:”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編
 ↑フィンランド展の記事はいくつかに分けてあります。この記事の一番下に、他の記事へのリンクがあります。
◇2010年の「ロボットと科学」展:”人間”を投影する、機械以上の存在 「ロボットと美術」展
 ロボットを科学、美術、文化と様々な面から観てみる。面白かった!


青森県立美術館:Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語

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 行ったのは8月でした。
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 行く度に見惚れてしまうこの白い建物。夏は青い空とのコントラストがいい。この建築も、自然・光の当たり方・四季をバックにした「美術作品」なんだなぁ。
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 美術館前の、芝生の広場もお気に入りです。なだらかに広がる緑。

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 エントランスに入ると、ここにも作品が。青秀祐さんの「Operation "A"」。ひとつひとつの紙飛行機が、大きな飛行機を形作っている。

 人間は、空に憧れてきた。空を飛ぶことに科学・技術で挑戦し続けてきた。空、空を飛ぶこと、空を飛ぶための乗り物・飛行機。人間がどのように憧れ、挑んできたか。そして飛行機が出来て、その飛行機と人間はどのように空を飛んだのか。飛行機が当たり前となった現代での、空を飛ぶことに対する人間の思考・芸術とは。このような切り口から、様々な展示が広がっています。

 私はよく空を見上げる。昼間の空も、夜の空・星空も。星空は宇宙を意識しているが、昼間は空そのものを意識している(同じ空なのに、昼間だって空は宇宙に続いているのに不思議なものである)。空の青さや太陽の角度による色の移り変わり、雲の動きや色、形。ぼーっと眺めながら、刻々と変わるその表情に見惚れている。そして、空を飛ぶ鳥や飛行機。飛行機に乗ってどこかに行きたいなぁ、空を飛んでみたいなぁなどと思う。白鳥などの渡り鳥を見ると、今年もよく飛んで来たなぁ、自分の翼で遠くからよく飛んでくるなぁと思う。こうやって空を観ている時、心の中には空への憧れの気持ちがある。広くどこまでも続いている空。この地上と繋がっているけれども、手を伸ばしてみると「届かない」と思う。空を飛んで、見たことも無い世界を見たい、遠くへ行きたい。空から地上の世界を観てみたい。今日も歩きながら、やはり空を見ていた。

 空に憧れた人間の歴史から、展覧会は始まりました。ギリシア神話のイカロスの物語。「昔ギリシャのイカロスは ロウで固めた鳥の羽 両手に持って飛び立った~」の「勇気ひとつをともにして」の歌でも有名なイカロス。イカロスは作った翼で飛ぶが、ご存知の通り太陽の熱でロウが溶け、翼が壊れ墜落してしまう。そう、空を飛ぶことは、重力に逆らうこと。墜落するリスクを抱えている。墜落=死。空への憧れは、手が届かないだけじゃなく、物理法則に逆らおうとすること、そして墜落という危険もあるからこそ「憧れ」なんだと感じました。そのことが、頭から抜けていた。光だけ見つめていたけど、影の存在を意識しました。確かに、飛行機に乗る時事故がないといい、と思っている。でも、ここで考える事故とは、乱気流や台風に巻き込まれるなどの類で、墜落までは考えていない。
 その後、レオナルド・ダ・ヴィンチやライト兄弟、サン=テグジュペリ、リンドバーグと飛行機を考え・作り・乗って空を飛んだ人々について語られます。海外だけでなく、日本人の飛行の歴史も。日本人の飛行の歴史はここで初めて読みました。そういえば、海外の飛行家たちの伝記はあっても、日本人の飛行家の伝記はないなぁ。

 飛行機が存在する以前から、人は空から見た地上の世界を描いてきた。鳥瞰図である。この鳥瞰図を「神の視点」として歴史を追って紹介している。歴史の教科書にも平安時代の絵巻にある空から見たような絵が載っているし、それ以降にも俯瞰構図の絵は多数存在している。飛行機も無い、高い塔も無いのに、どうやって描いていたのだろう?人間の想像力?と考えながら展示を見ていました。思うと不思議です。
 空からの視点は、空を飛ぶことだけでなく、山の頂上や高い塔・タワーからも見ることが出来る。そんなタワーの最先端である、東京スカイツリーも紹介されています。高さといい、構造といい、よく造ったものだよなぁ。今度東京に行ったら観に行こう(登るかは未定)。

 そして、飛行機は進化を遂げ、戦争にも使われる。戦闘機の歴史や、戦闘機を描いた絵が展示されているコーナーが結構広かった。戦闘機は、先述した重力に逆らうことと、墜落=死をはっきりと意識させる。効率よく飛び、攻撃する。攻撃されれば墜落する。空は憧れだけの世界じゃない。厳しい世界だ。ちょうど8月に観たので、戦争というテーマを意識して観ていました。
 戦闘機の図面も展示されています。シャープで、無駄のない図面。図面の用語などはわからないのですが、図面も美術作品として観ることも出来る、と感じました。機械的のようで、完全な無機質な「機械」には思えない。でも、無駄が無い。惹かれます。

 戦闘機の一方で、旅客機も登場してきます。たくさんの人々を乗せ、目的地へ安全・快適に飛んでいける旅客機。戦闘機とは違う、飛行機の形。戦闘機は訓練された飛行士しか乗れないけど、旅客機は一般の人も乗れる。飛行機が、空が身近になる。旅客機の広告や写真は、戦闘機のものとは大きく違います。明るさがある。でも、飛行機であることには変わりは無い。やはり、空を飛ぶことのリスクはある。

