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タグ:角野栄子 ( 6 ) タグの人気記事

 「魔女の宅急便」原作シリーズを読み続けてきましたが、いよいよ最終巻です。

・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
・3巻:[原作小説]魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女
・4巻:[原作小説]魔女の宅急便 4 キキの恋
・5巻: [原作小説]魔女の宅急便 5 魔法のとまり木


魔女の宅急便 6 それぞれの旅立ち
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013
(単行本は2009年福音館書店、その後2013年福音館文庫)


 キキととんぼさんが結婚し、13年後。2人の間には、男の子のトト、女の子のニニという双子の子どもが生まれた。キキはコリコの街でお届けもの屋さんの仕事を続け、とんぼさんは相変わらず昆虫に興味津々の先生。トトとニニは11歳、ニニはそろそろ魔女になるかどうかを決めなければならないが、なかなか決意の言葉を聞けず、キキは不安になっていた。一方のトトは魔女や魔法に興味があり、くすりぐさの世話や刈り入れにも積極的。ただ、男子は魔女にはなれない…キキの血は引いているのに…。
 小さかったおソノさんの娘のノノと、キキの親友モリさんの弟・モリの結婚式、一通の手紙が届く。あのケケからだった。更に、夕暮れ路の家に、ヨモギさんも帰ってくる。トトとニニは、コリコの街で様々な人と出会い、心を通わせながら成長してゆく…。

 この6巻で最後なのか…と感慨深く思いながら読みました。リアルタイムで読み続けてきた人にとっては、もっと感慨深いだろう。あのキキととんぼさんが結婚し、子どもが生まれ、お父さんとお母さんになるなんて。表紙では少女のままのキキ。35歳になったキキを想像してみたが、イメージできなかった…。

 そのキキの双子の子ども達、トトとニニ。お姉さんのニニは元気で快活、様々なものに興味は持つが、長続きはしない。魔女になるかどうかも迷っている。一方、弟のトトは物静かで物事をじっくり考えようとする。魔女や魔法に興味は持っているのに、魔女の子どもでも男子は魔女になれない。

 2回ほど読んだが、どちらもトト目線で読むことが多かった。自分がトトと性格が似ているからか。また、魔女の血を引いているのに魔女にはなれない、というトトが向き合っている現実に思うことが色々あった。でも、男子だから魔女にはなれない、と落ち込むことで終わらない。魔女にはなれないけど、トトはトトだけの”魔法”のような何かを持っている。それを追い求める姿が、いかにも青春。
 一方、ニニはニニで大変だ。魔女の子どもで女の子=魔女になる、と学校の友達に決め付けられてしまっている。ニニは曖昧な返事をするが、これはこれで難しい。親の、代々の家業を継ぐこと。そこにある周囲の期待、もう決まっている道を歩むのが楽そうに見える…ニニは明るくはぐらかしているが、相当のプレッシャーなのだ。そう思うと、ニニのその明るいケロリとした言動の奥に隠れいている気持ちを読み取ろうと読んでしまう。

 母になったキキは、「見えないもの」を大事にする、とトトとニニに話す。ニニは「魔女のお説教」だと逃げ出す。キキがかつて母・コキリさんの話を「古い」「何でも慣習」と思っていたのが、キキもそんなことを言うようになったのかと思うとちょっとおかしい。でも、この「見えないもの」を大事にすること、これはこのシリーズ全体にかかるテーマ。世の中は目に見えているものだけじゃない、目に見えない不思議もたくさん存在している。魔女はそんな世の中にある不思議を伝える役目も持っている。空を飛び、くすりぐさでくしゃみのお薬をつくるだけが魔女の力、魔法ではない。以前、作者の角野栄子さんのインタビューで、キキが魔女であること、キキの魔法は特別なものではなく、ひとつの個性、なのだと読んだことがある。魔女にはなれないトトも、魔女になるか迷っているニニも、キキととんぼさんから引き継いでいる個性。成長の過程で後天的に作り出した個性。個性も目に見えるものばかりではない。世の中、目に見えるものよりも、見えないものの方が多いんじゃないかとよく思う。自分の中に何があるのか、読後、向き合いたくなる。

