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「芸術力」の磨きかた

 「『芸術力』の磨きかた 鑑賞、そして自己表現へ」(林望、PHP新書、2003年)



 以前、クラシックの聴き所を寄せ集めしたCDが売れていると聞いて、私はあまり好きじゃないなと思ったことがある。部分だけを聴いて何が分かるの?聴き所もそうでないところも、全部聴いて初めて感想が出てくるのではないかと。ある友人にも「クラシックを聴いてみたいのだけれども、そういうCDは買い?」と訊かれた事があった。私は「私はあまりそういうCDは好きじゃないけど、どんな曲かを知るには良いと思う。でも部分だから、気に入ったら全曲入ったCDを買ったほうがいい」と言っておいた。今でも、そういうCDは好きじゃない。でも、私もまだまだ初心者。知らない曲が沢山あって、沢山の曲を知りたい・聴きたいとなるとこの手のCDは便利だなと思ってしまう。

 この本を読んでいてそんなことを思い出した。芸術と言うと堅苦しいものを想像しがちだけれども、嬉しい時に歌ったり踊ったりするなど、芸術は身近に存在する。また、人間は何かを表現したいと思う気持ちを持っている、つまり「芸術欲」を満たすことを望み、人生を豊かにするために欠かせないものだと著者は言っている。

 そんな気持ちがあるからか、時々芸術に関するブームが起きる。今はクラシックブームらしい。だからこそこういうCDが売れているのだろうけど、ちょっと待った。知っている曲を増やす=知識・経験を積むのが芸術の楽しみなのだろうか。

 著者の答えは「NO」だ。知識が増えても自分なりの音楽観・見方が育っていない。だから浅くて広い知識が増えただけのこと。知っている曲は少なくても、好きな曲や作曲家を徹底的に聴いて自分なりの見方を持つ方がいい、と。確かに、何か曲を聴いてただ「いい曲だった。良かった」と思っただけで、あとは記憶の中に放り込まれるのでは面白くない。

私ももっとクラシック音楽について「分かりたい」んだ。だから好きな曲をとにかく何度も聴いてみたり、演奏者で比べてみたり。未だに聴いた後の感想はなかなか深くならないけど、少しずつ速さや音の強弱などに注目して、その結果曲の感じ方がどう変わるのか分かるようになって来た。と言っても、まだまだ分からないことばかりで、聴いたCDの感想を書きたいと思っても言葉が出てこなくて困ってしまっている。本の感想についてならそれなりの言葉が浮かんでくるのに。きっと、本を読むことは子どものころから続けてきたことだから身についている。クラシックはまだ身についていないのだと思う。

 この本では鑑賞するだけでなく、絵を描いたり演奏したり、書道や写真など自分で表現することも薦めている。芸術は完成することがない。自分が望む表現が出来るまでしつこく追求する。その姿勢がアマチュアでもプロに近づくために大切なのだそうだ。「自己満足」という言葉が氾濫しているような今、探求することの楽しさを思い出させてくれるような気がする。私だって、その時だけの「にわかファン」にはなりたくない。性格のせいか、一度興味を持ったらなかなか熱が冷めない、いや冷めたくない。読書も音楽を聴くことも、ピアノを弾くことももっと続けてみたい。ピアノも、ただ曲が弾けるんじゃなくて表現力の幅を広げてみたい。(その前に基礎練習がなってないのでどうしようもないのだが) もっと視野を、興味を、そして自分を広げ、深めたい。私もそういう欲の強い人間なんだな、と読み終わってあらためて感じる本だった。
by halca-kaukana057 | 2006-04-18 20:17 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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