 飛行機は様々な美術作品に描かれている。飛行機そのものの「かっこよさ」をストレートに出した絵、デフォルメされた絵。空と人間を結んだ飛行機の描かれ方も、憧れの光の方を意識するか、影の墜落を意識するかで変わる。また、機械としての見方も。
 飛行機や空を描いた漫画家・松本零士さんのコーナーも。ここに、H2Bロケットと宇宙輸送船・HTV(こうのとり)の模型や、開発中止となってしまったGXロケットの模型もあって驚いた。まじまじと見つめていたのは私ですw戦闘機乗りを描いた松本さんの漫画も展示されていて、読みふけってしまいました。
 もうひとつ、まじまじと見てしまった展示が。「日本ロケットの父」糸川英夫博士の、一式戦闘機「隼」のスケッチ。展覧会に行く前から、糸川博士に関する展示もあると聞いて、楽しみにしていたのです。ロケットの開発の前、戦時中は戦闘機の開発をしていた糸川博士。その「隼」の性能について説明する際に描かれたというスケッチ。これが糸川博士の書いたものなんだ…とまじまじと観ていた、というわけです。
 戦後、日本での飛行機開発は禁止されてしまい、そこで糸川博士はロケット開発を始めるのです。そう、糸川博士の戦闘機も「隼」、後に「イトカワ」と名づけられた(探査機が打ち上げられた後のことですが)小惑星に向かい、タッチダウンしてサンプルリターンを成し遂げた小惑星探査機も「はやぶさ」。糸川博士と「隼(はやぶさ)」の原点はこれなのか…とも思いつつ観ていました。

 戦後から現代へ。飛行機は、旅客機が飛躍的に進化し、またSF漫画やアニメにも描かれます。ここは日本の美術館。日本のサブカルチャーについても展示します。「マクロス」などに出てくる戦闘機、「アイドルマスター」のキャラクターが描かれた「アイマス機」模型…いわゆる「痛飛行機」まで。うん、日本だなぁw
 プラモデルの箱に描かれる絵も多数展示。精巧な飛行機を、水彩画で描いている。どうやったらこんなタッチ、色の重ね方が出来るのだろうと観ていました。機械を描くのが苦手なので…。

 更に、飛行機は新しい形へ。映画「風の谷のナウシカ」に出てくる滑空機「メーヴェ」。「ナウシカ」を観る度に、メーヴェって不思議な飛行機だなぁと思っていました。それを実際に作って、飛んでいる方がいるのです!知りませんでした。八谷和彦さん。機体の実物が展示されていました。しかも撮影可!
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これが「メーヴェ」…映画で観たのと同じだ!
 実際に飛ばした映像も流されていました。本当に飛んでる!人が乗って飛んでいる!よく作ったなぁ。作ったもので飛ぶのも、気持ちがいいだろうなぁ。と思ったら、壁に、宇宙開発に関するコラムや著書でおなじみの松浦晋也さんの寄稿文が!国産旅客機・YS-11の引退と、八谷さんのプロジェクト、自分で飛行機を作って空を飛ぶこと。じっと読みふけりました。宇宙好きにもたまらない展覧会ではないですか…!

 いつもの青森県立美術館での特別展は、特別展スペースで終わるのですが、今回は常設展のスペースも一部使っていました。いつもより広い。最後に見たのが、押井守監督による「東京スキャナー」。東京の街を飛んでいる映像作品で、東京の名所を次々と「スキャン」してゆく。SFのような視点。飛んでいる感覚がありました。この映像作品の入り口に、押井監督のコラムが掲げられているのですが、印象深い内容だった。人間は飛んでも、重力に逆らいきれてはいないのだ、と。

 この飛ぶことと墜落することは、稲垣足穂の作品に繋がってゆきます。稲垣足穂の文章には惹かれます。


 初めて知ったことも、得た視点も多い展覧会でした。とても見ごたえがありました。美術館から出て、また空を見上げていました。すると、空に何かが見える。
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 鳥の群れでした!何の鳥だろう?渡り鳥?夢中で追いかけ、カメラを向けます。
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 鳥は空の向こうへ飛んでゆきました。ああ、やっぱり空には、人間の知らないことがたくさんある。届かないものがある。飛行機がどんなに進化しても、人間にとって飛ぶことは特別なことなのかもしれない。そんなことを思いました。

 この「Art and Air」展は、青森県立美術館だけの企画。他の美術館での展示はなし。でも、図録(カタログ)が一般発売されています。

Art and Air ~空と飛行機をめぐる、 芸術と科学の物語 或いは、人間は如何にして天空に憧れ、飛行の精神をもって如何に世界を認識してきたか。(P-Vine Books)

Art and Air展実行委員会、工藤健志(青森県立美術館) / スペースシャワーネットワーク


 読んでいると、展覧会のことを思い出します。工藤健志さんの「あとがきにかえて」には、この「Art and Air」展に至るまでの経緯、作り方などが書かれています。考えさせられる内容です。飛行機と人間、技術と人間という読みもあるけど、「展覧会」というものそのものへの問いかけもある。このような面白く、意欲的な展覧会、どんどんやって欲しいです。

 この本には、CDもついてきます。ミュージシャン・伊藤ゴローさんによるサウンドトラック。展覧会のサウンドトラックなんて初耳です。でも、聴いていると空への憧れと、手の届かない気持ちを思います。ギターとチェロの音が澄んでいて、落ち着きます。空を見ながら聴きたい音楽です。

 現在、青森県立美術館では、奈良美智展を開催中。これも行くんだ…今年の青森県立美術館の特別展は私のツボばかりついてきます。嬉しいw
by halca-kaukana057 | 2012-11-02 23:50 | 興味を持ったものいろいろ
 一昨日7月1日、「うるう秒」が挿入されました。日本時間9時(グリニッジ標準時では午前0時)前に、「8時59分60秒」と、1秒追加される。

 そもそも、「うるう秒」って何ぞや?

アストロアーツ:来月1日午前9時、3年半ぶりのうるう秒挿入
国立天文台:質問4-3) 「うるう秒」ってなに?