 この最終巻で、ケケが再登場します。3巻「もうひとりの魔女」で登場した不思議な少女・ケケ。ケケも、結局自分が魔女かどうかはわからない。そのまま、ケケも30代になりました(!!時の流れとは言え…驚きである)。そのケケと、トト。魔女のようだけど、魔女じゃないという共通点を持つ2人の関わり。ケケらしい謎が謎を呼ぶ展開で、ワクワクしました。

 トトとニニの成長、そして、迎える13歳。魔女の旅立ちの年齢。ニニはどうする、そしてトトは…。これ以上の感想は書かないことにしておきます。
 まだ続きが読みたいと言えば読みたいです。終わってしまうのが寂しいです。でも、この物語も、読んだ人、私の心の中で、続いていくんだろうな。そんな読後でした。
 角野先生、素敵な物語をありがとうございました。
by halca-kaukana057 | 2014-06-19 21:53 | 本・読書
 読み進めています「魔女の宅急便」原作、5巻です。

・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
・3巻:[原作小説]魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女
・4巻:[原作小説]魔女の宅急便 4 キキの恋

魔女の宅急便 5 魔法の止まり木
角野栄子/講談社・講談社文庫/2013
(単行本は2007年福音館書店、2013年福音館文庫)

 19歳になったキキ。これまで通り、コリコの町でお届けもの屋さんを続けている。とんぼさんも学校で昆虫や生き物の勉強を続けている。キキはとんぼさんからの手紙をたのしみにしているけれども、好きな昆虫の話ばかり。会えない日々も続いていて、不満を抱えていた。キキは新婦さんのためにベールのお届けものをしたり、町長さんに恋するウイさんの町長さんへのプレゼントを届けたり、そんなことをしているうちにキキととんぼさんの将来のことも考えてしまう。
 そんな中、ジジも白猫に恋をする。その頃から、キキとジジの関係、そしてとある出来事からキキの空飛ぶ魔法にも変化が…。

 キキが19歳、10代最後の年を迎えました。表紙も、扉絵イラストも、大人っぽくなりました。しかし、おてんばでやきもち焼きなところはまだまだ変わっていません。とんぼさんからの手紙は、相変わらず昆虫や生き物のことばかり。一方、キキは…女心ってやつですねぇ…。

 4巻の副題が「キキの恋」。5巻も恋・恋愛がテーマかと思いきや、それだけではありませんでした。キキの魔法に変化が起こります。まず、ジジとの会話。キキとジジは魔女猫言葉で会話している。ジジの声は、普通の人には猫の鳴き声にしか聞こえないが、キキはジジの言葉がわかるし、ジジもキキの言葉がわかる。しかし、ジジに恋人(恋猫?)ができ、ジジは魔女猫言葉で話しているのを普通の猫語に直そうとしている。普通の猫から聴くと、ジジの鳴き声は異なるものだった。魔女猫であるジジを、普通の猫の視点から見たら、聴いたらどう感じるのか。これが面白い。普通の猫とも違うものなのか…。キキがとんぼさんのことを想うのを時に冷ややかに見ていたのに、恋人の猫に惚れるジジもまた、恋は盲目状態。ジジ、人のことを言えない…w

 もうひとつの変化…キキがうまく飛べなくなってしまった。飛べないことは無いのだが、思い通りに高く飛ぶことができない。その原因はこの5巻の冒頭から出てくるのだが、「ほうきにおまかせ」のところで決定的になる。魔女にとって魔法とは何なのか。そして、思い通りに飛べなくなった理由の解釈も面白い。それが、5巻の副題の「魔法のとまり木」。

 私たち一般人も、様々な分野の第一線で活躍する人も、どんなに得意なことがあっても、スランプに陥ることがある。なぜかうまくいかない。いつも通りにやっているはずなのに、手応えがないと感じたり、不調に陥る・失敗ばかりしたりする。何とかしようと焦り、もがけばもがくほど蟻地獄のように更なるスランプにはまってゆく…。そんな時、原因は何だろう、どうしたらいいだろうと悩む。基本に立ち返ったり、開き直って休んだり、いつもと違うことをして息抜きをしたり。しばらくすると、あのスランプはなんだったんだろうと思うほど、元に戻って驚くことがある。もしかしたら、「魔法のとまり木」のようなことがあるのかもしれない。自分自身を省みる、見つめなおすために。長い目で見るために。