 1日の長さの基準は、地球の公転・自転。そこから、時間、さらに細かく分、秒も生まれた。地球の自転・公転などの天文運行に基づいた時刻系を「世界時」と呼んでいます。
 しかし、時代と技術は進歩して、原子時計で正確な時間を計れるようになると、ずれがあることがわかった。地球の自転の速さは、いつも一定ではなかったのだ。時間が進む速度の基準としてセシウム原子の振動を用い、この原子時計に基づいて1秒の長さを正確に刻むのが「協定世界時」。
 地球の自転は、潮汐による摩擦で、徐々に遅くなっている。地球の自転が基準の「世界時」は、原子時計による「協定世界時」よりも遅れている。この遅れをそのままにしておくと、外は朝なのに、時計は夜…ということになってしまう。そこで、「協定世界時」を1秒遅らせ、「世界時」に合わせるのが「うるう秒」。

 上記2サイトを参考に、噛み砕いてみました。なるほど、勉強になりました。私たちの生活は、天体(地球)の運行・自転が基準になっている。宇宙を身近に感じます。

 ということで、一昨日、うるう秒を確かめよう!と思っていたのですが…見事に聞き逃してしまいました。117時報だと、「ピッ」というあの音がひとつ多いらしい。携帯の時計も確認してみようと思ったのに…。残念。今度のうるう秒はいつかはわかりませんが、今度は自分の眼と耳で確認する!

 そんな私は、その瞬間を捉えた動画で確認しています。
2012年7月1日 うるう秒挿入_速報版 - NICT

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の時計で、「9:59:60」を確認できました。

うるう秒ダイジェスト - 117時報編・コンピューター編 - 2012/07/01

 時報とコンピュータの様子。時報の「ピッ」がひとつ多い!
by halca-kaukana057 | 2012-07-02 21:44 | 宇宙・天文

経度への挑戦

 天文にも関わりのあるノンフィクションです。twitter経由で教えていただきました。



経度への挑戦
デーヴァ・ソベル/藤井留美:訳/角川書店・角川文庫/2010
(単行本は翔泳社・1997)


 地球儀や地図に欠かせない緯度・緯線と経度・経線。この2つの存在は古代より存在していた。緯度は北極星の等の仰角(上向きの角度)を測ることでわかる。赤道が基準の0度で、北と南に向かう。ところが、経度は絶対的な基準がない。現在はイギリスのグリニッジ天文台が0度だが、それまでは世界各地に移動していた。さらに、天文学を用いても、緯度よりも計測しにくい。太陽の南中時間を測定し、標準時の12時0分0秒から何分ずれているかを計算し、その差で何度離れているかがわかる(4分で1度、1時間で15度)。しかし、天候に左右されるし、また南中する時刻も正確に計らないと誤差が生じてしまうので、正確な時計が必要である。しかし、誤差の少ない正確な時計の開発は困難を極めた。

 大航海時代、船舶の航行のために経度を正確に測ることが求められたが、当時使われていたのは振り子時計。揺れる船の中では振り子時計は正確な時間を刻むことが出来ず、そのため経度を読み間違え、海難事故が相次いだ。事故は、多くの人命も失い、さらに船舶で運んできた貴重な食料や資源も失うこととなり、経済的に大打撃を受けることとなる。そのため、各国は正確な経度の測定方法を探した。多くの天文学者や数学者がこの問題に挑んだが、刻々と変わる天候に左右され、精度の高い天体観測技術もまだ確立していなかったため、誰も経度を測定する方法を見つけることは出来なかった。

 ところが、その経度の測定法に全く違う方向から挑戦し、大きな業績を挙げたのが、イギリス人時計職人のジョン・ハリソンだった。ハリソンは元々大工職人だったが、子どもの頃時計に興味を持ち、後に独学で物理学や機械工学など時計に関わる技術について学ぶ。後に自力で時計を作り、その精度が評判となった。
 1714年、イギリスは高精度に経度を測定できる方法を発見した者に賞金を贈る「経度法」を制定。自分の作った時計が経度の測定に使えるのではないかと考えたハリソンはロンドンへ赴き、「ハレー彗星」の発見者であり当時のグリニッジ天文台長だったエドモンド・ハレーにその考えを伝え、時計職人のジョージ・グラハムを紹介してもらい、経度を測るための時計…クロノメーターの製作にとりかかった。


 長い前置きになりましたが、そのジョン・ハリソンと、彼が作ったクロノメーターの数々、天文学者との対立などを描いたのがこの作品です。これまで、経度をどうやって測るのか、意識したことはなかった。緯度なら北極星の仰角を測ればいいとすぐに思いつくのですが、経度となると、すぐには思いつかなかった。時刻・時計も使う。天体だけを見ていてもわからない。この本で、時計は宇宙を小さな機械の中に閉じ込めたものだと表現してあったのですが、まさにそうだと感じました。地球は1時間に15度自転している。約365日で太陽の周りを1周…公転する。時間と角度、そして天体の動きには深い関係がある。天文学の知識はハリソンにはなかったが、それを見抜いて、しかもほぼ正確な時計・クロノメーターを作り、改良し続けたハリソンの情熱が伝わってきて、ワクワクしました。

 しかも、そのハリソンの作るクロノメーターの複雑な作りには驚くばかり。当時としては画期的なアイディアも取り入れられ、それまでの時計よりもずっと誤差の少ない時計を作ることが出来た。独学で時計に関する技術を学んだというのに。この本の中ごろには、ハリソンの肖像画と彼の作ったクロノメーター(H1,H2,H3,H4)の写真がカラーで掲載されているのですが、そのクロノメーターの変遷にも驚く。どんどん小型化、軽量化していっている。ハリソン自身、船長が船長室で懐中時計ぐらい小さなクロノメーターを見て、すぐに経度がわかることを目指していたのだそうだ。情熱も勿論、自己の作るものをよりよくしようという気持ちとそれを実現してしまう力にも惹かれました。

 一方で、何とか天文学を用いて経度を測定しようとした天文学者たち。特に5代目のグリニッジ天文台長となったネヴィル・マスケリンはハリソンを目の敵にし、ハリソンの作った精巧で複雑なクロノメーターを分解させてみたり、乱雑に扱ったりもした。マスケリンはマスケリンで、月の運好評や「航海暦と天文暦」という航海術には欠かせない暦を書き続けた。しかし、経度の測定では、ハリソンのクロノメーターはかなり高精度で、クロノメーター開発の先駆者となった。

 ハリソンのクロノメーターは、世界各地を航海し続けたジェームズ・クック船長による航海でも使われた。そしてハリソンのクロノメーターを基に、更に小型化、大量生産できるクロノメーターが作られてゆく。ハリソンは息子のウィリアムと共に、天文学者には理解されなかったが…その技術で、経度測定の方法を求めていた人たちに認められた。私自身天文学に興味は持っているが、天文学の知識だけ…天文学に限らず、何か一つの方法だけで物事を解決しよう・一つの方法だけにとらわれることで、見失うものが沢山あるのだと実感しました。

 物語となっているので、読みやすいです。2度読みましたが、1度目は経度について疑問を持ちながら読み、2度目はクロノメーターの進歩やハリソンを取り巻く人々にワクワクしながら読みました。読めば読むほど、面白いと思う本でした。

 現代は、人工衛星などで簡単に緯度経度がわかる時代。クロノメーターも腕時計にその機能がついたものも多く、精度も非常によくなった。その礎を築いたジョン・ハリソン。毎日している腕時計(私のは普通のアナログ時計)を見ると、その時計の中にある小さな宇宙と、ハリソンの偉業を想います。

・クロノメーターについて詳しく:wikipedia:クロノメーター
by halca-kaukana057 | 2011-02-05 23:47 | 本・読書
 新聞や書店の売れ筋ランキングに、この本が何週にもわたってトップ3、トップ5、トップ10内に入っていた。宇宙論の本がベストセラー?タイトルにある通り、「素粒子物理学」・宇宙論は天文・宇宙の話の中でも一筋縄ではいかない、難しい分野。それの本が、何故こんなに売れているの?気になって、私も読んでみました。


宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎
村山 斉(むらやま・ひとし)/幻冬舎・幻冬舎新書/2010

 内容は、宇宙はどうやって始まったのか、星や天体は何でできているのか、宇宙はこれからどうなっていくのかという未だ解けない謎を、極小の宇宙…素粒子のミクロの世界から読み解く研究がどう進んできたのか。何がわかって、何がまだわからないのか。それについて、解説した本です。著者の村山先生は、「東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)」の初代機構長。IPMUでは、数学と物理学の垣根を取り払って、両者の側から宇宙の誕生・進化・未来の謎を解こうと研究が続けられています。

 ビッグバン宇宙論によって、宇宙が膨張していることがわかった。そして、遠くの天体・宇宙を観ることは、過去の天体・宇宙を観ることに繋がっている。更に遠くを観れば、宇宙が誕生した頃のことがわかる…けれども、遠くを観る技術には限界がある。そこで、ビッグバンの頃の宇宙は、ミクロの素粒子の世界だったことに注目して、素粒子物理学の側から、宇宙の始まりについてアプローチしていく。最近の身近な宇宙・天文の話題に始まり、ニュートリノ、ニュートリノの研究へ。そこからわかった宇宙全体の96%の重さのものはまだ観測できていない。その観測できていない「暗黒物質(ダークマター)」とダークエネルギー、波であり粒子でもあるという光の研究から始まった量子力学、そして陽子・中性子よりも小さくそれらを構成する素粒子・クォークの研究、そのクォークがどんな力に支配されて動いているのか、それらの力学をひとつにする法則はあるのか…と新書ですが、内容は本格的な宇宙論・素粒子物理学の本です。

 宇宙論の本は、何度読んでも飽きない。難しいので何回も読まないと理解できないというのもあるし、次から次へと出てくる謎と研究者たちの発想と計算、理論に興味津々。そして、実際に加速器などでクォークの存在が証明され、また新たな謎やわからないこと、見つかっていないけれどもそれが無いと今の宇宙は成り立たない物質を予想し、理論が組み立てられ、発見を待つ…の繰り返し。それにワクワクする。とてつもなく昔の、とてつもなく小さな世界を知るために、こんな研究がされている。それは、私たちの生きる宇宙を知ることであり、元をたどれば宇宙にあった物質で私たちの身体・生命も生まれた。素粒子は宇宙を、私たち自身を構成する物質の大本で、素粒子が無ければ、素粒子に働く力がなければ、私たちは生きてはいられない。そんなところにも魅力を感じます。

 アインシュタインの一般相対性理論と、光が粒子でもあり光がエネルギーを持つ粒子のかたまりだという「光電効果」から、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士や、南部陽一郎博士、そして小林誠・益川敏英両博士の研究内容も出てきます。読むと、当時は奇抜とも思える発想で、凄い研究をされていたのだな…と実感します。

 内容は、正直なところ難しいです。クォークの種類と特徴、4つの力の働き方について、以前も本で読んで勉強したのに、なかなか自分の中で理解できない。書かれている内容をひとつひとつ整理していかないと、難しいかと思います。しかし、難しいけど「もっと読みたい」と思ってしまう。内容は難しいけれども、書かれている文章・言葉が身近なことを例に挙げていたり、説明も順を追って丁寧にしてあります。もちろん初級~中級レベルの新書なので、これを読めば全部がわかるわけではないですが、宇宙論・素粒子物理学はこんなにも面白いんだよ!という興味のともし火を心につけてくれる本です。最後に、「何がまだわかっていないのか」で終わるのもいい。宇宙論・素粒子物理学はまだまだこれからが面白い分野。大型加速器で新たなクォークや反物質の発見、スーパーカミオカンデなどでのニュートリノの発見、ダークマターの観測。どれも発見・観測できれば、宇宙の謎にまた一歩近づける大発見です。IPMUで研究をしている方々をはじめ、世界中の研究者たちの手で、その一歩一歩が切り拓かれる日が待ち遠しくなります。もちろん、この本をきっかけに、宇宙の謎解きに参加することを目指すもよし!