 そんな中でキキはひとつの仕事を引き受ける。デザイナーのサヤオさんのファッションショーを手伝うことに。このサヤオさん、とてもキザ。その態度に反感を抱くキキだが、話を聞くうちにサヤオさんの考えとキキ自身の考えが似ていることに気付く。魔女は、この世界に不思議があることを感じてもらう存在でもある。そしてサヤオさんのデザインしたドレスの色が、そんな世界の不思議と美しさを表現していて…この部分にとても惹かれました。
 あと、「海のかぎ」も。解明されない不思議があると謎を解きたくなりますが、そのまま不思議にしておくのもいいのかもしれない。

 そして、キキは20歳に。とんぼさんも学校を卒業し、卒業後の進路も決定。キキとの未来も…。

 次はいよいよ最終巻。15年後に一気に飛びます。
by halca-kaukana057 | 2014-05-02 21:46 | 本・読書
 実写映画が公開されている「魔女の宅急便」シリーズ(原作。ジブリアニメはまた別物)映画を観に行く予定はありませんが、原作を引き続き読んでいます。

・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
・3巻:[原作小説]魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女


魔女の宅急便 4 キキの恋
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013
(単行本は福音館書店、2004.その後福音館文庫、2012年)

 キキは17歳になり、コリコの街で今日もお届けもの屋さんの仕事をしている。とんぼさんはナルナの町の学校で、虫や生き物、自然の勉強をしている。夏になり、学校は夏休み。とんぼさんがコリコの街に帰ってくるのを楽しみに待っていたキキだが、とんぼさんは夏休み中、「雨傘山」という山に入って山のことを調べたいという手紙が届く。とんぼさんが帰ってこない、とんぼさんに会えないことにひどく落胆するキキ。
 一方、キキと同年代の仲良しのモリさんは、将来の夢のため、隣町のレストランに1ヶ月間住み込みで手伝いをし、料理を習いに行きたいと言う。そこで、弟の8歳のヤアくんをキキに預かってほしいと頼む。ヤアくんと夏を過ごすことになったキキ。ヤアくんはオソノさんの子どものオレくん、ノノちゃんと仲良くなり、毎日冒険をして遊んでいる。
 とんぼさんに会えず、お届けもの屋さんの仕事ではちょっとしたトラブルがあり、くすりぐさの刈り取りのことも忘れ…落ち着かないキキ。
 ある日、キキはお祭りで出会った同年代の友達の集まりに誘われる。しかし、お届けもの屋さんの仕事が入る。コリコの街から離れた遠いところへ向かうキキ。そのお届け先のザザさんは、キキにゆっくりしていって欲しいという。焦るキキ。そして、何故かほうきがなくなってしまう…。


 17歳。とんぼさんへの恋がメイン。表紙のキキも随分と大人っぽく、艶っぽくなりました。扉絵のキキととんぼさんのイラストもいい。
 しかし、17歳…まだ17歳。自分自身の恋心、欲望とうまく付き合えないキキ。とんぼさんは大好きな生物の研究に没頭して、夏休みなのに会えない。同年代のカップルが会うのを引き立てるお届けものをすることになり、嫉妬している。やきもち焼きなところは変わってません。その一方で、キキの評判は今もうなぎのぼり。同年代の若者たちと、お祭りで仲良くなり、魔女として注目の的になる。とんぼさんはいないけど、自分を認めてくれる、褒めてくれる、素敵だ・カッコイイと言ってくれる人たちがいる。…この時、キキは大事なことを見失っていました。

 キキの魔法は飛ぶこと。あと、くしゃみのお薬を作ること。これだけ。でも、「魔女」というだけで特別な存在に見られてしまう。キキ自身は、飛ぶことぐらいしか出来ない、大したことは出来ない、といつもは謙遜するのですが、この4巻の前半では、すっかり舞い上がっている。

 そんな時、山のほうに住むザザさんと出会う。自分を特別な存在と持ち上げてくれる友達との約束のため、早く帰りたい。でも、ザザさんは様々なおもてなしやお話をする。普段のキキなら、そんなザザさんのことを面白がるのに、うっとうしいと思ってしまっている。その時、キキに起こった大事件。置いたはずのほうきがない。ザザさんを疑い、ザザさんの家から逃げる。しかし、外は暗い森。何も見えないまま歩くも、うまく歩けず、身体も冷えてくる…そんな中で、キキが思い出したこと。暗闇の中で自分自身の心が見える、といいますが、まさにその状態。キキはいつしか、心の暗闇の中にいた。大切な人に会えない、仕事もうまくいかないと自分を見失い、自信を失っていた。自分を持ち上げてくれる友達がいても、それは満たされるものではなかった。17歳だからこそぶつかるようなキキの悩む姿と、そこから解放される様が清々しい。