 ちなみに、この本の印税はIPMUに寄付され、研究などの活動資金にあてられます。しがない文系の私でも、小さくても研究の力になれる。そして、その本を読んで勉強させてもらえる。新しい出版の形だなと感じました。

 で、結局、何故この本が売れているのか。…皆謎だらけの宇宙に興味がある、宇宙が好きだってことでいい、かな?(強引wでも、それならとても嬉しい。

 IPMUには非公式ブログもあります。
IPMU semi-official blog
 イベントも行われているので、興味のある方、お近くの方は是非どうぞ。千葉県柏市にある柏キャンパスでは、一般公開もあるそうです。
by halca-kaukana057 | 2011-01-08 23:17 | 本・読書
 先日のNASAの「宇宙生物学上の画期的な発見」。発表の数日前から何だ何だと騒がれていましたが、内容は、生命にとって必要なリン(P)の代わりにヒ素(As)をDNAに取り込んで生育することのできる細菌が見つかった、とのことでした。

朝日新聞:ヒ素食べる細菌、NASAなど発見 生物の「常識」覆す

 この発表で、生命にとって水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、リン(P)、硫黄(S)の6つの元素が必要なことを初めて知りました…。水素や炭素、酸素、窒素はわかってはいましたが、リンと硫黄も必要だとは知らなかった。はい、高校の時は必修で化学を少し、喜んで迷わず地学を選択。必修で学んだ化学はどうも苦手で、生物も地学一本だったため眼中になかった文系です。よって、化学と生物には疎いです。そんな私でも、この解説はとてもわかりやすく興味深く感じ読めました。

I’m not a scientist.:<速報>リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物が見つかった

 ヒ素というと、毒カレー事件を思い出す人も多いと思います(私も)。猛毒のイメージがあるのですが、何故ヒ素が「猛毒」なのか。リンとヒ素は周期表の同じ列に並ぶ「同属元素」。似た化学性質を持っているそうです。性質が似ているので、ヒ素をリンと間違って取り込んでしまう。でも、多くの生物にとってヒ素はリンの代わりにはならない。なので、ヒ素は生物にとっては「猛毒」とされてしまっている。これも初めて知りました。

 似ているけれども、異なるリンとヒ素。でも、ヒ素をリンの代わりにすることの出来る生命体もいる。以前、「地球ドラマチック」だったか、「ディスカバリーチャンネル」だったかで、地球とは全く異なる環境の天体で、地球のものとは全く異なる仕組みを持った生命がいるかもしれない…とCGで紹介していた番組を観た記憶があるのですが、それの裏づけとなる発見だったのです。生命がどんな環境で、どんな仕組みをもって生存・生育していけるかの可能性が広がった。凄いなと感激してしまいました。

 苦手だと思っていた化学・生物に関しても、このニュースがきっかけで勉強できました。ありがたく、嬉しいです。苦手だと思っていたものへの見方が変わったこのきっかけを大切にしていきたいとも思います。

 今、宇宙のどこかで、私達の想像を超える生き物が、どこかの星にいるかもしれない。また、星空の見方も変わりそうです。(結局天文に辿り着いてしまいましたw)
by halca-kaukana057 | 2010-12-04 22:43 | 宇宙・天文
 今日はこのニュースに限ります!!

JAXA:はやぶさカプセル内の微粒子の起源の判明について
JAXA:宇宙科学研究所・ISAS:はやぶさカプセル内の微粒子の起源の判明について

 小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」が地球に持ち帰ったカプセルの中に入っていた微粒子を、微粒子をかき集めるために開発したテフロン製のヘラで回収し、電子顕微鏡で観察する…という作業が続いていました。今までに回収できた微粒子は1500個。それを電子顕微鏡で観察し、含まれている鉱物を調べたところ地球の岩石と異なり、隕石の特徴とは一致している。また、「はやぶさ」が小惑星イトカワへタッチダウンする前にイトカワを様々な機器を使って観測したのですが、太陽光の波長を調べる機器(近赤外分光器「NIRS」)やX線を観測する機器(蛍光X線スペクトロメータ「XRS」)は、小惑星の鉱物の種類や、元素の組成を調べることが出来ます。その観測結果と照らし合わせてみると…一致。また、地球の岩石に多い火成岩…つまり、地球にはあるがイトカワにはない火山から流れ出た溶岩から出来た岩石が見つかっていない。これらが決め手となり、今日の発表となりました。当初は「SPring-8」などで分析をしてからでないとイトカワ由来かどうかわからないとJAXA側も言っていました。しかし、電子顕微鏡での観察でもイトカワ由来かどうかが明らかになった。私は1年ぐらいはかかるんじゃないかと気長に待っていたのですが、まだ「はやぶさ」帰還から半年も経っていないのに、喜ばしい発表に驚きました。こんなに早くに判明するなんて!!

 今日、勤務中の昼休みにこの朗報を知ったのですが、知った瞬間、涙が出そうになりました(職場なのでグッとこらえましたw)。小惑星へ向かい、タッチダウンしてサンプルを採取、そして帰還するという壮大なミッション。姿勢を制御するリアクションホイールの故障、1度目のタッチダウンでの不時着、化学スラスタの燃料漏れ、姿勢を崩して行方不明、見つかったもののバッテリーや姿勢制御の問題、そして耐久時間を越えての運用でイオンエンジンの故障…数々のトラブルは、過酷な宇宙空間を飛んでいたことと、「はやぶさ」がこれまでに例をみない挑戦的で、最新技術を駆使するための実験のための探査機だったから。それでも運用チームの諦めない運用に、私も何度も応援の声を挙げたり、感激したり。数々のトラブルを乗り越えて帰還し、カプセルを無事に回収できただけでも素晴らしいですが、イトカワのサンプルも回収できていた!感激、ただ感激、嬉しいの一言です。

 運用チーム、「はやぶさ」プロジェクトに関わった全ての皆様へ、心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます!!