 「夕暮れ路」の先の庭で会ったヨモギさんとのお話も印象的。以前もあったが、キキが運んでいるのは物だけではない。送り主から、受け取り人への気持ち・想いも運んでいる。ヨモギさんへ運ぶモノ、物質ではなく、キキの気持ち、キキの存在そのものだった。「夕暮れ路」は3巻で、歌手のタカミ・カラさんが歌うことを再開するきっかけになった場所ですが、また、この場所が特別なものになりました。読んでいると、光がきらきらしている樹木が美しい小路をイメージします。絵にしたら、どんな路になるのだろう?
 その夕暮れ路での出来事の後、キキが話した言葉が心に留まりました。キキが愚痴を言わなくなった、というジジに対して、
「ダメのつぎは、ダメじゃないわ。トンネルのむこうはいつだって光があるのよ」
「でも永遠にダメってことはないわ。わたしは、そう思うの」
(203ページ)


 そして、この4巻の最後は…恋から愛情を自覚する。母・コキリさんが体調を崩して寝込んでしまう。恋はいつか、愛情に変わる。キキにとって大切な人はとんぼさんだけじゃない。コキリさんがどうなってしまうのか…まさか、まさか…私も不安で、ページをめくりました。先輩魔女として、母として、そしてキキを導く存在。いつかは、その時が来るのだろうと思うと辛いが、キキはコキリさん、そして父・オキノさんからも、愛情・愛することを学んでいる。コキリさんの言葉も、深く深く読みたい。
「そうね、いっぱいしようね。おかあさんの思い出、話してあげるね。出会えて、生まれて……思いかえすとたのしいことばかり。でもね、すぎた日の思い出も魔法だけど、これからつくる思い出こそ魔法なのよ」
(248ページ)


 またひとつ大人になったキキ。それにしても、モリさんの成長も清々しい。立派、立派過ぎるほど…こんな立派でしっかりした人間にはなれないよと思ってしまうが、その境遇を考えると、自然な成長なのかもしれない。モリさんにも注目しています。
 5巻も読むのが楽しみです。
by halca-kaukana057 | 2014-03-10 22:26 | 本・読書
 小説「魔女の宅急便」シリーズ、読み続けています。3作目です。2作目から間が開いてしまいました。
・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法

魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013
(単行本は2000年・福音館書店より。その後2006年福音館文庫に)

 キキがコリコの街にやってきて4年目。キキは16歳に。お届けもの屋さんも、くしゃみの薬も、コリコの街の人々にすっかり馴染んでいた頃。ある日、おソノさんのパン屋さんに不思議な、変わった少女がやって来る。黒い服を着た少女。それから、キキやおソノさんの周りで不思議なことが起き始める。そしてその黒い服の少女…ケケという12歳の少女が、キキが住む部屋に転がり込んできた。ケケは自分を魔女だといい、キキの「魔女のしるし」は何だと問う。更に、魔女はひとつの街にひとり、ということも昔からの決まりとは何なのかと問う。困惑しつつもケケと暮らすことになったキキ。更に、奇妙な依頼で「おわりのとびら」という謎めいた本を預かることになってしまった。ケケは、キキの暮らしの中で天真爛漫に動き、ジジやおソノさんやとんぼさんたちとも親しくなり、不思議なことが起こる。キキはケケが何者なのか、そして何をしようとしているのかわからず心が乱れてゆく…。

 2巻で魔女としてもっと成長したいと思い、くすりぐさを育て、くしゃみの薬をつくり人々に配りはじめたキキ。それから1年後、キキも16歳になりました。そんなキキの前に現れたケケという12歳の女の子。この3巻は最初読んで、ケケが一体何者なのか、ケケに振り回されるキキを見ているのがつらくて、よくわからなかった。その後何回も再読して…未だにケケが何者なのか、ケケは「魔女」なのか、魔女だとしたらどんな魔法を使えるのか、謎の本「おわりのとびら」は一体何なのか、「おわりのとびら」の言葉は何を言おうとしているのか…わからないことだらけなのだが、わからないままでもいいのかもしれない。

 どこからやってきたのかもわからない。神出鬼没、天真爛漫、キキしか知らないようなことも何故か知っている。そして、ジジやおソノさんやとんぼさん、飛行クラブの人たちなどキキと親しい人々とも親しくなり、コリコの街の人々の間でももうひとりの魔女がいると評判になる。ケケがいると何か不思議なことが起こり、それがケケの魔法なのかもよくわからない。魔女かと問えば、逆にキキの魔女のしるしは何なのかと聞かれてしまう。ケケの存在そのものが、キキの暮らしや仕事にも影響を及ぼし、キキは困惑するばかり。キキはケケのことが気になり、落ち込みがちになる。そんなキキの不安を見抜いたジジとも大喧嘩をしてしまう。ケケが許せないのか、まだ12歳のケケに振り回されていると思っているキキ自身が許せないのか…。どんどんネガスパイラルに落ち込んでいくキキを見ているのがつらかった。このキキの気持ちはわかる。いきなり出てきて、人の部屋に居候し、それまで順調だった仕事や毎日の生活がその存在で変わっていき、親しい人とまでいつの間にか親しくなっていて、自分がそれまで誇りと思っていたものに口を出す、文句を言う…。随分と酷く書いてしまいましたが、最初読んだ時はそんな風に感じてしまいました。たとえ年下だろうと何だろうと、こんな存在が自分の前に現れるのは御免だ。厄介だ。

 と、読んでいたのですが、何回か再読して、ケケの視点だったら、と考えるようにもなりました。ケケ自身、自分が何者なのかよくわからない。はっきりと自分が魔女だとわかっている。親しい人も沢山いる。その魔法で街の人々の役に立っているキキが羨ましくもある。サバサバと気ままにやりたい放題やっているように見えるけど、その心の中では何を思っているのか。見えてこないところが、さみしい、もの悲しくもある。

 キキとケケは、お互い鏡のような存在だったのかもしれない。キキはケケに出会って、それまで出したことのない自分の一面を出してしまった。疑いや嫉妬、欲、競争心。ケケはキキの仕事熱心で素直な面、そしてケケにないある存在のことで、キキを羨ましいと思っていた。

 そして、キキが悩みに悩んで掴んだひとつの結論。ケケに振り回されていると思っていたが、それはキキ中心の考え方。そのキキ中心の考え方から解放され、キキが自分の本当の気持ち…コリコの街、コリコの人々、そしてとんぼさんへの想いをはっきりと自覚したシーンは印象的です。

 2巻までの雰囲気とは少し違うのに私が困惑しましたが、ケケという存在でキキがまた大人になってゆくことが、愛おしく思えます。嫉妬や疑い、競争心や欲、不安、暗さ…思春期から大人になる過程できっと通る道をキキも通っていたんだな。
 私は大人になった今も、そんな通る道を行ったり来たりすることがたびたびあります。年齢はいい大人なのに。こんな気持ちになりそう、なってしまった時、またこの本を読もうかと思います。「おわりのとびら」のように。

 あと、この3巻の鍵になるのが、歌手のタカミ カラさん。カラさんの歌も思い出したい。カラさんの歌に曲がつくならどんなだろう、カラさんはどんな歌声をしていのだろう。そんなことも想像しました。
by halca-kaukana057 | 2014-01-16 22:39 | 本・読書
 引き続き読んでいる原作「魔女の宅急便」シリーズ。2作目です。
・1作目:魔女の宅急便 (原作)


魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013(単行本は福音館書店/1993)

 キキがコリコの街にやってきて、お届けもの屋さんを始めて2年目。キキは相変わらず忙しくコリコの街を飛びまわります。帰る途中でキキと同い年ぐらいの女の子・モリさんとやんちゃな弟・ヤアくんに出会います。お届けものも、動物園のカバや不思議なかばん、森の窓に散歩まで。そんな中、一通の黒い封筒を届けることになりますが…。その時から、キキはお届けもの屋という仕事、魔女である自分自身のことに思い悩むようになります…。

 コリコの街は相変わらずユーモラスで、どこかおかしい。でも、そんなユーモラスな中に、その後のヒントが隠されていたりして、こうなるとただ「おかしい」では片付けられなくなってしまう。そして、この2作目はキキがより大人になり、仕事について、魔女である自分について思い悩むことが多い。ジブリアニメ版でも、途中でキキが飛べなくなってしまったが、原作2作目は似ているようだけれども違う。