 その昼休み中、携帯のワンセグで、川口淳一郎PMをはじめとする運用・サンプル回収担当チームの記者会見を観たのですが、川口先生の嬉しそう、且つ感慨深い表情と、時々ゆっくりと話す姿を観て、ますます涙が…(がんばってこらえたw)。さらに、夕刊が職場に配達され、その一面トップを観てまた…(泣くのはまだ早いw)。帰宅するまで、こらえました。帰宅後、夕刊やテレビのニュースを観て…嬉しくて、嬉しくて、ほろりと来てしまいました。

 「はやぶさ」のミッションには、8段階のミッションのシナリオがあります。イオンエンジンを稼動させることから、サンプルを回収するまで。今日の発表で、その全てをクリアしました。500点満点!!もう充分すぎる成功です!
ISAS:小惑星探査機 はやぶさ:ミッションのシナリオ

 さて、今後は更に詳しい分析をするために、まずはヘラについたままの微粒子を石英のケースに入れる作業があります。また、カプセルの微粒子が入っている「サンプルキャッチャー」という容器は2つの部屋に分かれていて、現在は2度目のタッチダウンの際に使われたA室を調べていたのですが、今度は1回目のタッチダウン…つまり、イトカワの上で「はやぶさ」が大きく何度もバウンドしたと思われる時に使われたB室の微粒子回収も行います。このB室には、より多くの微粒子が入っているのではないかとみられています。今後も楽しみ!

 そして、今回のイトカワは岩石からなる「S型」の小惑星。後継機の「はやぶさ2」では、岩石に有機物と水が含まれている「C型」の小惑星を目指します。イトカワのサンプルを調べることで太陽系の起源や太陽系誕生の頃の様子を知ることができますが、「はやぶさ2」でサンプルが回収できれば、さらに詳しく調べられる。有機物も含まれるので、生命の起源にも迫れるかもしれない。太陽系謎解きをする探査はまだまだ始まったばかりです。まだまだ続きます。これからはもっと面白いよ!

・以下、関連サイト
日本経済新聞:太陽系の起源解明に大きな足がかり イトカワ微粒子
 小惑星について、とても詳しい記事。

マイコミジャーナル:「はやぶさ」カプセルから発見された微粒子1,500個がイトカワ由来と判明!
 いつも詳しい記事で有り難いマイコミジャーナルさん。今回も詳しく、わかりやすいです。

Imamuraの日記:「はやぶさ」おつかいできたよ記者会見
 宇宙作家クラブのひとり・今村勇輔さんのブログ。記者会見の詳細があります。これはありがたい。

ITmedia News:川口教授「本当に信じられない」 はやぶさの“おつかい”成功に「感激」
時事ドットコム:点数は付けたくない」=宇宙機構教授
 記者会見での川口先生の表情が素敵過ぎます。火星探査機「のぞみ」がトラブルで火星へ到達できないかもしれないとなった時、芸術的な軌道で「のぞみ」を何としてでも火星へ到着させようと尽力したが、願いはかなわず。「はやぶさ」PMになっても苦難は続くも、無事の帰還と今日のイトカワのサンプル回収成功に、この笑顔。8月の講演会でもそうでしたが、これまで頭脳明晰でクール、感情を表に出さないと言われてきた川口先生のこの穏やかな表情に、「はやぶさ」が成功したこと、新たな太陽系探査の可能性を切り拓いたことを実感します。

 とにかく今日は嬉しいので、祝杯をあげていますwはやぶさに乾杯!
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 飲んだのはニッカの「シードル スパークリングヌーヴォ2010」。今年秋に収穫された青森・弘前産りんごをつかったお酒です。「はやぶさ」といえば、井出酒造「虎之子」やリポビタンDを連想しますが、「虎之子」はないし、リポDを夜に飲んだら眠れなくなる。そこで、弘前産りんご→川口PMは弘前のご出身という繋がりで。iittalaのGaissaを使って飲んでます。更に、飲み足りずHTVのどごし生にも手を出した…(ちょうど家にあった)。のんだくれてますw

 来月は、金星探査機「あかつき」がいよいよ金星に到着、観測のスタートをきります。打ち上げもスタートですが、ここからが本番。成功をお祈り申し上げます。ソーラーセイル実証機「IKAROS(イカロス)」も順調に飛行中。フルサクセス祈願!
 「はやぶさ」で一気に加速した日本の宇宙開発・宇宙科学研究。今後、もっと発展しますように。

【過去関連記事】
「はやぶさ」カプセル:ただいま微粒子回収中
【8.23はやぶさ講演会】 「はやぶさ」川口先生講演会レポ
小惑星イトカワ丸ごと回収!? 「イトカワぱん」を食べてみた 【8.23はやぶさ講演会:番外編】
 せっかくだからお祝いに、また「イトカワぱん」発売されないかなぁ…。
by halca-kaukana057 | 2010-11-16 23:28 | 宇宙・天文

人間はどこまで動物か

 この本、夏休みの読書にピッタリだと思います。


人間はどこまで動物か
日高敏隆/新潮社・新潮文庫/2004

 お馴染み、動物行動学者である故・日高敏隆先生のエッセイです。虫や動物たちのこと、自然のこと、大学でのこと、移り変わる季節と自然、社会のこと…などなど、日高先生は虫や動物を原点として、幅広い分野に興味を持ち、考えていらっしゃったのだなぁと感じます。

 これまで日高先生の本を何冊か読んできましたが、この本を読んで思ったのは、人間も自然の一部で、自然とは切り離せないということ。タイトルが「人間はどこまで動物か」なのですが、人間は文明を作り上げてきたが”ヒト”であり、ヒトも動物もそれぞれのやり方で子孫を残そうとしてきた。知能を持ち文明を発達させてきた人間と、動物を対比させ、「人間は”どこまで”動物か」とひとつの物差しだけで考えようとする。そこでどんな「違い」を見出したいのかわからない、という内容だ。このあたりや、他の部分を読んでいて、人間がどこまで動物か、なのではなく、人間・ヒトも動物も虫も自然の中で生きている。自然があって生きられるし、子孫を残していけるのだろうと感じた。例えば、自然と切り離された環境…国際宇宙ステーションや、現在はロシアで火星有人探査のための実験施設で、乗組員を想定した人々を施設に1年以上隔離して生活する実験も行われている。そのような環境では、酸素を作り出す装置が必要だし、水を循環させる装置もある。自然が当たり前のようにしていたことを、そのような自然と隔離した施設では人間が作り出さなければならない。自然と隔離されている施設を作って初めて、人間は人間も自然の一部だったと実感したのではないだろうか。そう感じました。