 キキが唯一使える空を飛ぶ魔法をいかしたお届けもの屋さんの仕事を始めて、ものだけでなく人の気持ちも運んでいることに気がついた。送り主の、誰かを喜ばせたい気持ち。困って何とかして欲しい気持ち。届け先の、贈り物に喜ぶ気持ち。困っていたところに届けてもらって、助かったという気持ち。優しさや喜び、そして感謝が込められている。キキもその気持ちに応えるべく、仕事をしてきた。2作目で出会う様々な人々…遠くの島へ未知の動物を探しに行っている探検家の夫に、子どもの写真を届けたい奥さん。病院に入院していて、入院する前にいつも散歩していたコースを愛用の杖と一緒に散歩して欲しいというおじいさん。身体が弱って食べられなく区なってしまった年老いた姉に、子どもの頃食べた思い出のりんごを届けて欲しい時計台の時計屋さん。それぞれの想いがあって、その想いに応えようとするキキ。想いに触れ、お届けもの屋の使命を果たす決意を強くする。…この3つのお話は、特に心に訴えるものがあります。

 しかし、そんなキキの想いが揺らぐ仕事が舞い込む。一通の黒い封筒。その封筒に込められたある想い、届け先もポジティヴに受け取れない…。
 人間は善意だけではい。悪意もある。善意を出したいけど、悪意に裏返ってしまうこともある。お届けものも、善意だけではない…。
 そして、「魔女」であるキキ…コリコの街の人々には最初は怖がられたり関心を持ってもらえなかったものの、お届けもの屋の仕事で、知名度も好感度も上がったと思っていた。しかし、昔からの「魔女」のネガティヴなイメージも消えたわけではない。大きなコリコの街には、様々な人がいる。「魔女」としての自分。一般の人間から見れば確かに特殊かもしれないけど、キキが使える魔法は空を飛ぶことだけ。しかも、それは万能ではない。キキから見た「魔女」と、コリコの街の一般の人々から見た「魔女」のギャップ。そのギャップを埋めるには?「魔女」として、自分に他に出来ることとは?

 このキキの悩み、そしてそれが空を飛ぶことにも支障をきたしてしまった。仕事をしていて、キキと似たようなことを思う。仕事で関わる人に伝えたいことがあって、喜んでもらいたい、困っているなら手を貸して力になりたい。結果、善意やポジティヴな方に向くように仕事をしたいと思っている。感謝されると、嬉しくなり、この仕事をしていてよかったなと思う。
 しかし、仕事は楽しいことばかりじゃない。寧ろ、嫌なことの方が多い。仕事で関わる人に、自分が失敗して迷惑をかけてしまった、困らせてしまった。怒らせる・挑発するつもりは無いのに、相手が怒ってしまった。逆に私が怒りや苦しみを感じてしまった。想いがすれ違って、伝えたいことが伝わらない。本当に仕事の悩みは尽きない。仕事したくないな、もう帰りたいな、辞めたいな…何度も思う。

 「魔女」であるキキの魔法も、特別なこと、と言うよりも、人それぞれの特技・得意なこと・資格・専門分野とも読める。それを活かしたくて仕事しているはずなのに、全然違う仕事を任されてしまったり、やりたい仕事が出来なかったり…。ここも思い悩むところ。

 そんなキキが、その後の仕事を通して出した答え…サブタイトルの「新しい魔法」。自分に足りないものを、仕事している中から見つけて、挑戦してみようと思う向上心。キキの成長が本当に清々しい。

 働くことで、失うこともあるし、得られるものもある。この物語では、魔女は「もちつもたれつ」で暮らし、仕事をしても御礼はお金・代金ではないところがいいなと思う。勿論、現実の現代社会では働いてその分収入がないと生活していけないけれども、この物語で「収入」を外すことによって、働くことで得られるものはお金だけじゃないことを明確にしている。児童文学というのもあるけれど、児童文学だからこそ。大人になって働いた時、この物語のことを思い出して欲しい、と思う。…高校・大学ぐらいまでに読んでおきたかった…。今でも遅くはないですけどね…。


 文庫も第4作まで出ています。まだまだ続きます。
by halca-kaukana057 | 2013-10-08 22:58 | 本・読書

魔女の宅急便 (原作)