 また、今回の本には蝶のお話が頻繁に出てきます。そのお話を読んで、小学生の頃育てたアゲハチョウのことを思い出しました。理科の授業がきっかけだったような、記憶はおぼろげなのですが、アゲハチョウをたまごから育ててみたいと思って、山椒の木を探してそこからたまごの付いた枝を取ってきて、ケースに入れて育て始めました。チョウに関する本を読みながら、どんな風に育つのか、サナギの時中身はどうなっているのか(これには驚いた。実際、サナギを割って見てみようかと思ったが、育てているうちに愛着が沸いてサナギを割る=成長をそこでストップさせることはできなかった)、何を食べるのか等を調べながら、観察日記も書いて成虫まで育て、羽化した後は外に放しました。黒と白の、まさに鳥のフンのような幼虫を経て、緑色の幼虫に。わざと頭をつついて、黄色い臭うツノを出させて遊んでみたりもしました。サナギになった後は、いつ羽化するのか楽しみで、毎日ケースの中を見てはあのサナギの中ではすごいことが起こっているのだなぁと考えたりもしました。そして羽化。あの色とりどりの翅を広げるのを、ただ見つめていたのを覚えています。

 今年は暑いせいか、家の周りでアゲハチョウをよく目にします。もう数十年も前の話ですが、あの時育てて放したアゲハチョウの子孫なのかもしれないな、と思いながら観ていました。翅の模様を、またじっくり見てみたいなと思いながら。モンシロチョウやモンキチョウ、ベニシジミもよく見かけます。
 山のほうに行った時は、アオスジアゲハらしきチョウを見かけた。黒く、青い模様があった。私の住む地域、しかも涼しい山のほうでは見られないようなのだが、何故かいたので驚いた。すぐにひらひらと林のほうへ飛んで行ってしまったので、もっとよく観たかったと思う。

 そんなアゲハチョウの思い出と、チョウへの興味を思い出させてくれたこの本に感謝したいです。この本で、さらにアゲハチョウの生態について詳しく書かれていたので、それを確かめるためにももう一度育ててみたいなぁ、なんて思ってしまいました。もう秋が近づいてきているので厳しいかな?

 秋も近づき、朝の涼しい時間や夜には虫たちの声が聞こえます。この本で、これまでとは違う視点で、虫たちや自然を見て、付き合うことができそうです。
by halca-kaukana057 | 2010-08-18 22:45 | 本・読書

セミたちと温暖化

 かなり前に「春の数えかた」を読んだ、日高敏隆さんのエッセイ。本屋で目に留まったので、久々に読んでみた。


セミたちと温暖化
日高敏隆/新潮社・新潮文庫/2009

 動物行動学者である日高さんが、虫や動物たちを見つめて、その生態や自然とのかかわりについての短いエッセイを集めてあります。普段、身近にいる動物や虫たちの行動にも意味がある。また、種によって異なることがあるのは何故か。自然環境が大きく変化している現代、動物たちにどんな影響があるのか。また、海外に出かけた時に気づいた、日本の自然・社会のこと。内容は重く濃いのに、温かい優しい文章でリラックスして読める不思議。読んでいると、その虫たちや動物たちの世界に引き込まれるかのよう。

 この本を読んで思ったのは、生き物は自然と関わり無しに生きることは無理だということ。虫も鳥類も哺乳類も、その生息する自然環境に合わせて、食も身体も生殖も、危険から身を守る方法も"選択"してきた。この地球上には多種多様な生物が生きている。同じ環境だったとしても、様々な種に分かれている。その環境に対してベストな特徴を持った生物はいない。環境に合わせて、どういう暮らしをするかで、食も変わるしそれに合わせて身体も内臓も歩き方・走り方、身を守る方法、繁殖も子育ても変化する。生き物は不思議だと思わざるを得ない。

 そんな生き物たちを見つめる日高さんの視点が、言葉がとても温かく、生き物が好きなんだなぁと感じます。「チビシデムシ」の項では、日高さんが発見した新種の虫について書かれています。小さな甲虫もじっくりと観察し、名前がわからない場合は専門家に聞いてみる。その結果、その虫が新種で、「ヒダカチビシデムシ」と名づけられた。「「なぜ?」に答える」・「「なぜ?」の「なぜ?」では、子どもたちや大人の生き物に対する疑問を通して、考えることの面白さを語っている。生物学・分類学でもまだまだわからないことがあるのだ…ということも知った。どの学問でも、ここで終わり、というものが無いのだな。生物学にはあまり詳しくないので、普段あまり知らない分野のお話に触れることができるのはありがたい。

 「総合とは何か」「文系・理系」の項も、学問の分類と関係性について考えさせられる。文系だけど理系にも興味がある私としては、日高さんのご意見に大賛成。文系・理系と2つにはっきりと分けられないと私も思う。日高さんが初代所長を務めた総合地球環境学研究所(地球研)で日高さんがどんな仕事をされていたか、もっと知りたくなった。

 日高さんは昨年11月に逝去されました。このような温かいお話を語れる方がいなくなってしまったのは、残念でなりません。日高さんのエッセイをまた読もう。

過去記事:春の数えかた

春の数えかた (新潮文庫)

日高 敏隆 / 新潮社


by halca-kaukana057 | 2010-03-09 23:16 | 本・読書
 今日のショッキングなニュース。

学研ホールディングス:『学習』『科学』休刊のお知らせ
児童数の減少やニーズの多様化等の市場環境の変化による部数の減少のため、誠に勝手ながら『学習』は2009年度冬号(2010年1月1日発行)、『科学』は2009年度3月号(2010年3月1日発行)の発行をもちまして休刊させていただくことになりました。


 えええええ!あの学研の「学習」と「科学」が休刊!?とてもショックです。子どもの頃、本当にお世話になりました。毎月"学研のおばちゃん"が届けに来るのが楽しみで、届けに来てくれた時の嬉しさを今も覚えています。そして中身を読んで、「科学」の付録を作って実験(というより遊んでるw)したり、栽培・飼育して観察したり。学校の宿題の日記にも、「学研の科学のふろくの~を作りました。(以下云々)面白かったです。」ということを書いたり。思い出すときりがない。その「学習」と「科学」が休刊になってしまうなんて。残念でなりません。

 今の自分は、「学習」と「科学」があったからあると言っても、過言ではないと私自身感じています。「学習」の歴史読み物や、国際関係・世界の国々紹介は面白くて何度も読んだ。そして「科学」。私は結局文系の道に進んだけど、大人になった今も科学に興味を持ち、科学が好きなのは「科学」のおかげだと感じている。付録でモノづくりや実験・観察の面白さを体験し、本誌を読んでさらに興味を深められた。とりわけ、あさりよしとお作の科学漫画「まんがサイエンス」は本当に面白かった。身近な日常にある科学から、遠い宇宙の科学まで、ギャグで笑いながら楽しく読んだ。特に「ロケットの作り方おしえます」、これを子どもの頃に読んでいなかったら、今の宇宙好きな自分はいないと思う。科学の道には進まなかったけど、「科学」を読んでいて、本当によかったと思っている。(そして、その機会を与えてくれた両親にも感謝。)

 学校での勉強とはちょっと異なる「学ぶこと」の面白さ。それを味わえたのも「学習」と「科学」があったから。学校で今勉強している内容には直接結び付かない。でも、毎月興味深いことが書かれてある本が届く。付録を自分で作って実験・観察する、ちょっとした「科学者気分」。今はインターネットが発達して、子どもたちもネットで調べ物をするけど、昔はパソコンもネットもない。新聞や雑誌、テレビが情報を入手する主な手段だった。が、子どもにとって新聞はちょっと難しい。「学習」と「科学」が、情報の入手するルートでもあった。「学ぶこと」「考えること」への姿勢、欲求。それを培ってくれたのが、私にとっては「学習」と「科学」だった。

 もし、私がいつか親になったら、子どもと一緒に「学習」と「科学」を読みたいなと思っている。子どもの頃味わった楽しさ、ワクワクを、今度は後世に伝えたい。一緒に楽しみたい。そう思っていたのに。残念でなりません。

 学ぶ楽しさ・面白さを、そして沢山のことを教わりました。本当にありがとうございました。復刊を心から願います。いつかまた、子どもたち(大人も)が「学習」と「科学」で学ぶワクワクを味わえますように。


 子ども向け科学雑誌は「子供の科学」ぐらいになってしまったなぁ。「子科」もなくなってしまったら、あらゆる意味で危機だなぁ。子ども向け科学雑誌は、大人が読んでも面白いのに。支援しようか。

【関連記事】
まんがサイエンス2 ロケットの作り方おしえます
まんがサイエンス10 ライフ&テクノロジー
 今も「科学」で「まんがサイエンス」は連載続行中。どうなるんだろう。終わってしまうのだろうか。それともどこかに移籍するとか?こんな楽しくて勉強になる漫画を無くすなんて、もったいない!心配です。
by halca-kaukana057 | 2009-12-03 21:45 | 興味を持ったものいろいろ
 ノーベル賞発表の季節が来ましたね。というわけ…ではないのですが、日本人で初めてノーベル賞(物理学賞)を受賞した湯川秀樹のエッセイが文庫で出ているのを知ったので、読まずにはいられなかった。科学者のエッセイが大好きです。


旅人 ある物理学者の回想
湯川 秀樹/角川書店・角川文庫ソフィア

 この本は、湯川博士が朝日新聞に自身の生い立ちなどについての連載エッセイをまとめたもの。生まれてから生い立ちや両親、兄弟のこと、住んでいた京都の街のこと、学校のこと、学友たち、そして学問のこと…。淡々と、しかし当時の湯川博士が見ていたであろう風景や人々の様子が鮮やかに語られている。

 ノーベル物理学賞を受賞した物理学者のエッセイといえば、リチャード・ファインマンの「ご冗談でしょう、ファインマンさん」「困ります、ファインマンさん」を思い出す。ファインマン博士のエッセイは(と言っても、これらの本はファインマン博士自身が書いたわけではないのだが)、とても愉快痛快で面白い。好奇心旺盛で何にでも挑戦し、ユニークな発想とユーモアで周りを驚かせる。(「ご冗談でしょう~」の下巻に、ファインマン博士が来日した際のエピソードがあり、そこに湯川博士も登場する。)

 一方、こちら湯川博士の回想は、とても静かでもの寂しい。言葉のひとつひとつに、静けさが漂っている。科学や自身の中間子論についても書かれているが、専門的な用語の羅列ではなく、湯川博士自身が感じたことや中間子論を思いつくまでの苦悩が淡々と書かれている。しかし、淡々としている=つまらない、ではない。とても思慮深く、哲学的な文章の世界に引き込まれる。この回想では、湯川博士がどんな本を読んできたかについても書かれているが、科学書よりは古典文学や哲学書の方が多いような気がする。子どもの頃から読んできた文学や、心の中で育ててきた哲学的考え方を糧に、量子物理学という未知の世界への旅へ挑む。学問というものは、どこでどうつながっているか分からないと感じることがある。意外なつながりを見つけて驚くこともあるし、わき道にそれたつもりがアイディアの元になった…ということもある。湯川博士の探究心、洞察力はものすごいものだと感じた。

 湯川博士は、自分自身のことを孤独で我執の強い人間だと書いている。孤独であっても、その目線は自分自身の心、そして周囲の人々へ向けられている。より深く、より優しく。湯川博士のことはこの本を読むまではあまり知らなかったが、学問と人間を静かに、穏やかに愛した人なのだろうと感じた。

 とにかく文章が美しく、生き方についても考えさせられる本なので、科学は苦手と感じている方にもおススメします。湯川博士のエッセイは他にもないのかしら。もっと読んでみたくなった。
by halca-kaukana057 | 2009-10-06 21:13 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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