 ジブリアニメで、特に好きな作品は?と聞かれたら、「魔女の宅急便」は必ず入ります。キキが奮闘し、悩みながらもお届けもの屋さんの仕事をし、壁にぶつかり、成長してゆく姿は何度観ても素敵ですし、感動します。「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」(調べて、このキャッチコピーが糸井重里さんによるものだと初めて知りました!)の言葉も大好きです。

 と書いておいて、今まで角野栄子さんの原作を読んでいなかった。読もう読もうと思いつつ。そしたら、角川文庫から文庫版が。いい機会だから読もう。


魔女の宅急便
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013(単行本は福音館書店・1985)

 13歳の少女、キキ。キキのかあさん・コキリさんは魔女。とうさん・オキノさんは普通の人間、魔女や妖精のことを研究している民俗学者。3人は小さな町で暮らしていました。魔女になる少女は、13歳の満月の夜、ひとり立ちをして、魔女のいない町でひとりで暮らし始めます。キキも相棒の黒猫・ジジと一緒に、満月の夜ほうきに乗って旅立ち、コリコという大きな海辺の街にたどり着きました。キキが使える魔法はほうきで空を飛ぶことだけ。ひとり立ちした魔女は、自分の魔法で人の役に立ち、少しものをわけてもらうおすそ分けで暮らしていかねばならないのです。キキは、親切にも泊まるところも分けてもらったパン屋さんの粉置場で、お届けもの屋さんを始めます。

 …こう書くと、ジブリアニメとあらすじは大体同じに見えますが…結構違います。旅立った後、キキがどうやってコリコの街にたどり着いたか、コリコの街でお届けもの屋さんを始めて、どんな仕事をするか…。あと、キキのキャラクターデザインが、原作ではロングヘアです。ジブリ版のショートカットも可愛いけど、原作のロングヘアも可愛い。

 原作は、ジブリアニメ版よりも、ユーモラスでゆったりとしていると感じました。「まにあわせ屋さん」のすみれさんの歌や雰囲気、毛糸の腹巻きのお話、コリコの街の大晦日のある大イベントなど。これは原作の物語だからこそ味わえる(アニメにしたら、この味がうまく出ないような)お話だなと感じました。

 その一方で、「魔女」であるキキに対しての、コリコの街の人々の視線や、13歳の少女でもあるキキの一面にも惹かれるものがあります。
 「魔女」に初めて出会うコリコの街の人々。その「魔女」のイメージは、不思議な魔法で悪いことをするようなもの。また、大きな街では、人々は忙しく、魔女だろうとなんだろうと構っていられない。コリコの街に降り立ったキキが、街の人々から投げつけられた言葉が、私もショックに聞こえました。それでも、パン屋のおソノさんをはじめ、キキのことを好きになってくれる人もいる。キキが使える魔法は空を飛ぶことだけ。その空を飛ぶことも万能ではなく、ドジをしたり、困ったことに巻き込まれたり。キキは「魔女」だけど、特別過ぎない「魔女」だと感じられる。これに関しては、キキがひとり立ちして1年目、里帰りできる時になり、里帰りをしてコキリさんに話した言葉が印象的です。
 そして、13歳の少女としてのキキ。空を飛ぶ研究をしている少年・とんぼさんに出会い(その出会いは散々でしたが)、あるとんぼさんの一言が頭から離れなくなる。その一方で、あるお届けものを頼みに来た少女・ミミに対してのキキの感情の揺れが、13歳なのだなと感じます。いや、大人になっても同じ。ただ、キキとミミの素直さ、正直さがとても清々しいです。

 原作、とても面白いです。これは全巻読みます。文庫は第3作まで出ています。第2作はもう読みました。第3作はまだ読み始めです。

魔女の宅急便 2キキと新しい魔法 (角川文庫)

角野 栄子 / 角川書店



魔女の宅急便 3キキともうひとりの魔女 (角川文庫)

角野 栄子 / 角川書店




 ちなみに、もともとの福音館の単行本も、イラストが可愛いです。文庫版のイラストは現代っぽいですが、単行本のイラストも可愛いです。

魔女の宅急便 (福音館創作童話シリーズ)

角野 栄子 / 福音館書店


by halca-kaukana057 | 2013-09-24 22:34 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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